直木賞のすべて
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第132回

=受賞者=
角田光代

=候補者=
伊坂幸太郎
岩井三四二
古処誠二
福井晴敏
本多孝好
山本兼一


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Last Update[H20]2008/8/7

古処誠二
Kodokoro Seiji
生没年月日【注】 昭和45年/1970年3月10日〜
経歴 福岡県生まれ。高校卒業後、様々な仕事に就き、航空自衛隊入隊。平成12年/2000年、自衛隊内部の事件を扱った「UNKNOWN」でメフィスト賞を受賞。
受賞歴 第14回メフィスト賞(平成12年/2000年)「UNKNOWN」
サイト内リンク 付録-山本周五郎賞受賞作・候補作一覧(第16回)
付録-山本周五郎賞受賞作・候補作一覧(第17回)
子サイト
「余聞と余分」内
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『ルール』(平成14年/2002年4月・集英社刊)
書誌
>>平成17年/2005年7月・集英社/集英社文庫『ルール』
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他文学賞 山本周五郎賞 16回候補 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
長部日出雄 17 3.5点「私はこの作品に関しては一般的な読者になれない理由があります。実は、私の兄がルソン島で戦死しておりまして、私自身、この山岳地帯を三度、歩き廻ったことがあるんです。」「一九七〇年生まれの作者が戦場の実態を、実際にその場に足を運んで詳しく調べた私のような人間にも、さほどの違和感なく読ませたということはなかなかの筆力だと思いまして、三・五点です。」
北原亞以子 36 4点「実は私も、実父や伯父が戦死しておりまして、知らせを信じられない母や伯母が戦友の話を聞いてまわりました。その話と重ね合わせて読むと、大変迫力がありました。が、多少なりとも戦争を知っている者が読むと、ちょっと違和感を覚えるところもいくつかありました。」
久世光彦 17 3点「若い人たちの好むテレビゲームみたいに感じられて、違和感が最後まで残りました。また、この作家の視点は時によって妙に冷静だったり、妙に人間的だったりして一貫していないし、作家のパッションがどこに向いているのかも捉えにくかった。」「風景や臭いが伝わってこないですよね。」
花村萬月 23 3点「カニバリズム(食人)は文学の大きなテーマだと思って期待して読んだんですが、正直、期待外れでした。」「臭いの描写が全然ない。」「捕虜のスミスと鳴神の思考形態が全く同じなのも奇妙です。」「小説の核は日本人論だと思いますが、どこか表層的なシミュレーションで終っている気がしました。」
山田詠美 22 2点「焦点が定まってないというか、何を書きたいのかがはっきりしてないと思います。」「若いのにこういう小説が書けて素晴らしい、というのは、もうやめたらどうでしょう。」「やっぱり、大岡昇平を読んだ人間にはつらいですよ。リアリティのみならず文章もね。」「白人がこんなにすんなり日本兵と一緒に行動するのは変だよ。」
最終投票      
選評出典:『小説新潮』平成15年/2003年7月号
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せっきん
接近』(平成15年/2003年11月・新潮社刊)
書誌
>>平成18年/2006年6月・新潮社/新潮文庫『接近』改稿
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他文学賞 山本周五郎賞 17回候補 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎 30 「戦争を知らぬ世代が戦争を描くこと自体、相当に勇気が要る。」「あえて描ききろうとする作者の真摯さには握手を求めたい。」「強く推すことのできなかった理由は、ミステリーの手法に呪縛されている点と、さほど難解なストーリーではないのに、余分な知的処理によってかえって話を不明瞭にしてしまった点である。」
北村薫 32 「整った構成が、はたして作品にとって良かったか悪かったか、疑問である。」「弥一にとって「帝国軍人」が「アメリカ軍人」であったのは、存在の根底を揺るがされることだが、「サカノ」にとって、それは揺るがぬ自明のことだ。」「最後の場面も、構成上の首尾を一貫させたという意味はあるが、弥一の主観が「サカノ」の胸に食い入ったとは、思えない。」
小池真理子 19 「時折、挿入されるモノローグふうの数行も含め、私にとっては全体が小説ではなく、長大な散文詩のような印象しか残らない作品であった。」「テーマはむろんのこと、一つ一つのモチーフも、読み手を惹きつけてやまないのに、せっかく読者が物語に溺れ、感情移入しかけると、作者はふっと横を向いてしまって、こちらは置いてけぼりを食らってしまう」
重松清 43 「どうしても一点気になるところがあった。」「それは言語の衝突、葛藤についての問題である。」「物語の縦糸だけでなく、ピジンやクレオールとも通底する言語の混成という横糸も強く紡いでほしかった。」
篠田節子 55 「この作品を批評するにあたって、過去の戦争文学の持つ切迫感と比較するのは誤りだ。」「愛憎と信頼、裏切りのドラマだ。」「沖縄戦という、体験者によって書き尽くされた題材を、この一点で切り取り、中編作品に仕上げた才気にも敬服した。」「戦争の本質と踏み躙られていく人々の悲しみと苦悩を描き出した佳品だと思う。」
選評出典:『小説新潮』平成16年/2004年7月号
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大衆選考会 130回推薦候補 一覧へ
大衆選考会での推薦
推薦者 推薦日 推薦文
古井 平成16年/2004年1月7日 もう戦争を体験した世代が居なくなろうとしています。この作品が無ければ、私が戦争を思い起こすことはなくなるかもしれません。古処誠二の描いた少年の姿を私は忘れることはないでしょう。
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直木賞 132回候補  一覧へ

しちがつ なのか
七月 七日』(平成16年/2004年9月・集英社刊)
書誌
>>初出『小説すばる』平成14年/2002年11月号、平成15年/2003年1月号、3月号、5月号、7月号、9月号、11月号
>>平成20年/2008年6月・集英社/集英社文庫『七月七日』
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝 39 「候補作の中でインパクトが強かった」「作品として評価は高いと思ったが、(引用者中略)太平洋戦争というものに対して歳月を経ても色あせることのない悲痛な記憶や傷痕を心に持つ人(引用者中略)にこの作品が歴史小説として読めるのかどうか、(引用者中略)私は読めなかった。」
津本陽 22 「ていねいに描かれており、最後の七夕祭の短冊の場面は特に余韻があっていい。」「だが、作品全体に余裕がありすぎる。どうにも逼迫感というのか、臨場感がなく、数万の人間が何千倍という火力で叩きつぶされ、火焔放射器で焼きはらわれながら、潰滅してゆく、時代の悲劇の状況がどうも感じとれない。」
阿刀田高 22 「細かい部分には疑義も生じようが、若い世代がこういうテーマに関心を抱くこと自体が貴重である。」「小説創りの技量にほんの少し不足を感じ、また、これ以外にどんな作品を創るのか、私としては次作を待つという考えに傾いた。」
林真理子 9 「サイパン玉砕という暗く重いテーマにかなり気が滅入る。その気の滅入りと、小説から得る感動を秤にかけると、やはり気が滅入る方が重くなってしまうのだ。」
五木寛之 8 「戦争体験をもたぬ世代の戦争小説として、これもすこぶる刺戟的な作品である。賛否両論あったところが、むしろこの作家の可能性だろう。」
渡辺淳一 20 「(引用者注:「対岸の彼女」の)他には、古処誠二氏の「七月七日」に惹かれた。」「戦争の実感的な迫力という点になると、さすがに弱く、さらに小説を型にはめてつくりすぎるところがやや感銘を殺ぐが、真っ向から第二次大戦に挑んだ、その気迫と努力は評価したい。」
北方謙三 23 「志を持った作品だった。」「語学兵という設定が実に効果的で、戦闘を両方から描く方法として卓抜なものがあった。」「反戦の主張を感じさせるだけでなく、人間の哀切さまでよく出ていると思った。」「選考会には、『6ステイン』と『七月七日』に丸をつけて臨んだ。」
宮城谷昌光 2 「古処誠二氏の作品は悪くない。」
田辺聖子 55 「お若い作者がこういう題材を選ばれたことに、私は感慨を持った。」「“サイパンはこんな暢気な戦場ではなかった”という批判も聞かれたが、私は戦場に身を挺したことはないものの、ドンパチの最中にはあらゆるこも起り得ると思う。」「私はこの作をも推す。」
選評出典:『オール讀物』平成17年/2005年3月号
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文量
長篇
章立て
「I 六月十八日 星章」「II 六月二十日 黒星」「III 六月二十三日 南十字星」「IV 六月二十七日 流星」「V 六月三十日 運星」「VI 七月四日 星条旗」「VII 七月七日 天の川」
時代設定 場所設定
太平洋戦争中  サイパン
登場人物
ショーティ(アメリカ陸軍語学兵、日系二世)
カジハラ(ショーティの同僚、ハワイ出身の日系二世)
鹿山美智子(サイパンの日本人、米軍捕虜)
パイプ(ショーティの上官)




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しゃだん
遮断』(平成17年/2005年12月・新潮社刊)
書誌
>>初出『小説新潮』平成16年/2004年2月号、5月号、8月号、12月号、平成17年/2005年3月号/単行本化にあたり加筆修正
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 33 「日本の軍隊の醜い身勝手さを、途中で出会った、二人の行動を制御する片腕の少尉に象徴させる工夫は、すぐれた作家的手腕だが、この凄まじい地獄行が、現在からの回想で書かれていることに違和感があった。」「あるいは、沖縄戦とその直後の事情だけで筆を止めていれば、これまた光る佳作になったにちがいない。」
平岩弓枝 19 「戦争を知らない人が戦争を書いてはならないとは決して思わない。」「けれども、もっとも大切なのは、戦争の中で生き、死んで行った一人一人について、その人間性をどう掘り下げ、作者がどういう思いを持ちながら書き切るかで、作品の成功不成功の鍵はその点にあるのではないのだろうか。」
宮城谷昌光 23 「描写にふくまれる見通しがやや悪い。」「素材を大切にする気持ちはよくわかるが、それは作者の側に保存されるものではなく、読者に思い切り与えるべきである。」「古処氏の人間観察の視点は悪くない。それどころか、きわめて良い。その長所を活かすには文章をみがくしかない。」
阿刀田高 13 「誠実な筆致にも文句のつけようがない。しかし、今、あらたに戦争を伝える小説としてなにが適切なのか、ノンフィクションならともかく、モチーフに新鮮さを感じることができなかった。」
北方謙三 15 「臨場感も描写の迫力もあり、心を動かされた。ただ、清武が生きていたという意外性が、戦後の主人公の孤独にうまく繋がってこないという感じを持った。」
林真理子 12 「誠実なよい小説であるが面白くない。これは戦争小説の宿命かと考えたのであるが、やはり食指が動かないのである。」
五木寛之 22 「戦争体験をもたぬ書き手が戦場の物語を構築しようとしている。その志は壮とすべきだろう。」「読みつつ、どうしても作品世界に没入できないものがあったのは、なんだったのだろう。ことに会話にたえず引っかかるものをおぼえたのは残念だ。」
渡辺淳一 10 「真面目で誠実な作品だが、濃い絵の具を塗りつぶしたような書き方が、ワンパターンで興を殺ぐ。」「著者の熱意はかうが、作品の出来は前回より落ちるようである。」
選評出典:『オール讀物』平成18年/2006年9月号
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大衆選考会 135回推薦候補 一覧へ
大衆選考会での推薦
推薦者 推薦日 推薦文
蓮見 平成18年/2006年6月8日 忘れられない作品です。
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文量
長篇
章立て
「1」〜「5」
時代設定 場所設定
太平洋戦争中〜[同時代]  沖縄
登場人物
佐敷真市(農民、防衛隊員)
普久原清武(真市と同郷の防衛隊員)
普久原チヨ(真市の幼馴染、清武の妻)
川辺雅志(傷付いた少尉)




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てきえい
敵影』(平成19年/2007年7月・新潮社刊)
書誌
>>初出『小説新潮』平成17年/2005年12月号、平成18年/2006年3月号、6月号、9月号、12月号/単行本化にあたり加筆修正
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎 28 「戦争どころか戦後の空気すらも知らぬはずの作家が、かくも襟を正して過ぎにし戦を書き続けている。」「あえて至難の小説というかたちで描き出そうとするのは、玉砕するも甎全を恥ずの気概を、作者自身が持っているからであろう。むろん受賞には足らぬ。しかし歴史がいまわしい転用をした「玉砕」の一語を、本来の語意に正してわが身に背負い続ける作家の覚悟は、もうひとつの文学の正統である。」
阿刀田高 8 「作者が従来のノンフィクション的作風から小説へ強く踏み出したように思えて私は評価を高めたが、それとは逆の意見もあって強くは推せなかった。」
五木寛之 18 「前回の候補作、『遮断』をこえていないと感じた。戦争を実際に体験した読者が、まだ多数現存していることを考えると、近過去を描くことの難しさにため息をつかざるをえない。」
井上ひさし 36 「沖縄守備軍で生き残った日本兵に四種あるという事実――それをはっきりと描き出すことが『敵影』(古処誠二)の試みだったのかもしれない。」「思わず身が引き締まるような思いで読み進むことになるが、箴言録風な硬質な文体と煩瑣な物語時間の入れ換えに妨げられて、せっかくの志のある試みがうまくこちらへ伝わってこなかったという恨みがのこる。」
北方謙三 15 「戦争を伝えるという、ある使命感さえ見えてくる。それが小説になった場合、暗く、重いものしか残らないという結果になったと思う。『七月七日』で描かれた結末の透明感が、懐かしくさえあった。」
林真理子 11 「「敵影」の愚直さに強く惹かれた。この若さで、執拗に戦争をテーマにする情熱はいったい何なのだろうか。」「若い人が読んでくれる戦争文学の旗手になっていただきたいと強く願う。」
平岩弓枝 7 「よく資料を調べて書いているのであろうけれども、現実に戦争に直面した者の気持からすると脇が甘いし、抵抗があった。」
宮城谷昌光 10 「主題があいまいで、終戦前後の沖縄の捕虜収容所の風景をスケッチしただけであるとみられてしまう。何かに集中してゆくという作品的力闘が貧弱なのは、あいかわらず措辞に不可解な乖離があるせいであろう。」
渡辺淳一 0  
選評出典:『オール讀物』平成20年/2008年3月号
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文量
長篇
章立て
「1」〜「16」
時代設定 場所設定
太平洋戦争中〜戦後直後  沖縄
登場人物
近藤義宗(米軍捕虜、元・軍曹)
高江洲ミヨ(陸軍病院の看護婦、師範学校女子部学生)
阿賀野(軍曹、陸軍病院の患者)
寺谷(米軍捕虜、義宗の班長)
羽島(米軍捕虜、義宗と同班)
梶原(カジハラ、日系二世、米軍の宣撫担当)




ブログ版 直木賞のすべて 余聞と余分
  [H20]2008/7/10 第139回候補・山本兼一 4年2ヵ月前に第11回松本清張賞受賞 「登場する“職人”が皆、どこか同じ鋳型で作られたかのような匂いがするのが、今後の課題かもしれない」  
  [H20]2008/1/16 第138回直木賞(平成19年/2007年下半期)決定の夜に  
  [H20]2008/1/13 このミステリーがすごい!2008年版 2007年のミステリー&エンターテインメントベスト10  
  [H19]2007/10/28 ダカーポ 平成18年/2006年7月19日号(587号)  
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