直木賞のすべて
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第127回

=受賞者=
乙川優三郎

=候補者=
宇江佐真理
江國香織
奥田英朗
中山可穂
松井今朝子


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Last Update[H20]2008/1/3

乙川優三郎
Otokawa Yuzaburo
生没年月日【注】 昭和28年/1953年2月17日〜
受賞年齢 49歳5ヶ月
経歴 本名=島田豊。東京都生まれ、千葉県出身。千葉県立国府台高校卒。ホテル・観光業の専門学校を卒業後、国内外のホテルに勤務。会社経営、機械翻訳の下請を経て「薮燕」でオール讀物新人賞受賞。『霧の橋』で時代小説大賞受賞。
受賞歴 第76回オール讀物新人賞(平成8年/1996年)「藪燕」
第7回時代小説大賞(平成8年/1996年)『霧の橋』
第14回山本周五郎賞(平成13年/2001年)『五年の梅』
第10回中山義秀文学賞(平成16年/2004年)『武家用心集』
処女作 「藪燕」(『オール讀物』平成8年/1996年5月号)
サイト内リンク 付録-山本周五郎賞受賞作・候補作一覧(第14回)
付録-吉川英治文学新人賞受賞作・候補作一覧(第20回)
付録-オール讀物新人賞受賞作一覧(第76回)
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直木賞 119回候補  一覧へ

きちじ
喜知次』(平成10年/1998年2月・講談社刊)
書誌
>>平成13年/2001年3月・講談社/講談社文庫『喜知次』
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子 8 「ヒロインの女の子をもっと活躍させてほしかった。ここでもっと色気が出るか出るかと(小説的色気)読みすすめていったが、〈キザにきめる〉というところがなくて肩すかし。」
阿刀田高 13 「ひとかどの時代小説だと思った。前半の運びは少しゆるいが、後半は充分に楽しめる。」「だが、結末の二重のどんでん返しには釈然としないものが残る。作品を支える大切な柱だけに、この疵は大きい。」
黒岩重吾 13 「優等生らしい作品だが、読んでいて面白くなかった。」「台助の仇討ちに仲間の全員が登場するのも奇妙だが、最後になって、小太郎と花哉の間に血の繋がりがなかったとするのは安易過ぎる。」
津本陽 10 「「霧の橋」で登場以来、短時日のうちにこまかい技巧を身につけた。」「ただ、話の運びにとまどうような、ためらい淀む部分がある。もう一段の、たたみこむようないきおいがつけば、いうことがない。」
平岩弓枝 19 「この作者は数年の中に随分、力をつけて来たようで、それがまず嬉しかった。この作品の難は構成力で、少年時代からのびのびと書いて来たものが、最後の五分の一くらいで、突然、なにもかも説明で片付けようとして、こじつけが目立ったことだろう。」
渡辺淳一 9 「久しぶりに情感のある時代小説作家の登場で、好意をもって読んだ。」「花哉はいささかつくりすぎで、「喜知次」と題名にまでするには、弱すぎるようである。」
五木寛之 0  
井上ひさし 18 「筋立てに無理がある。」「(引用者注:兄妹が実は血がつながっていないことを、親たちが二人に告げない)そのせいで悲しいことがおこるのだが、これにはほとんど呆然となった。こんなに無責任で、ひとでなしの親は、これまで見たことがない。」
選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年9月号
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文量
長篇
章立て
「菊の庭」「暗い水」「冬安居」「茅花のころ」「屡雨」「二半」「行く秋」「白い月」「黒雲」「夜降ち」「千鳥鳴く」「末の露」「本の雫」「菊香る」
時代設定 場所設定
[江戸]  ある東北の藩
登場人物
日野弥平次(幼名・小太郎、のち郡方)
花哉(弥平次の義妹)
日野弥左衛門(弥平次の父親、祐筆頭)
牛尾台助(弥平次の友人、郡奉行の次男)
鈴木猪平(弥平次の友人)
鈴木瀬兵衛(猪平の父親、郡方下役、百姓一揆時に落命)
まち(猪平の母親)
安川左右助(弥平次の同僚)





つばきやま
椿山』(平成10年/1998年12月・文藝春秋刊)
書誌
>>平成13年/2001年11月・文藝春秋/文春文庫『椿山』
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収録作品
「ゆすらうめ」「白い月」「花の顔」「椿山」
 
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他文学賞 吉川英治文学新人賞 20回候補 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高 5 「ふくよかな筆致で遠い時代をうたいあげている。よくあるパターンと言われれば、その通りだが、味わいはわるくない。短篇集は評価されにくいところがあって残念。」
井上ひさし 12 「静謐な雰囲気と情報を多量に含みながらも流麗で安定した文章など、刮目に値する出来栄え」「(引用者注:「恋愛中毒」と)比べると幾分かは「不自由」だった。」
北方謙三 7 「その巧みさは充分に愉しむことができたが、どうしても長篇と互するだけの圧倒的な迫力に欠ける、という物足りなさがつきまとった。」
野坂昭如 5 「(引用者注:ぼくならば)もう少し出鱈目にしてしまう、「でしたとさ、市の栄え」風結末は、かえって焦々する。」
林真理子 0  
選評出典:『群像』平成11年/1999年5月号
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直木賞 123回候補  一覧へ

つる はしばし
蔓の 端々』(平成12年/2000年4月・講談社刊)
書誌
>>平成15年/2003年4月・講談社/講談社文庫『蔓の端々』
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三 11 「八重と礼助の描き方が思わせぶりで、拍子抜けという感じがした。小藩の抗争をこれほど複雑に描く必要があるのだろうか、と首を傾げたところで、物語の停滞も感じた。全体にはうまい小説で、ひとりひとりの登場人物が立ちあがってくる筆力は、圧倒的であった。」
田辺聖子 9 「主人公・禎蔵に好感をもったが、ヒロイン八重の心理がいまひとつ腑におちない。これが説得力がないとなると構成は崩れてしまうのではないか。小藩にしては騒動のスケールが大きすぎるのも気になる。」
宮城谷昌光 15 「虚無は感じられず、割り切りかたの早さが軽便へつながってしまうことが惜しまれる。割り切れないのが、人生であり男女の仲、ということでよいのではないか。それにしても氏はたくましい。うらやむべきことである。」
平岩弓枝 17 「前作の「喜知次」と設定がそっくり」「長いこと書いていて一つのスタイルが生じて来る場合も少くはない。けれども、人間描写ということに細心の注意と情熱を持っていれば避けて通れる道でもある筈なので、それがこうした結果になったというのは書き手の視野が狭くなっていることへの警鐘と考えて頂きたい。」
渡辺淳一 26 「以前からのテーマをさらに掘りこみ、ある小藩の内紛がよく書きこまれている。とくに執政側と下級武士との相克が、現代のサラリーマン社会を彷彿とさせ、面白く読んだ。」「史実的な不備をつかれて大きく後退した。(引用者中略)いかに巧みに史実をまるめこむかということが、(引用者中略)求められる課題かもしれない。」
五木寛之 5 「評価する声はあったものの、大多数の支持を集めるにいたらず見送られ、」
林真理子 4 「いつもながら端正な文章であるが、人物が入り組んで非常に読みづらい。」
阿刀田高 12 「重厚に創られた作品である。」「結末がはっきりせず、カタルシスが足りない。さまざまな設定にも、歴史小説にうとい私にさえ不可解に見えるところがあり、そのあたりに詳しい委員から指摘を受けると、強くは推せなかった。」
黒岩重吾 0  
津本陽 12 「情景描写が巧緻になり、長篇を結末まで読ませる筆力が養われてきた。」「難をいえば、登場人物と事件が、三万一千余石の小藩にしては多くあらわれ、話の展開が中途でもたつくことである。」「いきおいが乗りすぎたのは、惜しい。」
井上ひさし 36 「読者としては、禎蔵がいつ礼助と闘うのか、その結果はどうかを原動力に、長い物語を読み進むことになる。」「もちろん作者は、二人に剣を交えさせるかどうか、何度も繰り返し思案したことだろう。そして作家的決断で、二人を闘わせないことにしたにちがいない。」「読者としては、闘ってもらわなければ浮かぶ瀬がない。」
選評出典:『オール讀物』平成12年/2000年9月号
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文量
長篇
章立て
「花陰」「小谷流川」「小波」「杉と桐」「忘れ霜」「朝曇り」「炎暑」「火鶏」「雪の夜」「春ふたたび」「〈火+亢〉陽」「秋の扇」「濡れ縁」
時代設定 場所設定
[江戸]  ある藩〜越後新発田
登場人物
瓜生禎蔵(武具役、のち剣術師範)
黒崎礼助(禎蔵の友、筆頭家老暗殺の科で逃亡)
朝比奈八重(禎蔵の幼なじみ、礼助と共に出奔)
三代川勇吉(禎蔵の朋輩、寺社目付)
ひさ(勇吉の妹)
織部佐賀之丞(城代、のち筆頭家老)





ごねん うめ
五年の 梅』(平成12年/2000年8月・新潮社刊)
書誌
>>平成15年/2003年10月・新潮社/新潮文庫『五年の梅』
>>平成17年/2005年11月・埼玉福祉会/大活字本シリーズ『五年の梅』(上)(下)
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収録作品
「後瀬の花」「行き道」「小田原鰹」「蟹」「五年の梅」
 
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他文学賞 山本周五郎賞 14受賞 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
長部日出雄 65 4点「この短篇集は、わりとコンスタントに一定の水準が保たれていると思いました。」「表題作よりも、あまり大した事件の起きない話のほうが、むしろ出来がいいというふうに思いました。」
北原亞以子 71 4.5点「実は私、この作品に五点つけたかったんです。ただ、私が時代物を書いているものですから、幾つかのミスに気がついてしまったんですね。非常に端整な作品ですし、登場する女性も男性も、皆いやみがなく好感が持てます。」
久世光彦 72 4点「欠点がないという意味では、四作のうちで、これが一番ないのかなという気がします。」「ただ、テーマというのか、回り道してきた人間や人生みたいなものの関わり、それがちょっと生っぽいかなあ、と感じました。」「雰囲気という点では、かなり気は使っていると思うんですが、ときおり他の言葉に置き換えたほうがいいんじゃないかというのが出てくる。」
花村萬月 47 4点「俺は時代小説のことはあんまりよく分からないんですが、悪い意味じゃなくて定型的な、落ちるとこに落ちるお話の楽しさのようなものを非常に感じました。抑制もきいていて、かなりいいと思います。」「人間には悪い人間がいない、そういう小説ですね。それが、じつに素晴らしい味になっていると思うんです。」「もし順当なら、この作品だと思います。」
山田詠美 28 3点→3.5点「(引用者注:表題作の)「五年の梅」っていうのを、もしも現代に置き換えて、サラリーマン社会なんかに置き換えたら、とても小説として成り立たない。時代背景とかにすごく頼っている部分があるんですね。」
選評出典:『小説新潮』平成13年/2001年7月号
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『かずら 野』(平成13年/2001年8月・幻冬舎刊)
書誌
>>平成16年/2004年4月・幻冬舎/幻冬舎文庫『かずら野』
>>平成18年/2006年10月・新潮社/新潮文庫『かずら野』
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝 22 「どうしても気になったのは女主人公の菊子の富治に対する心である。」「菊子が富治のどこに惹かれて長年の流浪生活に耐えるのか、富治の菊子への想いはいつ始まったのか、すれちがいでもいいから、男女の心の通わせようが明らかでないと、ただ運命に流されて行く二人のきずながわからない。」「まことに残念であった。」
井上ひさし 23 「女主人公の心理を風景描写とからめて美しく、しかし的確に歌い上げる文章が、ほとんど完成を見ている。」「(引用者注:小説の大きな筋の)折り目が、ばかに作者に都合がいいように作られていて、その分だけ作品から読者が離れてしまった。」
林真理子 9 「シチュエーションに無理がある。どう読もうと、私はこの女主人公が相手の男を愛しているとはどうしても思えない。」
北方謙三 17 「業の深い男女の愛憎の行き着く果てを、見事に描きあげ、緩みのない小説に仕あがっていると感じた。」「ただ選考の論議の中で、時代小説のどういうところを、この賞は評価すべきかということを考えさせられ、私は支持の意見を変えた。この作品には、隙がないようで隙があり、指摘されると、それが緊密さの欠如という印象につながったのだった。」
津本陽 12 「途中から筆が渋ってくるところ、というか、テンポが落ちてくるところがあるが、話は最後まで乱れず、余韻も残した。」「いい出来栄えである。ディケンズの作品のような、荒削りな力で展開していってほしい。」
宮城谷昌光 29 「いつ受賞してもふしぎではない筆力をもっている人である。」「運命の力の大きさと人の力の小ささとが対蹠的に描かれているのであるが、残念ながら遠近感が精密に作品に反映されていない。そこに作品として雑駁さがあり、分力が作品の最後に合力となりえないので、作品の総合力が読み手を圧倒することができない。」
阿刀田高 29 「重厚である。丹念に、きっかりと描いている。」「主人公たち二人の逃亡のきっかけとなる殺人事件が唐突であり、曖昧に感じられた。」「――ひどい男だが、結局のところ、女は惚れているんだ――という気配が、どこかにしっとりと漂っていないと、この作品の屋台骨が持たないのではなかろうか。」
渡辺淳一 9 「手堅い作品ではあるが、主人公の菊子という女性がつくられすぎて魅力がない。女はこんな単純なものではないと思うが、そのあたりも含めて、もう少し、意外性のあるものを読んでみたいと思うのだが。」
田辺聖子 16 「小説は読み手と書き手が息を合せて物語世界を作ってゆくところがあるが、乙川氏はそこから逸れたところへ、逸れたところへ、ペンをすすめようとされる作風であるらしい。そこに野心が見られて面白いのだが、――読み手と書き手のめでたい交歓の上に、ぱっと〈華〉が開く、という境地を堪能したいのも、読み手の欲の深さか。」
五木寛之 0  
黒岩重吾 12 「菊子を犯した主人が息子に殺される場面まで、傑作になるのではないか、と期待しながら読んだ。彼は菊子に邸内における父親の獣性への憎悪を告げるが、読者としては納得できない。殺すほど憎いのなら、当然、父親と争っている筈だが、この瞬間までその気配すら描かれていない。」
選評出典:『オール讀物』平成14年/2002年3月号
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文量
長篇
章立て
「一」〜「四」
時代設定 場所設定
江戸幕末  信濃松代〜関屋〜江戸〜行徳〜銚子
登場人物
九原菊子(足軽の娘)
富治(商人の長男)
菅井静次郎(菊子の幼なじみ、佐久間象山の弟子)
山科屋彦市(富治の父、富裕な糸師)
恒吉(紺屋「霞屋」の跡取り)




直木賞 127受賞  一覧へ

生きる』(平成14年/2002年1月・文藝春秋刊)
書誌
>>平成17年/2005年1月・文藝春秋/文春文庫『生きる』
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収録作品の書誌
生きる
>>初出『オール讀物』平成11年/1999年5月号
安穏河原
>>初出『オール讀物』平成12年/2000年9月号
早梅記
>>初出『オール讀物』平成13年/2001年8月号
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾 43 「最も優れていた。主人公をも含めた周囲の人々の呻吟が、地上を覆った枯葉の下から自然に聞えてくる。」「今回の作品で氏は見事に脱皮した。周囲の人物像にも目配りを怠らず、肌理細かく描いた結果、情感が違和感なく響き合い、人間の業が持つ侘しさ醜さを浮き彫りにした。」「何よりも感心したのは、三作とも手抜きがなく、まさに入魂の作品であることだ。」
林真理子 21 「読んだ時、これで受賞は間違いないだろうという確信を持った。」「それまでの候補作に見られた気取りが消え、端正な文章が一層冴えている。特に心をうったのは「安穏河原」で、生きることのせつなさが見事に表現されている。」
津本陽 22 「江戸時代に生きた男女の切実な人生を陰影ふかくえがいた秀作である。」「不幸な境遇を耐える人々が、感慨をこめて低い声音でうたう、追分の旋律のようなものがうねっているような、余韻のある作品だ。」「この作品集の受賞に、心から賛成する。」
渡辺淳一 29 「きわだつ視点や鋭利な切り込みはないが、かわりに安心して読める手堅さがある。とくにこれまで候補になった長篇では、小説がパターン化して単調になる嫌いがあったが、今回は短篇集になった分だけ、一篇一篇が引き締って、印象が鮮やかである。」「真っ当なものを真っ当に書く、その力量はたしかで、経歴からいっても当然の受賞である。」
阿刀田高 22 「デビュー以来数年を経て、一つの到達点に達したように感じられた。暗く、つらい筋運びはこの作家の特徴だが、その中から人生についてのサムシングがほの見えてくる、それが深い味わいにまで昇華している。とりわけ第三作〈早梅記〉に強い感動を覚えた。」
田辺聖子 41 「よくできた時代小説には、読者を没入させる熱気と、それを中和する滋味、そして綿密な構成による論理性の説得力がある。」「(引用者注:表題作「生きる」は)まさしくそれで、私はこの、地味で手堅い“時代小説”にすっかり魅了された。」「山本周五郎さんでもなく、藤沢周平さんでもない、新しい時代の、新しい〈時代小説〉の誕生に居合せた、という嬉しい衝撃を与えられた。」
宮城谷昌光 19 「用心深い作品であるように感じられた。」「その作品(引用者注:「蔓の端々」)からこの作品まで、氏は何かをつらぬいてきたのであり、その努力と研鑽は私の想像のおよばぬものであろう。」
五木寛之 8 「技術的な安定感と作家としての誠実さには感心しつつも、どことなく印象が薄く、積極的に推すにはいたらなかった。」
北方謙三 16 「文体、構成ともに完成された手腕を感じさせた。全篇に漂う哀切な情感は、紛れもなく小説というかたちで表現されるべきものである。作者が人を見つめる視線に、私は共感を抱かずにはいられなかった。小説としての格調も、申し分ない。」
平岩弓枝 45 「乙川さんは人間の弱い面を描くのが巧い。」「強いほうには目もくれず、ひたすら人間の弱い部分に取り組み続けたようで、それがいつの間にか乙川さんの作品の抒情性の根っこになったような気がする。」「いつの間にか乙川さんは暗さの中の明るさを捕えるのが巧みになっていた。弱さの中の強さを具体的に描く意志を持たれたようだ。鬼に金棒である。」
井上ひさし 39 「(引用者注:「イン・ザ・プール」と)もう一つ、一番に推したのは、『生きる』(乙川優三郎)に収められた「安穏河原」という短篇、これもまたすばらしい作品である。」「母子二代にわたる二つの川岸の光景=記憶は、読者をこころからしあわせにし、同時に、人生の深みへ誘いもする。こんなことは他の表現方法ではできない。これこそ小説の勝利である。」
選評出典:『オール讀物』平成14年/2002年9月号
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大衆選考会 127回推薦候補 一覧へ
大衆選考会での推薦
推薦者 推薦日 推薦文
zuuka 平成14年/2002年6月30日 実は、今回はそんなに本を読めなかったので、大きな声では言えないのですが…。しかぁーし、なかなか直木賞に当選しない乙川さんの「生きる」は素晴らしい中編集でした。私の中では間違いなく本命です!!(後文=>奥田英朗
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文量
中篇集
生きる
章立て
「一」〜「十一」
時代設定 場所設定
江戸  北国のある藩
登場人物
石田又右衛門(馬廻組)
佐和(又右衛門の妻、病弱)
けん(又右衛門の娘、江戸詰手廻頭の嫁)
梶谷半左衛門(筆頭家老)
安穏河原
章立て
「一」〜「十」
時代設定 場所設定
江戸中期  江戸
登場人物
羽生素平(元・郡奉行の浪人)
双枝(素平の娘、女郎)
伊沢織之助(浪人の息子、借金の取立て屋)
早梅記
章立て
「一」〜「六」
時代設定 場所設定
江戸  ある藩
登場人物
高村喜蔵(隠居、軽輩出身の大目付)
とも(喜蔵の妻、町奉行の次女)
しょうぶ(独身時代の喜蔵の女中)




ブログ版 直木賞のすべて 余聞と余分
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  [H20]2008/7/10 第139回候補・山本兼一 4年2ヵ月前に第11回松本清張賞受賞 「登場する“職人”が皆、どこか同じ鋳型で作られたかのような匂いがするのが、今後の課題かもしれない」  
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