芥川賞のすべて・のようなもの
芥川賞のすべて・のようなもの

第106回

=受賞者=
松村栄子

=候補者=
藤本恵子
奥泉 光
村上政彦
田野武裕
多田尋子


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Last Update[H20]2008/6/1

松村栄子
Matsumura Eiko
生没年月日【注】 昭和36年/1961年7月3日〜
受賞年齢 30歳6ヵ月
経歴 本名=朝比奈栄子。静岡県湖西市生まれ、福島県育ち。筑波大学第二学群比較文化学類卒、同大学院教育研究科中退。出版社、コンピュータソフト商社に勤めたのち作家デビュー。
受賞歴 第9回海燕新人文学賞(平成2年/1990年)「僕はかぐや姫」
備考
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芥川賞 106受賞  一覧へ

アバトーン
至高聖所」(『海燕』平成3年/1991年10月号)
書誌
>>平成4年/1992年2月・福武書店刊『至高聖所』所収
>>『文藝春秋』平成4年/1992年3月号
>>平成7年/1995年1月・福武書店/福武文庫『至高聖所』所収
>>平成13年/2001年10月・郷土出版社刊『福島県文学全集 第1期小説編 第6巻 現代編2』所収
>>平成14年/2002年6月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第16巻』所収
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選評の概要
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎 14 「知的な工夫のある場面転換がスピード感もかもしだして、作者の小説設計はあらかた貫かれている。」「さてそのような進行の後のしめくくりだが、ヒロインの内面では整合性があるものの、外側から見れば気分的な弱さのあらわな結末となっている。このあいだのへだたりを埋めて、客観的にも堅固な世界をつくることが、若い作者の成熟への道すじとなろう。」
大庭みな子 11 「現代のキャンパスが眼に浮かぶ情景の中で描かれている。」「ここで描かれている大学の寮生たちの生活は、一九八〇年代のものであろうが、それらの情景が、その昔から変らない青春の姿を映し出していることに感心した。」「傲慢で無力な夢想の溢れた若さというものが、気取りや衒気をも混えながら、ともかくも真面目に追われている。好感が持てた。」
吉行淳之介 12 「一回目の大まかな選考で、(引用者中略)一位(引用者中略)だった。」「松村さんの能力は、文章をみてもディテールをみてもあきらかであるが、あちこちに独りよがりなところがある。とくに末尾は、強引にツジツマを合わせた。」「今回の受賞は珍しい幸運とおもえるので、その刺戟を有効に使ってほしい。」
田久保英夫 19 「やや抜け出ていると思っていたが、実際も終始、評価点がほかの作より高かった。」「女子学生の乾いた生活感覚と心の痛みを描いて、まことに鮮度のいい小説的感性を見せている。」「最後にそれ(引用者注:痛み)を癒すため、夜大学の図書館の石柱の下に眠りを求めて行く情景は、古代ギリシャの医療の神の神殿と二重映しにして、とにかく難しい結末を乗り切り、まるで夜想曲のアンダンテの響きを聞く思いがする。」
黒井千次 21 「キャンパス生活を描いた新人の小説にはよく出会うが、大学の立地条件ごとそれを捉えた作品は珍しい。」「これは石を核として意識的に構成された作品であるといえる。文章が硬質で分析的な傾きを持つのは、そのことと無縁ではあるまい。」「面白く読んだ。」「後半にやや強引な手つきがのぞき不満も残るが、他の候補作と比べた時、(引用者中略)一歩前に出ていると感じた。」
古井由吉 0  
河野多恵子 9 「快い手応えを感じながら読み進んだ。」「一つのことが、幾様にも生き、幾つものことが響き合い、映り合う。姉の妊娠を知るところ以後は落ちるが、最後は立ち直った。」「何よりも作者が創作というものを全身で会得している様子が信頼できるので、この作品を推した。」
三浦哲郎 11 「清澄な文章に敬意を表しておこう。」「読んでいて一種の爽快感をおぼえた。」「けれども、この「至高聖所」ではルームメイトが芝居の台本を書き出すあたりから明晰さを欠く場面が目立つようになる。私としては、次作を待ちたい気持だった。」
日野啓三 12 「「ピュアで乾いた物質性」を愛する女子学生の感性を、私は理解し共感さえできるが、それだけに終りの方になって、(引用者中略)自分自身を愛する夢をみようと願う主人公の心事は、不徹底に思われる。」「主人公は「友人よりも青い石の方を」選ぶ感性と生き方を貫いてほしかった。」
丸谷才一 3 「関心の持てない作品だつた。わたしは推奨の言葉を聞きながらただ驚いてゐた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年3月号)
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