芥川賞のすべて・のようなもの
芥川賞のすべて・のようなもの

第59回

=受賞者=
大庭みな子
丸谷才一

=候補者=
山田 稔
後藤明生
斎藤昌三
加賀乙彦
山田智彦
杉田瑞子


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Last Update[H20]2008/6/1

大庭みな子
Oba Minako
生没年月日【注】 昭和5年/1930年11月11日〜平成19年/2007年5月24日
受賞年齢 37歳8ヵ月
経歴 本名=大庭美奈子、旧姓=椎名。東京・渋谷生まれ。津田塾大学学芸学部英文学科卒。夫のアラスカ赴任に伴い昭和34年/1959年よりアメリカに住み、昭和43年/1968年群像新人文学賞を受賞して作家デビュー。
受賞歴・候補歴
  • 第11回群像新人文学賞[小説部門](昭和43年/1968年)「三匹の蟹」
  • 第59回芥川賞(昭和43年/1968年上期)「三匹の蟹」
  • 第14回女流文学賞(昭和50年/1975年)『がらくた博物館』
  • 第18回谷崎潤一郎賞(昭和57年/1982年)『寂兮寥兮』
  • |候補| 第13回泉鏡花文学賞(昭和60年/1985年)『楊梅洞物語』
  • 第39回野間文芸賞(昭和61年/1986年)『啼く鳥の』
  • 第16回川端康成文学賞(平成1年/1989年)「海にゆらぐ糸」
  • 第42回読売文学賞[評論・伝記賞](平成2年/1990年)『津田梅子』
  • 第23回川端康成文学賞(平成8年/1996年)「赤い満月」
  • 第13回紫式部文学賞(平成15年/2003年)『浦安うた日記』
個人全集 『大庭みな子全集』全10巻(平成2年/1990年11月〜平成3年/1991年9月・講談社刊)
芥川賞
選考委員歴
第97回〜第116回(通算10年・20回)
備考
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芥川賞 59受賞  一覧へ

さんびき かに
三匹の 蟹」(『群像』昭和43年/1968年6月号)
書誌
>>『文藝春秋』昭和43年/1968年9月号
>>昭和43年/1968年10月・講談社刊『三匹の蟹』所収
>>昭和47年/1972年☆月・講談社/講談社文庫『三匹の蟹・青い落葉』所収
>>昭和48年/1973年9月・講談社刊『現代の文学33 河野多恵子・大庭みな子』所収
>>昭和49年/1974年11月・毎日新聞社刊『現代の女流文学 第4巻』所収
>>昭和55年/1980年3月・講談社/講談社文庫『現代短編名作選8 1966〜1968』所収
>>昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第8巻』所収
>>昭和57年/1982年1月・成瀬書房刊『三匹の蟹』[限定版]所収
>>昭和62年/1987年12月・小学館刊『昭和文学全集 第19巻 中里恒子・芝木好子・大原富枝・河野多恵子・大庭みな子』所収
>>平成2年/1990年11月・講談社刊『大庭みな子全集 第1巻』所収
>>平成4年/1992年5月・講談社/講談社文芸文庫『三匹の蟹』所収
>>平成10年/1998年12月・角川書店刊『女性作家シリーズ9 河野多惠子・大庭みな子』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫 9 「最後の二行が巧いし、短篇として時間の錯綜する構成も巧い。」「ただパーティーの会話が、嫌悪と倦怠を読者に伝える手段であるにしても、作者が得意になっているという感じが鼻をつく。しかし、ともあれ、才気ある作品であった。」
石川達三 11 「(引用者注:当選に)半ば賛成しながらも不満が残った。」「異国の匂いがあり、それにふさわしい文体の魅力があるが、平野謙も指摘しているように(毎日新聞)冷たい見方をすればいろいろと疑問がある。」「この人はこれから先が苦しいのではなかろうかという推測があったが、私もその危険はあると思う。」
井上靖 9 「発表当時余りにも世評が高かったので、銓衡委員会では自然にきびしい採点になったように思う。併し、この作品に見る文学的資質は相当なものであり、はっきりと設定した主題に向って、細部にわたって一つ一つ効果を計算しながら書いて行くところはみごとであると思う。」
石川淳 11 「世評すこぶる高いように聞いたが、さほどにはおぼえない。ただ外国の生活を叙しながら、そこに登場する外国人がわれわれにとってまんざら赤の他人とも見えず、もとは英語であるべき会話がかえって耳に近くきこえるところは、たくまざる技巧の効果か。」「作者がどうであろうと、この主人公と相似の位置から小説を書き出すことは、読者であるわたしの気に入らないことではない。」
川端康成 38 「「三匹の蟹」と決めて迷わず、迷わせてくれるような作品をほかに見なかった」「あのように暮し、あのように会話し、あのように性をするのは、今日の一つの流れのうたかたに浮いて、まあ時代思潮の一端に軽くでも触れていると言っていい。このような小説が現在世界の方々にあることは誰も知っているが、これほど形に現わした小説は、まだ日本であまり見ないようだ。それだけでも芥川賞に価する。才能もある。」
丹羽文雄 11 「気が利いたショッキングな作品だ。」「省略しすぎたせいか、前半の会話が下手な翻訳をよむようであったが、後半は水際立って巧みである。」
舟橋聖一 14 「むしろ世評の甘さに驚いた。」「私は一般の好評を向うにまわして、敢て評価出来なかった。殊に最後の結びは、平凡な余情小説のタイプだ。桃色シャツの男も書けていないし、二十ドルを取られた話も、作為でしかないようだ。ただ、いいと思ったのは、在米日本人が日本人に好かれず、主人公自身もいやだと言っている点に正直な作者の素顔がのぞかれた。」
瀧井孝作 25 「海外居住者の退屈、無聊、孤独、死にたいほどの寂寥が、私にはよくわかって、この作に感心した。」「この無内容な時間を何とか過ごさねばならない、やりきれなさが、読みながら実に感じられる小説だ。」「描かれたアメリカ人も他の国籍人も、皆んな根無し草のようで、ひどいものだ。(引用者中略)こんな根無し草の人人の多い風俗に注目して描いた小説だ。」「私は、このひとは、希有の文才だと思った。」
大岡昇平 17 「「年の残り」と「三匹の蟹」がずば抜けてすぐれており、また作風にそれぞれ特色があって、優劣がつけ難かった」「その流動的な文体と、ソフィストケイトされた会話に、いいようのない魅力がある。否むことの出来ない才能の刻印があり、これも逸するわけに行かない。」「私の採点では丸谷氏に二重マル、大庭氏に一重マルというところであった。」
永井龍男 12 「評判が高かったので、おのずと身構えて読む形になったが、読後の印象は今回の候補作中もっとも純粋であった。」「会話が拙劣だという評が出たが、これは英文小説式の「彼は云った」「彼女は云った」の小うるさい記述が、前後の混乱を呼んだので、会話そのものの拙さではなかろう。」「いずれにせよ、日本文としては整理の必要がある。」「この作品に、私は投票した。」
中村光夫 14 「やはり一番すぐれています。作中人物がみな利口ぶって爪立ちしているのに、作者が半分しか気付いていないのが欠点ですが、女主人公のぎすぎすした不安に現代生活の虚しさが自ずからでています。」「作者の心を正面切て読者になげつけている小説は、(引用者注:候補作中)「三匹の蟹」だけです。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年9月号)
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