芥川賞のすべて・のようなもの
芥川賞のすべて・のようなもの

第29回

=受賞者=
安岡章太郎

=候補者=
小田仁二郎
杉森久英
伊藤桂一
庄野潤三
和田芳恵
結城信一
豊田三郎
石濱恒夫


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 昭和28年/1953年上半期
 (昭和28年/1953年7月20日決定発表/『文藝春秋』昭和28年/1953年9月号選評掲載)
選考委員  丹羽文雄 宇野浩二 石川達三 佐藤春夫 岸田國士 瀧井孝作 舟橋聖一 坂口安吾 川端康成
選評総行数  26 60 27 30 26 30 38 29 31
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
安岡章太郎 「悪い仲間」「陰気な愉しみ」 評言 15 14 27 18 11 10 15 25 7
小田仁二郎 「からかさ神」 評言 0 7 0 0 0 5 0 4 3
杉森久英 「猿」 評言 0 8 0 0 2 2 5 0 6
伊藤桂一 「黄土の牡丹」 評言 8 7 0 0 1 3 2 0 7
庄野潤三 「恋文」「喪服」 評言 0 5 0 7 5 3 2 0 3
和田芳恵 「塵の中」 評言 0 4 0 0 0 4 8 0 3
結城信一 「落落の章」 評言 0 4 0 0 0 3 0 0 3
豊田三郎 「好きな絵」 評言 0 6 0 4 3 2 12 0 5
石濱恒夫 「らぷそでい・いん・ぶるう」 評言 0 8 0 0 3 4 6 0 4
                 
見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和28年/1953年9月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員丹羽文雄×各候補作  見方・注意点
選評 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎 全委員 15 「「悪い仲間」より「陰気な愉しみ」の方を、私はとる。このひとの受賞は妥当であった。戦後にあらわれた作家のなかで、私にはこのひとほど才能のゆたかな、ユニークな作家を知らない。こういう作風はえてして借りものが多いのだが、このひとのは素質だ。」「このひと独自の才能がじっくり腰をおちつけ、己の才能を十二分につかうことが出来るようになった点では、今度の作品にしてはじめて言われることである。一作一作とよくなっていくのはたのもしい。」
小田仁二郎 全委員 0  
杉森久英 全委員 0  
伊藤桂一 全委員 8 「私は(引用者中略)推していたが、最後まで銓衡にのこったので満足だった。このまえの候補作品にくらべると、一段と精進のあとがみえた。」「通俗的な興味や構成の失敗はみとめられる。しかしこのひとの精進には信頼がおける。その意味で推したのだが、芥川賞としては十分な作品ではなかった。」
庄野潤三 全委員 0  
和田芳恵 全委員 0  
結城信一 全委員 0  
豊田三郎 全委員 0  
石濱恒夫 全委員 0  
  「今度の審査会の雰囲気は、いつになく活溌で、私にはおもしろかった。だんだんと調子が出てきたようである。」
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他の選考委員
宇野浩二
石川達三
佐藤春夫
岸田國士
瀧井孝作
舟橋聖一
坂口安吾
川端康成
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選考委員宇野浩二×各候補作  見方・注意点
皆無難 総行数60 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎 全委員 14 「私はこの二つの作品(引用者注:「悪い仲間」「陰気な愉しみ」)にも頸をひねるのである、簡単に云うと、『陰気な愉しみ』は、すっと読めるが、たよりなさ過ぎ、『悪い仲間』は、『愛玩』よりずっと落ちる上に、趣向は面白いけれど、荷が勝ち過ぎているように思われるのが気になるからである。しかし、又大冒険をした藤井がミソとニボシを買ってくるところなどを読むと、なかなか味をやる人だ、と思った、そうして、こういう『味』はこの人独得のものである。」
小田仁二郎 全委員 7 「「困りもの」だ。」「読むのに、ほとほと持て余した。」
杉森久英 全委員 8 「「困りもの」だ。」「読むのに、ほとほと持て余した。」
伊藤桂一 全委員 7 「「困りもの」だ。」「読むのに、ほとほと持て余した。」
庄野潤三 全委員 5 「『恋文』には初初しさがある、しかし、この作品は幼稚すぎ、『喪服』は物たりない。」
和田芳恵 全委員 4 「『薹が立つ』程であるから、うまい事はうまいけれど、『塵の中』や『落落の章』では困るのである、」
結城信一 全委員 4 「『薹が立つ』程であるから、うまい事はうまいけれど、『塵の中』や『落落の章』では困るのである、」
豊田三郎 全委員 6 「一しょけんめいに書いてあるのに好意は持てるが、けっきょく、常識的であり、肝心の最後の所はひどい。結局、この小説も、「困りもの」の一つである。」
石濱恒夫 全委員 8 「「困りもの」だ。」「読むのに、ほとほと持て余した。」
  「せっかく芥川賞を制定した菊池の「無名(あるひは新進)の作家を世に出すため」という事には、これらの作家は、ほとんど当てはまらない、という事になる。」「初めに制定した菊池の考えは出来るだけ通すべきである。それでそれに該当する作品がなければ、何度でも、断然『ナシ』とすべきである。」「最近の五つ六つの芥川賞の中には、(『中には』である)、その前にも幾つかあったが、銓衡委員たちの意見を左右して、(は言い過ぎとして、)銓衡委員たちの意見を大いに参考にして「文藝春秋」の係りの方で、極めるようにする傾向(『傾向』である)がある。」
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丹羽文雄
石川達三
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瀧井孝作
舟橋聖一
坂口安吾
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選考委員石川達三×各候補作  見方・注意点
私の所感 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎 全委員 27 「安岡君の二つの作品は特に問題にはなるまいと思っていた。それが当選ときまったのは意外であった。」「「陰気な愉しみ」は感覚だけの作品と云ってもいい。それが、末梢神経だけの感覚であって、それだけで終っている。」「「悪い仲間」について(引用者中略)私はちっとも新しいとは思わないのだ。」「前作「愛玩」についても言えることだと思うが、この作者の作品は、描写が地べたを這っている。」「この種の作品を推奨することは、純文学を面白くないものにしてしまう危険がありはしないだろうか。」
小田仁二郎 全委員 0  
杉森久英 全委員 0  
伊藤桂一 全委員 0  
庄野潤三 全委員 0  
和田芳恵 全委員 0  
結城信一 全委員 0  
豊田三郎 全委員 0  
石濱恒夫 全委員 0  
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丹羽文雄
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瀧井孝作
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選考委員佐藤春夫×各候補作  見方・注意点
安岡なら「悪い仲間」に限る 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎 全委員 18 「すくなくとも今回のところ安岡の作品が最も賛成、」「「陰気な愉しみ」はあまりに断片的な小品ではないか、これに比べて「悪い仲間」の方にはたくましく大きな、というよりは太々しく投げ出したような面白さのうちに一種立体派的のスタイルもあり、短篇ながらよく圧搾されて膨脹率の多いもので「陰気な愉しみ」とは到底同日の談ではない。」「「もし陰気な愉しみ」だけなら余人は知らず僕はむしろ庄野を推したろう。」
小田仁二郎 全委員 0  
杉森久英 全委員 0  
伊藤桂一 全委員 0  
庄野潤三 全委員 7 「小粒ではあるが美質ではあり出来栄えもすなおという愚見は一座の同感を得たが坂口君がアマチュアの余技ならば名篇と感心しても、文学者の文学作品として授賞に相当するには二篇を合せ考えてもちと微弱だろうというのが公論として通用してみると、」
和田芳恵 全委員 0  
結城信一 全委員 0  
豊田三郎 全委員 4 「豊田氏に授賞は舟橋の力説であったが稍々奨励賞めくし「好きな絵」はなるほど氏近来の佳作としても以前に「仮面天使」ほどの作のあった氏としては今更の観もあろうと沙汰やみは小生も同感、ともあれ氏の努力は望ましい。」
石濱恒夫 全委員 0  
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宇野浩二
石川達三
岸田國士
瀧井孝作
舟橋聖一
坂口安吾
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選考委員岸田國士×各候補作  見方・注意点
選後に 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎 全委員 11 「「悪い仲間」と「陰気な愉しみ」は、いずれも稀にみるすぐれた才能を示した短篇小説だが、これだけとしては出来栄えにやや物足りないところがある。この作者の仕事を私は「ガラスの靴」以来注目していたので、(引用者中略)以上の二篇に授賞してもだいたい間違いはないと考えた。しかし、この作者は、もっといいものの書ける人だ。」
小田仁二郎 全委員 0  
杉森久英 全委員 2 「野心的とはいえるが説得力が足りない。」
伊藤桂一 全委員 1 「興味本位でありすぎる。」
庄野潤三 全委員 5 「一種の才気と、ちょっと心にくいほどの新鮮な観察とを、私は可なり高く評価する。しっかりと足を地につけて悠々と自分の領域をひらいていくであろうこの作者の将来は非常に楽しみである。」
和田芳恵 全委員 0  
結城信一 全委員 0  
豊田三郎 全委員 3 「真向うからぐんぐん描き込んだというような力感のある佳作だけれども、芥川賞候補としてこの作家はもうあまりに有名だ。」
石濱恒夫 全委員 3 「計劃された文体の効果は惜しくも的を外れている。新しくと努力しただけ古く見えるような誤算に満ちた作品である。」
  「特に一篇だけ傑出したというものはなかった。」
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他の選考委員
丹羽文雄
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石川達三
佐藤春夫
瀧井孝作
舟橋聖一
坂口安吾
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選考委員瀧井孝作×各候補作  見方・注意点
安岡氏を推す 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎 全委員 10 「安岡章太郎氏の短篇は、前にいくつか佳いのを読んだ。こんどの二つも悪くない。それで、こんどこの人が当選することには、賛成した。」「確かりして活きいきした所があり、何か噛附いて行くような強い所があった。確かりした独自の観察眼があるから、尚この上、視野が、ひろがれば、結構だと思った。」
小田仁二郎 全委員 5 「一寸面白い所があるが、これは童話の味に溺れているのではないかしら。この人は、前に『昆虫系』という短篇で、一寸わけのわからない不思議なものを持っている人だと見たが、こんどのこの童話は余りに分りすぎる。」
杉森久英 全委員 2 「筆に精彩がないのがものたりなかった。」
伊藤桂一 全委員 3 「小説というよりも、陣中情話と云ったようなもので、面白がらせる読物にすぎないと思った。」
庄野潤三 全委員 3 「『恋文』の方が初いういしくて好きだが『喪服』の方は、まだ不消化の所があった。」
和田芳恵 全委員 4 「力作だが、何か古い感じで、それが惜しかった。古さから抜出したらよいが、これは大変なことだろう。」
結城信一 全委員 3 「素直な所に好意は持てるけれど、稍冗漫だから、もっと簡潔に、力があった方が佳い。自分の弱さか何かに溺れている所が惜しい。」
豊田三郎 全委員 2 「力があるが、もう少し初いういしい所があれば尚佳いと思った。」
石濱恒夫 全委員 4 「第一章は、何かふくざつな濃い味があって面白かったが、第二章以下は、又余りにさばさばしたもので、潤いがなく感興も淡かった。」
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佐藤春夫
岸田國士
舟橋聖一
坂口安吾
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選考委員舟橋聖一×各候補作  見方・注意点
豊田と安岡 総行数38 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎 全委員 15 「「悪い仲間」という作品は、一応、面白く読んだ。」「無銭飲食の場面も、手に入っている。」「これに反して「陰気な愉しみ」のほうは、未熟なもので、安岡の欠点ばかりのようなものだ。前者を授賞作品にすることは、前々から度々候補になった彼の経歴によって、納得出来るが、後者まで一緒に採用したのは、安岡にのみ、点が甘いようで、公平とは云えない。」
小田仁二郎 全委員 0  
杉森久英 全委員 5 「興味を持った。」「月評では、問題作だったのに、芥川賞の委員には、三文の価値なしとされたのは、意外である。最後の章では、いかにも無理無残な話になるが、前半はよく精密に書いている。」
伊藤桂一 全委員 2  
庄野潤三 全委員 2  
和田芳恵 全委員 8 「興味を持った。」「直木賞へ廻したらどうかという議もあったが、結局、芥川・直木両賞の、どっちつかずで、損をした。但し、この作品の書出しは、頗る上手だ。」
結城信一 全委員 0  
豊田三郎 全委員 12 「戦後、「仮面天使」を書いただけで、長く沈滞していた人だから「好きな絵」のような佳作を書いてカムバックを示したときは、芥川賞をやって、激励するのもいいと思う。」「豊田ばかりでなく、戦前派の中で、いい素質のある人が、機会をつかみ損っている場合は、やはり話題に上すべきだろう。」
石濱恒夫 全委員 6 「今回の最年少で、安岡よりも若い。小説は達者になりそうだが、多発的な好奇心が、まだ整頓されていないので、形式も素材も、半煮えで且つお粗末である。」
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他の選考委員
丹羽文雄
宇野浩二
石川達三
佐藤春夫
岸田國士
瀧井孝作
坂口安吾
川端康成
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選考委員坂口安吾×各候補作  見方・注意点
淋しい可憐な 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎 全委員 25 「独特の観察とチミツな文章でもっている作風であるから、流行作家には不適格かも知れないが、それだけに熱心な愛読者には本がすりきれるほど読まれるような人だ。」「「陰気な愉しみ」と「悪い仲間」は氏の作品のうちで出色のものとは思わないが(過去にもっと傑れたのが二三あった)この作家はいかにも芥川賞の作品でございというような物々しい大作には縁遠い人なのだから、このような独特な作家の場合は一作について云々すべきではない。」「実に淋しい小説だ。せつない小説である。しかし、可憐な、愛すべき小説である。」
小田仁二郎 全委員 4 「私は好きであった。特にメルヘンとことわるのは不要であろう。文学とは、こんなものだ。別に大人の文学を考えがちなのが、この作者の至らぬところではないかと思った。」
杉森久英 全委員 0  
伊藤桂一 全委員 0  
庄野潤三 全委員 0  
和田芳恵 全委員 0  
結城信一 全委員 0  
豊田三郎 全委員 0  
石濱恒夫 全委員 0  
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他の選考委員
丹羽文雄
宇野浩二
石川達三
佐藤春夫
岸田國士
瀧井孝作
舟橋聖一
川端康成
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選考委員川端康成×各候補作  見方・注意点
特異な作家 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎 全委員 7 「授賞には賛成である。しかし、今回の「悪い仲間」「陰気な愉しみ」よりは、前回の「愛玩」の方が、作品としてよほどすぐれていたと、私は考える。」「前回の「愛玩」より悪いと考える作品に賛成するのは幾分ためらうが、安岡氏という特異な作家を推すのにはためらわなかった。」
小田仁二郎 全委員 3 「私にはおもしろかった。しかし、これだけでは賞の問題にはならない。」
杉森久英 全委員 6 「主観の勝った、主観による構成のいちじるしい作品で、その力は感じられる。しかし、構成する主観の動きに、乾燥した無理が見えるように思う。作者は感動していても、読者はちょっと後に取り残される。」「少し強過ぎるようだ。」
伊藤桂一 全委員 7 「主観の勝った、主観による構成のいちじるしい作品で、その力は感じられる。しかし、構成する主観の動きに、乾燥した無理が見えるように思う。作者は感動していても、読者はちょっと後に取り残される。」「少し通俗になっている。」
庄野潤三 全委員 3 「素直だけれども、なお今後に期待すべき作者と思われる。」
和田芳恵 全委員 3 「人間生活が充実していて、女性の活写に読みごたえする力作であったが、表現がやや古く、文章が少し無造作ではないだろうか。」
結城信一 全委員 3 「素直だけれども、なお今後に期待すべき作者と思われる。」
豊田三郎 全委員 5 「今回の作品中で推薦するのに無難だと思った。しかし、豊田氏はすでに知名の作家で、芥川賞の新人とするのにはどうであろうか。」「好短篇だが、心理を摘発する作者が健全過ぎるのは物足りないようだった。」
石濱恒夫 全委員 4 「才能の豊かな作家と考えている。」「その曲の構成に倣ったのであろうか。材料を多く書きこみ過ぎ、工夫を凝らし過ぎたかもしれない。」
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他の選考委員
丹羽文雄
宇野浩二
石川達三
佐藤春夫
岸田國士
瀧井孝作
舟橋聖一
坂口安吾
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安岡章太郎「悪い仲間」「陰気な愉しみ」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄 全候補 15 「「悪い仲間」より「陰気な愉しみ」の方を、私はとる。このひとの受賞は妥当であった。戦後にあらわれた作家のなかで、私にはこのひとほど才能のゆたかな、ユニークな作家を知らない。こういう作風はえてして借りものが多いのだが、このひとのは素質だ。」「このひと独自の才能がじっくり腰をおちつけ、己の才能を十二分につかうことが出来るようになった点では、今度の作品にしてはじめて言われることである。一作一作とよくなっていくのはたのもしい。」
宇野浩二 全候補 14 「私はこの二つの作品(引用者注:「悪い仲間」「陰気な愉しみ」)にも頸をひねるのである、簡単に云うと、『陰気な愉しみ』は、すっと読めるが、たよりなさ過ぎ、『悪い仲間』は、『愛玩』よりずっと落ちる上に、趣向は面白いけれど、荷が勝ち過ぎているように思われるのが気になるからである。しかし、又大冒険をした藤井がミソとニボシを買ってくるところなどを読むと、なかなか味をやる人だ、と思った、そうして、こういう『味』はこの人独得のものである。」
石川達三 全候補 27 「安岡君の二つの作品は特に問題にはなるまいと思っていた。それが当選ときまったのは意外であった。」「「陰気な愉しみ」は感覚だけの作品と云ってもいい。それが、末梢神経だけの感覚であって、それだけで終っている。」「「悪い仲間」について(引用者中略)私はちっとも新しいとは思わないのだ。」「前作「愛玩」についても言えることだと思うが、この作者の作品は、描写が地べたを這っている。」「この種の作品を推奨することは、純文学を面白くないものにしてしまう危険がありはしないだろうか。」
佐藤春夫 全候補 18 「すくなくとも今回のところ安岡の作品が最も賛成、」「「陰気な愉しみ」はあまりに断片的な小品ではないか、これに比べて「悪い仲間」の方にはたくましく大きな、というよりは太々しく投げ出したような面白さのうちに一種立体派的のスタイルもあり、短篇ながらよく圧搾されて膨脹率の多いもので「陰気な愉しみ」とは到底同日の談ではない。」「「もし陰気な愉しみ」だけなら余人は知らず僕はむしろ庄野を推したろう。」
岸田國士 全候補 11 「「悪い仲間」と「陰気な愉しみ」は、いずれも稀にみるすぐれた才能を示した短篇小説だが、これだけとしては出来栄えにやや物足りないところがある。この作者の仕事を私は「ガラスの靴」以来注目していたので、(引用者中略)以上の二篇に授賞してもだいたい間違いはないと考えた。しかし、この作者は、もっといいものの書ける人だ。」
瀧井孝作 全候補 10 「安岡章太郎氏の短篇は、前にいくつか佳いのを読んだ。こんどの二つも悪くない。それで、こんどこの人が当選することには、賛成した。」「確かりして活きいきした所があり、何か噛附いて行くような強い所があった。確かりした独自の観察眼があるから、尚この上、視野が、ひろがれば、結構だと思った。」
舟橋聖一 全候補 15 「「悪い仲間」という作品は、一応、面白く読んだ。」「無銭飲食の場面も、手に入っている。」「これに反して「陰気な愉しみ」のほうは、未熟なもので、安岡の欠点ばかりのようなものだ。前者を授賞作品にすることは、前々から度々候補になった彼の経歴によって、納得出来るが、後者まで一緒に採用したのは、安岡にのみ、点が甘いようで、公平とは云えない。」
坂口安吾 全候補 25 「独特の観察とチミツな文章でもっている作風であるから、流行作家には不適格かも知れないが、それだけに熱心な愛読者には本がすりきれるほど読まれるような人だ。」「「陰気な愉しみ」と「悪い仲間」は氏の作品のうちで出色のものとは思わないが(過去にもっと傑れたのが二三あった)この作家はいかにも芥川賞の作品でございというような物々しい大作には縁遠い人なのだから、このような独特な作家の場合は一作について云々すべきではない。」「実に淋しい小説だ。せつない小説である。しかし、可憐な、愛すべき小説である。」
川端康成 全候補 7 「授賞には賛成である。しかし、今回の「悪い仲間」「陰気な愉しみ」よりは、前回の「愛玩」の方が、作品としてよほどすぐれていたと、私は考える。」「前回の「愛玩」より悪いと考える作品に賛成するのは幾分ためらうが、安岡氏という特異な作家を推すのにはためらわなかった。」
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他の候補作
小田仁二郎 「からかさ神」
杉森久英 「猿」
伊藤桂一 「黄土の牡丹」
庄野潤三 「恋文」「喪服」
和田芳恵 「塵の中」
結城信一 「落落の章」
豊田三郎 「好きな絵」
石濱恒夫 「らぷそでい・いん・ぶるう」
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小田仁二郎「からかさ神」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄 全候補 0  
宇野浩二 全候補 7 「「困りもの」だ。」「読むのに、ほとほと持て余した。」
石川達三 全候補 0  
佐藤春夫 全候補 0  
岸田國士 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 5 「一寸面白い所があるが、これは童話の味に溺れているのではないかしら。この人は、前に『昆虫系』という短篇で、一寸わけのわからない不思議なものを持っている人だと見たが、こんどのこの童話は余りに分りすぎる。」
舟橋聖一 全候補 0  
坂口安吾 全候補 4 「私は好きであった。特にメルヘンとことわるのは不要であろう。文学とは、こんなものだ。別に大人の文学を考えがちなのが、この作者の至らぬところではないかと思った。」
川端康成 全候補 3 「私にはおもしろかった。しかし、これだけでは賞の問題にはならない。」
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他の候補作
安岡章太郎 「悪い仲間」「陰気な愉しみ」
杉森久英 「猿」
伊藤桂一 「黄土の牡丹」
庄野潤三 「恋文」「喪服」
和田芳恵 「塵の中」
結城信一 「落落の章」
豊田三郎 「好きな絵」
石濱恒夫 「らぷそでい・いん・ぶるう」
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杉森久英「猿」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄 全候補 0  
宇野浩二 全候補 8 「「困りもの」だ。」「読むのに、ほとほと持て余した。」
石川達三 全候補 0  
佐藤春夫 全候補 0  
岸田國士 全候補 2 「野心的とはいえるが説得力が足りない。」
瀧井孝作 全候補 2 「筆に精彩がないのがものたりなかった。」
舟橋聖一 全候補 5 「興味を持った。」「月評では、問題作だったのに、芥川賞の委員には、三文の価値なしとされたのは、意外である。最後の章では、いかにも無理無残な話になるが、前半はよく精密に書いている。」
坂口安吾 全候補 0  
川端康成 全候補 6 「主観の勝った、主観による構成のいちじるしい作品で、その力は感じられる。しかし、構成する主観の動きに、乾燥した無理が見えるように思う。作者は感動していても、読者はちょっと後に取り残される。」「少し強過ぎるようだ。」
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他の候補作
安岡章太郎 「悪い仲間」「陰気な愉しみ」
小田仁二郎 「からかさ神」
伊藤桂一 「黄土の牡丹」
庄野潤三 「恋文」「喪服」
和田芳恵 「塵の中」
結城信一 「落落の章」
豊田三郎 「好きな絵」
石濱恒夫 「らぷそでい・いん・ぶるう」
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伊藤桂一「黄土の牡丹」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄 全候補 8 「私は(引用者中略)推していたが、最後まで銓衡にのこったので満足だった。このまえの候補作品にくらべると、一段と精進のあとがみえた。」「通俗的な興味や構成の失敗はみとめられる。しかしこのひとの精進には信頼がおける。その意味で推したのだが、芥川賞としては十分な作品ではなかった。」
宇野浩二 全候補 7 「「困りもの」だ。」「読むのに、ほとほと持て余した。」
石川達三 全候補 0  
佐藤春夫 全候補 0  
岸田國士 全候補 1 「興味本位でありすぎる。」
瀧井孝作 全候補 3 「小説というよりも、陣中情話と云ったようなもので、面白がらせる読物にすぎないと思った。」
舟橋聖一 全候補 2  
坂口安吾 全候補 0  
川端康成 全候補 7 「主観の勝った、主観による構成のいちじるしい作品で、その力は感じられる。しかし、構成する主観の動きに、乾燥した無理が見えるように思う。作者は感動していても、読者はちょっと後に取り残される。」「少し通俗になっている。」
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他の候補作
安岡章太郎 「悪い仲間」「陰気な愉しみ」
小田仁二郎 「からかさ神」
杉森久英 「猿」
庄野潤三 「恋文」「喪服」
和田芳恵 「塵の中」
結城信一 「落落の章」
豊田三郎 「好きな絵」
石濱恒夫 「らぷそでい・いん・ぶるう」
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庄野潤三「恋文」「喪服」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄 全候補 0  
宇野浩二 全候補 5 「『恋文』には初初しさがある、しかし、この作品は幼稚すぎ、『喪服』は物たりない。」
石川達三 全候補 0  
佐藤春夫 全候補 7 「小粒ではあるが美質ではあり出来栄えもすなおという愚見は一座の同感を得たが坂口君がアマチュアの余技ならば名篇と感心しても、文学者の文学作品として授賞に相当するには二篇を合せ考えてもちと微弱だろうというのが公論として通用してみると、」
岸田國士 全候補 5 「一種の才気と、ちょっと心にくいほどの新鮮な観察とを、私は可なり高く評価する。しっかりと足を地につけて悠々と自分の領域をひらいていくであろうこの作者の将来は非常に楽しみである。」
瀧井孝作 全候補 3 「『恋文』の方が初いういしくて好きだが『喪服』の方は、まだ不消化の所があった。」
舟橋聖一 全候補 2  
坂口安吾 全候補 0  
川端康成 全候補 3 「素直だけれども、なお今後に期待すべき作者と思われる。」
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他の候補作
安岡章太郎 「悪い仲間」「陰気な愉しみ」
小田仁二郎 「からかさ神」
杉森久英 「猿」
伊藤桂一 「黄土の牡丹」
和田芳恵 「塵の中」
結城信一 「落落の章」
豊田三郎 「好きな絵」
石濱恒夫 「らぷそでい・いん・ぶるう」
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和田芳恵「塵の中」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄 全候補 0  
宇野浩二 全候補 4 「『薹が立つ』程であるから、うまい事はうまいけれど、『塵の中』や『落落の章』では困るのである、」
石川達三 全候補 0  
佐藤春夫 全候補 0  
岸田國士 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 4 「力作だが、何か古い感じで、それが惜しかった。古さから抜出したらよいが、これは大変なことだろう。」
舟橋聖一 全候補 8 「興味を持った。」「直木賞へ廻したらどうかという議もあったが、結局、芥川・直木両賞の、どっちつかずで、損をした。但し、この作品の書出しは、頗る上手だ。」
坂口安吾 全候補 0  
川端康成 全候補 3 「人間生活が充実していて、女性の活写に読みごたえする力作であったが、表現がやや古く、文章が少し無造作ではないだろうか。」
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他の候補作
安岡章太郎 「悪い仲間」「陰気な愉しみ」
小田仁二郎 「からかさ神」
杉森久英 「猿」
伊藤桂一 「黄土の牡丹」
庄野潤三 「恋文」「喪服」
結城信一 「落落の章」
豊田三郎 「好きな絵」
石濱恒夫 「らぷそでい・いん・ぶるう」
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結城信一「落落の章」×各選考委員