芥川賞のすべて・のようなもの
芥川賞のすべて・のようなもの

選評の概要
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中村光夫
Nakamura Mitsuo
生没年月日【注】 明治44年/1911年2月5日〜昭和63年/1988年7月12日
在任期間 第34回〜第95回(通算31年・62回)
在任年齢 44歳10ヶ月〜75歳4ヶ月
経歴 本名=木庭一郎。東京市下谷区生まれ。東京帝国大学文学部仏文学科卒。在学中より文芸評論活動を始める。昭和13年/1938年〜昭和14年/1939年にパリ大学で学ぶ。文芸評論家として活動する一方で、昭和32年/1957年からは戯曲を、昭和38年/1963年からは小説も発表し始める。
受賞歴 第1回池谷信三郎賞(昭和11年/1936年)「二葉亭四迷論」
第3回読売文学賞文芸評論賞(昭和26年/1951年)諸論文
第10回読売文学賞[編集] 評論・伝記賞(昭和33年/1958年)『二葉亭四迷伝』
第16回読売文学賞戯曲賞(昭和39年/1964年)『汽笛一声』《戯曲》
第20回野間文芸賞(昭和42年/1967年)『贋の偶像』
日本芸術院賞[評論・翻訳](昭和42年/1967年)
個人全集 『中村光夫全集』全16巻(昭和46年/1971年11月〜昭和48年/1973年7月・筑摩書房刊)
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 34 昭和30年/1955年下半期   一覧へ
選評の概要 石原君、しっかり 総行数39 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎 24 「未成品といえば一番ひどい未成品ですが、未完成がそのまま未知の生命力の激しさを感じさせる点で異彩を放っています。」「常識から云えば、この文脈もところどころ怪しい。「丁度」を「調度」と書くような学生に芥川賞をあたえることは、少なくも考えものでしょう。」「石原氏への授賞に賛成しながら、僕はなにかとりかえしのつかぬむごいことをしてしまったような、うしろめたさを一瞬感じました。」「しかしこういうむごさをそそるものがたしかにこの小説にはあります。おそらくそれが石原氏の才能でしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和31年/1956年3月号)
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芥川賞 35 昭和31年/1956年上半期   一覧へ
選評の概要 「夏の嵐」を推す 総行数45 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
深井迪子 16 「既成の小説の規格を破って、何か自分の云いたいことを云おうとする野心に燃えています。そしてその企図は必ずしも成功していないにせよ、作者が何を書きたかったかということは、はっきり伝わってくるし、現代の青年男女がかつてない新しい面から描かれています。」「作者の観察は未熟で一面的であり、近親相姦の設定など不必要と思われますが、とにかく若い精神が時代の無道徳にどうたえているかという大問題が正面から提起されています。」
近藤啓太郎 5 「多年の努力がようやく描写の技巧で規格に達する作品を生んだというだけで、型にはまった空疎な物語という印象を受けました。」「一番小説臭すぎて詰らない小説と思っていたので、この授賞は僕には意外でした。」
  「(引用者注:候補作は)あまり不出来なものはない代りに際立った秀作も見当りませんでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和31年/1956年9月号)
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芥川賞 36 昭和31年/1956年下半期   一覧へ
選評の概要 受賞作なし 総行数36 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
  「軍隊と戦争を扱った作品が多いのが、まず目立ちました。戦後十年の現在が、我国でも本当の戦争文学の出る時期で、これらの作品はその前触れかも知れません。」「僕も授賞作なしに賛成しましたが、「なし」にきめるのはなにか寂しい気がして、がっかりします。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和32年/1957年3月号)
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芥川賞 37 昭和32年/1957年上半期   一覧へ
選評の概要 疑問と期待 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到 17 「候補作のなかで、菊村氏が抜群の才を感じさせるのは事実ですが、氏の作風にはかなり疑問の点があります。「不法所持」は力作であるだけに、物語をつくりあげる才能の逞しさとともに、欠点もはっきりでています。(引用者中略)普通の犯罪小説以上のものを狙った作者の意図は納得できても、安手なつくりものという印象を拭いきれません。」「「硫黄島」はそれにくらべると、力が弱い代りによくまとまっていて、厭味もないので、授賞作としてはこの方が適当と思いました。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和32年/1957年9月号)
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芥川賞 38 昭和32年/1957年下半期   一覧へ
選評の概要 粘りのある腰 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健 11 「予期通り、開高氏か大江氏かということになりましたが、決定には骨が折れました。」「近ごろめずらしい骨の太い、構成力もしっかりした新人で、「パニック」などには、島木健作を思わせるところがあり、派手ではなくとも将来に期待できる人と思われます」「「裸の王様」は、着想の新しさ、粘りのある腰、底にある批評精神など、作者の資性の長所がはっきりでた小説であり、欠点はあっても、既成作家の作品に充分伍し得る出来栄え」「作品としては(引用者注:大江健三郎より)「裸の王様」をとる、というのが僕の意見です。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和33年/1958年3月号)
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芥川賞 39 昭和33年/1958年上半期   一覧へ
選評の概要 無名の新人発見を 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
大江健三郎 17 「「飼育」が予選通過作品のなかで抜群の出来であるのは、ほとんど誰も異存のなかった」「僕は芥川賞はすでに名をなした新人顕彰より、むしろ無名の新人発見を使命とすべきだという考えから、氏の受賞には反対でした。」「しかし授賞ときまれば、それもまたよいという気がするのは、大江氏の才能の性格によるのでしょうか。」
  「今回は授賞作品なしというのが僕の意見でした。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和33年/1958年9月号)
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芥川賞 40 昭和33年/1958年下半期   一覧へ
選評の概要 不作 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
  「今度は候補作の数が多いわりに、よいものがなく、「なし」はまず妥当な帰結でした。」「千幾篇のなかから選んだのがこれでは不作というほかありません。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和34年/1959年3月号)
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芥川賞 41 昭和34年/1959年上半期   一覧へ
選評の概要 「山塔」の必然性 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
斯波四郎 15 「地味でわがままな作品ですが、とりつきにくい代りに、そこに展開される世界は、はっきり作者のものです。」「人間がいるとか、人生が感じられるとかいう評語はそこからでるわけです。」「小説として欠点はいろいろあっても、作者は小説を書かずにいられぬ人であり、「山塔」はその必然性を充分感じさせます。問題は、このモチイフの必然性だけが裸で歩いているような作風にどう肉をつけて行くかですが、受賞がこれを促す転機になればと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和34年/1959年9月号)
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芥川賞 42 昭和34年/1959年下半期   一覧へ
選評の概要 収穫なし 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
  「席上で、いくらか問題になった作品は三篇だけでしたが、そのどれもが受賞に値しないというのが、大多数の一致した意見で、実に寂しい会でした。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和35年/1960年3月号)
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芥川賞 43 昭和35年/1960年上半期   一覧へ
選評の概要 群像を描く才能 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
北杜夫 7 「一番たしかな才能を感じさせる力作でした。」「前々回の「狂詩」あたりとくらべると、別人の感がありますが、何か調子が低く、無駄が多いのが気になります。しかし現代の大きな問題を背景に、たっぷりした筆力で群像を描いて行く才能は、その欠点を補うに充分でしょう。」
  「今度はめずらしく候補作品の粒がそろっていました。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和35年/1960年9月号)
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芥川賞 44 昭和35年/1960年下半期   一覧へ
選評の概要 できた作品 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三浦哲郎 15 「一口に云えばいかにも古めかしいので、童話のように幸福な恋愛と結婚を物語りながら、恋愛が一方的に前提とされているだけで、少しも描かれていないという気がします。」「ともかく一応できた作品であり、作者の性格の或る強さが感じられることはたしかです。」
  「候補作の粒がそろっているわりに、これといって当選作に推したいものはありませんでした。」「今度の審査会は、候補作の水準が丁度そうなっていたせいか、各自の文学観の違いが、試験紙の反応のようにはっきりでて、いい勉強となりました。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和36年/1961年3月号)
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芥川賞 45 昭和36年/1961年上半期   一覧へ
選評の概要 優劣なし 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山川方夫 9 「なかで際立って技巧的にすぐれ、題材も作者に切実なものと思われるので、弱いところはあっても当選に値するのではないかと思いましたが、席上反対論は意外に多く、それを撥ねかえせない弱点が、この作品にあることは認めないわけに行きません。」「しかしそれを認めても、これを越えて当選させたい作品は他に見当らないというのが僕の気持でした。」
  「予選通過作が七篇ともあまり優劣のない出来で、それだけにこれひとつというのがなく、結局、当選作なしときまりました。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和36年/1961年9月号)
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芥川賞 46 昭和36年/1961年下半期   一覧へ
選評の概要 背丈がたりない 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
宇能鴻一郎 10 「巨鯨と人間の闘いという、古い文学的テーマを奔放な若々しい筆致で仕上げたところに、人真似でない熱情と個性が感じられ、なにかをする人であろうという期待はよせられます。」「文章そのものに、絵で言うと、絵具の質の悪いようなところがあるのが、一番気がかりです。しかしいわゆる芸術家でないところにこの人の新しさがあるのかも知れません。」
  「今回は予選を通過した作家に新顔が少なく、二度目三度目の人が過半をしめたのが特色でした。」「そのせいか出来栄えが平均しているわりに、新鮮な傑出した作品がなく、候補作としては全部文句なくみとめられても、積極的に当選させたいものは、見当りませんでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和37年/1962年3月号)
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芥川賞 47 昭和37年/1962年上半期   一覧へ
選評の概要 書きたいものを持つこと 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
川村晃 9 「作者が、ひとり合点を楽しんでいる小説で、そのいい気なところに反撥する人がいるのは当然だし、技術的に未熟という評もあたっています。しかし作者が何か書きたいものを持ち、それがはっきりしない形でも、とにかくでていることは確かです。」「新人への授賞は、折紙をつける場合も、賭けする気持でする場合もあり、それでよいのだと思います。」
  「今度も同じような出来栄えの作品が多くて、票がわれるのではないかと思って出席しました。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和37年/1962年9月号)
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芥川賞 48 昭和37年/1962年下半期   一覧へ
選評の概要 当選作なし 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
  「どれも予選を通った理由はわかっても、当選作とするには力が弱い感じです。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和38年/1963年3月号)
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芥川賞 49 昭和38年/1963年上半期   一覧へ
選評の概要 二作より一作 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
後藤紀一 8 「少年の対人感情があまり一本調子で、しかも不自然なところがあり、そのために読後の印象が不純になります。しかしいわゆる文化人のおかしな生態をかなり生き生き描きだした点に、ある新しさがあることはたしかで、候補作のうちでは、これを第一に推しました。しかし文句のない当選作とは云えません。」
河野多恵子 4 「氏にしては尋常すぎる作品で、大きな傷もない代りにやや冗長で力の乏しいきらいがあります。しかし作品の完成度においては他をぬいているので、これが受賞したのも当然でしょう。」
  「一作でよいから、もっと積極的に推せる作品がほしいと、いつもながら思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和38年/1963年9月号)
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芥川賞 50 昭和38年/1963年下半期   一覧へ
選評の概要 「感傷旅行」を推す 総行数36 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
田辺聖子 9 「軽薄な世界を軽薄な筆致で描ききった作品で、そこに意外な効果が生れていますが、その独創性が意識されていない、というより意識したらこわれてしまうような性質のものであることが問題です。」「この作品にとは云えなくても、少なくも作者のなかに文学があるのはたしかです。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和39年/1964年3月号)
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芥川賞 51 昭和39年/1964年上半期   一覧へ
選評の概要 若さの唄 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柴田翔 15 「長さの点から、候補作とみとめるかどうかについて、論議が交されましたが、それがきまると、授賞作もこれに自然落付いてしまったのは、作品の比重から云って当然でしょう。」「小説としての欠点はいくらでもあげられます。」「しかしその代り、この小説の根底には、ほとんど生臭いほどみずみずしい抒情の欲求があり、読みおわると稚拙な表現を通じて、それがはっきり伝わってきます。作者の人生にたいする姿勢の問題です。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和39年/1964年9月号)
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芥川賞 52 昭和39年/1964年下半期   一覧へ
選評の概要 もう一押し 総行数34 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和40年/1965年3月号)
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芥川賞 53 昭和40年/1965年上半期   一覧へ
選評の概要 「玩具」を推す 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
津村節子 12 「(引用者注:最後に残った「玩具」「剣ヶ崎」「砂の関係」のうち)一篇を授賞作に推すのは、どれも一長一短であるだけに骨の折れる仕事でした。」「扱われた世界が狭く、盆栽のような気がしますが、作品の底をながれる感情のこまやかさと明晰な理智は珍重すべき」「将来の可能性はともかく、現在眼の前にある作品について判断すれば、(引用者中略)一番完成していると思われました。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和40年/1965年9月号)
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芥川賞 54 昭和40年/1965年下半期   一覧へ
選評の概要 新人の意味 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一 15 「素朴で幼稚なところもあるような筆づかいで、小説の技術もうまいとは言いかねます。」「しかしこのややたどたどしい北国の自然の描写には、あるひたむきな感情の流れがあり、敗戦直後の暗い農村を背景に、清純な母子像を彫りあげています。」「単純すぎて、ものたりぬ点はあっても、効果をあてこんだ芸と工夫ばかり氾濫するなかで、珍しく、澄んだ心が感じられる作品です。」
  「今度は九篇ともあまり差のない出来で、はっきり際立った作品は見当りません。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和41年/1966年3月号)
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芥川賞 55 昭和41年/1966年上半期   一覧へ
選評の概要 マイナスの面 総行数35 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
  「結局、今回は授賞作なしとするのが、一番妥当と思われます。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和41年/1966年9月号)
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芥川賞 56 昭和41年/1966年下半期   一覧へ
選評の概要 若い才能 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
丸山健二 11 「意外に早く(引用者中略)決定しました。」「どぎつい題材を扱いながら、それにもかかわらず、軽く仕上げたところが作者の人柄を感じさせますが、看守の家庭の描写に生活の匂いが欠けていて、全体が絵にかいたようなきれいごとに終っています。」「処女作にこれだけのものが書ける若い才能は、多少冒険でも買ってよいでしょう。」
宮原昭夫 5 「女子高校生をうまく描いた作品で、彼女らの集団演技や生ぐさい反抗が、さっぱりした筆致でよく捉えられています。」「これと「夏の流れ」の二作授賞を主張しました」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年3月号)
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芥川賞 57 昭和42年/1967年上半期   一覧へ
選評の概要 二つの試作 総行数43 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
大城立裕 15 「(引用者注:「にぎやかな味で」と共に)重味のある材料をこなして、作者の手腕は感じられますが、それぞれ不満な点があり、当選作にはならないというのが僕の意見です。」「主人公の意識と現実とのあいだのドラマが、作品の中心であるべき筈なのに、極めて不充分にしか見られず、主人公の反省や省察が読者として素直について行けない底の浅さを感じさせます。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年9月号)
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芥川賞 58 昭和42年/1967年下半期   一覧へ
選評の概要 精神の幅 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三 15 「鈍い鑿をつかって彫りあげたような小説で、はじめはその鈍さが気になりますが、終りに近づくにつれて、ひとりの職業軍人とその親族の生態がくっきり浮きあがってきて、鈍さが凡庸の同義語でないことがわかります。」「小説としてさまざまの欠点はありますが、在来のリアリズムの常識を破った作者のしずかな姿勢は、強い個性の現われと見てよいでしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年3月号)
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芥川賞 59 昭和43年/1968年上半期   一覧へ
選評の概要 一位「三匹の蟹」 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
大庭みな子 14 「やはり一番すぐれています。作中人物がみな利口ぶって爪立ちしているのに、作者が半分しか気付いていないのが欠点ですが、女主人公のぎすぎすした不安に現代生活の虚しさが自ずからでています。」「作者の心を正面切て読者になげつけている小説は、(引用者注:候補作中)「三匹の蟹」だけです。」
丸谷才一 11 「(引用者注:「三匹の蟹」への授賞に異議が多かった場合)「年の残り」を推します。」「巧みな語り口のわりに、読後にうける感銘はうすく、老人小説がはやれば、すぐこれだけのものを書く作者の才気にはある危険を感じますが、この作品の出来はわるくないと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年9月号)
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芥川賞 60 昭和43年/1968年下半期   一覧へ
選評の概要 「客」その他 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
  「今度は同じような出来の作品が多く、とくに授賞の対象にしたいものは見当りませんでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和44年/1969年3月号)
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芥川賞 61 昭和44年/1969年上半期   一覧へ
選評の概要 当選作なし 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
庄司薫 9 「才筆には違いありませんが、僕は最後まで興味を覚えることができませんでした。」「現代をこのような形で表現しようとする企図はたしかに独創的であっても、それはこのような饒舌を読者におしつける弁明にはならないでしょう。」
田久保英夫 9 「達者な小説です。達者という点では全候補作のなかでずばぬけています。しかしうますぎるせいか、読後感にどこか空虚なところがあります。「それでどうしたんだ」と読者に反問されることは、小説にとって致命傷でしょう。」
  「今回は当選作なしというのが僕の意見です。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和44年/1969年9月号)
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芥川賞 62 昭和44年/1969年下半期   一覧へ
選評の概要 自信と努力 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
清岡卓行 17 「当選したのは、まず順当であったと思います。」「決して完全な作品ではなく、むしろ欠陥の多いものです。」「しかし、ともかく、作者が自分の書きたいものをはっきり把んで、全身でこれを表現することに努めているので、この自信と努力がある快感になって読者に伝わります。」
  「今回は同じような出来の作品がいくつもあり、いわば小粒の粒ぞろいでしたが、これというものは見当りませんでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年3月号)
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芥川賞 63 昭和45年/1970年上半期   一覧へ
選評の概要 素質の独自性 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
古山高麗雄 14 「推そうとはっきり思いました。こんなことはめったにありません。」「その魅力は、ぎごちなさが、作者自身意識しない素質の独自性を感じさせるところにあります。」「平衡感覚の力技と苦いユーモアがその最も目につきやすい特色でしょう。」
吉田知子 14 「ほとんど僕ひとりが反対した結果になりました。」「よみ終ってから、これ(引用者注:道具立て)が題名通り、人間の苦の象徴と見られるかというと、そうは行きません。かといって、主人公の個性的体験の世界と見るには、作者が読者の方に目を配りすぎていて、中途半端な印象をあたえます。」「要するには、意図とたくらみが勝ちすぎた失敗作という風によみました。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年9月号)
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芥川賞 64 昭和45年/1970年下半期   一覧へ
選評の概要 まれに見る新人 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
古井由吉 21 「「杳子」よりも、「妻隠」の方がすぐれていると思い、これを当選作として推すつもりでした。」「「杳子」は(引用者中略)主人公の独り合点な抒情が、そのまま作者によって肯定されているようなところが、終りになるほど露骨になります。」「「妻隠」は、(引用者中略)若夫婦の生活の不安、空しさ、甘さなどが、彼らの肉体の曖昧のように、読者の心にやわらかく浸み透ってきます。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年3月号)
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芥川賞 65 昭和46年/1971年上半期   一覧へ
選評の概要 もう一工夫ほしい 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
  「八篇の作風はそれぞれ異っていますが、全体としてある共通の印象が残りました。」「相当な技巧をこらして、めいめい才を競っているが、なぜこの小説を書くのか、書いたことで何を得ているのかという、一番初歩の疑問に答える力がないことで、新人としての魅力の乏しさとも云えましょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年9月号)
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芥川賞 66 昭和46年/1971年下半期   一覧へ
選評の概要 才能の使い方に遊び 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
李恢成 10 「欠点の多い作品と思われました。」「登場人物は鮮やかに描かれていますが、鮮やかすぎる作りものに似た印象をあたえるのは、氏の筆がひとのつけた条痕を行くスキーのように走りすぎるからでしょう。」「その結果、表現のたどたどしさが作者の精神の模索を象徴したような氏のこれまでの魅力が消えて、できすぎた失敗作ともいうべきものになっています。」
東峰夫 7 「欠点の多い作品と思われました。」「いくぶんわざとらしい文体で、少年の感受性を造型することに一応成功していますが、そこに描きだされる「オキナワ」は型にはまった沖縄で、そのためか、結末の主人公の脱出の意欲もただ話を面白くだけという印象しかあたえられません。」
  「今回はどれも才人の作が集った代りに、深刻の表情をしながら才能の使いかたに、遊びのあるものが多く、作者の力倆は感じられても、まとまった感銘は与えられません。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年3月号)
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芥川賞 67 昭和47年/1972年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
宮原昭夫 17 「一番非のうちどころのない作品でした。」「しかしあまりそつ(原文傍点)がなさすぎて、モチイフの薄弱さを疑わせるのが、この小説の弱点で、審査員各自が胸底に持っていたこの不満が決定間際に表面化したために、第一回の投票で圧倒的な多数を得たにかかわらず、この作品の単独授賞は容易に決定しなかったのです。」
畑山博 15 「性格が対蹠的で、互に相補う観のあるこの二つの小説(引用者注:「誰かが触った」と「いつか汽笛を鳴らして」)の当選は、自然でした。」「しかし僕個人としては、畑山氏の作品はそれほど買えません。」「「ぼくの原点」が、そのまま作者によって肯定されているのが問題です。作者の資性と思われるユーモアとはにかみが生きてこないのはそのためでしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年9月号)
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芥川賞 68 昭和47年/1972年下半期   一覧へ
選評の概要 欠点がそのまま魅力 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
郷静子 11 「推しました。素人くさい粗雑さが構成にも文章にも指摘され、リアリズムの観点から見れば、破綻だらけといってよいのですが、結局読ます力を持ち、最後まで読めば、強い感銘をうけます。」「こういう混沌とした強さは、とくに新人に望ましいのですが、近ごろはこれと反対の傾向が幅をきかせています。」「ともかく、欠点がそのまま魅力になったような、この一作は珍重すべきでしょう。」
山本道子 7 「均衡のとれた力作であり、危な気のない出来です。」「しかしこの自然で素直な筆づかいが次第に単調に陥るのは、そこに描かれた生活が変化に乏しいからだけではないので、作者の成長のために、ここにできかけている枠を壊す必要があるのではないかと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年3月号)
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芥川賞 69 昭和48年/1973年上半期   一覧へ
選評の概要 思いつきと物語 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三木卓 7 「読みよい点で群をぬいています。つまり、テーマと手法のバランスがよくとれた作品なのですが、それは新味の欠けた感じをあたえることにもなります。」
  「今度の予選通過作品には、一頃とちがってまとまったテーマがはっきり感じられるものが多く、同時に作者が自分の思いつきに溺れこんで冗長に陥る傾向も目立ちました。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年9月号)
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芥川賞 70 昭和48年/1973年下半期   一覧へ
選評の概要 抵抗できぬ魅力 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦 21 「文章の気品と思想の成熟では(引用者中略)群をぬいていました。」「六十歳をこえた新人があり得るかという議論もありましたが、僕はこの点は問題はないと思います。」「ただこの作品は小説というよりむしろ散文で書かれた抒情詩の性格が強く、(引用者中略)素材に比して長すぎるし、(引用者中略)種々の欠点が指摘されます。」「これだけをとって他の八篇をすてるに忍びない気持は皆にあったので、二作当選という結果になったのも自然でした。」
日野啓三 4 「(引用者注:「草のくるぎ」と「此岸の家」では)僕は後者(引用者注:「此岸の家」)を推しました。作品に厚味の足りない点はありますが、身近かなむずかしい題材を、これだけ鮮明に描いたのは新人として非凡の手腕です。」
野呂邦暢 7 「前回の候補作とまったく違った筆致と作風なので、とまどいを感じました。」「この変化が、作者の内面の発展とどう結びつくのか、この作品だけでは、見当がつきません。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年3月号)
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芥川賞 71 昭和49年/1974年上半期   一覧へ
選評の概要 力倆は抜群 総行数21 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
  「今度の候補作は伯仲の出来のものが多く、粒ぞろいと云えば云えますが、その粒がどれもやや小さく、結局、当選作は見出せません。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年9月号)
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芥川賞 72 昭和49年/1974年下半期   一覧へ
選評の概要 対照的な二作 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三 17 「一番すぐれていると思いましたが、これをすぐ当選作として推せるかというと、いろいろ疑問がのこりました。」「うまさの点では誰にもひけをとらぬ代りに、氏の作品には何か口のうますぎる人の打明け話をきかされているようなところがあって、主人公の心の動きに素直について行けません。」「ことによると氏の新しさかも知れませんが、いずれにせよ、氏の告白が文学作品として完成するのは、容易ならぬことでしょう。」
阪田寛夫 5 「ある特異な精神力を持つ老母の死という刺戟の強い題材を、過不足ない筆致で最後まで破綻なく描ききった中篇で、「あの夕陽」と正反対の作風であることが、或る安定感をあたえ、二作授賞は妥当と思われます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年3月号)
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