直木賞のすべて
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第140回

=受賞者=
天童荒太
山本兼一

=候補者=
恩田 陸
北 重人
葉室 麟
道尾秀介


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Last Update[H21]2009/7/3

山本兼一
Yamamoto Ken'ichi
生没年月日【注】 昭和31年/1956年7月23日〜
受賞年齢 52歳5ヶ月
経歴 京都府京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。出版社、編集プロダクション勤務後、フリーライターとして独立。
受賞歴 小説NON創刊150号記念短編時代小説賞佳作(平成11年/1999年)「弾正の鷹」
第11回松本清張賞(平成16年/2004年)「火天の城」
子サイト
「余聞と余分」内
関連記事
9件/最新は平成22年/2010年1月10日記事(このページの下部にリンクあり)
備考
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直木賞 132回候補  一覧へ

かてん しろ
火天の 城』(平成16年/2004年6月・文藝春秋刊)
書誌
>>平成19年/2007年6月・文藝春秋/文春文庫『火天の城』
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝 7 「宮番匠の城づくりに関する記述は興味深く読んだが、主人公と信長との交流にもう少し紙数が欲しかった。」
津本陽 19 「安土城建築の場面で、大黒柱の根元を切りとって、構造のゆがみをとる場面では、思わず体に力がはいるような気持ちにさせられた。」「問題は何を語りたかったのかということである。大工頭親子の建築譚にとどまるのであれば、いかにももったいないのではないか。」
阿刀田高 15 「わるくなかった。」「建築学的な考証も入念で、私としては、――よい勉強をさせていただきました――という思いが深い。この薀蓄が小説を読む楽しさをそこなっていないところもみごとである。」
林真理子 11 「(引用者注:「十楽の夢」よりも)面白く読んだ。信長の無理難題を聞き、城を建てていくという物語の筋を、これまた石を積み上げていくように、じわじわと重ねていく手腕はかなりのものだ。」
五木寛之 9 「さしたる批判もなく、ほとんどの選考者に高く評価されながら受賞を逸した」「実力十分の書き手であるから、いずれ決定的な作品を見せてくれることだろう。」
渡辺淳一 0  
北方謙三 9 「安土城建設の話が中央に据えられ、そこは実に生き生きとしていて面白かったが、信長の描き方が私には不満だった。」
宮城谷昌光 0  
田辺聖子 10 「端正な出来栄え、それでいて、作品には主人公の、城の工匠そのままの、地熱の如き情熱が感じられた。織田信長は書き尽くされた観のある主人公だが、なるほどこの方面からの攻め口もあった、と思わせる意欲作である。」
選評出典:『オール讀物』平成17年/2005年3月号
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文量
長篇
章立て
「一」〜「四十九」
時代設定 場所設定
戦国  尾張〜岐阜〜安土
登場人物
岡部又右衛門以言(織田家御大工棟梁、元・熱田宮御修理番匠頭)
岡部又兵衛以俊(又右衛門の息子)
織田信長(戦国武将)
うね(以俊と関係を持つ水仕女)
ニェッキ・ソルド・オルガンティーノ(宣教師)





らいじん つつ
雷神の 筒』(平成18年/2006年11月・集英社刊)
書誌
>>平成21年/2009年3月・集英社/集英社文庫『雷神の筒』
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大衆選考会 136回推薦候補 一覧へ
大衆選考会での推薦
推薦者 推薦日 推薦文
書癡 平成19年/2007年1月3日 前回の候補作も良かったが、今回も非常に期待できる作品になったと思う。装丁も大変良い。
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直木賞 139回候補  一覧へ

せんりょうはなよめ やみたてちょう
千両花嫁――とびきり 屋見立帖』
(平成20年/2008年5月・文藝春秋刊)
収録作品の書誌
千両花嫁
>>初出『オール讀物』平成16年/2004年12月号
金蒔絵の蝶
>>初出『オール讀物』平成17年/2005年4月号
皿ねぶり
>>初出『オール讀物』平成17年/2005年10月号
平蜘蛛の釜
>>初出『オール讀物』平成18年/2006年4月号
今宵の虎徹
>>初出『オール讀物』平成18年/2006年10月号
猿ヶ辻の鬼
>>初出『オール讀物』平成19年/2007年1月号
目利き一万両
>>初出『オール讀物』平成19年/2007年12月号
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝 33 「(引用者注:「切羽へ」と共に)心に残った」「大舞台を幕末の京都にして、その中に小さな道具屋を構築し、美人で度胸のすわった女房を持つ、みかけは平凡だが懐の深い主人公をおいたのが第一の成功の鍵。第二には見立てという遊び心のある趣向を商売に生かした着想と、一話に一人ずつ登場させている幕末の有名人の容貌を独特のデフォルメで描写することで新機軸を打ち出したところが作者の腕であろう。」
林真理子 10 「達者な小説であるが、あまり魅力を感じない。坂本龍馬をはじめとする幕末のヒーローたちが、次々と近くに現れるのもご都合主義の感を持つ。」
渡辺淳一 12 「リズムのいい文章で、読み易いが、たんなるお話づくりの域を出ていない。このような時代小説があってもいいし、好む読者がいても一向にかまわないが、文学賞の対象としては軽すぎる。」
五木寛之 11 「(引用者注:「あぽやん」と共に)楽しく読ませる力量はなかなかのものであった。」「なんとなく「いつか来た道」という感じがするところが気になった」
浅田次郎 11 「シリーズの一部分が選考の対象となったという点が不利に働いてしまったと思う。それをさておくとしても、人物が機能しているわりには空気感に欠ける印象をどうしても否めなかった。」
宮城谷昌光 16 「柴田錬三郎に通う資質をもっているかもしれない。が、柴田錬三郎の文体の美しさに、この作品は及んでおらず、陰翳にも欠ける。作中で偶然や幸運を連続させても、読者にみすかされず、厭きられないためには、もうひと工夫が要る。」
北方謙三 12 「見立てについてなど、私にはよくわからないが、無理なく物語の中にとけこんでいた。そのあたりはうまいのだが、こういう小説に欲しい痛快さが不足している気がした。歴史上の有名人に、強烈な存在感を与えれなかったからなのではないか、と読後に考えこんだ。」
阿刀田高 13 「楽しく読める作品だ。」「文章も闊達で、ストーリーもテンポよく進んでいく。」「よい作品だが、受賞作に比べて文学としての味わいで一歩譲っていた。」
井上ひさし 21 「この作での楔は、道具商には欠かせない〈見立て〉の力ということになるが、この見立てを仕掛ける作者の工夫がもうひとつ練れていればよかった。見立てを仕掛けられた敵役がみな幼く見えたのは残念だった。しかし読み味のいい小説である。」
選評出典:『オール讀物』平成20年/2008年9月号
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文量
連作短篇集
時代設定 場所設定
江戸幕末 
登場人物
真之介(道具商「とびきり屋」主人、「からふね屋」の元番頭)
ゆず(真之介の妻、「からふね屋」の娘)
善右衛門(茶道具商「からふね屋」主人)
千両花嫁
章立て
「一」〜「六」
登場人物
近藤勇(壬生浪の一人、「とびきり屋」の客)
芹沢鴨(壬生浪の一人)
金蒔絵の蝶
章立て
「一」〜「六」
登場人物
高杉晋作(長州藩士)
小梨花(呉服問屋の嫁、元・芸妓)
皿ねぶり
章立て
「一」〜「六」
登場人物
鶴亀(「とびきり屋」手代)
坂本龍馬(土佐藩郷士)
平蜘蛛の釜
章立て
「一」〜「六」
登場人物
若宗匠(茶道家元の若宗匠、ゆずの婚約相手)
今宵の虎徹
章立て
「一」〜「七」
登場人物
近藤勇(壬生浪の一人)
俊寛(「とびきり屋」手代)
猿ヶ辻の鬼
章立て
「一」〜「七」
登場人物
武市瑞山(土佐藩郷士、土佐勤皇党の頭)
坂本龍馬(土佐藩郷士、「とびきり屋」下宿人)
目利き一万両
章立て
「一」〜「七」
登場人物
芹沢鴨(新撰組局長)




直木賞 140受賞  一覧へ

りきゅう
利休にたずねよ』
(平成20年/2008年11月・PHP研究所刊)
書誌
>>初出『歴史街道』平成18年/2006年7月号〜平成20年/2008年6月号/単行本化にあたり加筆修正
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高 27 「これが正しい利休像かどうかはともかく(李朝の女など完全なフィクションだろう)捕らえにくい人格を、それらしく読者に訴え、なによりも小説として深い楽しさを提示してくれる。前回の候補作『千両花嫁』とあいまって小説家としての技と力量を感じた。」
五木寛之 28 「これらの(引用者注:受賞作以外の候補)作品とならべてみると、さすがに(引用者中略)安定感が際立ってくるのだ。」「私個人としては、利休の出自や、隠された彼の生業などについて、もっと掘りさげてほしい気持ちはあったが、そこは作者の趣向を尊重して楽しく読ませてもらうことにしよう。」「『利休にたずねよ』は作家への、そして『悼む人』は作品への評価といった感じの今回の授賞だろうか。」
平岩弓枝 47 「総体に品よく、そつなく仕上っていて山本さんの力倆が高く評価される。ただ、諸刃の剣となるのは、主要な小道具となっている緑釉の小壺で、(引用者中略)この小壺の持ち主、高麗の女と若き日の利休とのかかわり合いと死に関しては叙情に流されず、心の深い部分を突込んだ摘示が欲しい気がする。」「もう一つ、(引用者中略)宗恩が後世、茶人として高い評価を受けている人物であることを勘案すると、その人が茶道具を叩き割るのは、なんともそぐわない気持になる。」「山本さんが今、もっとも充実した時代小説の書き手の一人であると認識している故の欲ばりな注文である。」
宮部みゆき 56 「『悼む人』と『利休にたずねよ』にマルをつけて(引用者注:選考会に)臨みました」「山本さんは死が〈解〉となる利休の人生を再構成しなければならなかったわけですが、この際に、〈時間遡行〉という手法を用いました。(引用者中略)これが大成功につながりました。」「大胆な発想と、それを支え得る筆力が揃って、初めて生まれた秀作だと思います。」
北方謙三 21 「力作感充分だった。時制を遡る発想も効果的で、相当の工夫の中で利休を描こうとした試みだったと思う。ただ、利休がこだわっている美は、言葉による表現を拒絶しているところがあり、そこには踏みこめず、茶というものの周辺を駈け回ったという印象もある。また縦糸の女性の存在が、最後に具体的に描写されているところが、私には不用だと思えた。」
林真理子 22 「直木賞にふさわしい端整で深い作品である。」「こういう一種の“芸道小説”を書く場合は、著者による新しい美意識を出現させることが肝心であるが、山本さんはこれにも成功した。資料を咀嚼し、自分のものにすることでは定評のある著者であるが、またもや実力のほどを見せてくれたようである。」
井上ひさし 22 「臨済禅が利休に与えた影響について書かれていないことを(大徳寺は出てくるけれども)不満に思ったが、しかし、時間を巧妙に逆行させながらなにもかも、高麗からの流浪の麗人と、彼女の持っていた緑釉の香合に、焦点を絞ってみせた、作者の力業に喝采を送る。」「おしまいの、利休の妻が香合を石灯籠に叩きつけて砕くところは、この長編を締めくくるにふさわしい名場面だった。」
浅田次郎 42 「美は権力に庇護されるべきか超然として独立するべきかという争点をめぐって、多くの証人が証言台に立つ法廷小説のように私は読んだ。中世美学裁判である。したがって判決は利休の死ではなく、彼を最もよく知る人物によって香合が割られる決着となる。少々深読みが過ぎるであろうか。」「(引用者注:北重人とともに)このさき時代小説の両翼となるのではなかろうか。」
宮城谷昌光 17 「建てられた物、作られた物に、作り手あるいは所有者の精神を視る目を、作者がそなえているにせよ、こと小説に関しては、この作者は人を内から建てていないことに手法上の欠陥がある。」
渡辺淳一 34 「今回の候補作のなかでは文章がたしかで、もっとも安心して読めた。しかし細かく章を分けて利休をめぐるいろいろな人間、さまざまな年代から描いていくやり方が、必ずしも成功しているとはいい難い。さらに秀吉と利休の対立の原因が、表面的にはともかく、より内面的な意味で、高麗の女性を懐想させるだけでは、いささか軽いというか説得力に欠ける。」「(引用者注:「悼む人」とともに)各々、評価する部分と不満な部分と、両方兼ね合わせる形で二作受賞に同意した、というのが正直な感想である。」
選評出典:『オール讀物』平成21年/2009年3月号
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大衆選考会 140回推薦候補 一覧へ
大衆選考会での推薦
推薦者 推薦日 推薦文
飯澤教雄 平成21年/2009年1月5日 物語に感動しました。
さとうのりお 平成21年/2009年1月10日 物語の構成と利休の生き方に感動しました。
けん 平成21年/2009年1月12日 新しい利休像を開拓したことは素晴らしい。物語に感動しました。
お茶々 平成21年/2009年1月13日 軽い作品が二回ほど続いたので、ここ数年の直木賞の傾向からして重厚なこの作品であろうと予測します。個人的には恩田さんにとってもらいたいのですが、恩田さんだと濃厚ではあるけど重厚とは言えないので…
書痴 平成21年/2009年1月14日 W受賞なら恩田陸『きのうの世界』 天童荒太『悼む人』 この二人。山本兼一『利休にたずねよ』は出版社が弱いのが残念。(同時推薦=>恩田陸天童荒太
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文量
長篇
章立て
「死を賜る 利休」「おごりをきわめ 秀吉」「知るも知らぬも 細川忠興」「大徳寺破却 古溪宗陳」「ひょうげもの也 古田織部」「木守 徳川家康」「狂言の袴 石田三成」「鳥籠の水入れ ヴァリニャーノ」「うたかた 利休」「ことしかぎりの 宗恩」「こうらいの関白 利休」「野菊 秀吉」「西ヲ東ト 山上宗二」「三毒の焔 古溪宗陳」「北野大茶会 利休」「ふすべ茶の湯 秀吉」「黄金の茶室 利休」「白い手 あめや長次郎」「待つ 千宗易」「名物狩り 織田信長」「もうひとりの女 たえ」「紹鴎の招き 武野紹鴎」「恋 千与四郎」「夢のあとさき 宗恩」
時代設定 場所設定
戦国[天文年間〜天正年間]  京〜箱根〜筑前〜山崎〜堺など
登場人物
利休(茶人、魚屋の息子)
宗恩(利休の最後の妻)
秀吉(天下人)
古溪宗陳(大徳寺の長老、利休の禅の師)
高麗王家の姫(利休の想い人、緑釉の香合の持ち主)




ブログ版 直木賞のすべて 余聞と余分
  [H22]2010/1/10 第142回直木賞(平成21年/2009年下半期)候補のことをもっと知るために、色で占う。  
  [H21]2009/6/14 新しさや斬新さが何もないのだとしても、それが小説として劣っていることにはなりません。 第140回候補 北重人『汐のなごり』  
  [H21]2009/1/15 第140回直木賞(平成20年/2008年下半期)決定の夜に  
  [H21]2009/1/11 第140回直木賞(平成20年/2008年下半期)候補のことをもっと知るために、その重みを知る。  
  [H20]2008/7/15 第139回直木賞(平成20年/2008年上半期)決定の夜に  
  [H20]2008/7/13 第139回直木賞(平成20年/2008年上半期)候補のことをあと一歩知るために、「足もと」を見てみる  
  [H20]2008/7/11 第139回候補・和田竜 4年7ヵ月前に第29回城戸賞受賞 「同題材の先行する小説も何作かあり議論となりましたが、(略)圧倒的な高評価を得ました」  
  [H20]2008/7/10 第139回候補・山本兼一 4年2ヵ月前に第11回松本清張賞受賞 「登場する“職人”が皆、どこか同じ鋳型で作られたかのような匂いがするのが、今後の課題かもしれない」  
  [H20]2008/7/6 第139回直木賞(平成20年/2008年上半期)候補のことをもっと知るために、「初心」に帰ってみる  
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