芥川賞のすべて・のようなもの
芥川賞のすべて・のようなもの

第59回

=受賞者=
大庭みな子
丸谷才一

=候補者=
山田 稔
後藤明生
斎藤昌三
加賀乙彦
山田智彦
杉田瑞子


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Last Update[H20]2008/6/1

丸谷才一
Maruya Saiichi
生没年月日【注】 大正14年/1925年8月27日〜
受賞年齢 42歳10ヵ月
経歴 山形県鶴岡市生まれ。東京大学文学部英文科卒、同大学大学院修士課程修了。高校、大学で教鞭をとるかたわら、英文学の翻訳や、創作をつづける。
受賞歴 河出文化賞(昭和42年/1967年)『笹まくら』
第8回谷崎潤一郎賞(昭和47年/1972年)『たった一人の反乱』
第25回読売文学賞評論・伝記賞(昭和48年/1973年)『後鳥羽院』
第38回野間文芸賞(昭和60年/1985年)『忠臣蔵とは何か』
第15回川端康成文学賞(昭和63年/1988年)「樹影譚」
インディペンデント外国小説賞特別賞(イギリス)(昭和63年/1988年)『横しぐれ』
第40回芸術選奨文部大臣賞(平成1年/1989年度)『光る源氏の物語』《大岡晋対談》
第26回大佛次郎賞(平成11年/1999年)『新々百人一首』
第49回菊池寛賞(平成13年/2001年)
朝日賞(平成15年/2003年)「『輝く日の宮』にいたる多年の文学的業績」
第31回泉鏡花文学賞(平成15年/2003年)『輝く日の宮』
文化功労者(平成18年/2006年)
芥川賞
選考委員歴
第79回〜第93回、第103回〜第118回(通算15.5年・31回)
備考
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芥川賞 57回候補  一覧へ

まち
「にぎやかな 街で」(『文芸』昭和42年/1967年3月号)
書誌
>>昭和43年/1968年3月・文藝春秋刊『にぎやかな街で』所収
>>昭和58年/1983年9月・文藝春秋/文春文庫『にぎやかな街で』所収
>>昭和62年/1987年9月・小学館刊『昭和文学全集23 吉田健一・福永武彦・丸谷才一・三浦哲郎・古井由吉』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
石川達三 13 「積極的に推すことはできなかった。」「戦後のごたごたとした人間風景を描いて面白いが、わざと時間的に前後交錯させた手法は、読みながら神経が疲れる。」「作者は描写力と構成力とかを充分に持った人と思うが、それだけに今後は幅や大きさのある本格的な作品を見せてほしいと思う。」
丹羽文雄 8 「あいまいな殺人に対する主人公の不安が、外部に向ってのみの感情に終始しているので、読者の胸にこたえないのであろう。」「最後に大いなる目のことがほのめかされているが、大いなる目は罪の意識があってはじめて生れるものである。」
中村光夫 16 「(引用者注:「カクテル・パーティー」と共に)重味のある材料をこなして、作者の手腕は感じられますが、それぞれ不満な点があり、当選作にはならないというのが僕の意見です。」「作者がこれだけ執拗に彼らの行動を辿る動機が何なのか、読んでゆくうちにあいまいになります。」「作者が通常のモチイフを否定する考えであるなら、そういういわば前衛的な考えと、ここに登場する二人の感傷的人物とのつながりはどこにあるのかという疑問がわいてきます。」
大岡昇平 6 「技術的には「カクテル・パーティー」よりすぐれている部分がある。しかし、私の意見では、丸谷氏はもう芥川賞候補者ではない。」「むしろもっとスケールの大きい作品で、新人賞ではない賞の候補になるべき作家だと思った。」
永井龍男 7 「技巧のすぐれた作品である。」「しかしながら、主題と目される罪の意識が、技巧を重ねた叙述のくり返しと共に次第に遊戯化して、結びの子の死に臨んでの述懐までも装飾的な言葉に終ってしまったように見えるのは、どうしたものであろうか。」
瀧井孝作 9 「何か、とりとめがなく、感動させられるものがなかった。これは新しい流行小説のようだが、こんなわけのわからない作り物の空々しい小説が喜ばれるのは、これは今の世間一般が堕落しているせいだと考えられた。」
石川淳 13 「銓衡に残った二篇(引用者注:「カクテル・パーティー」と「にぎやかな街で」)のうち、どちらかといえば、わたしは「にぎやかな街で」のほうを取る。」「ともかくスタイルができている。読める文章である。」「極限状況に置かれた二箇の人物のからみあいにも、漠然とはしているが、出口のない業のようなものが感じられる。ただ非常の事件を書いているのに、スゴミが出ないのはどういうものか。」
舟橋聖一 30 「丸谷の才能も、買わないわけにはいかない。それで、(引用者注:「カクテル・パーティー」と)二作を一緒に受賞させてはどうかというハラもあった。」「面白かった。」「只一人の女を殺しただけで、これだけ苦しまねばならぬ個人の犯罪にくらべて、一度に大量殺人をやってのける国家の罪悪の、いかに猛烈、凄惨を極めるかが、この作品のアクチュアリティとして、読む者の心に迫ってくる。」
三島由紀夫 0  
川端康成 5 「練達であるが、私には読みづらかったのは、描写に鮮明さが欠け、構成の図式が近頃の型で、個性がのびやかに出ていないかと疑われるのは、作者の少し考え過ぎではないだろうか。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年9月号)
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芥川賞 58回候補  一覧へ

ひみつ
秘密」(『文學界』昭和42年/1967年9月号)
書誌
>>昭和48年/1973年3月・筑摩書房刊『現代日本文学大系92 現代名作集2』所収
>>昭和58年/1983年9月・文藝春秋/文春文庫『にぎやかな街で』所収
>>平成6年/1994年7月・ぎょうせい刊『ふるさと文学館 第7巻 山形』所収
>>平成16年/2004年11月・郷土出版社刊『山形県文学全集 第1期小説編 第3巻』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫 0  
石川達三 2 「数人の支持があったが、このなまぬるさが私には退屈だった。」
大岡昇平 1 「後半が少しぞんざいである。」
舟橋聖一 31 「推す気で出かけた。」「昭和二十年に兵役に服していた作者が、敗北のさなかの軍隊生活を書き、その中で徴兵忌避の心理を空想するリアリティを書いたものであったなら、私はこの作をもっと強く推す気になったろう。惜しむらくは、あまりにお伽話になっているので、推しきれなかった。」
瀧井孝作 6 「徴兵忌避の小説」「徴兵忌避も敗戦にまぎれて憲兵の調べも何もなかったという小説。」
丹羽文雄 0  
石川淳 8 「わたしは該当なしと考えるが、ぜひということになると、「秘密」を取る。」「主人公が兵営の前から逃げ出して山にのぼるくだりは納得したが、そのあとがいけない。末段は精彩を欠く。」「しかし、山のぼりの部分だけを見ても、この作者にかなりの力量があることはわかる。(引用者中略)わたしはそこを推した。」
井上靖 8 「私には面白かった。」「この作家は既に一家を成しており、他の候補作のような初々しさはないが、フィクションで、この書きにくい主題と取り組む力量は相当なものである。」
永井龍男 10 「作の三分の二を過ぎてから、にわかに先を急いだらしい形跡があり、企み過ぎて何もかもと気を配ったのが却って欠点になった形であるが、前作の「にぎやかな街で」と合わせて、才気を感じさせる。」
中村光夫 5 「作者の精神の幅が作品より広い感じで、安心してよめますが、器用なだけに安易に手をぬいたところが気になります。」
川端康成 4 「作品の長所短所は別としても、それぞれの才能は見えている。」「後半の終戦の後がよくない。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年3月号)
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芥川賞 59受賞  一覧へ

とし のこ
年の 残り」(『文學界』昭和43年/1968年3月号)
書誌
>>『文藝春秋』昭和43年/1968年9月号
>>昭和43年/1968年9月・文藝春秋刊『年の残り』所収
>>昭和48年/1973年1月・講談社刊『現代の文学34 柴田翔・丸谷才一・柏原兵三・田久保英夫』所収
>>昭和50年/1975年4月・文藝春秋/文春文庫『年の残り』所収
>>昭和54年/1979年12月・新潮社刊『新潮現代文学63 丸谷才一』所収
>>昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第8巻』所収
>>昭和62年/1987年9月・小学館刊『昭和文学全集23 吉田健一・福永武彦・丸谷才一・三浦哲郎・古井由吉』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫 8 「(引用者注:最後に残った「年の残り」と「三匹の蟹」のうち)私は「年の残り」のほうを買った。」「いかにも花のない作家であるが、今度の作で何かを確実に把握したという感じがある。人生、老、病、死の不可知を扱って、それを不可知のままで詠嘆に流しているのではなく、作家としての一つの苦い観点を確保したと思われる。」
石川達三 8 「(引用者注:当選に)半ば賛成しながらも不満が残った。」「すでに一家を成していると言ってもいい。」「むずかしい主題と取り組んで相当に書き上げているが、第四章は無くもがなであった。こういう所にこの作者の才能の先走りが見られる。」
井上靖 7 「この作家のものでは一番いいものかと思う。小説を作って行く才能は目立ってもおり、光ってもいるが、それが邪魔になっているところもある。」
石川淳 11 「むしろ賞のほうが遅れて出たともいえるだろう。」「前二作には見られなかった老年の世界を組みあげて、趣向もだいぶ手がこんで来ている。これは手がこみすぎたという見方もありうるだろうが、作者の制作体験としては、いささかの無理は押し切って書いてしまったほうが衛生によろしいようである。」「丸谷君の力量は一応ここにさだまったものと見える。」
川端康成 7 「(引用者注:「三匹の蟹」と)合わせて授賞することにはもとより賛成ではないが、好意を寄せておいてもよいと消極的に承認した。芥川賞としてはめずらしく、作者の人柄の話まで出ては、好意も増すわけだが、これはどうか。」
丹羽文雄 2 「最近の三作の中ではいちばんよかった。その力量はすでに既成作家なみである。」
舟橋聖一 18 「(引用者注:最後に残った「年の残り」と「三匹の蟹」のうち)私は丸谷を推した。」「横光さんの初期の作品を思わせるような文体の綾も捨て難い。」「この前は、大岡委員の、「丸谷はもう芥川賞でもあるまい」という判断で見送られたことがある。今度もそういう意見が出たらば、三回も予選を通過させた文春予選係の意向を糺したいと思っていたが、今度は大岡氏が最初から丸谷推挙にまわったので、ことなきを得た。」
瀧井孝作 5 「丸谷氏の作は前に二つ読んだが、こんどのこれがまあ出来がよかった。」
大岡昇平 23 「「年の残り」と「三匹の蟹」がずば抜けてすぐれており、また作風にそれぞれ特色があって、優劣がつけ難かった」「老人の心理がよく描けており、人間の生について、根源的な問いを発している。」「この作品のテーマの捉え方は、明らかに氏の作家としての個性的な核に根ざしている。」「私の採点では丸谷氏に二重マル、大庭氏に一重マルというところであった。」
永井龍男 8 「構図に念を入れた作品だが、これでもかこれでもかの画策に、むしろ直木賞的な才能を感じた。」「桜林堂主人の奇癖にいたっては、私などには鼻持ちならなかった。」
中村光夫 11 「(引用者注:「三匹の蟹」への授賞に異議が多かった場合)「年の残り」を推します。」「巧みな語り口のわりに、読後にうける感銘はうすく、老人小説がはやれば、すぐこれだけのものを書く作者の才気にはある危険を感じますが、この作品の出来はわるくないと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年9月号)
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