芥川賞のすべて・のようなもの
芥川賞のすべて・のようなもの

第32回

=受賞者=
小島信夫
庄野潤三

=候補者=
小島信夫
小沼 丹
赤木けい子
戸川雄次郎
鎌原正巳
瓜生卓造
曾野綾子
川上宗薫


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 昭和29年/1954年下半期
 (昭和30年/1955年1月22日決定発表/『文藝春秋』昭和30年/1955年3月号選評掲載)
選考委員  井上靖 佐藤春夫 丹羽文雄 川端康成 宇野浩二 石川達三 瀧井孝作 舟橋聖一
選評総行数  35 24 22 28 73 36 37 35
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
小島信夫 「アメリカン・スクール」「神」 評言 10 6 3 15 12 12 9 8
庄野潤三 「プールサイド小景」 評言 8 9 4 15 14 12 20 10
小沼丹 「白孔雀のゐるホテル」その他2篇 評言 5 5 0 7 8 4 7 5
赤木けい子 「碧眼女」 評言 5 8 3 9 9 4 5 11
戸川雄次郎 「受胎告知」 評言 3 0 0 2 5 8 0 0
鎌原正巳 「曼陀羅」 評言 3 0 0 0 5 0 0 0
瓜生卓造 「南緯八十度」 評言 4 0 0 2 13 0 0 0
曾野綾子 「硝子の悪戯」その他2篇 評言 3 0 4 1 12 5 0 4
川上宗薫 「初心」 評言 4 0 0 1 6 9 0 5
               
見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和30年/1955年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員井上靖×各候補作  見方・注意点
寸感 総行数35 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
小島信夫 全委員 10 「作品本位で一作を選ぶとなると、私は小島信夫氏の「アメリカン・スクール」を選ぶほかなかった。」「人間の劣等意識を執拗に追求した作品で、一時期の日本人を諷刺して時代的意義もある力作である。」「「神」の方には、私は疑念があった。」
庄野潤三 全委員 8 「きめ(原文傍点)のこまかい、いい作品である。出来上った作家と言えば、庄野氏が一番でき上っている。」「氏の作品ではこの作が一番成功していると思う。作品の蒸留水的な軽さが気になるが、併しこれは氏の作品の本質的なもので、むしろここに氏の本領があるというべきであろう。」
小沼丹 全委員 5 「小沼丹氏の三作の中では「白孔雀のゐるホテル」が優れている。文章も清潔で、ユニークな才能と感性の所産である。併し授賞作品の順位を競うことになると、私の場合、「アメリカン・スクール」のむしろ野暮ったい執拗さの方に傾く。」
赤木けい子 全委員 5 「生の材料の中から一人の成熟した女としての作者の眼が光って見えている。相当なものである。」「面白さという点では一番面白い。第二作に依って、この人の評価は決まると思う。」
戸川雄次郎 全委員 3 「生硬さに於て(引用者中略)躊躇させられるものがあった。」
鎌原正巳 全委員 3 「その概念的な説明に於て(引用者中略)躊躇させられるものがあった。」
瓜生卓造 全委員 4 「材料の未整理に於て(引用者中略)躊躇させられるものがあった。」
曾野綾子 全委員 3 「曾野綾子氏の三作では、「硝子の悪戯」が一番いいが、いずれにせよ、三作ともきらきらした才能を随所に感じながら、不思議に一様に読後の印象が混乱していた。」
川上宗薫 全委員 4 「調和というか、安定感というかそうしたものを感じた。過不足なく必要なものだけが、きちんきちんと書かれてある。そこにまたこの作品の物足りなさもあった。」
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他の選考委員
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選考委員佐藤春夫×各候補作  見方・注意点
やっと落ち着いた決定 総行数24 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
小島信夫 全委員 6 「世評に追随するようなという不満を伴いながら「アメリカン・スクール」はやはり閑却出来ない作品という衆評」
庄野潤三 全委員 9 「やや弱いという難は免れなかったが、平凡な現実に対してその隙間を充填するに清新な空想を以てし、一家の作風を確立して候補中でも最も好く出来た作品という瀧井氏等の意見があった。」
小沼丹 全委員 5 「唯一つ遺憾なのは、小沼丹の「白孔雀のゐるホテル」がこの作者の並々ならぬ才筆を見せて興趣甚だゆたかに当選の二作にもおさおさ劣らぬ個性的な佳作と思えたが、当選三篇はちと多すぎるとしばらく割愛しなければならなかった。また一つ借りができたような感じである。」
赤木けい子 全委員 8 「いかにもたどたどしく幼稚な表現力で構成も平板、徒らに長いが、それでいて、見るべきものは痛快なほどはっきりと見ているその眼力は貧弱な筆力を補って余りあるもの。」「と云って小島、庄野らをさし措いて授賞するという程の価値も疑わしかろう。」
戸川雄次郎 全委員 0  
鎌原正巳 全委員 0  
瓜生卓造 全委員 0  
曾野綾子 全委員 0  
川上宗薫 全委員 0  
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選考委員丹羽文雄×各候補作  見方・注意点
再認識 総行数22 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
小島信夫 全委員 3 「授賞には文句はなかった」「芥川賞なるものに対する私の意見を撤回するとなれば、今回の場合は小島信夫君である。」
庄野潤三 全委員 4 「功労賞の意味だと私自身はひそかに考えて妥協した。庄野君には「プールサイド小景」よりももっと他にいいものがある。」
小沼丹 全委員 0  
赤木けい子 全委員 3 「私は多数人に読んでもらいたかった。欠点もあるが、読みごたえは十分にある作品である。」
戸川雄次郎 全委員 0  
鎌原正巳 全委員 0  
瓜生卓造 全委員 0  
曾野綾子 全委員 4 「大いに期待をかけていたのだが、今回の三作には失望した。曾野さんはいまあぶないところに立っている。「遠来の客たち」の好評が、却って本人を毒したのではないか。」
川上宗薫 全委員 0  
  「「野に遺賢あり」という一文を発表した私は、芥川賞には新人がほしいと申し出たのだったが、否定をされた。それだけに拘泥することはないという融通無碍な意見であった。」
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選考委員川端康成×各候補作  見方・注意点
読後感 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
小島信夫 全委員 15 「小島信夫氏と庄野潤三氏とを推薦することにきまったのは、委員としても、素直によかったと思う。」「「アメリカン・スクール」はこの賞がなくても、好評嘖々である。しかし、参考作品の「神」は感心出来なかった。」「まあまあ長いこと御迷惑かけましたと、芥川賞を卒業してもらうような気持である。受賞にこだわらない方がよい。」
庄野潤三 全委員 15 「小島信夫氏と庄野潤三氏とを推薦することにきまったのは、委員としても、素直によかったと思う。」「賞などになりにくい作家のようで、今期の「プールサイド小景」も弱いが、これを取り上げたのはよいことであったろう。」「まあまあ長いこと御迷惑かけましたと、芥川賞を卒業してもらうような気持である。受賞にこだわらない方がよい。」
小沼丹 全委員 7 「(引用者注:二受賞者に)小沼丹氏を加えて、三人でも一向差支えはなかった。と言うよりも、小沼氏を除くのに強い根拠はなく、三人では多過ぎるかもしれないという、漠然とした空気のようだ。」
赤木けい子 全委員 9 「文章と構成に今少し注意が払われていれば、ためらいなくこの作品を推しただろう。同意見の委員も多かった。」「敗戦日本人にたいする啓蒙小説にさえなっていておもしろい。見る目は意地が悪いほどしっかりしている。」
戸川雄次郎 全委員 2 「今後期待する。」
鎌原正巳 全委員 0  
瓜生卓造 全委員 2 「今後期待する。」
曾野綾子 全委員 1 「せっかくの才能の曾野綾子氏は逸走、」
川上宗薫 全委員 1 「今後期待する。」
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選考委員宇野浩二×各候補作  見方・注意点
困難な銓衡 総行数73 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
小島信夫 全委員 12 「『アメリカン・スクール』は、ちょいと特異な題材を克明に書いて面白いところもあり、独得なところもあるけれど、(引用者中略)出てくる人物にも、場面にも、不鮮明なところや独り合点のようなところもあるので、私は、それほど高く買えないのである。」「『神』は、狙いどころはわかるけれど、何とも仕方のない小説である。」
庄野潤三 全委員 14 「一読して、この作家の作風が大分かわった事に気がつき、いくらか変り映えがしたようである。」「こんどの候補作品の中で、過褒を承知で云うと、この小説は、或る一家の細やかな一面をちょいと上手に現している点で、全体にニュアンスが幾らか出ている点で、まず一ばん増しであろう。唯いかにも力の弱いのは大きな欠点」
小沼丹 全委員 8 「(引用者注:小沼丹の三作の中では)『白孔雀のゐるホテル』が増しである。」「諷刺の力は弱いけれど、明かるくて品の悪くないのが宜しく、独得の作風である、唯、どの人物も「傀儡」であるのが大きな欠点である。」
赤木けい子 全委員 9 「文章が未熟で、書き方がくど過ぎ、長たらし過ぎるけれど、しまいまで先ず厭きずに読ませる上に、ところどころ旨いところもある。」「殊更に大形にいうと、この小説は、今度の候補作品の中では一ばん面白かった。が、芥川賞に推薦するには「未だし未だし」である。」
戸川雄次郎 全委員 5 「なかなか手のこんだ作品ではあるが、よくある男女の面倒な関係を、いやに物体ぶって、もってまわった筆法で、書いてあるだけの物である。」
鎌原正巳 全委員 5 「短篇として一と通りまとまっているし、筆も達者であるが、調子が低いのが大きな欠点である。」「この前に候補作品になった『土佐日記』よりずっと落ちる。」
瓜生卓造 全委員 13 「十八世紀のイギリスの極地探検家、スコットが、(引用者中略)艱難辛苦する有り様だけを、くどいほど克明に丹念に書き、その描写は、過褒すると、ところどころ真に迫るところもある、が、唯それだけの物である、」「アムンゼンに対する、敵対する煩悶の書き方が弱すぎるのが難である。」
曾野綾子 全委員 12 「(引用者注:曾野綾子の三作の中で)しいて取れば『硝子の悪戯』である。」「今度の三つの小説には、(引用者中略)すこし誇張して下品な言葉をつかうと、スレッカラシのような感じがある上に、嫌らしいところさえある。一部の人たちから「有望」と見なされたこの作家は、これから十分に反省すべきであろう。」
川上宗薫 全委員 6 「なかなか手のこんだまとまった小説ではあるが、こんな題材に力瘤を入れるのは損であろう。」「前に候補作品になった『その掟』の方が増しであったが、あまり細かい事を書きすぎる弊を改めた方がよい。」
  「私は、この委員会に十回以上も出たが、今回ぐらい手古ずったのは殆んど初めてである。しかし、私が、いつの時も痛感するのは、唯ひとつ、芥川賞の銓衡は、いつまでも、困難を極めるにちがいない、という事である。」
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選考委員石川達三×各候補作  見方・注意点
授賞の規準 総行数36 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
小島信夫 全委員 12 「小島、庄野、小沼の諸君もみな力量のある人たちだが、正面を外して側面から対象を描いている。」「小島、庄野両君に(引用者注:授賞が)きまったのも少し無理で、議論をつくした果てに自説を抛棄したというかたちだった。」「既に沢山の作品を出して居り、たとい当選作に疑義があっても、大した問題は起らないという安心感に支えられていた。しかしこの事にも疑問がある。作家を選ぶのか作品を選ぶのかで、見解は分れる。」
庄野潤三 全委員 12 「小島、庄野、小沼の諸君もみな力量のある人たちだが、正面を外して側面から対象を描いている。」「小島、庄野両君に(引用者注:授賞が)きまったのも少し無理で、議論をつくした果てに自説を抛棄したというかたちだった。」「既に沢山の作品を出して居り、たとい当選作に疑義があっても、大した問題は起らないという安心感に支えられていた。しかしこの事にも疑問がある。作家を選ぶのか作品を選ぶのかで、見解は分れる。」
小沼丹 全委員 4 「小島、庄野、小沼の諸君もみな力量のある人たちだが、正面を外して側面から対象を描いている。」
赤木けい子 全委員 4 「全くの新人で、こういう人が出て来たことは誠に面白い。この人に授賞がきまらなかったのは、委員諸氏の慎重さと責任感からである。」
戸川雄次郎 全委員 8 「私は(引用者中略)推したが、(引用者中略)多数の同意を得るには至らなかった。」「川上、戸川両君は正面からぶつかっている。私はこの方に好感をもった。」
鎌原正巳 全委員 0  
瓜生卓造 全委員 0  
曾野綾子 全委員 5 「一般には、今度こそ授賞するだろうという評が多かったようだが、委員は誰も推さなかった。」「私も今度は推せないと思っていた。作者の一考を望みたい。」
川上宗薫 全委員 9 「私は(引用者中略)推したが、(引用者中略)多数の同意を得るには至らなかった。」「この前の「その掟」の方がすぐれて居り、今年に入ってからも良いものを発表しているということで、保留された。」「川上、戸川両君は正面からぶつかっている。私はこの方に好感をもった。」
  「他に新人文芸賞が多くあるので、芥川賞の在り方をどの位置にきめるべきか、いずれ近いうちに決定されなくてはならない。」
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川端康成
宇野浩二
瀧井孝作
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選考委員瀧井孝作×各候補作  見方・注意点
庄野氏を推す 総行数37 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
小島信夫 全委員 9 「「アメリカン・スクール」は、読んでは面白いが、読後に残る感じは淡い。この作者の「神」と「犬」という短篇も読んでみたが、これは佳作とは云えない、調子に乗った乱作と云うような所があった。」
庄野潤三 全委員 20 「一番よいと思った。」「サラリーマン生活の弱点を衝いたテーマで、このテーマは、このように明白に提出されると、皆んなが一応は心得ておくべきで、これは大勢に読んでもらいたいと思った。それに、この短篇は、うま味が多い。読みながら不安の心持が惻惻と迫って、やわらかい美しい文章で、香気のようなふくいくとしたものがある。」
小沼丹 全委員 7 「(引用者注:小島信夫よりも)「白孔雀のゐるホテル」「白い機影」「紅い花」などの方を、採りたかった。小沼氏は、淡彩の風趣のある筆致に、どの作品も、独特の持味がある。好い作家だと思った。」「今回は、三人も当選は多すぎると云われて、小沼氏の残されたのは惜しかった。」
赤木けい子 全委員 5 「材料の面白味、世相の新味の方で採れるが、描写はくだくだしい所があり、洗煉がなく、未だ作家としては、未熟ではないかと思った。」
戸川雄次郎 全委員 0  
鎌原正巳 全委員 0  
瓜生卓造 全委員 0  
曾野綾子 全委員 0  
川上宗薫 全委員 0  
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他の選考委員
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佐藤春夫
丹羽文雄
川端康成
宇野浩二
石川達三
舟橋聖一
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選考委員舟橋聖一×各候補作  見方・注意点
平凡な授賞 総行数35 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
小島信夫 全委員 8 「「神」から読み出したが、どうも感心できなかったので、「アメリカン・スクール」はあと廻しにした。」「(引用者注:銓衡会の意見は)庄野、小沼の二本立と、庄野、小島の二本立とに、分裂した。」「瀧井氏の云い出した庄野・小島二本立説に同調した。」
庄野潤三 全委員 10 「(引用者注:銓衡会の意見は)庄野、小沼の二本立と、庄野、小島の二本立とに、分裂した。」「瀧井氏の云い出した庄野・小島二本立説に同調した。」「前の「流木」や「黒い牧師」に見られた熱情には欠けるが、その代り玄人好みになっている。」
小沼丹 全委員 5 「(引用者注:銓衡会の意見は)庄野、小沼の二本立と、庄野、小島の二本立とに、分裂した。私も、小沼丹は、力量ありと見て居り、事件のはこびがうまく、心象を描いて行く行間のタッチが鮮かなのに感心しているが、」
赤木けい子 全委員 11 「悪くない。材料が奇抜で面白いと云うより、私はみんなの云うほど書き方も下手ではないと思った。」「丹羽君がしきりに赤木を推していた。然しこの前あんなに強硬に推した曾野を、こんどは丹羽君も石川君も、あっさり捨てているので、まア一度は見送ってもよかろうと、私は赤木を、授賞作に推すことは、躊躇した。」
戸川雄次郎 全委員 0  
鎌原正巳 全委員 0  
瓜生卓造 全委員 0  
曾野綾子 全委員 4 「曾野綾子の三作は、みな凡作で、私が前回「遠来の客たち」の授賞に賛成しかねたのが、不当ではなかったと思い知られた。殊に「燕買ひ」などは、そもそも候補作になるのが、少し眉唾だ。」
川上宗薫 全委員 5 「面白かった。「文學界」(三十年二月号)へ「企み」を書いて、それが次期の有力作だから、今回は見合そうという委員たちのはからいがあったそうだから、私も発言をさし控えたが、それがなければ、私はこれを推したかった位である。」
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他の選考委員
井上靖
佐藤春夫
丹羽文雄
川端康成
宇野浩二
石川達三
瀧井孝作
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小島信夫「アメリカン・スクール」「神」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖 全候補 10 「作品本位で一作を選ぶとなると、私は小島信夫氏の「アメリカン・スクール」を選ぶほかなかった。」「人間の劣等意識を執拗に追求した作品で、一時期の日本人を諷刺して時代的意義もある力作である。」「「神」の方には、私は疑念があった。」
佐藤春夫 全候補 6 「世評に追随するようなという不満を伴いながら「アメリカン・スクール」はやはり閑却出来ない作品という衆評」
丹羽文雄 全候補 3 「授賞には文句はなかった」「芥川賞なるものに対する私の意見を撤回するとなれば、今回の場合は小島信夫君である。」
川端康成 全候補 15 「小島信夫氏と庄野潤三氏とを推薦することにきまったのは、委員としても、素直によかったと思う。」「「アメリカン・スクール」はこの賞がなくても、好評嘖々である。しかし、参考作品の「神」は感心出来なかった。」「まあまあ長いこと御迷惑かけましたと、芥川賞を卒業してもらうような気持である。受賞にこだわらない方がよい。」
宇野浩二 全候補 12 「『アメリカン・スクール』は、ちょいと特異な題材を克明に書いて面白いところもあり、独得なところもあるけれど、(引用者中略)出てくる人物にも、場面にも、不鮮明なところや独り合点のようなところもあるので、私は、それほど高く買えないのである。」「『神』は、狙いどころはわかるけれど、何とも仕方のない小説である。」
石川達三 全候補 12 「小島、庄野、小沼の諸君もみな力量のある人たちだが、正面を外して側面から対象を描いている。」「小島、庄野両君に(引用者注:授賞が)きまったのも少し無理で、議論をつくした果てに自説を抛棄したというかたちだった。」「既に沢山の作品を出して居り、たとい当選作に疑義があっても、大した問題は起らないという安心感に支えられていた。しかしこの事にも疑問がある。作家を選ぶのか作品を選ぶのかで、見解は分れる。」
瀧井孝作 全候補 9 「「アメリカン・スクール」は、読んでは面白いが、読後に残る感じは淡い。この作者の「神」と「犬」という短篇も読んでみたが、これは佳作とは云えない、調子に乗った乱作と云うような所があった。」
舟橋聖一 全候補 8 「「神」から読み出したが、どうも感心できなかったので、「アメリカン・スクール」はあと廻しにした。」「(引用者注:銓衡会の意見は)庄野、小沼の二本立と、庄野、小島の二本立とに、分裂した。」「瀧井氏の云い出した庄野・小島二本立説に同調した。」
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他の候補作
庄野潤三 「プールサイド小景」
小沼丹 「白孔雀のゐるホテル」その他2篇
赤木けい子 「碧眼女」
戸川雄次郎 「受胎告知」
鎌原正巳 「曼陀羅」
瓜生卓造 「南緯八十度」
曾野綾子 「硝子の悪戯」その他2篇
川上宗薫 「初心」
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庄野潤三「プールサイド小景」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖 全候補 8 「きめ(原文傍点)のこまかい、いい作品である。出来上った作家と言えば、庄野氏が一番でき上っている。」「氏の作品ではこの作が一番成功していると思う。作品の蒸留水的な軽さが気になるが、併しこれは氏の作品の本質的なもので、むしろここに氏の本領があるというべきであろう。」
佐藤春夫 全候補 9 「やや弱いという難は免れなかったが、平凡な現実に対してその隙間を充填するに清新な空想を以てし、一家の作風を確立して候補中でも最も好く出来た作品という瀧井氏等の意見があった。」
丹羽文雄 全候補 4 「功労賞の意味だと私自身はひそかに考えて妥協した。庄野君には「プールサイド小景」よりももっと他にいいものがある。」
川端康成 全候補 15 「小島信夫氏と庄野潤三氏とを推薦することにきまったのは、委員としても、素直によかったと思う。」「賞などになりにくい作家のようで、今期の「プールサイド小景」も弱いが、これを取り上げたのはよいことであったろう。」「まあまあ長いこと御迷惑かけましたと、芥川賞を卒業してもらうような気持である。受賞にこだわらない方がよい。」
宇野浩二 全候補 14 「一読して、この作家の作風が大分かわった事に気がつき、いくらか変り映えがしたようである。」「こんどの候補作品の中で、過褒を承知で云うと、この小説は、或る一家の細やかな一面をちょいと上手に現している点で、全体にニュアンスが幾らか出ている点で、まず一ばん増しであろう。唯いかにも力の弱いのは大きな欠点」
石川達三 全候補 12 「小島、庄野、小沼の諸君もみな力量のある人たちだが、正面を外して側面から対象を描いている。」「小島、庄野両君に(引用者注:授賞が)きまったのも少し無理で、議論をつくした果てに自説を抛棄したというかたちだった。」「既に沢山の作品を出して居り、たとい当選作に疑義があっても、大した問題は起らないという安心感に支えられていた。しかしこの事にも疑問がある。作家を選ぶのか作品を選ぶのかで、見解は分れる。」
瀧井孝作 全候補 20 「一番よいと思った。」「サラリーマン生活の弱点を衝いたテーマで、このテーマは、このように明白に提出されると、皆んなが一応は心得ておくべきで、これは大勢に読んでもらいたいと思った。それに、この短篇は、うま味が多い。読みながら不安の心持が惻惻と迫って、やわらかい美しい文章で、香気のようなふくいくとしたものがある。」
舟橋聖一 全候補 10 「(引用者注:銓衡会の意見は)庄野、小沼の二本立と、庄野、小島の二本立とに、分裂した。」「瀧井氏の云い出した庄野・小島二本立説に同調した。」「前の「流木」や「黒い牧師」に見られた熱情には欠けるが、その代り玄人好みになっている。」
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他の候補作
小島信夫 「アメリカン・スクール」「神」
小沼丹 「白孔雀のゐるホテル」その他2篇
赤木けい子 「碧眼女」
戸川雄次郎 「受胎告知」
鎌原正巳 「曼陀羅」
瓜生卓造 「南緯八十度」
曾野綾子 「硝子の悪戯」その他2篇
川上宗薫 「初心」
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小沼丹「白孔雀のゐるホテル」その他2篇×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖 全候補 5 「小沼丹氏の三作の中では「白孔雀のゐるホテル」が優れている。文章も清潔で、ユニークな才能と感性の所産である。併し授賞作品の順位を競うことになると、私の場合、「アメリカン・スクール」のむしろ野暮ったい執拗さの方に傾く。」
佐藤春夫 全候補 5 「唯一つ遺憾なのは、小沼丹の「白孔雀のゐるホテル」がこの作者の並々ならぬ才筆を見せて興趣甚だゆたかに当選の二作にもおさおさ劣らぬ個性的な佳作と思えたが、当選三篇はちと多すぎるとしばらく割愛しなければならなかった。また一つ借りができたような感じである。」
丹羽文雄 全候補 0  
川端康成 全候補 7 「(引用者注:二受賞者に)小沼丹氏を加えて、三人でも一向差支えはなかった。と言うよりも、小沼氏を除くのに強い根拠はなく、三人では多過ぎるかもしれないという、漠然とした空気のようだ。」
宇野浩二 全候補 8 「(引用者注:小沼丹の三作の中では)『白孔雀のゐるホテル』が増しである。」「諷刺の力は弱いけれど、明かるくて品の悪くないのが宜しく、独得の作風である、唯、どの人物も「傀儡」であるのが大きな欠点である。」
石川達三 全候補 4 「小島、庄野、小沼の諸君もみな力量のある人たちだが、正面を外して側面から対象を描いている。」
瀧井孝作 全候補 7 「(引用者注:小島信夫よりも)「白孔雀のゐるホテル」「白い機影」「紅い花」などの方を、採りたかった。小沼氏は、淡彩の風趣のある筆致に、どの作品も、独特の持味がある。好い作家だと思った。」「今回は、三人も当選は多すぎると云われて、小沼氏の残されたのは惜しかった。」
舟橋聖一 全候補 5 「(引用者注:銓衡会の意見は)庄野、小沼の二本立と、庄野、小島の二本立とに、分裂した。私も、小沼丹は、力量ありと見て居り、事件のはこびがうまく、心象を描いて行く行間のタッチが鮮かなのに感心しているが、」
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他の候補作
小島信夫 「アメリカン・スクール」「神」
庄野潤三 「プールサイド小景」
赤木けい子 「碧眼女」
戸川雄次郎 「受胎告知」
鎌原正巳 「曼陀羅」
瓜生卓造 「南緯八十度」
曾野綾子 「硝子の悪戯」その他2篇
川上宗薫 「初心」
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赤木けい子「碧眼女」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖 全候補 5 「生の材料の中から一人の成熟した女としての作者の眼が光って見えている。相当なものである。」「面白さという点では一番面白い。第二作に依って、この人の評価は決まると思う。」
佐藤春夫 全候補 8 「いかにもたどたどしく幼稚な表現力で構成も平板、徒らに長いが、それでいて、見るべきものは痛快なほどはっきりと見ているその眼力は貧弱な筆力を補って余りあるもの。」「と云って小島、庄野らをさし措いて授賞するという程の価値も疑わしかろう。」
丹羽文雄 全候補 3 「私は多数人に読んでもらいたかった。欠点もあるが、読みごたえは十分にある作品である。」
川端康成 全候補 9 「文章と構成に今少し注意が払われていれば、ためらいなくこの作品を推しただろう。同意見の委員も多かった。」「敗戦日本人にたいする啓蒙小説にさえなっていておもしろい。見る目は意地が悪いほどしっかりしている。」
宇野浩二 全候補 9 「文章が未熟で、書き方がくど過ぎ、長たらし過ぎるけれど、しまいまで先ず厭きずに読ませる上に、ところどころ旨いところもある。」「殊更に大形にいうと、この小説は、今度の候補作品の中では一ばん面白かった。が、芥川賞に推薦するには「未だし未だし」である。」
石川達三 全候補 4 「全くの新人で、こういう人が出て来たことは誠に面白い。この人に授賞がきまらなかったのは、委員諸氏の慎重さと責任感からである。」
瀧井孝作 全候補 5 「材料の面白味、世相の新味の方で採れるが、描写はくだくだしい所があり、洗煉がなく、未だ作家としては、未熟ではないかと思った。」
舟橋聖一 全候補 11 「悪くない。材料が奇抜で面白いと云うより、私はみんなの云うほど書き方も下手ではないと思った。」「丹羽君がしきりに赤木を推していた。然しこの前あんなに強硬に推した曾野を、こんどは丹羽君も石川君も、あっさり捨てているので、まア一度は見送ってもよかろうと、私は赤木を、授賞作に推すことは、躊躇した。」
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他の候補作
小島信夫 「アメリカン・スクール」「神」
庄野潤三 「プールサイド小景」
小沼丹 「白孔雀のゐるホテル」その他2篇
戸川雄次郎 「受胎告知」
鎌原正巳 「曼陀羅」
瓜生卓造 「南緯八十度」
曾野綾子 「硝子の悪戯」その他2篇
川上宗薫 「初心」
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戸川雄次郎「受胎告知」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖 全候補 3 「生硬さに於て(引用者中略)躊躇させられるものがあった。」
佐藤春夫 全候補 0  
丹羽文雄 全候補 0  
川端康成 全候補 2 「今後期待する。」
宇野浩二 全候補 5 「なかなか手のこんだ作品ではあるが、よくある男女の面倒な関係を、いやに物体ぶって、もってまわった筆法で、書いてあるだけの物である。」
石川達三 全候補 8 「私は(引用者中略)推したが、(引用者中略)多数の同意を得るには至らなかった。」「川上、戸川両君は正面からぶつかっている。私はこの方に好感をもった。」
瀧井孝作 全候補 0  
舟橋聖一 全候補 0  
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他の候補作
小島信夫 「アメリカン・スクール」「神」
庄野潤三 「プールサイド小景」
小沼丹 「白孔雀のゐるホテル」その他2篇
赤木けい子 「碧眼女」
鎌原正巳 「曼陀羅」
瓜生卓造 「南緯八十度」
曾野綾子 「硝子の悪戯」その他2篇
川上宗薫 「初心」
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鎌原正巳「曼陀羅」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖 全候補 3 「その概念的な説明に於て(引用者中略)躊躇させられるものがあった。」
佐藤春夫 全候補 0  
丹羽文雄 全候補 0  
川端康成 全候補 0  
宇野浩二 全候補 5 「短篇として一と通りまとまっているし、筆も達者であるが、調子が低いのが大きな欠点である。」「この前に候補作品になった『土佐日記』よりずっと落ちる。」
石川達三 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 0  
舟橋聖一 全候補 0  
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他の候補作
小島信夫 「アメリカン・スクール」「神」
庄野潤三 「プールサイド小景」
小沼丹 「白孔雀のゐるホテル」その他2篇
赤木けい子 「碧眼女」
戸川雄次郎 「受胎告知」
瓜生卓造 「南緯八十度」
曾野綾子 「硝子の悪戯」その他2篇
川上宗薫 「初心」
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瓜生卓造「南緯八十度」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖 全候補 4 「材料の未整理に於て(引用者中略)躊躇させられるものがあった。」
佐藤春夫 全候補 0  
丹羽文雄 全候補 0  
川端康成 全候補 2 「今後期待する。」
宇野浩二 全候補 13 「十八世紀のイギリスの極地探検家、スコットが、(引用者中略)艱難辛苦する有り様だけを、くどいほど克明に丹念に書き、その描写は、過褒すると、ところどころ真に迫るところもある、が、唯それだけの物である、」「アムンゼンに対する、敵対する煩悶の書き方が弱すぎるのが難である。」
石川達三 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 0  
舟橋聖一 全候補 0  
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他の候補作
小島信夫 「アメリカン・スクール」「神」
庄野潤三 「プールサイド小景」
小沼丹 「白孔雀のゐるホテル」その他2篇
赤木けい子 「碧眼女」
戸川雄次郎 「受胎告知」
鎌原正巳 「曼陀羅」
曾野綾子 「硝子の悪戯」その他2篇
川上宗薫 「初心」
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曾野綾子「硝子の悪戯」その他2篇×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖 全候補 3 「曾野綾子氏の三作では、「硝子の悪戯」が一番いいが、いずれにせよ、三作ともきらきらした才能を随所に感じながら、不思議に一様に読後の印象が混乱していた。」
佐藤春夫 全候補 0  
丹羽文雄 全候補 4 「大いに期待をかけていたのだが、今回の三作には失望した。曾野さんはいまあぶないところに立っている。「遠来の客たち」の好評が、却って本人を毒したのではないか。」
川端康成