芥川賞のすべて・のようなもの
芥川賞のすべて・のようなもの

第93回

=候補者=
高橋睦郎
島田雅彦
海辺鷹彦
石和 鷹
佐藤泰志
李 起昇


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 昭和60年/1985年上半期
 (昭和60年/1985年7月18日決定発表/『文藝春秋』昭和60年/1985年9月号選評掲載)
選考委員  三浦哲郎 安岡章太郎 吉行淳之介 開高健 丸谷才一 中村光夫 遠藤周作
選評総行数  33 30 33 31 31 22 26
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
高橋睦郎 「見えない絵」 評言 3 0 0 0 0 0 0
島田雅彦 「僕は模造人間」 評言 2 0 0 0 0 2 0
海辺鷹彦 「黄色い斥候」 評言 8 5 12 0 15 6 3
石和鷹 「掌の護符」 評言 10 13 11 10 18 6 3
佐藤泰志 「オーバー・フェンス」 評言 6 0 0 0 0 0 0
李起昇 「ゼロはん」 評言 6 8 9 4 0 2 6
             
見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和60年/1985年9月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員三浦哲郎×各候補作  見方・注意点
けなげさと哀しさ 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高橋睦郎 全委員 3 「エキセントリックな交友記とでもいうべきだろう。珍しい話を聞いたと思った。」
島田雅彦 全委員 2 「島田雅彦氏のコラージュは、作者が面白がっているほどには面白くなかった。」
海辺鷹彦 全委員 8 「素直な初々しい作品で、好感を持った。この柔軟な感受性は捨てがたい。」「けれども、全体としてひ弱な印象が拭いがたい。そのひ弱さは、とりも直さず現在の自衛隊そのものの在り方の反映だとしても、作品としてはいま一歩の力強さが欲しかった。」
石和鷹 全委員 10 「打ちひしがれてはまた奮い立っておのれの家庭にのしかってくる〈目に見えぬ何ものかの意志〉に立ち向う家長の姿に、人間というもののけなげさと哀しさが滲み出ている。」「ただ、普通の病妻物にしたくないばかりに凝らした工夫が、結果的にわかりにくい個所を生じたのは不運であった。私自身はそこのところを無理なく読めたのでこれを推したが、わずかに及ばなかった。」
佐藤泰志 全委員 6 「「オーバー・フェンス」を凡作だと思ったのは、この人にはもっと優れた作品があるからである。今度の作品には珍しく文章の粗雑な個所が目についた。」
李起昇 全委員 6 「はっきりとしたモチーフを持った作品で、それなりのひたむきさと迫力がある。在日韓国人の心情は複雑で作者の言い分が多いのはわかるが、それにしても、これでは言葉が多すぎはしないか。」
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他の選考委員
安岡章太郎
吉行淳之介
開高健
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選考委員安岡章太郎×各候補作  見方・注意点
書く必然性 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高橋睦郎 全委員 0  
島田雅彦 全委員 0  
海辺鷹彦 全委員 5 「いかにも長過ぎるし、それでいて防衛大学生という特殊な学生の心情は、かならずしも良く描かれているとは言い難い。ただ、文章は柔軟で、感受性の好さを想わせるものがあり、次作を期待する。」
石和鷹 全委員 13 「出来栄えはともかく、書きたいものを持っていると思われる」「じつは私は、これを当選作にしてもいいかと思っていた。」「とにかく主題は明確で、描写力もあり、ちょっと小気味のいい短編小説であった。ただし、街で知り合った一人の青年を自分の娘にいたずらした痴漢であると断定するあたり、主人公の動揺した気分もさることながら、そのへんをもっと客観的に捉える第三者の眼が欲しかった。」
佐藤泰志 全委員 0  
李起昇 全委員 8 「出来栄えはともかく、書きたいものを持っていると思われる」「人物の設定にかなりギクシャクしたところがあり、話の進め方も強引過ぎて感心できなかったが、朝鮮人の内心の屈折や、高度経済成長下に孤立化して行く人間の有様など、かつての朝鮮人文学より一と廻り大きく主題を呈出していた。」
  「簡単に言って、現代の若手作家たちには書く意欲がなく、書く必然性を感じさせるものがない。」
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他の選考委員
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吉行淳之介
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選考委員吉行淳之介×各候補作  見方・注意点
感想 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高橋睦郎 全委員 0  
島田雅彦 全委員 0  
海辺鷹彦 全委員 12 「注目したが、とくにいいとおもったのは終りの十頁つまり全体の四分の一くらいに当る部分である。」「この部分は、作者の言いたいことも納得でき、なによりも文章がいい。ただし、反対意見に対抗するほどの情熱は持てなかったし、この人のものを読むのは初めてということもあって、大勢に従った。」
石和鷹 全委員 11 「痛切な作品であるが、その痛切さのために二つの弱点ができている。一つは、過剰な部分が文章にできた。」「もう一つは、主人公と作者とがまったく重なり合ってしまったために、作品にたいして十分の計算をおこなうゆとりが失われた。」「この作品は主人公の造形にもう一工夫あってしかるべきだが、そのためには作者が主人公をくぐり抜けてその外側に出ていることが必要である。」
佐藤泰志 全委員 0  
李起昇 全委員 9 「若々しい筆致に好感が持てた。しかし、こういう作品は在日韓国人問題を抜きにしては成立たないのは言うまでもないことで、そこのところが不十分、というか曖昧だ。」「在日韓国人は今は三世四世も多くなっている時代だから、当人自身に混乱が起っているのではないかとも考えてしまう。」
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選考委員開高健×各候補作  見方・注意点
終リ善ケレバ…… 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高橋睦郎 全委員 0  
島田雅彦 全委員 0  
海辺鷹彦 全委員 0  
石和鷹 全委員 10 「得点数がもっとも高かった」「何故書かれなければならなかったかが手につたわってくるのでありがたかった。」「“南無妙法蓮華経”という一語を書きつけて終っているが、その強烈さが全体の効果からすると浮いてしまって、作品を流してしまった。残念である。あちらこちらに、固有で、いいリアリティーがある作品なので、惜しまれてならない。」
佐藤泰志 全委員 0  
李起昇 全委員 4 「何故書かれなければならなかったかが手につたわってくるのでありがたかった。その初発の切実が最後まで一貫して走りぬいてくれるとよかったのだが、と惜しまれる。」
  「とくに傑出していい作品もないかわり、箸にも棒にもかからない駄作というものもない。ストーリーも発想もそれぞれ異なるけれど、差は僅差であり、微差であるように思われる。」「近頃はどういうものか、末尾の〆めがきいていない作品に、しばしば出会う。そのため今一歩というところで支持に迷いが出る。これが困る。」
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選考委員丸谷才一×各候補作  見方・注意点
不満を述べる 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高橋睦郎 全委員 0  
島田雅彦 全委員 0  
海辺鷹彦 全委員 15 「文章の筋がいい。」「当節の新人では珍しい美質の持主だと思った。」「しかし『黄色い斥候』は全体としてあまりにスケッチ的である。」「その結果われわれは、ある特殊な大学の学生生活についての報告を、別に親身な気持でではなく、他人事のようにして聞くことになった。」「芥川賞受賞作たるにはふさわしくない、と判断した。」
石和鷹 全委員 18 「見るからに古風で無器用な作柄だが、一種の素朴な力がある。その野性がところどころで巧みに抑制されていることに、わたしは好感を持った。」「しかしこの短篇小説は、後半の学生のあつかい方、というよりもむしろ学生に対する主人公の誤解のあつかい方に重大な欠点がある。主人公が、偶然に知り合った学生が犯人だと理不尽に誤解する逆上ぶりを、作者は冷静に見ていない。」「芥川賞受賞作たるにはふさわしくない、と判断した。」
佐藤泰志 全委員 0  
李起昇 全委員 0  
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選考委員中村光夫×各候補作  見方・注意点
選評 総行数22 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高橋睦郎 全委員 0  
島田雅彦 全委員 2 「(引用者注:「黄色い斥候」や「掌の護符」より)むしろ文学的に完成度の低い「ゼロはん」「僕は模造人間」に興味を感じました。」
海辺鷹彦 全委員 6 「切れば血の出るような描写にいたるところでぶつかります。」「(引用者注:しかし「掌の護符」の方が)よほど強い文学的感銘を与えると思われました。」
石和鷹 全委員 6 「妻の生命を癌で奪われる過程を描いたもので、(引用者注:「黄色い斥候」より)この方がよほど強い文学的感銘を与えると思われました。」「しかしこの種の材料は新鮮味に乏しく、積極的に推す気持になれませんでした。」
佐藤泰志 全委員 0  
李起昇 全委員 2 「(引用者注:「黄色い斥候」や「掌の護符」より)むしろ文学的に完成度の低い「ゼロはん」「僕は模造人間」に興味を感じました。」
  「今度の予選を通った作品は、力作が多いが、どうも作者の心から本当に流れでたと思われるような作品に乏しい。選者もいざとなると困るのではないか。」「こんなことを何かの序に云った人がいましたが、たしかそうだったと思います。」
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遠藤周作
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選考委員遠藤周作×各候補作  見方・注意点
なし、仕方なし。 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高橋睦郎 全委員 0  
島田雅彦 全委員 0  
海辺鷹彦 全委員 3 「私は「黄色い斥候」と「掌の護符」とがまだ佳作に入ると思ったが、いわゆる新人賞ならとも角、芥川賞に値するにはまだ一歩と感じ「受賞作なし」を主張した。」
石和鷹 全委員 3 「私は「黄色い斥候」と「掌の護符」とがまだ佳作に入ると思ったが、いわゆる新人賞ならとも角、芥川賞に値するにはまだ一歩と感じ「受賞作なし」を主張した。」
佐藤泰志 全委員 0  
李起昇 全委員 6 「群像の新人賞作品だったが、しかし芥川賞作品にはまだなれない。それはこの作品に芥川賞となるには私からみて幾つかの欠点があるからだ。そのことについての私見と感想を私は芥川賞選衡後、人を介して李氏にお伝えしたから、ここでは書かない。」
  「特にぬきんでた作品が一本もなく、そして他の作品の幾つかが同じ程度である時ほど選衡が困る時はない。今回がそういう状態だった。」「今度の作品のいずれもが我々をおびやかすものではなく、我々をして眼のさめるような思いをさせなかったのは確かである。」「残念だが、しかし、この結果でいいと思っている。芥川賞は無理に出す必要はないのだ。」
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他の選考委員
三浦哲郎
安岡章太郎
吉行淳之介
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丸谷才一
中村光夫
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高橋睦郎「見えない絵」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎 全候補 3 「エキセントリックな交友記とでもいうべきだろう。珍しい話を聞いたと思った。」
安岡章太郎 全候補 0  
吉行淳之介 全候補 0  
開高健 全候補 0  
丸谷才一 全候補 0  
中村光夫 全候補 0  
遠藤周作 全候補 0  
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他の候補作
島田雅彦 「僕は模造人間」
海辺鷹彦 「黄色い斥候」
石和鷹 「掌の護符」
佐藤泰志 「オーバー・フェンス」
李起昇 「ゼロはん」
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島田雅彦「僕は模造人間」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎 全候補 2 「島田雅彦氏のコラージュは、作者が面白がっているほどには面白くなかった。」
安岡章太郎 全候補 0  
吉行淳之介 全候補 0  
開高健 全候補 0  
丸谷才一 全候補 0  
中村光夫 全候補 2 「(引用者注:「黄色い斥候」や「掌の護符」より)むしろ文学的に完成度の低い「ゼロはん」「僕は模造人間」に興味を感じました。」
遠藤周作 全候補 0  
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他の候補作
高橋睦郎 「見えない絵」
海辺鷹彦 「黄色い斥候」
石和鷹 「掌の護符」
佐藤泰志 「オーバー・フェンス」
李起昇 「ゼロはん」
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海辺鷹彦「黄色い斥候」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎 全候補 8 「素直な初々しい作品で、好感を持った。この柔軟な感受性は捨てがたい。」「けれども、全体としてひ弱な印象が拭いがたい。そのひ弱さは、とりも直さず現在の自衛隊そのものの在り方の反映だとしても、作品としてはいま一歩の力強さが欲しかった。」
安岡章太郎 全候補 5 「いかにも長過ぎるし、それでいて防衛大学生という特殊な学生の心情は、かならずしも良く描かれているとは言い難い。ただ、文章は柔軟で、感受性の好さを想わせるものがあり、次作を期待する。」
吉行淳之介 全候補 12 「注目したが、とくにいいとおもったのは終りの十頁つまり全体の四分の一くらいに当る部分である。」「この部分は、作者の言いたいことも納得でき、なによりも文章がいい。ただし、反対意見に対抗するほどの情熱は持てなかったし、この人のものを読むのは初めてということもあって、大勢に従った。」
開高健 全候補 0  
丸谷才一 全候補 15 「文章の筋がいい。」「当節の新人では珍しい美質の持主だと思った。」「しかし『黄色い斥候』は全体としてあまりにスケッチ的である。」「その結果われわれは、ある特殊な大学の学生生活についての報告を、別に親身な気持でではなく、他人事のようにして聞くことになった。」「芥川賞受賞作たるにはふさわしくない、と判断した。」
中村光夫 全候補 6 「切れば血の出るような描写にいたるところでぶつかります。」「(引用者注:しかし「掌の護符」の方が)よほど強い文学的感銘を与えると思われました。」
遠藤周作 全候補 3 「私は「黄色い斥候」と「掌の護符」とがまだ佳作に入ると思ったが、いわゆる新人賞ならとも角、芥川賞に値するにはまだ一歩と感じ「受賞作なし」を主張した。」
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石和鷹 「掌の護符」
佐藤泰志 「オーバー・フェンス」
李起昇 「ゼロはん」
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石和鷹「掌の護符」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎 全候補 10 「打ちひしがれてはまた奮い立っておのれの家庭にのしかってくる〈目に見えぬ何ものかの意志〉に立ち向う家長の姿に、人間というもののけなげさと哀しさが滲み出ている。」「ただ、普通の病妻物にしたくないばかりに凝らした工夫が、結果的にわかりにくい個所を生じたのは不運であった。私自身はそこのところを無理なく読めたのでこれを推したが、わずかに及ばなかった。」
安岡章太郎 全候補 13 「出来栄えはともかく、書きたいものを持っていると思われる」「じつは私は、これを当選作にしてもいいかと思っていた。」「とにかく主題は明確で、描写力もあり、ちょっと小気味のいい短編小説であった。ただし、街で知り合った一人の青年を自分の娘にいたずらした痴漢であると断定するあたり、主人公の動揺した気分もさることながら、そのへんをもっと客観的に捉える第三者の眼が欲しかった。」
吉行淳之介 全候補 11 「痛切な作品であるが、その痛切さのために二つの弱点ができている。一つは、過剰な部分が文章にできた。」「もう一つは、主人公と作者とがまったく重なり合ってしまったために、作品にたいして十分の計算をおこなうゆとりが失われた。」「この作品は主人公の造形にもう一工夫あってしかるべきだが、そのためには作者が主人公をくぐり抜けてその外側に出ていることが必要である。」
開高健 全候補 10 「得点数がもっとも高かった」「何故書かれなければならなかったかが手につたわってくるのでありがたかった。」「“南無妙法蓮華経”という一語を書きつけて終っているが、その強烈さが全体の効果からすると浮いてしまって、作品を流してしまった。残念である。あちらこちらに、固有で、いいリアリティーがある作品なので、惜しまれてならない。」
丸谷才一 全候補 18 「見るからに古風で無器用な作柄だが、一種の素朴な力がある。その野性がところどころで巧みに抑制されていることに、わたしは好感を持った。」「しかしこの短篇小説は、後半の学生のあつかい方、というよりもむしろ学生に対する主人公の誤解のあつかい方に重大な欠点がある。主人公が、偶然に知り合った学生が犯人だと理不尽に誤解する逆上ぶりを、作者は冷静に見ていない。」「芥川賞受賞作たるにはふさわしくない、と判断した。」
中村光夫 全候補 6 「妻の生命を癌で奪われる過程を描いたもので、(引用者注:「黄色い斥候」より)この方がよほど強い文学的感銘を与えると思われました。」「しかしこの種の材料は新鮮味に乏しく、積極的に推す気持になれませんでした。」
遠藤周作 全候補 3 「私は「黄色い斥候」と「掌の護符」とがまだ佳作に入ると思ったが、いわゆる新人賞ならとも角、芥川賞に値するにはまだ一歩と感じ「受賞作なし」を主張した。」
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佐藤泰志「オーバー・フェンス」×各選考委員  見方・注意点
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三浦哲郎 全候補 6 「「オーバー・フェンス」を凡作だと思ったのは、この人にはもっと優れた作品があるからである。今度の作品には珍しく文章の粗雑な個所が目についた。」
安岡章太郎 全候補 0  
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李起昇「ゼロはん」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎 全候補 6 「はっきりとしたモチーフを持った作品で、それなりのひたむきさと迫力がある。在日韓国人の心情は複雑で作者の言い分が多いのはわかるが、それにしても、これでは言葉が多すぎはしないか。」
安岡章太郎 全候補 8 「出来栄えはともかく、書きたいものを持っていると思われる」「人物の設定にかなりギクシャクしたところがあり、話の進め方も強引過ぎて感心できなかったが、朝鮮人の内心の屈折や、高度経済成長下に孤立化して行く人間の有様など、かつての朝鮮人文学より一と廻り大きく主題を呈出していた。」
吉行淳之介 全候補 9 「若々しい筆致に好感が持てた。しかし、こういう作品は在日韓国人問題を抜きにしては成立たないのは言うまでもないことで、そこのところが不十分、というか曖昧だ。」「在日韓国人は今は三世四世も多くなっている時代だから、当人自身に混乱が起っているのではないかとも考えてしまう。」
開高健 全候補 4 「何故書かれなければならなかったかが手につたわってくるのでありがたかった。その初発の切実が最後まで一貫して走りぬいてくれるとよかったのだが、と惜しまれる。」
丸谷才一 全候補 0  
中村光夫 全候補 2 「(引用者注:「黄色い斥候」や「掌の護符」より)むしろ文学的に完成度の低い「ゼロはん」「僕は模造人間」に興味を感じました。」
遠藤周作 全候補 6 「群像の新人賞作品だったが、しかし芥川賞作品にはまだなれない。それはこの作品に芥川賞となるには私からみて幾つかの欠点があるからだ。そのことについての私見と感想を私は芥川賞選衡後、人を介して李氏にお伝えしたから、ここでは書かない。」
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