直木賞のすべて
直木賞のすべて

第109回

=受賞者=
高村 薫
北原亞以子

=候補者=
今井 泉
本岡 類
中島らも


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Last Update[H21]2009/2/18

高村薫
Takamura Kaoru
生没年月日【注】 昭和28年/1953年2月6日〜
受賞年齢 40歳5ヵ月
経歴 本名=林みどり。大阪府生まれ。国際基督教大学フランス文学専攻卒。
受賞歴 第3回日本推理サスペンス大賞(平成2年/1990年)『黄金を抱いて翔べ』
第46回日本推理作家協会賞[長編部門](平成5年/1993年)『リヴィエラを撃て』
第11回日本冒険小説協会大賞[日本軍大賞](平成4年/1992年)『リヴィエラを撃て』
第12回日本冒険小説協会大賞[日本軍大賞](平成5年/1993年)『マークスの山』
第10回咲くやこの花賞[文芸その他部門](平成4年/1992年度)
第52回毎日出版文化賞[文学・芸術部門](平成10年/1998年)『レディ・ジョーカー』
第4回親鸞賞(平成18年/2006年)『新リア王』
処女作 「黄金を抱いて翔べ」(『小説新潮』平成2年/1990年10月号)
サイト内リンク 付録-山本周五郎賞受賞作・候補作一覧(第5回)
付録-山本周五郎賞受賞作・候補作一覧(第6回)
付録-吉川英治文学新人賞受賞作・候補作一覧(第14回)
小研究-ミステリーと直木賞
直木賞受賞作全作読破への道Part1
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「余聞と余分」内
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かみ
神の 火』
(平成3年/1991年8月・新潮社/新潮ミステリー倶楽部)
書誌
>>平成7年/1995年4月・新潮社/新潮文庫『神の火』(上)(下)
>>平成8年/1996年8月・新潮社/新潮ミステリー倶楽部『神の火 改訂増補』
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他文学賞 山本周五郎賞 5回候補 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高 32 2.5点「ぽんと入ってくれればいいものを、どのことについても、まず前置きみたいなものがありまして、なかなか核心に入らない趣味があって、それがスパイ小説みたいな、もともと非常に分かりにくい要素を持っているものを、一層読みにくくしているように私は思いました。」「「砂のクロニクル」と一緒にあるということで、この人は損をしているかもしれない。大きな意味で似ている小説ですからね。」
井上ひさし 22 3点「四作中一番素晴らしいすべり出しだと思いますが、やがてすべてがはっきりしなくなってくるんです。」「作者には韜晦が、文学的で小説的であるという錯覚があるように見受けられました。」「普通のなりわいを淡々と書いたら、とてもいい小説を書く作家じゃないかという気がしました。」
逢坂剛 23 4点「現実のスパイ戦でも、誰がどっちの味方だか分からない、ということがよくあります。したがってこの作品の場合、韜晦という見方も出来るかもしれませんが、なんだかよく分からないところが、また逆に持ち味になっている気がします。」「大阪という土地柄が産んだ人物の造形力が抜群で、作者の情念のようなものがすごく伝わってくる。」
長部日出雄 37 4点「科学的情報というのはものすごく膨大な量が入っているんですが、それに比べて、国際的な諜報戦略とか、政治情勢に関する情報の量というのはかなり少ないんですね。アンバランスなぐらいに少ない。そのため、いろいろ分からないところが出てくる。」「でも、思考実験としては、とても刺激的で、読みごたえもあったというふうに思うんです。」「特に僕は、自分がアル中的な酔っぱらいだもんですから、この日野草介みたいなアル中の酔っぱらいをよくここまで書けたと思うくらい感心しましたね。」
山田太一 17 3.5点「前半(引用者中略)物語の気取りに古風を感じました。後半の爆破計画が分刻みで進行するあたりになると、飾りがなく、物語の造形力の強さを感じました。ただ、原発が危ないことを示すのに、こんなにダイナマイトでぼかぼかやる必要があるんだろうか。」
最終投票      
選評出典:『小説新潮』平成4年/1992年7月号
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けんじゅう
『わが 手に 拳銃を』(平成4年/1992年3月・講談社刊)
他文学賞 吉川英治文学新人賞 14回候補 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 0  
尾崎秀樹 7 「銃に関する情報を詳細に描き、迫力あるサスペンスにまとまっていた。」
佐野洋 5 「氏の作品としては失敗作なのではないか。従来の作品と違った作法を、意識的に取ったのかもしれないが、それがマイナスに働いたように思われる。」
野坂昭如 4 「すでに小説を十分心得ている。」「高村氏の筆にして冗長、筋立ても曖昧、どうしてもこれまでに上梓された傑作と比較されてしまう。」
半村良 7 「これまでの作品からしておおいに期待して読んだのだが、どう言うわけか今回の作品は狙いが悪かったようで、同じ大阪を舞台とした黒川博行氏の『封印』に比較しても、分が悪かったようだ。大器であると見ているので、次の作品を待ちたい。」
選評出典:『群像』平成5年/1993年5月号
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『リヴィエラを 撃て』
(平成4年/1992年10月・新潮社/新潮ミステリー倶楽部)
書誌
>>平成9年/1997年7月・新潮社/新潮文庫『リヴィエラを撃て』(上)(下)
>>平成19年/2007年6月・双葉社/双葉文庫 日本推理作家協会賞受賞作全集70,71『リヴィエラを撃て』(上)(下)
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他文学賞 山本周五郎賞 6回候補 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高 46 3.5点「基本的には、これはエンターテインメントの小説なので、そう考えた時に、こんなに苦労して読まねばならないのはエンターテインメントとして、やはりいけないのではないかと思います。」「もう一回その点を考えて、読者とともに楽しい時間をもつという視点、それをもったらすごくよくなるのではないかなという感じがしました。」「自分がこういうふうに書きたい、この世界を構築したいという、その情熱でこの千五百枚を書いていて、読者という考えはほとんど希薄ですね。」
井上ひさし 61 4.5点「米ソ二極対立構造がなくなったので、スパイ小説は書きにくいだろうという世の中の普通の考え方に挑戦している野心は、大したものですね。」「どうも作者はまだ読者との関係をしっかり結んでいないような気がしますね。」「なぜこんなに複雑な構成法をとらなければいけないのかというところが、依然として疑問です。」「人生、人間の営みに対する哀しみはよく出ています。」
逢坂剛 83 5点「この小説は、話の筋書きとか構成とかを、細部にわたって検討していくような読み方をしてはいけないのではないか、という感じもします。この作品には、作家のもっている世界観を活字の中に封じ込めようという、一種の怨念みたいなものが感じられます。」「正直いって、これだけ手応えのある小説というのは、ここ十年ほど読んだ記憶がありません。」「この作品は、むしろ、三島賞のほうへ回したほうがよかったんじゃないかな(笑)。」
長部日出雄 78 3.5点「リヴィエラに関するヒントがほんの少しずつしか明かされていかないものですから、なにか、餌を小出しにされて、ずいぶん長い道を歩かされているなという気がしました。」「この筆力の旺盛さや、日本人離れしたスケールの大きいねばり方の可能性は、まったく疑いようがなくて、今回は、将来のもっと大きな大成を期して、少し低い点にしました。」
山田太一 63 4点「こんなに長い外国を舞台にした小説を僕はとても書けません。感服して四点を入れます。」「読書を通して、あれこれのパターンの中で作ったという頼りなさがつきまといます。」「いちばんカギを握っている悪人が、結局、私欲を根底にして動いていたというのにはちょっとがっかりしました。」
最終投票     1回目○1票
選評出典:『小説新潮』平成5年/1993年7月号
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直木賞 109受賞  一覧へ

やま
『マークスの 山』
(平成5年/1993年3月・早川書房/ハヤカワ・ミステリワールド)
書誌
>>平成15年/2003年1月・講談社/講談社文庫『マークスの山』(上)(下)(全面改稿)
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子 60 「私はこの作品を二度読み、二度とも感動したばかりでなく、再度、尽きせぬ興趣と魅力をおぼえ、それは二度めのほうが強かった。」「何よりこの作品の強い魅力は、刑事群像の躍動感、存在感であろう。」「構成が巧みなので、真相が追い追い露わになってゆく緊迫感がひときわ強い。」「文章も硬質、簡潔でいいが、一つ気になったのは、「見れる」「省みれなかった」「降りれる」などの「ら」抜きの用法。」
黒岩重吾 39 「突出しており、」「(引用者注:殺人犯と看護婦の)二人の関係には呻きがあり毒が滲み出ている。」「心象風景の中の山が迫って来るせいかもしれないが、生臭く俗な人間に対する小説の勝利といって良いであろう。」「これを推理小説として読むと欠点は多い。(引用者中略)それにも拘らず私が本小説に魅了されたのは、毒気が欠点を麻痺させたからである。」
井上ひさし 24 「圧倒的な膂力の持主である。それ以外に評言の用意がない。」「この作品で作者は、真知子という善悪をはるかに超えた「人生の泥と涙にまみれて人を愛する女」を創造し、読者との関係をしっかりと付けた。彼女の愛は、推理小説だの警察小説だのといった狭い枠を越えて、はるか普遍の愛にまで達している。」
陳舜臣 31 「減点法で品評すれば、多くの点を失うであろう。」「動機についてかなりマイナス点をつけねばならない。」「だが、加点式で得た点は、減点数をはるかに越える。犯人の異常性がみごとにえがかれ、これが動機の弱さを補ってあまりあるものがあった。難をいえば、会話が概して長すぎる。」
藤沢周平 45 「選考委員が異口同音に言ったように、欠点の多い作品だった。それにもかかわらずこの小説を推理小説史上に残る傑作と断定したくなるのは、話のおもしろさに加えて人間が書けているからである。」「物語に厚みがあり、描かれている警察機構と刑事たちに迫真のリアリティがあった。」「これほど欠点が目立ちながらこれほどためらいなく推せた受賞作もめずらしいと言わねばならない。」
五木寛之 19 「今回の候補作家のなかでもっとも筆力のあるのが高村さんだろう。私が〈マークスの山〉を受賞作として一本で推さなかったのは、犯罪の動機に納得がいかなかったのと、警察内部の人間関係にあまり興味がなかったせいである。事件の背後にある人間の意識の深淵への関心が、この作家の本領なのかもしれない。」
山口瞳 45 「雄渾で迫力があり、一人一人の警察官に人間臭がある。」「ところが最終章の《収穫》に至ってメチャクチャになる。」「著者の略歴を見ると、本名林みどり、果たして歴とした女性だった。(引用者中略)作者を警察関係の人だと思った不明を恥じた。いや、あらためて作者の腕力に敬服したと言ったほうがいい。」「私はこの作品ではなく高村さんの才能に惚れた。」
渡辺淳一 43 「いくつかの疑問と無理があり、この点だけを問題にすれば、かなりの減点はまぬがれない。だがそれにもかかわらず受賞作となりえた理由のひとつは、圧倒的な文章の強さにあった。」「いまひとつ惹かれたのは、表面は推理小説の形をとりながら、その底に、人間を描こうとする真摯な目が光っていることである。」
平岩弓枝 20 「文字の間からすさまじいばかりの熱気が立ち上って来るようで、そのねばり強さと迫力には、脱帽する思いであった。ただ、ミステリーとして、この作品を取りあげた場合、あまりに偶然の積み重ねの多いのが気になった。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年9月号
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文量
長篇
章立て
「一 播種」「二 発芽」「三 成長」「四 開花」「五 結実」「六 収穫」
時代設定 場所設定
昭和51年/1976年〜[同時代]  山梨〜東京など
登場人物
合田雄一郎(警視庁捜査一課主任)
水沢裕之(自称マークス、脅迫者)
高木真知子(看護婦、裕之の恋人)
野村久志(N大卒業生、北岳で死亡)
林原雄三(弁護士、N大山岳会OB)
加納祐介(検事、合田の元・義兄)




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