直木賞のすべて
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第103回

=受賞者=
泡坂妻夫

=候補者=
高橋義夫
志水辰夫
樋口有介
清水義範


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Last Update[H21]2009/2/4

泡坂妻夫
Awasaka Tsumao
生没年月日【注】 昭和8年/1933年5月9日〜平成21年/2009年2月3日
受賞年齢 57歳2ヵ月
経歴 本名=厚川昌男。東京生まれ。九段高校卒。
受賞歴 第2回石田天海賞(昭和44年/1969年)厚川昌男名義
第1回幻影城新人賞佳作(昭和50年/1975年)「DL2号機事件」
第31回日本推理作家協会賞[長編部門](昭和53年/1978年)『乱れからくり』
第9回角川小説賞(昭和57年/1982年)『喜劇悲奇劇』
第16回泉鏡花文学賞(昭和63年/1988年)『折鶴』
処女作 「DL2号機事件」(『幻影城』昭和51年/1976年)
サイト内リンク 付録-吉川英治文学新人賞受賞作・候補作一覧(第2回)
付録-山本周五郎賞受賞作・候補作一覧(第3回)
小研究-記録(高齢受賞)
小研究-記録(候補回数)
小研究-ミステリーと直木賞
直木賞受賞作全作読破への道Part2
リンク集
子サイト
「余聞と余分」内
関連記事
5件/最新は平成20年/2008年7月20日記事(このページの下部にリンクあり)
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直木賞 79回候補  一覧へ

みだ
乱れからくり』
(昭和52年/1977年12月・幻影城/幻影城ノベルス)
書誌
>>昭和54年/1979年4月・角川書店/角川文庫『乱れからくり』
>>昭和63年/1988年2月・双葉社/双葉文庫『乱れからくり』
>>平成1年/1989年9月・双葉社/双葉文庫『乱れからくり』[新訂]
>>平成5年/1993年9月・東京創元社/創元推理文庫『乱れからくり』
>>平成8年/1996年10月・角川書店/角川文庫『乱れからくり』[改版]
>>平成9年/1997年11月・双葉社/双葉文庫 日本推理作家協会賞受賞作全集33『乱れからくり』
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
水上勉 0  
村上元三 6 「からくりの説明のところだけが面白かった。なまじ推理仕立てなどにしないで、この人が真向から大野弁吉を書いたら、きっと面白いだろうと思う。」
司馬遼太郎 9 「宗教的幻想がほろびかけて、しかも科学への信仰がまだ十分に力を得ていない時代に奇術が華麗な分野を占めた。「探偵小説」と銘打ったこの作品にもそういう妖しさが感じられる。」
城山三郎 5 「時間的なひろがりもあり、徹底してからくりを使う意欲作だが、いまひとつすっきりした仕上りになるとよかった。」
川口松太郎 0  
五木寛之 4 「これからの作家だろう。」「「幻影城」の連載に注目したい。」
源氏鶏太 2 「決して悪くなかった」
今日出海 0  
選評出典:『オール讀物』昭和53年/1978年10月号
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文量
長篇
章立て
「1 かたかた鳥」「2 スペイスレース」「3 はずみ車」「4 ドーナッツ時計」「5 八幡起上り」「6 ビスクドール」「7 熊んべ」「8 万華鏡」「9 逆立人形」「10 米喰い鼠」「11 斬れずの馬」「12 からくり迷路」「13 ねじ屋敷」「14 眠り人形」「15 ずんぶりこ」「16 魔童女」「17 からくり身上」「18 笑い布袋」
時代設定 場所設定
[同時代]  東京近郊〜伊豆
登場人物
宇内舞子(宇内経済研究会社長)
勝敏夫(宇内経済研究会の新入社員)
馬割作蔵(玩具商「鶴寿堂」創立者)
馬割蓬堂(作蔵の子、「ねじ屋敷」建設者)
馬割鉄馬(蓬堂の孫、ひまわり工芸社長)
馬割朋浩(ひまわり工芸製作部長、現実家)
馬割宗児(ひまわり工芸営業部長、からくり玩具蒐集家)
馬割真棹(朋浩の妻)
馬割香尾里(宗児の妹、画業)
狐沢(県警本部捜査一課刑事)





はなよめ
花嫁のさけび』(昭和55年/1980年1月・講談社刊)
書誌
>>昭和58年/1983年8月・講談社/講談社文庫『花嫁のさけび』
>>平成11年/1999年7月・角川春樹事務所/ハルキ文庫『花嫁のさけび』
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他文学賞 吉川英治文学新人賞 2回候補 一覧へ
選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 4 「極端な人工性に好意をもった。これは大逆転の連続する『レベッカ』だが、惜しくも、前半ではとくに、ヒロインの心理の描写が放擲されすぎた。」
尾崎秀樹 8 「私は最終的に(引用者中略・注:「花嫁のさけび」「絃の聖域」「闇と影の百年戦争」の)三篇の中から選びたいと考えた。」「泡坂の場合はつくられた魅力とひたむきさを買いたかった」
佐野洋 7 「作者が一つの難題に挑戦した、という意味でその意欲は評価したい。しかし、読み終って、アンフェアーだという感じは拭い去ることができず、結局は失敗作だったのではないか。」
野坂昭如 6 「いかにトリック重視といっても、いくらかは人間らしいふるまい、会話がなけりゃ、小説にもお話にも無理。」「ぼくは泡坂氏の愛読者だが、この作品はいただけぬ。」
半村良 0  
選評出典:『群像』昭和56年/1981年5月号
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直木賞 84回候補  一覧へ

かざんほうせつず きつね めん
椛山訪雪図」「 狐の 面」
(昭和55年/1980年11月・講談社刊『煙の殺意』より)
書誌
>>昭和59年/1984年10月・講談社/講談社文庫『煙の殺意』所収
>>平成13年/2001年11月・東京創元社/創元推理文庫『煙の殺意』所収
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収録作品の書誌
椛山訪雪図
>>初出『幻影城』昭和53年/1978年1月増刊号
>>平成7年/1995年7月・廣済堂出版刊『日本ミステリーの一世紀(下)』所収
>>平成16年/2004年2月・文藝春秋刊『推理作家になりたくて:マイベストミステリー第5巻 鍵』所収
狐の面
>>初出『オール讀物』昭和54年/1979年3月号
>>昭和55年/1980年10月・光文社/カッパ・ノベルス『現代ベストミステリー2 事件記録帳』所収
>>平成3年/1991年4月・光文社/光文社文庫『日本ベストミステリー選集11 悪意のプリズム』所収
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他の収録作品
「赤の追想」(『幻影城』昭和51年/1976年7月号)
「紳士の園」(『オール讀物』昭和53年/1978年9月号)
「閏の花嫁」(『小説現代』昭和54年/1979年1月号)
「煙の殺意」(『別冊文藝春秋』昭和53年冬号[昭和52年/1977年12月])
「歯と胴」(『野性時代』昭和54年/1979年3月号)
「開橋式次第」(『小説現代』昭和54年/1979年7月号)
 
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳 8 「巧妙にして緻密」「あえて難癖をつけるならば、(引用者中略)巧緻に過ぎて新味が薄れ、直木賞受賞作としてのハナと重量に乏しいというところだろうか。」
阿川弘之 0  
村上元三 6 「推理小説の読者ということについては、人後に落ちないつもりだが、(引用者中略)二度読み返してみたものの、推す気にはなれなかった。」
水上勉 0  
五木寛之 0  
源氏鶏太 6 「二作のうち、「椛山訪雪図」は、しゃれた作品であり、最後のどんでん返しもよく利いているが、ぜんたいとしてやや説得力が不足しているように思われた。」
城山三郎 0  
今日出海 0  
選評出典:『オール讀物』昭和56年/1981年4月号
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文量
短篇2篇
椛山訪雪図
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]〜十数年前  ある街
登場人物
加田十冬(画家)
別腸(落魄した料亭主人、美術品蒐集家)
大村樹也(別腸の秘書)
かずら(別腸のお手伝い、殺人被害者)
狐の面
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]〜三十年前  北国の鉱山街
登場人物
わし(語り手、澄泉寺住職)
安宅蓬同(桂寿院住職)
飯村松吉(坑夫)
飯村きぬ(松吉の妻、狐に取り憑かれる)




直木賞 93回候補  一覧へ
『ゆきなだれ』(昭和60年/1985年2月・文藝春秋刊)
書誌
>>昭和63年/1988年4月・文藝春秋/文春文庫『ゆきなだれ』
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収録作品の書誌
ゆきなだれ
>>初出『別冊文藝春秋』164号[昭和58年/1983年6月]
厚化粧
>>初出『小説宝石』昭和56年/1981年11月号
迷路の出口
>>初出『週刊小説』昭和57年/1982年3月12日号
雛の弔い
>>初出『小説宝石』昭和57年/1982年9月号
闘柑
>>初出『週刊小説』昭和57年/1982年12月31日号
アトリエの情事
>>初出『週刊小説』昭和58年/1983年12月16日号
同行者
>>初出『月刊カドカワ』昭和59年/1984年7月号
鳴神
>>初出『別冊文藝春秋』169号[昭和59年/1984年9月]
>>昭和60年/1985年5月・講談社刊『推理小説代表作選集1985』所収
>>平成2年/1990年4月・講談社/講談社文庫『ミステリー傑作選20 死者たちは眠らない』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 0  
山口瞳 0  
村上元三 5 「八篇は、どれも手がこんでいてうまい。しかし、蓋をあけてみると、わたし一人が買っていた形になった。」
井上ひさし 16 「この型になったら絶対に強いという自信が作者にあるのかもしれない。ただ、この型に持ち込もうとするために、人間が道具扱いされがちになるという瑕も見えた。」
水上勉 0  
五木寛之 15 「標題になっている「ゆきなだれ」よりも、「鳴神」に不思議な魅力を感じた。」「ただ私たちの小説風土では、このような技巧を凝らした熟した美の世界は、とかく軽んじられやすいという不幸があるようだ。」
黒岩重吾 0  
渡辺淳一 0  
選評出典:『オール讀物』昭和60年/1985年10月号
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文量
短篇集
ゆきなだれ
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京〜福井
登場人物
坂井宮男(和菓子店主)
清村雪子(料理屋の女将、もと和菓子店の従業員)
厚化粧
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]〜30年前  東京
登場人物
私(語り手、越智満夫、画家)
有馬正一郎(詐欺師)
迷路の出口
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京
登場人物
唐机貞夫(写真家)
しず子(謎の女性、唐机と1年に1回逢瀬)
雛の弔い
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]〜太平洋戦争戦中  東京〜竜ヶ崎
登場人物
黒本梅次郎(鮨屋)
北村不言堂(浪花節語り、黒本の昔の師匠)
駒(不言堂の妻、曲師、戦時中に死亡)
闘柑
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  [東京]〜修善寺
登場人物
哲三(果物屋店主)
朴(とんかつ屋)
棟子(哲三の妻の友達、富豪の妻)
アトリエの情事
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]〜35年前  東京〜静岡
登場人物
私(語り手、信夫、かつて安積家の書生)
安積京子(安積家の後妻、絵のモデル)
同行者
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京〜成田空港
登場人物
田崎健二(植木屋の従業員)
並木江都子(田崎の同窓生、もと劇団員)
真柿茂夫(田崎たちの先輩、もと劇団主宰、結婚詐欺師)
鳴神
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]〜40年前  東京〜埼玉県橋田
登場人物
私(語り手、真岡謙一)
香山妙子(戦時中に疎開先で私と同居、総身に彫物)




直木賞 95回候補  一覧へ

しのびやまこいうた
忍火山恋唄」
(『別冊文藝春秋』175号[昭和61年/1986年4月])
書誌
>>昭和63年/1988年3月・文藝春秋刊『折鶴』所収
>>平成3年/1991年1月・文藝春秋/文春文庫『折鶴』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 14 「なかなかよかった。」「あやうく気障りになりかねない芸道物を、しっとりとした情感で描き、クライマックスの三味線の幽霊流し、ケレン弾きのトリックで終ったなら、私はもっと強く、この小説を推したろう。だが、その後で、真犯人らしき男(原文傍点)が捕まるという〔どんでん返し〕によって、たちまちに興が殺がれた。」
陳舜臣 17 「すみずみまで行き届いた作品である。」「現実と非現実のあいだを、文章がやや古風に渡り歩き、一種のムードを醸し出し、それによって一層あざやかな現実を洗い出すという、いつもながらの泡坂節に、ファンである私は堪能した。」「二作受賞の声もあったが、泡坂・逢坂両氏に票が割れ、けっきょく見送られたのは惜しかった。」
山口瞳 19 「この作者は、偏執狂の男女を追いかけるのを得意とするが、この作品で、遂に壁を越えて自分の世界を構築した。特に女を描くのが巧い。久しぶりに情緒纏綿という作品に接して小説の面白さを堪能した。」「ただし、いつも思うのだが、トリックが弱く必然性に乏しい。」「泡坂さんも、もう推理仕立てをやめてしまったほうがいい。」
藤沢周平 14 「余韻嫋嫋といった作品になっている。ただ私は冒頭の導入部と結末の推理小説的処理、つまりこの小説の推理仕立ての趣向そのものが、せっかくの情感に水をさした印象をぬぐえなかった。」
五木寛之 12 「魅力のある小説だった。あえて、ミステリ−に仕立てあげずとも、近頃めずらしい情感のある佳作として、大人が読むに耐える小説の一つになったに違いない。」「ひさびさに小説を読むたのしさをあじわうことができた。」
黒岩重吾 15 「優れた作品である。氏は登場人物を彩る人生の哀歓を優しい大人の眼で描いている。この小説の情景はまさしく新内そのものだ。」「私は酔わされたが、最後に唐突に真犯人が出現したことによって妖しい酔いから現実に戻された。惜しい、と歯軋りした。」
村上元三 6 「未練があった。人間もよく描けているし、文章も素直で好感が持てた。ただ、この作者は、どうしてこう作品を推理小説に仕立ててしまうのだろうか。」
渡辺淳一 19 「暗く切ない基調音が底に流れ、それが読むうちに次第に心に沁みてくる、といったたぐいの小説である。」「惜しむらくは、最後に突然、推理の解決的な理詰めの話がでてきて、しらけてしまった。」「やや傾向の似た「恋紅」と競ったことも不運であったが、ぜひもう一作、読ませてもらいたいものである。」
井上ひさし 29 「新内を扱いながら、じつは作品全体が新内そのもののように仕上ったという巧緻をきわめた作品である。」「いまだに筆者は三作(引用者注:「恋紅」「忍火山恋唄」「百舌の叫ぶ夜」)に甲乙をつけられないでいる。」
選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年10月号
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文量
中篇
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  伊勢崎〜石川・忍火山温泉〜金沢
登場人物
脇田(模様師、素人の新内語り)
彩子(小唄の師匠)
都外太夫(脇田の新内の師匠)
雪太夫(旅館「黄鶴楼」の息子、新内狂いで勘当)
洋次郎(「黄鶴楼」の跡取り婿、殺人被害者)




直木賞 98回候補  一覧へ

おりづる
折鶴」
(『別冊文藝春秋』181号[昭和62年/1987年10月])
書誌
>>昭和63年/1988年3月・文藝春秋刊『折鶴』所収
>>平成3年/1991年1月・文藝春秋/文春文庫『折鶴』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳 22 「前半は面白いが後半が腰くだけになっている。」「いつもの情緒纏綿たる味わいに乏しい。」「私は泡坂さんに直木賞を貰っていただきたい(過去の実績からして)と思っているが、この作品でということになると首を傾げざるをえないのである。」
黒岩重吾 10 「今回の題からもおおいに期待していただけにがっかりしてしまった。彼女のを何故俗物的な男性と一緒にさせなければならなかったのか。それに妖しさに作為が目立ったことも読後感をつまらなくした。」
村上元三 8 「この作品独自の世界だけで短くまとめてほしかったが、作者の推理好みまで云々するのは失礼かも知れない。縫箔を固守する職人は、それだけで立派な存在価値がある、と思うのだが。」
陳舜臣 10 「歳月の経過をじゅうぶんに埋め尽したかんじがあり、ミステリーの要素もわずらわしくないていどに組み入れられ、私には好ましい作品におもえた。たそがれへの愛惜の情とでもいうべきものを、読者の胸に宿らせる力をもっている。」
藤沢周平 19 「変貌する和服業界を背景に、推理色をからめて男女の葛藤を描く、なかなか雰囲気のある作品だった。」「なぜ情事の場所で、ただの偽名でなく田毎の名前を使うのか、核心にあたるその一点に説得力のある説明がなされていないので不成功に終っている。」
平岩弓枝 11 「好きな作品でした。」「職人の一つの世界がよく描けていますし、人間像もはっきりしています。強いていえば、心中する相手の男性の描写が足りなかったために、心中そのものがはぐらかされたような気持になる点かも知れません。」
井上ひさし 14 「主人公の撒いた四枚の名刺の行方は如何という謎が縫い込まれていた。別にいえば、この謎を原動力に物語が発進する仕立になっていたのであるが、謎は結末を拘束するまでには至らなかった。途中で腰がくだけてしまったとの印象を受けたのである。」
田辺聖子 12 「まことに快調の出だしであったが、後半、ア、ア、という間にトーンが転調した。主人公の田毎は一貫していい男だが、はじめ厭な男として出現した横倉が、終りではイイ役を振られているのはフェアではない気がする。」
渡辺淳一 12 「期待して読んだが、前作に較べると粘りが抜けたようである。」「鶴子と潤子の二人の女性が見えてこないし、推理の謎解きの部分になると、前回同様、軽くなる。なによりも、この作者独特の翳りある嫋々たる小説空間が薄れたところが残念であった。」
五木寛之 3 「安定した技巧で、すでに独自の作風を確立した作家である」
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年4月号
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文量
中篇
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京
登場人物
田毎敏(縫箔屋)
若月鶴子(若月服飾の女主人、田毎の昔の恋人)
三浦潤子(若月服飾の従業員、のち田毎に弟子入り)
若月隆司(若月服飾の社長、鶴子の夫)
横倉久成(装芸の加工部長)




直木賞 103受賞  一覧へ

かげききょう
蔭桔梗』(平成2年/1990年2月・新潮社刊)
書誌
>>平成5年/1993年2月・新潮社/新潮文庫『蔭桔梗』
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収録作品の書誌
増山雁金
>>初出『小説新潮』昭和63年/1988年8月号
>>『オール讀物』平成2年/1990年9月号
遺影
>>初出『野性時代』平成1年/1989年10月号
>>『オール讀物』平成2年/1990年9月号
絹針
>>初出『小説新潮』昭和61年/1986年4月号
>>初出『小説新潮』昭和60年/1985年10月号
>>『オール讀物』平成2年/1990年9月号
蔭桔梗
>>初出『小説新潮』昭和62年/1987年10月号
>>『オール讀物』平成2年/1990年9月号
弱竹さんの字
>>初出『小説新潮』平成1年/1989年1月増刊号
十一月五日
>>初出『小説新潮』昭和62年/1987年2月号
>>『オール讀物』平成2年/1990年9月号
竜田川
>>初出『小説すばる』昭和63年/1988年8月臨時増刊号
くれまどう
>>初出『週刊小説』昭和60年/1985年12月20日号
>>昭和61年/1986年5月・講談社刊『推理小説代表作選集1986』所収
>>平成3年/1991年4月・講談社/講談社文庫『ミステリー傑作選21 殺人はお好き?』所収
色揚げ
>>初出『小説新潮』昭和61年/1986年10月号
校舎惜別
>>初出『小説新潮』平成1年/1989年9月号
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣 37 「昭和時代の東京のすばらしい記録になっている」「いずれも短篇だが、さまざまな工夫をこらして、それぞれの味を出している。時間のいれかえが、読んでいて、いささかわずらわしい場面もあるが、短篇のことだから、これも工夫の一種であろう。その人にしか書けないという分野をもつのは、作家として大きなメリットである。」
平岩弓枝 11 「職人芸とか下町情緒とかを小道具、或いは背景にして、泡坂さんの描き出した人間達が現代に呼吸しているのが快かった。」「当然の受賞である。」
藤沢周平 37 「完成度の高い短篇集で、ほかの候補作を読んだあとでこの作品を読むと、よくもわるくも大人の小説を読んでいる安心感があった。」「べつにおもしろおかしく書いているわけではないのに、一人一人の人間がおもしろく、技術のあれこれがみなおもしろかった。描写ということを知っている文章と、そこに登場する一人一人の人生が的確に描き出されているからだろうと思う。」
黒岩重吾 52 「今回の候補作品の中に、もし泡坂氏の作品が入っていなかったなら、私はやり切れないほど重い気持で選考会に出席したに違いない。」「氏の作品の魅力は精緻を凝らした艶やかな絹の幕を透し、現実を忘れ大人の夢を観させてくれるところにある。」
山口瞳 18 「私は泡坂さんのファンであり彼を尊敬する者であって、(引用者中略)泡坂さんでなければ書けない台詞に接するとゾクゾクするという質の男だ。特に以前に『忍火山恋唄』という名作を落してしまったのが心の傷のように残っていたので、今回の受賞はとても嬉しい。」
渡辺淳一 39 「題材がいずれも似ていて、短篇集としてはいささか退屈な感じを否めない。」「いくつかの作品においてラストの書き込みが浅く、読者を素直にある充足感に導かないもどかしさが残る。」「しかしこれだけ独自の小説世界をもち、それを長年追い続けていることは貴重なことである。」「受賞に、反対する気はなかった。」
五木寛之 31 「直木賞を新人賞と考えている私の目には、泡坂さんはすでに直木賞を超えた堂々たる既成作家として映っていたので、選考会にのぞんで少々とまどうところがあったのも事実である。」「驚くほど簡単に泡坂さんの受賞がきまったのは、当然の結果だろうと思う。他の候補作との差は、歴然たるものがあった。」
田辺聖子 26 「悠々たる職人芸。」「心と手に、いい意味の遊びがある。短篇集のよさ、たのしさを満喫できた。」「読後、鼻腔の奥に妖異といっていいほどの絢爛たる薫りをかいだ。この手の「大人のよみもの」を待望する。」
井上ひさし 10 「名人芸の所産である。名人芸だけに、たまに凡百の読者を置き去りにして独走するところがある。そこに微かな不安もなくはなく、また、作者の恋愛観にも多少の不満はある。がしかし圧倒的な名人芸がそういった不安や不満を押し流してしまった。」
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年9月号
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 58 3点「小太刀の使い手といいますか、きちっと出来ていますね。」「とても好きな作家なんですが、この短篇集について言えば、各篇とも、ひっかけ方が弱いような気がするんです。」「今回は、どうも泡坂さんが大事にしている世界と、微妙なずれがあちこちで感じられるんですよ。」
田辺聖子 32 5点「とにかく、大人の読める小説ですね、これは。」「短篇というのは、日本の文壇ではいつも貶められて、長篇重視というか、鉄鋼業みたいな小説ばかり評価されるんですが、これ、充分、賞を差上げていいんじゃないかと思います。」
野坂昭如 41 5点「中の一篇、それぞれ独立させて読めば、つまり、小説雑誌の中に一篇だけ入っているとき読めば、どれも面白いと思うんです。」「いかにもおやりくださったという感じでね。しかし、全作品を通じてここまでだという印象がつよい。よく考えているけど、あげく印象が似通って。」
藤沢周平 36 5点「五を上げたいんだけれども、同工異曲、私もそこがひっかかりましてね。」「この作品集、いいなあ、名人芸だなあという、感心ばかり先走って、褒める言葉に困るんですよ。」「追随を許さない段階に到達したというか、泡坂さん独自の世界を完成したような気がします。」「むかしの泡坂さんの文章は、もっと癖がありましたね。それがこういう平明で味のある文章に変って来たということは、やはり注目すべきことではないでしょうか。」
山口瞳 41 3点「泡坂さんや伊集院さんといったタイプの作家は、ずしんとくるものを百枚ぐらい書いて、これでどうだと言ってくれないと、評価のしようがないんです。」「羨ましいんですよ、僕は。すごく好きなんです、泡坂さんの生き方が。作品としては、「簪」と「弱竹さんの字」と「十一月五日」、この三つがわりに好きですね。でも如何せん、これで受賞というのは無理でしょう。」
最終投票     1+1+2+3+3=10
選評出典:『小説新潮』平成2年/1990年7月号
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文量
短篇集
増山雁金
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京
登場人物
私(語り手、紋章上絵師、ミステリー作家)
内田屋(洗張屋)
馬屋(洗張屋、故人)
遺影
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  ある街
登場人物
牧子(石原の愛人、交通事故に遭遇)
石原健作(牧子の高校時代の同窓生、交通事故で死亡)
絹針
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京
登場人物
昭介(仕立屋)
渡瀬千鶴子(ひそかに昭介に恋をしていた幼馴染)
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]〜太平洋戦争戦中  東京〜竜ヶ崎
登場人物
私(語り手、紋章上絵師)
梅さん(焼鳥屋の青年)
光江(花屋の娘、梅さんの恋人)
蔭桔梗
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京
登場人物
閣田章次(紋章上絵師)
山本賢子(きぬ本の誂長、章次の昔の恋人)
弱竹さんの字
章立て
なし
時代設定 場所設定
太平洋戦争戦後  千葉県船橋
登場人物
私(語り手、中学生)
弱竹さん(広告びら職人)
十一月五日
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京
登場人物
丹野(入歯の江戸っ子)
小田羅堂(丹野の義兄、彫刻家で文化功労者)
藤巻吉三郎(入歯の技工士、羅堂の昔のライバル)
竜田川
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京
登場人物
笹木利雄(浸抜屋)
くに子(自称・呉服屋の店員、利雄に近づく)
くれまどう
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  ある街
登場人物
小佐野(総務部課長)
星野千春(営業部社員)
静乃(小佐野の妻、文房具店長、乳癌患者)
色揚げ
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  東京〜春日部
登場人物
典子(呉服悉皆店「甲州屋」の娘)
安治(典子の夫、入婿)
芳雄(黒染屋、かつて「甲州屋」の職人)
校舎惜別
章立て
なし
時代設定 場所設定
[同時代]  ある街
登場人物
石塚(五洋中学の職員)
堀田茂樹(もぐりの中学生)
川島晧美(中学教師)




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