直木賞のすべて
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第104回

=受賞者=
古川 薫

=候補者=
酒見賢一
東郷 隆
もりたなるお
宮城谷昌光
出久根達郎
堀 和久


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Last Update[H19]2007/10/30

古川薫
Furukawa Kaoru
生没年月日【注】 大正14年/1925年6月5日〜
受賞年齢 65歳7ヵ月
経歴 山口県生まれ。山口大学教育学部卒。山口新聞編集局長を経て、作家に。
受賞歴 山口県芸術文化振興奨励特別賞(平成3年/1991年)
サイト内リンク 小研究-記録(高齢受賞)
小研究-記録(候補回数)
直木賞受賞作全作読破への道Part2
子サイト
「余聞と余分」内
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直木賞 53回候補  一覧へ

そうく
走狗」(『午後』10号[昭和40年/1965年4月])
書誌
>>『文學界』昭和40年/1965年7月号再録
>>昭和42年/1967年☆月・柏書房刊『走狗』所収
>>昭和50年/1975年8月・エルム刊『討賊始末』所収
>>昭和62年/1987年7月・文藝春秋/文春文庫『だれが広沢参議を殺したか』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 6 「最後の数行で、やっと小説になっているという感じである。こういう描き方よりも、第一行目から小説を感じさせて貰いたいと思った。」
海音寺潮五郎 0  
小島政二郎 0  
川口松太郎 0  
中山義秀 9 「この程度では大楽源太郎の悲劇が、充分描きつくされたというまでにはゆかない。」
木々高太郎 10 「歴史上の異常な人物を描いて、而も、その描き方が非情であればあるほど、よかった。然し海音寺さんが、一寸でも調べれば判る歴史上の誤りがあるといったので、それが僕には判らなかったが、ひっこめた。」
大佛次郎 0  
村上元三 5 「新人がこういうところへ入って行くのは、よくよく覚悟の上でないと危険だ、と思わせられた。」
松本清張 19 「私は最初に古川薫氏の「走狗」を推したが、九対一でまっ先に討死した。」「文体緊密にして、極力描写の筆を惜しんだ作だ。私は今回の候補作家の中で、最も将来伸びうる人ではないかと考える。」
今日出海 0  
選評出典:『オール讀物』昭和40年/1965年10月号
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文量
短篇
章立て
なし
時代設定 場所設定
江戸幕末〜明治初期  京都〜久留米
登場人物
大楽源太郎(長州藩志士、暗殺者)
大村益次郎(兵部大輔、大楽の同窓生)




直木賞 70回候補  一覧へ

にょたいぞうし
女体蔵志」(『午後』20号[昭和48年/1973年7月])
書誌
>>昭和50年/1975年8月・エルム刊『討賊始末』所収
>>昭和62年/1987年7月・文藝春秋/文春文庫『だれが広沢参議を殺したか』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
水上勉 6 「独自な云いまわしは貴重である。参考作品の「積雲と昆虫」についていえば、昆虫辞典一冊であれだけの思いをはせられる、ユニークな才質をのばしてほしいと思う。」
源氏鶏太 5 「「女体蔵志」は、小説以前の作品で終っているが、参考作品として提出された「積雲と昆虫」には、独特の味と気楽さがあって面白かった。」
石坂洋次郎 7 「考証も文章もしっかりしているが、面白みがたりない。」
司馬遼太郎 8 「古川薫氏の文章は、(引用者中略)旧知に遭うような親しみと信頼感をもったが、この作品は創作がもたねばならない凄味(あいまいな言い方だが)に欠けていた。」
村上元三 11 「小説以前の素材だけで、消化されていない。」「一つ文学をやってやろう、と力みかえらずに、柔軟な筆力を生かしてほしい。」
今日出海 0  
柴田錬三郎 8 「ていねいに書いているが、その律儀さに、退屈させられた。」
川口松太郎 0  
松本清張 0  
選評出典:『オール讀物』昭和49年/1974年4月号
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文量
短篇
章立て
「1」〜「7」
時代設定 場所設定
江戸[宝暦年間]  長州藩[萩藩]
登場人物
栗山孝庵(藩医、山脇東洋の門下生)
タキ(孝庵の妻)
山脇東洋(京都の医師、日本初の人体解剖実施者)
山田伊織(中間組頭、孝庵の患者)
杉山養徳(孝庵の下で働く見習い)
阿美濃(百姓の妻、死刑囚)




直木賞 72回候補  一覧へ

さいおう にじ
塞翁の 虹」(『狼群』4号[昭和49年/1974年5月])
書誌
>>昭和50年/1975年8月・エルム刊『討賊始末』所収
>>昭和62年/1987年7月・文藝春秋/文春文庫『だれが広沢参議を殺したか』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
松本清張 2 「凡作、」
石坂洋次郎 8 「それぞれいま一と息といった作品」
司馬遼太郎 6 「敬服するほどに整っている。しかし人間の問題として、ダイナミズムに乏しい。」
源氏鶏太 19 「どこかにぎこちないところがあり、それがこの作品の魅力にもなっている。風格もある。」「この作家は、山口県にいて小説を書いていることで損をしているのでなかろうか。(引用者中略)紙一重のところで、迫力、あるいは鮮度、または現代性に差が出てくるように思うのだが、これは私の誤解であることを次作で証明して貰いたい。」
水上勉 9 「興味ぶかく読んだ」「主人公の心理や人間像にいまひとつの個性ある肉づけが加わればいい材料だったと惜しまれ、かねてから注目していた人だけに残念の思いである。」
今日出海 0  
村上元三 6 「題材の料理法を間違っている。史料そのものを、扮飾なしに書きたかったのか、小説にしたかったのか、作者の腰が据わっていない。」
川口松太郎 3 「短篇では古川薫の「塞翁の虹」を推薦した」
柴田錬三郎 0  
選評出典:『オール讀物』昭和50年/1975年4月号
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文量
短篇
章立て
「1」〜「6」
時代設定 場所設定
江戸幕末  長州藩[岩国藩]
登場人物
吉川経幹(岩国藩主、"最後の大名")
毛利慶親(萩藩主、のち改名して敬親)
益田右衛門介(萩藩家老、切腹)
国司信濃(萩藩家老、切腹)
福原越後(萩藩家老、切腹)




直木賞 78回候補  一覧へ

じゅうさんにん しゅら
十三人の 修羅』(昭和52年/1977年10月・講談社刊)
書誌
>>昭和56年/1981年1月・講談社/講談社文庫『十三人の修羅』
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
水上勉 23 「直木賞作品らしい小説世界がある。しかし、二作(引用者注:「錆色の町」「巷塵」)に比べると古くもある。」「文章も濶達でいいのだが、材料に無理があるらしい。」「だまし方が足りない気がするのだった。だが、力量はある。」
司馬遼太郎 11 「古川氏は作家としてすでに名があり、また長州藩史に通暁した人として知られているが、そのせいでもないだろうが、作中の人間たちへの初々しい作者の驚きや感動が読む側に伝わりにくかった。」
柴田錬三郎 7 「歴史小説めかした結構をととのえようとして、逆に、仏師について今日的解釈をした欠陥を露呈した。前半の維新の史実の記述はなくもがなである。」
源氏鶏太 13 「高点をつけて出席した。」「力作だし、よく調べて、丹念に仕上げてあった。ただ選考委員の中に仏像の解釈に異論が出たりして見送られることになった。」
村上元三 4 「しばらく時代小説が出ていないので、推してはみたが、やはりいろんな欠点が目立った。」
川口松太郎 9 「私は(引用者中略)推したが、筋を欲張りすぎてやや散漫になった嫌いがある。中心を絞って仏師修業一本にテーマを置けばよかったのではないか。幕末騒動の背景がもっと役立つ工夫がある筈なのに残念だと思う。」
今日出海 0  
石坂洋次郎 7 「わりあいに面白かったが、直木賞に選ぶほどの実力は感じられなかった。」「私は(引用者注:「錆色の町」よりも)「十三人の修羅」の方にひかれた」
選評出典:『オール讀物』昭和53年/1978年4月号
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文量
長篇
章立て
「燃える公使館」「再会」「仏師の家」「戦雲」「疾風のあと」「忿怒と微笑」「燃え残りの記」
時代設定 場所設定
江戸幕末〜明治  横浜〜江戸〜京都〜長州など
登場人物
瓜生慎蔵(長州藩士)
櫛田光倫(京の仏師)
美緒(光倫の娘)
高杉晋作(慎蔵たちの仲間の頭領格)
井上聞多(慎蔵の仲間)
伊藤俊輔(慎蔵の仲間)
桂小五郎(慎蔵の京での雇い主)




直木賞 80回候補  一覧へ

のやまごくそうもんしょう
野山獄相聞抄」
(『別冊文藝春秋』144号[昭和53年/1978年6月])
書誌
>>昭和54年/1979年5月・東京文芸社刊『代表作時代小説 昭和54年/1979年度』所収
>>昭和56年/1981年3月・文藝春秋刊『野山獄相聞抄』所収
>>昭和61年/1986年7月・文藝春秋/文春文庫『吉田松陰の恋』所収「吉田松陰の恋」に改題
>>平成10年/1998年10月・光風社出版/光風社文庫、成美堂出版発売『夢がたり大川端 新選代表作時代小説』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎 7 「過不足なく描かれた好短篇だが、その過不足なくというところが、きれいごとのように見られ、物足りなさを与えた。どこまで歴史につくか、歴史から離れるか、難しい問題である。」
松本清張 6 「氏のこれまでの作品の中では秀作だった。しかし、獄中の吉田松陰の狂熱的な面を伝えてないのは、人物立体像の一方を欠落させている。」
源氏鶏太 9 「多くの票を集めたのだが、松陰の描き方に納得がいかないとの説に敗れた。」「私は、今でもこの作家は、「十三人の修羅」で授賞すべきであったと心が残っている。」
今日出海 0  
新田次郎 0  
五木寛之 0  
村上元三 5 「殻にとじこもったような気がするが、キャリアもある人なのだから、いまの殻を打ち破ってほしい。」
川口松太郎 17 「推したが賛成者少数なのは残念だった。哀愁の深いラストもしみじみとして隙がなく私は大変に惚れたのだが、作品の評価というものは飽くまでも主観的で、同感者が少なくとも、自説を撤回する気にはなれない。」
水上勉 4 「個性あふれる世界ながら、もう一つの力が不足していた。」
選評出典:『オール讀物』昭和54年/1979年4月号
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文量
短篇
章立て
「1」〜「8」
時代設定 場所設定
江戸幕末  長州藩
登場人物
わたくし(語り手、高須久子、武士の妻で囚人)
吉田寅次郎(号・松陰、学者)
弘中勝之進(在獄19年の囚人)
富永弥兵衛(弘中の喧嘩相手、書家)




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ざむらい
「きらめき 侍」(『小説新潮』昭和55年/1980年7月号)
書誌
>>昭和59年/1984年4月・新潮社刊『郡司八平礼法指南』所収
>>昭和62年/1987年4月・新潮社/新潮文庫『きらめき侍 郡司八平礼法指南』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳 9 「娯楽雑誌の小説として、危な気のない好短篇である。」「あえて難癖をつけるならば、(引用者中略)巧緻に過ぎて新味が薄れ、直木賞受賞作としてのハナと重量に乏しいというところだろうか。」
阿川弘之 0  
村上元三 8 「「きらめき侍」より、同じ作者の「刀痕記」のほうを買うが、この作者には史料を追いかけるだけでなく、むかしの風俗習慣についての雑学をやることをすすめたい。そのほうが人間や事件の裏づけ肉づけができると思う。」
水上勉 0  
五木寛之 3 「これまでの実績と安定感からは深田、古川の両氏をあげるべきだろう。」
源氏鶏太 7 「好短篇であるが、今一つ盛り上りに欠けていて、過去に候補になった何篇かの長篇小説に比較すると落ちる。しかし、力量からいっても、氏は、直木賞を取ってもおかしくない。」
城山三郎 0  
今日出海 0  
選評出典:『オール讀物』昭和56年/1981年4月号
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文量
短篇
章立て
なし
時代設定 場所設定
江戸後期[文化年間]  江戸
登場人物
郡司八平(小倉藩士、背四尺の剣豪、小笠原流礼法の達人)
小笠原伊予守忠固(小倉藩主)
小笠原出雲(小倉藩家老)
青山下野守忠裕(老中)
綾乃(銭湯「松葉湯」の娘、青山家の奉公人)




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とうこんき
刀痕記」(『オール讀物』昭和55年/1980年7月号)
書誌
>>昭和56年/1981年3月・文藝春秋刊『野山獄相聞抄』所収
>>昭和56年/1981年6月・東京文芸社刊『代表作時代小説 昭和56年/1981年度』所収
>>昭和61年/1986年7月・文藝春秋/文春文庫『吉田松陰の恋』所収
>>平成11年/1999年4月・光風社出版/光風社文庫、成美堂発売『血汐花に涙降る 新選代表作時代小説』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳 9 「娯楽雑誌の小説として、危な気のない好短篇である。」「あえて難癖をつけるならば、(引用者中略)巧緻に過ぎて新味が薄れ、直木賞受賞作としてのハナと重量に乏しいというところだろうか。」
阿川弘之 0  
村上元三 8 「「きらめき侍」より、同じ作者の「刀痕記」のほうを買うが、この作者には史料を追いかけるだけでなく、むかしの風俗習慣についての雑学をやることをすすめたい。そのほうが人間や事件の裏づけ肉づけができると思う。」
水上勉 0  
五木寛之 3 「これまでの実績と安定感からは深田、古川の両氏をあげるべきだろう。」
源氏鶏太 7 「好短篇であるが、今一つ盛り上りに欠けていて、過去に候補になった何篇かの長篇小説に比較すると落ちる。しかし、力量からいっても、氏は、直木賞を取ってもおかしくない。」
城山三郎 0  
今日出海 0  
選評出典:『オール讀物』昭和56年/1981年4月号
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文量
短篇
章立て
「一」〜「九」
時代設定 場所設定
明治初期〜[江戸幕末]  山口県〜東京
登場人物
児玉健蔵(宮内省の役人、元・萩藩急鋒隊士)
中井栄次郎(萩藩急鋒隊士、幕末に処刑)
中井道子(栄次郎の許嫁、のち遊女)
井上聞多(萩藩の急進論者、のち馨と改名し政府の元勲)




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あんさつ もり
暗殺の 森』(昭和56年/1981年11月・講談社刊)
書誌
>>昭和60年/1985年11月・講談社/講談社文庫『暗殺の森』
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎 7 「一本調子な小説ではなく、怨念を二重にだぶらせて進行させ、構成にも工夫があるように思われたが、それだけに、いまひとつすっきりしない仕立て上りになったことが惜しまれる。」
池波正太郎 0  
水上勉 0  
源氏鶏太 7 「よく調べて書いてあるが、その描き方がすこし雑然としていて、途中から煩わしくなって来た。古川氏の過去の候補作品に比較してもやや落ちる。」
阿川弘之 0  
村上元三 14 「主人公の野見庄太郎がこれほど苦労をして取材をしたり、古文書を漁ってまとめた「中山忠光卿殺害顛末」が棺の中で灰になってしまった、となると、作者がこの一作の中で調べたことが、嘘になってしまう。」「高い広い視野から見てほしかった。」
山口瞳 6 「長過ぎるし、固い。小説にするには、もっと語り口や筋立てに工夫があってしかるべきではないか。」
五木寛之 8 「すでに直木賞など必要としない堂々たる一国一城の主である。既成作家としての安定した作風が、新人賞である直木賞にかえってそぐわない印象をあたえるあたりが、何度も惜しいところで受賞を逸する一因かもしれない。」
選評出典:『オール讀物』昭和57年/1982年4月号
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文量
長篇
章立て
「第一章 砂丘の墓標」「第二章 蛇蝎」「第三章 長府城下」「第四章 落日海岸」「第五章 悔恨の村」「第六章 墨魚の史書」
時代設定 場所設定
昭和10年代〜[江戸幕末]  下関〜田耕村
登場人物
野見庄太郎(馬関時事新聞社長)
吉村藤舟(郷土史家、野見庄の協力者)
中山忠光(天誅組主将、明治天皇の叔父、幕末に長府藩にて怪死)
恩地登美(忠光卿の妾)
堀川多三郎(やくざの親分)
吉村清享(明治末の人、中山神社神官)




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アット・ヌーン
正午位置』(昭和63年/1988年10月・文藝春秋刊)
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子 31 「杉本氏の次に推した。南の島のやるせない気分が全篇に充溢し、私は女だけれども、女でしくじった男の、呆然自失のあいまいな幸福感がわかる気がした。」「一票差で受賞を逸したのは惜しかったが、これはいい小説でしたよ、古川さん。」
黒岩重吾 31 「比較的好感を持ち、今でも未練を抱いている」「私は面白く読んだ。面白さという点では随一だった。」「残念なのは漁業会社の出張所所長の勝呂の人物像が中途半端なことだ。(引用者中略)勝呂を書き込まないと、読者はこの面白い小説をもの足りない思いで読了せねばならない。好きな作品だけに惜しい。」
陳舜臣 14 「土地のもつ魔力のようなものが、風景描写ではなく、人物描写によって、うまくにじみ出ている。ホテルの主人、手伝いの女、娼婦など、いずれも土地に根をもつ濃密な人間性が、半透明な主人公に蔽いかぶさって、ともどもに存在感をあざやかにしている。受賞にいたらなかったのは残念である。」
村上元三 21 「どうもぼく(原文傍点)という主人公に一貫性がないので、ついて行けなかった。四季のない、こういう暑い島に住むと、こうなる、と納得させるものがほしかった。女や金にだらしのない男を書いても、それはそれなりに同感できるものがあるべきだろう。」
藤沢周平 16 「この小説では島の倦怠感というものが眼目で、そこのところがうまく描かれていれば成功という作品ではないかという気がしたが、それには言葉だけでなく、(引用者中略)島の日常が描かれていなければ、アンニュイという言葉が持つ気分はとらえにくいのではないかという点で、私はこの作品に不満が残った。」
山口瞳 0  
平岩弓枝 24 「面白く読んだ。殊に勝呂という外国駐在の日本人がよく描けていると思った。」「日本の律儀すぎる社会構造の中で息苦しくなっていた主人公が、生きても死んでも関係ないような島の雰囲気の中で、スペイン系の女に半分欺され、半分溺れたような関係になって今様浦島太郎で日を送るのも可笑しかった。」「これは私小説風にもっとねばっこく描いてもよかったのではないかと思った。」
井上ひさし 15 「「ことば」の力によってその風土をどう捉えるかという冒険が演じられていた。そしてみごとにことばにされた光と風と波。」「「とにかく読み手を楽しませなければならぬ」という苛酷な条件の下で試みられた(引用者中略)冒険や実験に評者はまず脱帽し低頭する。」
五木寛之 8 「すでに一家をなした作家の仕事として、安定した長篇である。これを強く推さなかったのは、直木賞はやはり新人の賞であるべきだ、という私の思いこみのせいにほかならない。」
渡辺淳一 9 「全体に陰影が淡すぎて、隔靴掻痒の感をまぬがれない。この作者はもう少しいいものを、書ける力をもった人である。」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年3月号
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文量
長篇
章立て
「第一章 北回帰線の鴎」「第二章 火山島の日々」「第三章 正午位置」
時代設定 場所設定
[同時代]  アフリカ大陸沖〜カナリア諸島など
登場人物
ぼく(語り手、和久本、新聞記者)
勝呂真一(東洋漁業ラスパルマス出張所員)
ジョセフィーナ(カナリア諸島の娼婦)
神西幸吉(青森出身の労働者、帰国船でぼくと相室)




直木賞 101回候補  一覧へ

まぼろし
幻のザビーネ』(平成1年/1989年5月・文藝春秋刊)
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣 9 「贅肉のない文章で独特のムードを醸し出した作品である。」「このような良質の中篇が、日本のエンターテインメントに欠けているのではあるまいか。読んでいてふとシムノンを連想した。」
黒岩重吾 15 「受賞圏にあると考え、選考会に出席した。」「作者の感性の若さに感嘆した。小説もなかなか面白い。」「意外に点が入らなかったが、描写が単調に過ぎたことも一因かもしれない。」
山口瞳 10 「文章に安定感があって格調も高い。しかし、愛し続けてきたペンフレンドが訪ねてみると娼婦になっていたというのは、いかにも唐突で、これでは因果物になってしまう。むろん、これは古川さんのベストではない。残念だった。」
田辺聖子 18 「前回の「正午位置」よりまとまっていてよいと思った。ことに冒頭、ハンブルクでの主人公の追いつめられた気持、犯罪のにおいのする不安感がよく描かれており、興をそそる導入部である。」「現代小説の書き手としても第一級ではないか、作品の底に流れる閑雅にして古典的な、悠々たるロマンチシズムを私は楽しんだ。」
藤沢周平 7 「ヘルダーリンの詩を使った構成に詩情があったが、もう一方の殺人容疑が被害者の妻の思いつきで簡単に解けるといったあたりの作りが、安易に思われた。」
五木寛之 0  
村上元三 19 「この作品の一ばんの欠点は、ザビーネというペンフレンドを最後に登場させたことだと思う。アフリカ漁業とザビーネと、二つの主題に割れているし、ザビーネ・フランケを出すのなら、映画でいうロングショットのように、顔立ちはぼやかして、読者の眼から遠ざけてほしかった。」
平岩弓枝 9 「商社員である主人公の生き方と、ザビーネに対する思いを結ぶものが鮮明でなかったので、テーマが割れてしまったようで惜しい。この作家の作品が持つ独特の雰囲気が私は好きなので、とにかく、残念である。」
渡辺淳一 12 「人物も事件もつくられすぎて薄手のものになってしまった。男女の小説は、なによりも実感で書くべきもので、頭で描きすぎると上すべりになり、甘くなる。とくに現代の男女の恋愛は、すべての人々が体験しているだけに、リアリティをもって読者を説得させるのは難しい。」
井上ひさし 7 「国境を越えたラブロマンスを大人の観賞に耐えるものに練度高く練り上げた」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年9月号
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文量
長篇
章立て
「I」〜「V」
時代設定 場所設定
[同時代]  ドイツ・ハンブルク〜グラン・カナリア島周辺
登場人物
香川真佐男(サラリーマン)
ザビーネ・フランケ(香川の昔のペンパル)
村木哲二(アフリカ営業所長、香川の同期入社)
塩沢孝夫(一匹狼の商売人)
フォッセン(ホテルの老ボーイ、元軍人)
村木多賀子(村木の妻)




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ひょうはくしゃ
漂泊者のアリア』(平成2年/1990年10月・文藝春秋刊)
書誌
>>初出『山口新聞』平成1年/1989年9月1日〜平成2年/1990年1月31日
>>平成5年/1993年5月・文藝春秋/文春文庫『漂泊者のアリア』
>>平成6年/1994年12月・埼玉福祉会/大活字本シリーズ『漂泊者のアリア』(上)(下)
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一 24 「今回のはまさしく手応えがあった。」「読みすすむうちに主人公に惹かれ、頁を追うのが急がされたのは久し振りである。」「瑕瑾をこえて、さまざまな屈折を経て成長した義江という人物が鮮やかに浮かび上り、しかもその主人公を見る作者の目のあたたかさがよく伝わってくる。」
平岩弓枝 19 「登場人物の描写が秀れていて感銘を受けました。」「一人の人間の人生の怖しさ、面白さ、哀しさを描き切った古川さんの力量に感動しています。」
陳舜臣 33 「フィクションをまじえないという原則をつらぬき、藤原義江にまつわる大量の資料をみごとに処理している。」「作者の視線のあたたかさがかんじられる。伝記小説には、よくべったりと寄りかかった姿勢のものがあるが、この作品は主人公をつきはなしている。(引用者中略)その適当な間隔に好意がもてた。」
井上ひさし 33 「藤原義江が人生の転機にさしかかるたびに現われる善意の人びとを入念に描くことで、作者は「人が人を創る」という人生の真実の一つを読者に分かち与えることにみごとに成功した。」「また、読後の読者は「人生とはものさびしいものだ」という感想を抱かれるかもしれない。この一種の哀感は、作者の年輪が自然に紡ぎ出したものにちがいない。」
田辺聖子 14 「抑制の利いたそっけないほどの文体が、かえって波乱に満ちた型やぶりの芸術家の生涯を描き出すのに功あった。」「作者の目は冷静だが、暖い。志高き小説と思った。ほとんど満票に近かった。」
五木寛之 23 「今回の候補作のなかでは、(引用者中略)最も安定した作家的力量を発揮されていた。」「ただ、直木賞はあくまで新人賞であるという私の固定観念が、この作品を無条件で推すことをためらわせるところがあったのも事実である。」「多少の躊躇はあったが、全選考委員が一致しての評価であれば、異論のあろうはずがない。」
黒岩重吾 38 「私が最も惹かれたのは、古川薫氏の「漂泊者のアリア」である。」「藤原義江を描く作者の眼光は鋭く、また慈愛に満ちている。」「淡々と描きながらも、主人公の人生が重くのしかかって来るのは、作者の才能に年輪が加わったせいではないか。」
山口瞳 47 「抜きん出ていて一歩も二歩もリードしている。」「いつもの力みや文学臭が消えて、端正で、いい味の文章になっている。」「下関の出てくる所、九州の田舎町の描写が哀れ深くていい。」「古川さんが純粋にもっといいものを書きたいという願いを何十年も保ち続けたことに、ただただ頭が下る思いだ。」
藤沢周平 26 「新聞小説のせいか編年体ふうに書きいそいだ印象があり、また重要な個所でやや突っこみ不足を感じさせるところもあって、私はそれについては不満を述べたが、しかし総体として眺めれば、この作家の安定した筆力は候補作の中で頭ひとつ抜け出ていた。特に孤独な境涯に落ちる晩年の描写が、伝説的なテナー藤原義江の孤影を陰影深く彫り上げて、作者の本来具えている実力を示していた。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年3月号
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文量
長篇
章立て
「第一章 流離」「第二章 ミラノの空」「第三章 ナポリ湾の夕陽」
時代設定 場所設定
明治末期〜昭和51年/1976年  下関〜東京〜ヨーロッパなど
登場人物
藤原義江(オペラ歌手)
ネイル・ブロディー・リード(イギリスの商人、義江の父親)
坂田キク(芸者、義江の母親)
安藤文子(プリマ・ドンナ、義江の子供を出産)
松永あき子(元医学博士の妻、義江と結婚、のち離婚)




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