芥川賞のすべて・のようなもの
芥川賞のすべて・のようなもの

第40回

=候補者=
吉村 昭
山川方夫
下江 巌
庵原高子
萩原一学
山下 宏
池田得太郎
金 達寿
林 青梧


芥川賞-選評の概要
トップページ
受賞作・候補作一覧
受賞作家の群像
候補作家の群像
選考委員の群像
マップ

ページの最後へ


Last Update[H20]2008/6/1

40   一覧へ 39前の回へ 後の回へ41
 昭和33年/1958年下半期
 (昭和34年/1959年1月20日決定発表/『文藝春秋』昭和34年/1959年3月号選評掲載)
選考委員  中村光夫 瀧井孝作 丹羽文雄 舟橋聖一 石川達三 佐藤春夫 井伏鱒二 川端康成 井上靖 永井龍男 宇野浩二
選評総行数  30 43 22 39 27 32 14 18 26 18 93
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
吉村昭 「鉄橋」 評言 0 5 5 1 4 0 0 0 3 0 28
山川方夫 「その一年」「海の告発」 評言 7 5 6 7 8 0 0 1 4 3 1
下江巌 「馬つかい」 評言 0 2 2 0 3 0 0 0 0 3 1
庵原高子 「降誕祭の手紙」 評言 0 2 1 5 3 0 0 0 0 0 2
萩原一学 「煙突の男」 評言 0 2 1 0 2 0 0 0 6 0 2
山下宏 「王国とその抒情」 評言 0 4 2 2 3 0 2 2 4 3 15
池田得太郎 「家畜小屋」 評言 0 4 3 0 5 0 0 2 4 0 13
金達寿 「朴達の裁判」 評言 16 18 5 7 0 12 8 12 9 6 14
林青梧 「ふりむくな奇蹟は」 評言 0 7 4 5 0 19 2 3 0 4 1
                     
見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和34年/1959年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員中村光夫×各候補作  見方・注意点
不作 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 0  
山川方夫 全委員 7 「「その一年」は現代風俗のなかに感傷的な青年を描いて、幼稚ながらもひとつのまとまりを見せ、一番確実に作者の才能を感じさせます。しかし「海の告発」はこの才人が才に倒れる危険を暗示しているので、見込みで強く推すわけにも行きませんでした。」
下江巌 全委員 0  
庵原高子 全委員 0  
萩原一学 全委員 0  
山下宏 全委員 0  
池田得太郎 全委員 0  
金達寿 全委員 16 「作品の出来から云えば、(引用者中略)際立っていましたが、これはあたりまえのことで、アマチュアのなかにプロがひとりまじったような感じでした。」「手馴れた語り口で気楽に描いていることが、主人公を生き生きとさせていますが、同時に作者が自分で先立になって話を面白がっているところが、折角の諷刺を背丈の低いものにしています。」「できあがっているだけに、どこか新鮮さが欠けている、などと新人扱いすることはいまさら氏にとって迷惑だろうと思います。」
林青梧 全委員 0  
  「今度は候補作の数が多いわりに、よいものがなく、「なし」はまず妥当な帰結でした。」「千幾篇のなかから選んだのがこれでは不作というほかありません。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
瀧井孝作
丹羽文雄
舟橋聖一
石川達三
佐藤春夫
井伏鱒二
川端康成
井上靖
永井龍男
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員瀧井孝作×各候補作  見方・注意点
新鮮味 総行数43 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 5 「技芸アート持味など、よいと思った。」「読後何かよい味が残った。が、三カ所ほど描き足りない所があって、また、筋を作りすぎた無理も見えた。」
山川方夫 全委員 5 「「その一年」は、少年の情緒を描いて、情調ムードの出たもので、このアートはよいが、すこし弱いかと思った。」「「海の告発」とか、前回の「演技の果て」など、技巧のゴタゴタした作よりは、この「その一年」の方がよいと思った。」
下江巌 全委員 2 「面白く作って浅薄にしたものと見た。」
庵原高子 全委員 2 「味わいが白けて乾いていた。」
萩原一学 全委員 2 「面白く作って浅薄にしたものと見た。」
山下宏 全委員 4 「小説はフィクションで何を書いてもよいという説の、その悪弊の見本のようなもので、豚とつるむようなこれは、ひどいことになったものだと思った。」
池田得太郎 全委員 4 「小説はフィクションで何を書いてもよいという説の、その悪弊の見本のようなもので、豚とつるむようなこれは、ひどいことになったものだと思った。」
金達寿 全委員 18 「一番読みごたえがあって、面白かった。」「朴達という農奴出の煽動者も、しまいの裁判の場面も、面白く描いて、筆も、政治小説としては平易にわかりやすく、田野の乾し草の香のような味があって、うまいと思った。」「私は、(引用者注:以前の「玄界灘」より)この題材が新しい方で、こんどはこれを推したが、新人でないと云われて、惜しいが仕方がなかった。」
林青梧 全委員 7 「前回の候補作「第七車輌」よりも、この方が筆力があるし、題材もよい。」「敵味方の心持の入り乱れた場合の、六ケしい心理は、まだ描き足りないかもしれないが、ともかく、溌剌としたものがあってよかった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
丹羽文雄
舟橋聖一
石川達三
佐藤春夫
井伏鱒二
川端康成
井上靖
永井龍男
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員丹羽文雄×各候補作  見方・注意点
感想 総行数22 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 5 「いちばん素直に頭にのこった。が、これはあんまり面白いことが並べられている。それが欠点である。」
山川方夫 全委員 6 「観念的なお化粧が目につく。「その一年」の主人公を深刻がらせているが、深刻さがいっこうに響いて来ない。「海の告発」の新聞記者は要らない。」
下江巌 全委員 2 「いまだしの感じである。」
庵原高子 全委員 1 「いまだしの感じである。」
萩原一学 全委員 1 「いまだしの感じである。」
山下宏 全委員 2 「ちょっと興味をひかれたが、すこし文章をいじくりすぎてはいないか。」
池田得太郎 全委員 3 「思いつきは、一応みとめるとしても、猟奇的になっているところは困りものである。」
金達寿 全委員 5 「推す人があったが、私は採らない。ゴーゴリ風に最終まで押しとおしてほしかった。作者の説教は不要である。お話としてはなかなか面白い。内容がいかに時局的であろうと、私は文学として見たい気持の方がつよいのだ。」
林青梧 全委員 4 「前の「第七車輌」の方がよかった。今度の小説はこれだけの内容にしては、枚数が足りなかった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
瀧井孝作
舟橋聖一
石川達三
佐藤春夫
井伏鱒二
川端康成
井上靖
永井龍男
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員舟橋聖一×各候補作  見方・注意点
該当せず 総行数39 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 1 「印象に残り、」
山川方夫 全委員 7 「どうしても授賞作を出すなら、山川の「その一年」を推したいと云ったが、「海の告発」が流行の新聞記者ものであるばかりでなく、構成にも難があるので、その減点のため、「その一年」の評価が何割か割引されたことは事実だった。」
下江巌 全委員 0  
庵原高子 全委員 5 「将来気のきいたものが書けそうで、期待がもてるが、「降誕祭の手紙」は未熟。」
萩原一学 全委員 0  
山下宏 全委員 2 「印象に残り、」
池田得太郎 全委員 0  
金達寿 全委員 7 「資格ではずれた。」「金の名は、それほど売れているとも思われないので、資格があると思えばあり、ないと思えばなし程度の微妙な線をまたいでいる以上、予選でおとすわけにもいかず、まぎらわしいものは、一応銓衡委員会にもち出して見たいというわけだろう。」
林青梧 全委員 5 「「第七車輌」という前回の候補作のほうが面白かった位で、今回ので授賞という段取りにはならないが、この人の努力は買える。」
  「ここ数回の芥川賞候補作には、暗いどろどろしたグルーミイな作品が多かった。そのほうが芥川賞向きだと考えてるのではないかと、首をかしげたいこともあった。この傾向は、芥川賞ばかりでなく、文芸時評子の取り上げる所謂力作傑作に、そういうゴテゴテこね返すような異常感覚的なものが多いことで、一層拍車をかけた感じだった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
瀧井孝作
丹羽文雄
石川達三
佐藤春夫
井伏鱒二
川端康成
井上靖
永井龍男
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員石川達三×各候補作  見方・注意点
二、三の疑問 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 4 「三面記事の解説みたいな所があり、技巧だけで文学を創ろうとしているように思われ、感心しなかった。」
山川方夫 全委員 8 「「海の告発」などは三面記事の解説みたいな所があり、技巧だけで文学を創ろうとしているように思われ、感心しなかった。」「「その一年」の方がいいが、「海の告発」がつまらないのでマイナスになった。「その一年」も米軍キャバレの描写、出てくる日本人の女などが薄っぺらである。」
下江巌 全委員 3 「楽屋がみな見えている。単純でむしろ古風だ。」「意図は悪くないが、不徹底なところで終っているので甚だ物足りない。」
庵原高子 全委員 3 「手紙の形式にしたことに疑問がありはしないか。もう少し整理されれば良い作品になったように思われる。」
萩原一学 全委員 2 「追及が足りないので、私には何の感銘もなかった。」
山下宏 全委員 3 「異常なものへの興味から創作欲が動いているようであるが、その程度が過ぎると猟奇にながれ、あるいは独善的な作品になってしまう。」
池田得太郎 全委員 5 「猟奇におぼれているようで、作者としては反省を要すると思う。」
金達寿 全委員 0  
林青梧 全委員 0  
  「今回は、委員の誰も、自信をもって推せる作品がなかった。論争らしい論争もなかった。きわめて低調で意気あがらざる委員会であった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
瀧井孝作
丹羽文雄
舟橋聖一
佐藤春夫
井伏鱒二
川端康成
井上靖
永井龍男
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員佐藤春夫×各候補作  見方・注意点
二篇とも朝鮮もの 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 0  
山川方夫 全委員 0  
下江巌 全委員 0  
庵原高子 全委員 0  
萩原一学 全委員 0  
山下宏 全委員 0  
池田得太郎 全委員 0  
金達寿 全委員 12 「文章も調子は高くないにしても一とおり以上にこなれている。全部のなかで最もよく書かれているのがこの篇であろう。韓国とその住民とがあざやかに浮彫されているのは十分に買わなければなるまい。」「惜しくも新人の短篇という芥川賞の資格から外れるとか。」
林青梧 全委員 19 「酷評すれば「おとなの紙芝居」と云いたくなるほど粗雑な筋書風である。描写主義でなく叙述風に試みたものだとはわかるが、それでもまだ未熟のそしりは免れまい。この手法必ずしも悪くはない。しかしもう少し研究しなければなるまい。」「地道に文学の大道を行こうとするこの作者の態度は猟奇的な取材を末梢神経的に取扱って読者の劣情に媚びようとする風のないのを好しと思った。」
  「すべて読み了って、実のところ今度ほど困った事はなかった。何のどこが面白いのか更にわからない。果は自分の頭を疑ってみる始末。」「結局今回は無しということになるのが当然らしい。十篇も駄作を読んで我々は終にくたびれ儲けということになる。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
瀧井孝作
丹羽文雄
舟橋聖一
石川達三
井伏鱒二
川端康成
井上靖
永井龍男
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員井伏鱒二×各候補作  見方・注意点
新人に非ず 総行数14 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 0  
山川方夫 全委員 0  
下江巌 全委員 0  
庵原高子 全委員 0  
萩原一学 全委員 0  
山下宏 全委員 2 「私はアレルギー疾患のため(引用者中略)読み残した。」
池田得太郎 全委員 0  
金達寿 全委員 8 「うまいが新人ではないと思う。これほどの文学的経歴のある作家なら、ほかにもまだいい作品を書いている人が幾人かある。」「事務係から予選通過作品として示された以上は、すべて新人の作品と見なすべきだとするのも一方法だが、私はそれに従わなかったわけである。」
林青梧 全委員 2 「私はアレルギー疾患のため(引用者中略)読み残した。」
  「読んだ範囲ではたって推薦したい作品はないのであった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
瀧井孝作
丹羽文雄
舟橋聖一
石川達三
佐藤春夫
川端康成
井上靖
永井龍男
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員川端康成×各候補作  見方・注意点
左翼文学の佳作 総行数18 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 0  
山川方夫 全委員 1 「「その一年」はところどころいいと思った。」
下江巌 全委員 0  
庵原高子 全委員 0  
萩原一学 全委員 0  
山下宏 全委員 2 「頭にはいりにくく、後の作を待ちたい。」
池田得太郎 全委員 2 「変った考えつきだが、過ぎたるは及ばざるに近しと受取った。」
金達寿 全委員 12 「選ぶとすれば、金達寿の「朴達の裁判」のほかにはないという、私の意見は非常にはっきりしていて、動かせるものではなかった。格のちがう作品が一つはいっているような感じである。」「既に地歩業績の認められた金氏を芥川賞とするに及ばないという考えの方に、やや賛成である。それはとにかく(引用者中略)被圧迫民族を描いた左翼文学として一佳作なのは勿論である。」
林青梧 全委員 3 「(引用者注:金達寿の)「朴達の裁判」のために損をした。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
瀧井孝作
丹羽文雄
舟橋聖一
石川達三
佐藤春夫
井伏鱒二
井上靖
永井龍男
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員井上靖×各候補作  見方・注意点
推す作品なし 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 3 「一応そつなく纏った作品だが、作品の底を流れているものが低く、読物の域を出ていないのは惜しいと思った。」
山川方夫 全委員 4 「「その一年」は、この作者のいい面が素直に出た作品であったが、授賞作とするには弱く、」「「海の告発」の方は、構成ががたぴししている上、氏の持つ悪い面の出た作品だと思う。」
下江巌 全委員 0  
庵原高子 全委員 0  
萩原一学 全委員 6 「面白かった。」「いささかの昂奮もない筆致でいつもへまに立廻って孤独な立場におかれる主人公の気持をよく描いていた。」
山下宏 全委員 4 「取扱っているものが性倒錯の世界で、私などにはついて行けないところがあったが、併し、技術的には非常に確かりしているものを持っていた。」
池田得太郎 全委員 4 「面白かった。」「作者が少くとも何ものかを書こうとしている点で読応えのあるものであった」
金達寿 全委員 9 「既に一人の出来上った作家の作品としての安定したものを持っていた。」「だが、作者が既に何冊かの著書も持っており、名前を知られすぎているということで授賞者資格から外さなければならなかった。残念だが、これも已むを得ないことである。」
林青梧 全委員 0  
  「熱意をもって推すに足る作品は見当らなかった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
瀧井孝作
丹羽文雄
舟橋聖一
石川達三
佐藤春夫
井伏鱒二
川端康成
永井龍男
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員永井龍男×各候補作  見方・注意点
選評 総行数18 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 0  
山川方夫 全委員 3 「「この一年」「海の告発」は、二作であることが、却って持てる才能を集中していないような読後感を与える結果になった。」
下江巌 全委員 3 「「旧い」というような諸家の一致した評で、候補作にも残らなかったが、私は一応作者の努力を買うことが出来た。」
庵原高子 全委員 0  
萩原一学 全委員 0  
山下宏 全委員 3 「もっとも新人の作品らしい印象を得た。」
池田得太郎 全委員 0  
金達寿 全委員 6 「練達した手法で、意図通りの効果を挙げたたくましい作品である。」「「無名、新人を賞の対象とする」芥川賞としては残念なことだと思う。」
林青梧 全委員 4 「前回のものの方が優れている。」
  「(引用者注:「朴達の裁判」の)他の作品は、いずれも一長一短で、積極的に支持したいと思うものはなかった」「今回の予選作品十篇を読了した時は、実に疲れた。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
瀧井孝作
丹羽文雄
舟橋聖一
石川達三
佐藤春夫
井伏鱒二
川端康成
井上靖
宇野浩二
  ページの先頭へ

選考委員宇野浩二×各候補作  見方・注意点
独断的選評―御難な銓衡― 総行数93 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
吉村昭 全委員 28 「なかなか変った事を書いてはあるが、それほどスリルも猟奇も感じさせられない、それは、作者が、唯、こういう小説を書こう、と、段取りをつけて手際よく、作っただけで、これを書くのに、感動もなく、打ちこんでいないからである、そのために、こんな奇怪な事件が当たり前の事のように思われ、少し目のある読者には、作り事が見え透くからである。」
山川方夫 全委員 1  
下江巌 全委員 1  
庵原高子 全委員 2  
萩原一学 全委員 2  
山下宏 全委員 15 「なにしろ二人の男は、少年時代から大人になってからも、いたるところで、(まったく到る処で、)どんな所でも、『衆道』を交互におこなうのであるから、平凡な言葉であるが、あきれはてた小説である。それに、あまりに読みづらい文章のために、それだけでも、近頃これだけ骨を折って読んだ小説はない。」「これが、「文學界」に第七回新人賞優秀作として掲載されたとは、云うべき言葉なし。」
池田得太郎 全委員 13 「牡豚と主人公の妻が、夫婦になって、実にいやらしいエゲツない行動をする事を一所懸命に力をこめて書いているらしいとさえ思われる小説であるが、これは、この作にも、この小説を選んだ人にも、何とも申し上げようなし。」
金達寿 全委員 14 「この小説は、委員会でめずらしく全員一致で、認められたのであるが、(私も大いに認めたのであるが、)作者の金達寿が、既に十年ほど前に、よい小説を書いて、一部の人たちに認められたから、芥川賞にするには差し支える、と云う事になったのであるが、私は、十年ぐらい前に認められても、今は大ていの人が知らないという事だけでも、そういう『範囲』などはまったく問題にならないと思ったのであるけれど、「衆寡敵せず」で、私の考えなどは通らなかった。」
林青梧 全委員 1  
  「この数年来(この二三年来)の芥川賞の予選に通過した小説の作者のなかに、どうしてもこれは書いてみたいと云う題材などはまったくないのに、凡そこんな事をこういう風に書いたら、「もしかしたら、」「あわよくば、」などと考えて書いたのではないか、当て推量される小説を書く人がしばしばいるように臆測され、今回にはそう推しはかられるような作品が少し目だって多かったような気がする」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
中村光夫
瀧井孝作
丹羽文雄
舟橋聖一
石川達三
佐藤春夫
井伏鱒二
川端康成
井上靖
永井龍男
  ページの先頭へ


吉村昭「鉄橋」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 5 「技芸アート持味など、よいと思った。」「読後何かよい味が残った。が、三カ所ほど描き足りない所があって、また、筋を作りすぎた無理も見えた。」
丹羽文雄 全候補 5 「いちばん素直に頭にのこった。が、これはあんまり面白いことが並べられている。それが欠点である。」
舟橋聖一 全候補 1 「印象に残り、」
石川達三 全候補 4 「三面記事の解説みたいな所があり、技巧だけで文学を創ろうとしているように思われ、感心しなかった。」
佐藤春夫 全候補 0  
井伏鱒二 全候補 0  
川端康成 全候補 0  
井上靖 全候補 3 「一応そつなく纏った作品だが、作品の底を流れているものが低く、読物の域を出ていないのは惜しいと思った。」
永井龍男 全候補 0  
宇野浩二 全候補 28 「なかなか変った事を書いてはあるが、それほどスリルも猟奇も感じさせられない、それは、作者が、唯、こういう小説を書こう、と、段取りをつけて手際よく、作っただけで、これを書くのに、感動もなく、打ちこんでいないからである、そのために、こんな奇怪な事件が当たり前の事のように思われ、少し目のある読者には、作り事が見え透くからである。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
山川方夫 「その一年」「海の告発」
下江巌 「馬つかい」
庵原高子 「降誕祭の手紙」
萩原一学 「煙突の男」
山下宏 「王国とその抒情」
池田得太郎 「家畜小屋」
金達寿 「朴達の裁判」
林青梧 「ふりむくな奇蹟は」
  ページの先頭へ

山川方夫「その一年」「海の告発」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫 全候補 7 「「その一年」は現代風俗のなかに感傷的な青年を描いて、幼稚ながらもひとつのまとまりを見せ、一番確実に作者の才能を感じさせます。しかし「海の告発」はこの才人が才に倒れる危険を暗示しているので、見込みで強く推すわけにも行きませんでした。」
瀧井孝作 全候補 5 「「その一年」は、少年の情緒を描いて、情調ムードの出たもので、このアートはよいが、すこし弱いかと思った。」「「海の告発」とか、前回の「演技の果て」など、技巧のゴタゴタした作よりは、この「その一年」の方がよいと思った。」
丹羽文雄 全候補 6 「観念的なお化粧が目につく。「その一年」の主人公を深刻がらせているが、深刻さがいっこうに響いて来ない。「海の告発」の新聞記者は要らない。」
舟橋聖一 全候補 7 「どうしても授賞作を出すなら、山川の「その一年」を推したいと云ったが、「海の告発」が流行の新聞記者ものであるばかりでなく、構成にも難があるので、その減点のため、「その一年」の評価が何割か割引されたことは事実だった。」
石川達三 全候補 8 「「海の告発」などは三面記事の解説みたいな所があり、技巧だけで文学を創ろうとしているように思われ、感心しなかった。」「「その一年」の方がいいが、「海の告発」がつまらないのでマイナスになった。「その一年」も米軍キャバレの描写、出てくる日本人の女などが薄っぺらである。」
佐藤春夫 全候補 0  
井伏鱒二 全候補 0  
川端康成 全候補 1 「「その一年」はところどころいいと思った。」
井上靖 全候補 4 「「その一年」は、この作者のいい面が素直に出た作品であったが、授賞作とするには弱く、」「「海の告発」の方は、構成ががたぴししている上、氏の持つ悪い面の出た作品だと思う。」
永井龍男 全候補 3 「「この一年」「海の告発」は、二作であることが、却って持てる才能を集中していないような読後感を与える結果になった。」
宇野浩二 全候補 1  
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
吉村昭 「鉄橋」
下江巌 「馬つかい」
庵原高子 「降誕祭の手紙」
萩原一学 「煙突の男」
山下宏 「王国とその抒情」
池田得太郎 「家畜小屋」
金達寿 「朴達の裁判」
林青梧 「ふりむくな奇蹟は」
  ページの先頭へ

下江巌「馬つかい」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 2 「面白く作って浅薄にしたものと見た。」
丹羽文雄 全候補 2 「いまだしの感じである。」
舟橋聖一 全候補 0  
石川達三 全候補 3 「楽屋がみな見えている。単純でむしろ古風だ。」「意図は悪くないが、不徹底なところで終っているので甚だ物足りない。」
佐藤春夫 全候補 0  
井伏鱒二 全候補 0  
川端康成 全候補 0  
井上靖 全候補 0  
永井龍男 全候補 3 「「旧い」というような諸家の一致した評で、候補作にも残らなかったが、私は一応作者の努力を買うことが出来た。」
宇野浩二 全候補 1  
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
吉村昭 「鉄橋」
山川方夫 「その一年」「海の告発」
庵原高子 「降誕祭の手紙」
萩原一学 「煙突の男」
山下宏 「王国とその抒情」
池田得太郎 「家畜小屋」
金達寿 「朴達の裁判」
林青梧 「ふりむくな奇蹟は」
  ページの先頭へ

<
庵原高子「降誕祭の手紙」×各選考委員  見方・注意点