直木賞のすべて
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第104回

=受賞者=
古川 薫

=候補者=
酒見賢一
東郷 隆
もりたなるお
宮城谷昌光
出久根達郎
堀 和久


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Last Update[H20]2008/1/3

東郷隆
Togo Ryu
生没年月日 昭和26年/1951年12月16日〜
経歴 神奈川県横浜市生まれ。国学院大学経済学部卒。同大学博物館学研究助手、グラフィックデザイナー、編集者を経験。アフガニスタン国境に潜入などし、軍事評論『戦場は僕らのオモチャ箱』を刊行。ノンフィクション、小説、漫画原作、コンピュータゲームソフトなど幅広く活躍。
受賞歴 第15回吉川英治文学新人賞(平成5年/1993年)『大砲松』
第23回新田次郎文学賞(平成16年/2004年)『狙うて候』
サイト内リンク 付録-山本周五郎賞受賞作・候補作一覧(第11回)
付録-吉川英治文学新人賞受賞作・候補作一覧(第15回)
小研究-記録(候補回数)
子サイト
「余聞と余分」内
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直木賞 104回候補  一覧へ

すいあみだぶつ ほうひごんすけ じんぞうき
水阿弥陀仏」「 放屁権介」「 人造記」
(平成2年/1990年11月・東京書籍刊『人造記』より)
書誌
>>平成5年/1993年11月・文藝春秋/文春文庫『人造記』所収
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収録作品の書誌
水阿弥陀仏
>>初出『中央公論 増刊』昭和62年/1987年15号[12月]
>>平成15年/2003年1月・白泉社刊『東郷隆時代奇譚小説集』所収
放屁権介
>>初出『野性時代』昭和61年/1986年12月号
>>平成15年/2003年1月・白泉社刊『東郷隆時代奇譚小説集』所収
人造記
>>書き下ろし
>>平成15年/2003年1月・白泉社刊『東郷隆時代奇譚小説集』所収
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他の収録作品
「上海魚水石」(『BRUTUS』昭和60年/1985年10月15日号)
「蟻通し」(『歴史読本 臨時増刊』平成1年/1989年9月号)
 
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一 11 「歴史的怪奇小説という独特の世界に挑み、それなりに読ませる。だがときに資料の羅列や解説にとどまり、奇をてらうだけに終る危うさがある。せっかく怪奇ものを書くなら、そこから人間性の本質に迫る魔性のようなものを、引きずり出して欲しいものである。」
平岩弓枝 5 「その作品を通じて、読者になにがいいたいのか、作者の心がどこにあるのかが曖昧なところで損をしたようです。」
陳舜臣 8 「秀作であるだけに、おそろしさの奥にかくされた人間性に、作者の筆がその直前でとまっているような、歯痒さがかんじられた。物語ることに夢中になりすぎたせいかもしれない。」
井上ひさし 5 「薀蓄と諧謔味のある文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
田辺聖子 21 「作品集『人造記』の中で『上海魚水石』は候補に上っていないが、私はこれも面白く読んだ。いうならむしろ、『上海魚水石』がいちばんいいように思った。」「『上海魚水石』は文学的風韻にみちていた……。それに比してたとえば『人造記』という作品中、王朝末期のオハナシの中に、突如、「カレー」という語が不用意に飛び出してくる。(引用者中略)読者は作者のめくらましに酔いたいのに。」
五木寛之 7 「「水阿弥陀仏」が奇妙に印象に残った。ふと魯迅の「故事新編」の作風を連想したのは、この作家の才能にただならぬものを感じたからである。」
黒岩重吾 23 「票が入れば、受賞作として良い、と考えていたが、余り票が入らなかった。」「私は「水阿弥陀仏」を実に面白く読んだ。この面白さは理屈抜きだが、結構、足利義尚を通し権力をからかい、憐れんでいる。」「この一作なら良いが、「放屁権介」「人造記」となると作品の濃度が落ちて来る。」
山口瞳 0  
藤沢周平 13 「勉強のあとが窺え、かつよくまとまった作品だった。中でも出来は「水阿弥陀仏」が一番かと思われた」「難を言えば資料に執着しすぎて小説的なのびを欠いた感じが気になったが、個性的な作家になりそうな可能性がみられる。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年3月号
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文量
短篇3篇
水阿弥陀仏
章立て
「一」〜「七」
時代設定 場所設定
室町[長享年間]  京都
登場人物
水阿弥(怪人)
足利義尚(九代将軍)
甘阿弥(義尚附きの茶坊主)
放屁権介
章立て
「一」〜「四」「蛇足」
時代設定 場所設定
江戸幕末〜明治初期  大阪
登場人物
権介(曲屁芸人)
内山彦次郎(西町奉行所筆頭)
人造記
章立て
「一」〜「七」
時代設定 場所設定
平安末期  高野山
登場人物
西行(出家人、隠遁者)
西道(西行の弟子)
覚蓮(人造の呪法を知る上人)




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ねこま
猫間」
(『別冊文藝春秋』197号[平成3年/1991年10月])
書誌
>>平成15年/2003年1月・白泉社刊『東郷隆時代奇譚小説集』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣 10 「大長篇の序章のようにかんじられた。読後の「完結感」がゆるい。登場人物が読者にとって、熟知の史上の人物なので、勝手に読者の脳中でうごくせいかもしれない。」
平岩弓枝 4 「この中篇が候補作になったことが、東郷さんにはお気の毒だったという印象を受けた。」
五木寛之 14 「老成した文章は、この主人公を描くにふさわしい落着きがある。細部にも配慮がゆきとどいた小説だし、義仲の純情ぶりもすこぶるおもしろい。」「政治にかかわりあうまいと心をくだく男たちが小説の主人公となるのが、現代というものだろうか。」
田辺聖子 9 「東郷氏のお作品の玄妙はもっと自由奔放な世界にありそう。これは少し渋くまとまりすぎ、細部のデコレーションを楽しむにとどまった。そのため、主人公の印象が稀薄なのは惜しい。」
黒岩重吾 10 「私が思ったよりも点が入らなかった。木曾冠者義仲が都に入ってからの公家の狼狽ぶりや、義仲の野性味と情などがよく描けている。主人公も面白いが、この人物を活かすには、作品にもっとうねりがなければならない。」
渡辺淳一 0  
井上ひさし 13 「細部がほんとうにおもしろい。ただ、その細部が集積されて一編の小説に編み上げる際の戦略にいささかの誤算が見られるようだ。なんだかおとなしいのだ。もとよりそのおとなしさがこの『猫間』の魅力でもあるのだけれど。」
山口瞳 0  
藤沢周平 8 「骨法正しい短篇で、歴史上のエピソードをひっくり返してみせた手腕があざやかだった。ただ前半が説明過多で、そのせいか話が小柄にすぎて授賞を云々するには不足に思われた。」
選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年3月号
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文量
短篇
章立て
「1」〜「6」
時代設定 場所設定
平安末期[寿永] 
登場人物
前治部卿光隆(従三位、綽名・ねこま)
後白河院(政事の中心人物)
志(光隆に仕える雑色)
木曾冠者義仲(正体不明の武者)




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たた げんぺいもっけがっせん
打てや 叩けや―― 源平物怪合戦』
(平成4年/1992年6月・新潮社刊)
書誌
>>初出『週刊新潮』平成3年/1991年4月〜12月/単行本化にあたり加筆推敲
>>平成19年/2007年7月・光文社/光文社時代小説文庫『打てや叩けや 源平物怪合戦』
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子 0  
黒岩重吾 10 「本人が面白がっている割には読者は面白くない。」「登場人物が多過ぎるために、大事な人物像が曖昧なままで終っている。このような書き方なら前半の阿古丸、湛海、百合根などにもっと焦点を当て、余り幻術に溺れず、描き切るべきであった。」
山口瞳 0  
陳舜臣 15 「中世の雰囲気がよく出ていた。妖術や幻術のたぐいは、中世をいろどるおもなトーンといってよい。小説に登場させるのはかなり危険だが、東郷氏は大手を振ってそれをやってのけた。その度胸のよさを買いたい。構成にもさしたる破綻はなく、良質のエンターテインメントになっている。」
渡辺淳一 15 「困ったことに、小説は知識が豊かなら書けるというものでなく、むしろありすぎて失敗する場合もある。今回はまさしくその例で、あるかぎりの知識を詰めこみすぎて、ごった煮のような騒然さだけで終ってしまった。」
平岩弓枝 6 「惜しいと思ったのは主人公のキャラクターの設定が少々、不安定で、人間がふくらまなかったことである。」
井上ひさし 19 「博捜ぶり(別にいえば、作者の知ったかぶり)がいたるところで露骨に現れて、せっかくの物語世界に読者が没入するのを妨げる。いちいち邪魔なのだ。また、雄大な冒頭部に較べて結末が縮こまり過ぎてもいる。」
藤沢周平 24 「骨格の正しい小説で、文章にも瑕瑾がなく、プロとして通用する完成度をそなえた作品だったが、小説の主題が歴史的な出来事としてあまりにもよく知られている事柄なので、感興がもうひとつ盛り上がらない憾みがある。」
五木寛之 12 「惹かれるものがあった。山田風太郎山脈、隆慶一郎連山の系譜につらなる作家として、期待できそうな気がする。」「いつ受賞してもおかしくない才能だと確信している。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年3月号
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文量
長篇
章立て
「第一章 逢魔」「第二章 熊野路」「第三章 武者の世」「第四章 往還」「第五章 鎌倉の沙汰」「第六章 堀川夜討」
時代設定 場所設定
平安末期  京〜熊野〜鎌倉など
登場人物
阿古丸(神護寺を出奔した童子)
百合根(巫女、阿古丸の女)
梓(女幻術師)
湛海法眼(陰陽師、白河印地の頭目)
武蔵坊弁慶(大夫判官源九郎義経の従者)
中原広元(源頼朝の側近、中流公家上がり)





たいほうまつ
大砲松』(平成5年/1993年12月・講談社刊)
書誌
>>平成8年/1996年9月・講談社/講談社文庫『大砲松』
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他文学賞 吉川英治文学新人賞 15受賞 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 21 「「読者の心を書き手のリズムで生き生きとおもしろく踊らせてやろう」という作家的工夫がいつも働いていて、それが常套句や紋切型の語句を思いがけない回路で結び付いて、歯切れのいい、そして愉快な文章を作り出している。」「途中から物語の心棒を行方不明にしてしまった。」
尾崎秀樹 5 「慶応四年五月の上野の戦争を彰義隊に参加した町人の側からとらえた異色作だ。大砲を自在にあやつり官軍を翻弄する締め出し松こと遊び人の松三の動きにひかれる。」
佐野洋 11 「あまり感心しなかった。」「選考会の席上、「小説というより講談だ」と言ったところ、「講談でいいじゃないか。いま時代小説に求められているのは講談だ」という声が返った来た。本当にそうなのだろうか。」
野坂昭如 8 「当選作二篇は、作風も内容も両極端といっていい、」「積極的に押したのは、『大砲松』の方である。」「ちょっと資料にとらわれ過ぎ、もっと奔放に筆を遊ばせれば、独自の境地を開きなさるだろう。」
半村良 5 「(引用者注:候補作の)『遊撃隊始末』と同じく資料詰込みすぎの感がある作品でしたが、こちらはその資料を蹴たてて爆走する小気味よさがありました。」
選評出典:『群像』平成6年/1994年5月号
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おわ
終りみだれぬ』(平成6年/1994年5月・文藝春秋刊)
書誌
>>平成10年/1998年6月・文藝春秋/文春文庫『終りみだれぬ』
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収録作品の書誌
絵師合戦
>>初出『オール讀物』平成4年/1992年4月号
開眼
>>初出『オール讀物』平成3年/1991年10月号/単行本収録にあたり加筆
>>書き下ろし
熊谷往生
>>初出『オール讀物』平成5年/1993年4月号「功名」
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾 7 「“絵師合戦”が面白く読めた。ただこの短篇集には、文献の引用と解釈が多過ぎ、読み続けるのに苦労する。作者はもっと大勢の読者を意識すべきであろう。」
井上ひさし 20 「またも確実に前進したと思う。」「考証や現代語訳を地の文へ溶かし込んだ独特の文体も手に入ってきて、テンポとユーモアとが生まれてきている。だから文句をつけては罰が当たるようなものだが、読み手が小説に常に求めている基本的な描写力に少しばかり欠けるところがあるような気がしないでもない。」
山口瞳 0  
平岩弓枝 11 「東郷さんの、もうすっかり安定した世界という感じで、それはそれですばらしいことではあるけれども、フレッシュな感動が薄くなって来る部分をどう補って行くかが今後の課題になりそうである。」
藤沢周平 24 「前作の「人造記」、「打てや叩けや」などにくらべると、イメージが鮮明で文章もくどさが消え、急にうまくなったような感じをあたえる。」「「絵師合戦」、「熊谷往生」の二篇が秀逸で、「開眼」は前半の人物造型はすぐれているのに肝心の後半がよくなかった。しかしこれも相当の作品だった。」「受賞の水準に達した作品だった。」
田辺聖子 11 「東郷氏の今までのお作の中では最も好調のお仕事という印象を受けた。文章・会話、細部に至るまで凝りに凝って時代小説を読む楽しみを満喫できた。ことに「熊谷往生」がいい。」「この作品は受賞作と同じレベルと感じた。」
五木寛之 11 「小説の運命に果敢に挑戦しようという野心を感じた」「この二作(引用者注:「蛇鏡」と「終りみだれぬ」)のうちのどちらかが受賞してもおかしくないと思ったのだが、少数意見であったようだ。」
渡辺淳一 9 「文章は大分こなれてきたが、史実的な部分はともかく、人間そのものの描写になると途端に、ありきたりな表現が目立ってくる。例によって博識だが、それが小説的に収斂していかないもどかしさが残る。」
選評出典:『オール讀物』平成6年/1994年9月号
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文量
短篇集
絵師合戦
章立て
「一」〜「五」
時代設定 場所設定
平安末期  伊豆
登場人物
藤原邦通(大和判官代、絵師)
堤権守信遠(中伊豆の実力者)
源頼朝(流人、大将格)
開眼
章立て
「一」〜「六」
時代設定 場所設定
鎌倉[貞応年間]〜平安末期  京都〜奈良
登場人物
運慶(老仏師)
快慶(運慶の弟弟子)
迦陵頻(傀儡女)
章立て
「一」〜「七」
時代設定 場所設定
平安末期  京都
登場人物
八町四郎(通称・苦竹の法師、博奕の元締)
平知康(壱岐判官、四郎の弟、木曾追討使)
木曾義仲(武士の棟梁)
熊谷往生
章立て
「一」〜「五」
時代設定 場所設定
鎌倉初期[定応年間]〜平安末期  武蔵国熊谷郷〜京都
登場人物
熊谷次郎直実(蓮生坊、念仏修行者の英雄)
蓮空(小平太直常、元・熊谷次郎の郎党)




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なにもの
「そは 何者」
(『別冊文藝春秋』211号[平成7年/1995年4月])
書誌
>>平成9年/1997年5月・文藝春秋刊『そは何者』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳 0  
渡辺淳一 10 「用意周到に準備して書かれた作品のようだが、その用意したところがいささかこうるさくて、一本の線に収斂してこないもどかしさがある。才もあり力もある作家だが、このところいささか難しい陥穽に落ちこんでいるようである。」
平岩弓枝 26 「題名に凝りすぎて失敗しているように思う。作品を読み終った者は、そこで作者から宿題を押しつけられた気分で感じがよくない。」「著名な人物を、こういう形で作品の中に登場させるには、充分の配慮をお願いしたい。」
津本陽 11 「作者が日頃手なれた題材ではないが、巧みな展開に隙がない。」「結末が射程をとりちがえたような感じで、この作品によって何を語ろうとしたのか、たしかに受けとれないままに終った。」
田辺聖子 36 「兎まんじゅうやトロイメライの小道具もよく効き、私には酩酊度のつよい、たのしい、馥郁たる小説であった。ただこの手の作品は読み手を択ぶ。」「こういう小説に、〈なんのためにこれを書いたのか〉と詰問してもはじまらない。」「文学の層の厚み、というのはこういう酩酊小説をも包含することにあるので、賞は逸しられたけれども、秀作とよんでいいと思う。」
黒岩重吾 4 「味があるが、作者が何を訴えたいかが伝わって来ない。」
阿刀田高 27 「二度、三度と読んでみると、この種の短篇に望ましい“舌をまくような冴え”が私には感じられなかった。うまいけれど、幻想小説として、よくあるパターンなのである。」「泉鏡花のような作家が人間界と魔界の仲介役を演じている、という設定は、許容されるかどうかという意見はともかく、それが狙いであるならば、もう一工夫、技が必要だったのではなかろうか。」
井上ひさし 18 「鏡花を怪し者たちの同類にしたのは、この種の物語の規則から外れているのではないか。規則にこだわる必要はないが、しかしこれでは鏡花その人が怪し者になってしまう。少し乱暴な規則違反だ。」
五木寛之 14 「鏡花の時代を描いて魅力的な作品だった。」「しかし、村松定孝氏の『あぢさゐ供養頌――わが泉鏡花――』のような名作を読んでしまうと、『そは何者』の奥行きがやや弱く見えてくるのも事実である。」
選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年9月号
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文量
短篇
章立て
「1」〜「7」
時代設定 場所設定
大正  東京
登場人物
泉鏡花(小説家)
香川幸太郎(文芸雑誌編集者)
洗い髪の女(廃墟に現れた貸本屋)





なにもの
『そは 何者』(平成9年/1997年5月・文藝春秋刊)
収録作品
「飾磨屋の客」「予兆」「そは何者」「学生」「疽」「湯の宿」「蘇堤の犬」「楽屋」
 
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他文学賞 山本周五郎賞 11回候補 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高 29 3.5点「ナゾ解きのような面白さがポイントになっているこういう作品を、短篇小説としてあんまり高く評価してはいけないかな、という気もしました。」「二つの点において疑念を抱きました。一つは、「あとがき」に書いていらっしゃることが小説の中で生きていない。」「もう一つは、時代考証が……何と言うか、ベタなんですね。」
井上ひさし 31 3.5点「登場する作家たちの作品を徹底的に調べ上げて、それぞれの文章の呼吸をうつしながら、雰囲気を伝える技術には素晴しいものがあります。」「ただ、泉鏡花や永井荷風がむこう側、あやかしの世界につながる者だったというのには、疑問を持たざるを得ない。」「僕も「学生」というのは秀逸な作品だと思いました。各篇をこういう形で展開してほしかった。」
逢坂剛 19 4点「手練の作品集、と感じました。」「構成を変えていろいろと飽きさせない工夫がなされているんですが、続けて読むと、同工異曲の感が免れず、くたびれてくるというところがあります。」「「伊豆の踊子」を、のちの踊子の視点から書いた「学生」というのが、この中の白眉ですね。」「二作(引用者注:「学生」「疽」)以外は印象が薄くて、面白さのヘソになるものが明確に伝わってこない。」
長部日出雄 22 3.5点「全体に知識と考証と幻想のアラベスクという印象を受けました。読者としては、次から次へと出てくる知的な装飾に気をとられて、小説の核心の面白さのところになかなか入り込めない。理知の働きによる考証と、意識化の古層に潜む人間の原初的な感情に訴える怪談とはあまり相性がよくないんじゃないでしょうか。」
山田太一 17 3.5点「これは一種の薀蓄ものですね。薀蓄を楽しむ人にはひとつひとつ思いあたって楽しいとおもいます。」「僕は東郷さんの、こういうパロディー風ではないものを読みたいと願いました。」
選評出典:『小説新潮』平成10年/1998年7月号
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らくちゅう つゆ かなもりそうわおぼえがき
洛中の 露―― 金森宗和覚え書』
(平成10年/1998年1月・新潮社刊)
収録作品の書誌
弥助
>>初出『小説新潮』平成4年/1992年2月号
茶筅
>>初出『別冊歴史読本・時代小説』平成5年/1993年夏号[6月]「梅雪入道の死」
讃岐簾
>>初出『小説新潮』平成5年/1993年8月号
鉄線蓮
>>初出『小説新潮』平成5年/1993年2月号
共筒
>>初出『小説新潮』平成6年/1994年2月号
白昼夢
>>初出『小説新潮』平成6年/1994年7月号
灰天目
>>初出『小説新潮』平成9年/1997年2月号「きれいさび」
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子 12 「私は氏のお作品に親昵する者の一人だが、この本はすこし難解だった。」「入念で凝ったつくり、しかし作者が気を入れているわりに読者は楽しめないのではなかろうか。」「私は「弥助」が好もしかった。この一篇を推したい。」
阿刀田高 16 「知識の深さに真実舌を巻く。」「だが、残念ながら作者の意図したモチーフがよく見えて来ない。」「この作家にはいつも、――すばらしい筆力なのに――と、もどかしさを感じてしまうのだ。学識を抜きにして単純明快なお話を聞かせていただけないものだろうか。」
黒岩重吾 6 「文献に頼り過ぎ、登場人物が多く、想像力が活かされていないので読み難い。かつての「人造記」のような面白味を復活させて貰いたい。」
津本陽 12 「綿密な考証に全篇が覆われているので、読み進むのがきわめて繁雑で、小説を楽しむ余裕がない。」「充分に力量のある作家であるが、作風に迷いが出てきたのではないかと、気がかりである。」
平岩弓枝 16 「最初の「弥助」がよかった。」「あとへ行くほど衒学趣味が濃くなって、書かれねばならない人間像が薄くなってしまったのは残念である。エピソードをばらばらに積み重ねるのではなく、金森宗和の多面性にしぼり込んで、その人間性を浮び上らせるためにエピソードを活用出来たらと思う。」
渡辺淳一 8 「この著者が大変な博識であることはわかるが、いうまでもなく、小説は知識を書くことではない。」「知に溺れて小説的妙味を失っているのは、いかにも残念である。」
五木寛之 0  
井上ひさし 19 「知識の幅と深さには毎度、驚嘆させられる。しかし、その分だけ、想像の翼が小さくなり、困った揚句、妖怪変化の棲む世界へ逃げ込むいつもの型に、今回もまたはまってしまった気味がある。勉強の成果がうまく生かされていないのが残念だ。」
選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年9月号
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文量
連作長篇
時代設定 場所設定
戦国[慶長年間]  京都
登場人物
金森宗和(茶人、飛騨高山城主の嫡男)
源五衛門(宗和の従者)
弥助
章立て
「1」〜「7」
登場人物
おむく斎(元・信長の従者)
弥助(本名ウマール、黒人)
茶筅
章立て
「1」〜「6」
登場人物
小野間弥三郎(茶筅売り、元武者)
穴山梅雪(駿州江尻の主)
讃岐簾
章立て
「1」〜「5」
登場人物
讃岐小掾頼包(簾師、化生)
鉄線蓮
章立て
「1」〜「9」
登場人物
男知合左兵次(近江出身の武者)
織田常真入道(信雄、信長の子)
共筒
章立て
「1」〜「3」
登場人物
越智喜左衛門直継(関ヶ原牢人、宗和の客人)
助右衛門(喜左衛門の知人)
白昼夢
章立て
「1」〜「6」
登場人物
策伝(宗和の義祖父の弟)
桧屋万千代(金森屋敷の倉役)
金森左兵衛重頼(金森家当主、宗和の弟)
灰天目
章立て
「1」〜「6」
登場人物
後藤又兵衛基次(豊臣方の名将)
織田有楽斎(信長の弟)




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  [H20]2008/3/16 ウエザ・リポート  
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