2006年6月4日(日)
韓国で2003年から2004年にかけて高視聴率を記録したドラマ「大長今(대장금)」(日本版タイトル「宮廷女官チャングムの誓い」)。MBCが放映した際にリアルタイムで見てなくて、その後DVDを購入してぼちぼちと見始めました。が、とにかく長い全54話。途中15話あたりで一旦リタイアしてました。ところが、その後、日本でも人気沸騰。NHKが集中アンコール放送やら地上波放送やら新たな企画を繰り出すにつれて人気は鰻登りのようで、日本の大学の先生方が皆さんご覧になってると仰います。そんな方々が韓国にいらした時、一緒に韓定食のお店に行ったりしようものならもう大変。どなたも宮廷料理や朝鮮時代の各種制度に早くも一家言お持ちのようで。
そんな訳で、韓国に住んでいるのに「見てない」とも言いにくく、同僚の食品学科の先生(韓国人)に聞いてみれば「『大長今』はとても良い作品。ぜひ見るべき」と言われるし、DVDでの視聴を再開しました。見事にはまって、最終回までの残り40話を3週間で一気に見てしまいました。面白かった~~。
よ~し、この勢いで行っちゃうぞ~。目指せ、水刺間(スラッカン)! 探し出せ、甘酢!!
<前置>大長今テーマパークへの間違った行き方(良い子は真似しないでね!)
地下鉄1号線「議政府北部」駅を降り、バス通りに出ると目の前にタクシーが止まっていました。タクシーの運転手さんが「デージャングム、いきますか?」と日本語で客引き。バスで行くつもりだったので値段を聞きませんでしたが、聞いておけばよかったかな。メーターなら1万W弱、メーター不可なら1万5000W程度だろうと思います。日本人の感覚では「それなら1万5000Wはボッてるじゃん」と思いますが、ここは「議政府市」、目指す大長今テーマパークは「楊州市」でタクシーの営業区域が異なりますから、メーター料金が適用されない(=別料金が相場として成立する)というのが原則です。このようなケースについてガイドブックには「交渉で決める」などと書かれていることが多いのですが、実際には全国的に「メーター料金の約2倍」という相場があります。A地区で営業しているタクシーがB地区まで行った場合、そのままB地区で営業することはできません。トンボ返りでA地区へ戻るわけですが、その時にB地区からA地区へ行く客を拾える可能性は低いため、B地区へ行く客に帰りの分まで負担してもらおうという考え方です。ただ、議政府北部駅と楊州の場合は人の往来が盛んなので、タクシーによって、方向によってはメーターで行ってくれることもあるようです。
客引きするタクシーには目もくれず歩道橋を渡ってバス停に着いたものの、地下鉄の乗り換えで予想以上に待ち時間を取られ、予定していた毎時25分のバスに間に合いませんでした。次のバスまではかなり待たなくてはなりません。そこで、一計。別のバスでも近くまで行ければ何とかなるのではないかと、同じ方向へ行きそうなバスが来る度に「MBC文化の丘へ行きますか?」と運転手さんに聞いてみました。と、あるバスの運転手さんが「行きます」というお返事。早速乗り込みました。が、これが大失敗。降りる停留所がよく分からないまま、気がつけば車窓は田園風景から両側に木々が生い茂る鬱蒼とした山中の景色に変わり、「行ってらっしゃい 楊州郡(안녕히 가세요 양주군)」の看板を境に隣の郡に入ってしまいました。あれぇ?
仕方ないので、行く所まで行ってから引き返すことにしようと開き直りました。道路の右手に沿って小さな渓谷があり、所々にキャンプ場が見えます。川の向こうでシートを広げてピクニックしている家族連れもちらほら。ここはどこ~?
1時間ほどで終点の小さなバスターミナルに着いたので、そそくさと下車。看板には「チョクソン(적성)バス共用ターミナル」とあります。方向と道路標識から判断するに坡州(파주)らしいのですが、坡州ってイムジン河(イムジンガン=臨津江=임진강)の近くなんですよね。ってことは、38度線に近い所です。道理で途中から軍隊の施設がやたらと目に付いたはず。(後で家に帰ってから地図で調べたら、直線距離でイムジン河まで2.5km、休戦ラインまで8.3kmという地点でした。あはは…。)
せっかくなのでターミナル周辺を見物してから、再度バスに乗り込みます。運転手さんに「MBC文化の丘へ行きますか?」と聞くと、「行きます」とのこと。バスは来た道を逆方向に走り続け、運転手さんが「次で降りなさい」と教えてくれた停留所で降ります。親切な運転手さんでよかった。……が、辺りを見回しても「大長今テーマパーク」は影も形もありません。案内標識なども一切なし。近くにいたおじさんたちに聞いてみました。「この近くにMBC文化の丘がありますか?」「……遠いよ。15分ぐらいかかるかなぁ。」「歩いてですか?」「いや、車で……かなり遠いよ。」 え~! 私は「大長今テーマパーク」にたどり着けない運命の星の下に生まれてきたのでしょうか。
車で15分ではとても歩いて行く距離ではないので、タクシーに乗ることにします。これなら議政府北部駅前で素直にタクシーに乗れば良かった……と思わなくもありませんが、ま、これも経験の内ってことで。こんな田舎の何もない所に流しのタクシーはいないんじゃないかという内心の不安を打ち消しつつ、待つこと数分。来た!タクシー! すぐに手を上げましたけど、あぁ、お客さんが乗ってる……。韓国のタクシーは相乗りができますが、それは目的地の方向が同じなら、の話です。MBC文化の丘は周りに何もなさそうな場所で、地元の人がそちらの方向へ行くとは思えません。でも、タクシーの運転手さんが車を止めて窓を開けてくれたので、ダメモトで聞いてみました。「MBC文化の丘なんですけど……」 「いいよ、乗りなさい」 ラッキー! 助手席に乗り込むと、運転手さんは「タクシーが少ないからね。先にこのお客さんの所へ行って、それから行くよ」 田舎の人は親切だ~。
<本題>「大長今」ワールド
というわけで、紆余曲折の末、やっと着きました。「大長今テーマパーク」。この先は写真を中心に大長今ワールドをご案内~。
バスの止まるのはこんな場所です。赤い傘の下に案内人がいて、主に車で来た人たちの誘導をしています。周囲は水田が広がる何もない所。一応バス停のそばに食堂が数軒ありますけれど。ここから歩いて最初のゲートまで約5分、大長今テーマパーク(オープンセット)までさらに約3分。真っ直ぐなので迷う心配はありません。タクシーで来た場合は最初のゲートの先まで行くことができます。
最初のゲートで入場料を払います。大人5000W。チケットと案内パンフレットをくれました。パンフレットは日本語版もあり、テーマパーク内の詳しい地図も載っています。ゲートを過ぎてどんどん歩いていくと、途中にイベント広場と売店がありました。売店を横目で見つつ、先を急ぎます。
テーマパーク入口を目前にした所に、イ・ヨンエ(이영애)、チ・ジニ(지진희)、イム・ホ(임호)を始めとする主な出演者とイ・ビョンフンPDの手形の碑がありました。「大長今」の中で私が好きなキャラクターは、最高尚宮にもなったチョン尚宮(ヨ・ウンゲ=여운게)とチャングムの医術の師匠シン・イクピル(パク・ウンス=박은수)。パク・ウンスの手形がなくて残念。
やっと「大長今テーマパーク」に到着しました。ここから「宮中」です。正門の脇には右のような案内図がありますが、同じ地図がパンフレットに載っているので、これを見ながら順に進んで行きます。楽しみ~。
中に入るとそこはもうチャングムの世界。まず目に入るのは「大殿」です。ここには王様の椅子と食事、登場人物たちの衣装などが展示してありました。建物は特にロープなどで遮っていなければ靴を脱いで上がってみることができます。王様の椅子に座って記念写真を撮ろうとする家族連れも多かったです。場内のあちこちには写真パネルが設置してあり、そこがどの場面の撮影に使われた場所なのかすぐに分かるようになっています。大殿の前の庭は、お互いの素性を知ったチャングムとハン尚宮が駆け寄って来て抱き合う感動の場面の現場です。
大殿から左の方へ行くと、チャングムとチョンホが出会った書庫や、怪しげな相談や取引の場になっていた「宮中の人目につかない所」があります。こんな塀の裏を活用して撮影してたんだ~と感心。
チャングム、ハン尚宮、チェ尚宮、クミョン……皆が入ったお馴染みの獄舎。DVDを見ている時、獄舎の格子の幅がこんなに広かったら逃げられるんじゃないの?とずっと疑問に思っていました。早速、実験。房の中に入って格子の隙間に身体を滑り込ませてみると……あっさり脱獄に成功~~。きっと格子の幅が狭いと画面上の見映えが悪いので、わざと広く作ったのでしょう。私が脱獄実験をしている隣の房には若いカップルが入り込み、彼が彼女に首枷をはめようとしてました。あの、えーと、何というか……ま、いいですけど。
宮中の所々にこのような等身大写真パネルがあります。日本人観光客には人気のようで、日本から来たと思しきおばさんたちが代わる代わる写真を撮ってました。ちなみにこの日の入場者、85%が韓国人、10%が日本人、5%が中国人(中国系)という感じでした。思ったより日本人観光客が少なかったです。日曜だったからでしょうか。
獄舎を出て目の前の石段をずんずん登って行くと、松の実刺ししたり、お母さんの料理日記を隠したり、甘酢探したりと、何度も重要な場面を演出した東屋があります。松の実刺しを実体験できるように松の実と松葉が準備されています。私が行った時、松葉はきれいなものがたくさん残ってましたが、松の実は砕けて破片となったものばかりでした。松の実刺しにはやっぱり才能が必要なようです。東屋のすぐ脇に瓶が埋めてありました。お母さんの酢!!! 中身は空っぽでしたけど。日本版では「甘酢」と言っているようですが、韓国語では「감식초(カムシクチョ=柿酢)」と呼んでいます。
このオープンセットは限られた建物を有効に使うため、同じ建物を複数の設定でアングルを変えて撮影していたりしたようです。左の写真は「大妃」つまり皇太后が住む宮殿ですが、尚宮の居所としても使われていたそうです。真中の醤庫は見ての通り、各種の「醤」(장=ジャン=調味料)を置く場所。チャングムの子供時代、この醤庫の前でチョン尚宮がチャングムやヨンセンたち(子役)に歌を歌ってきかせる場面、とても好きです。右の写真はチャングムが閉じ込められた水刺間の倉庫。物が少ないので意外にがらんとした感じ。
そして、「大長今」ならではの数々の場面を送り出した台所。何か所かに分かれていて、いろいろ融通しながら撮影していたようです。食材や料理の模型も置かれていて、宮中の調理場という雰囲気があるのが嬉しいです。これ見るためにここまで来たようなものですからねぇ。欲を言えば、ここで何か料理を作って食べさせてくれればもっといいんですけれど。以前はテーマパーク内にドラマ内容にちなんだ料理を食べさせる場所があったようですが、今はちゃんとした食事ができるような場所はありません。特に、この宮中のオープンセット内は飲食物が全くありません。あるのは模型ばかりです。
さて、宮中をぐるーっと回ったら、醤庫そばの門から外に出て、小さな石橋を渡ります。石橋の前にあるのは「大長今」グッズのショップ。携帯ストラップやマグカップ、絵葉書等々。中で、チャングムとチョンホの絆の象徴となるノリゲが欲しくて、すごーく迷ったのですが断念。2万Wは高過ぎ~。ここでは伝統茶やコーヒーを飲むこともできます。クーラーの効いた建物の中で一休みして元気回復。この先にある、庶民の住む村のセットに入って行きます。このオープンセットは「大長今」だけでなく「商道」「ホジュン」といったMBCの時代劇の撮影にも使われたそうです。その中から「大長今」に関連する場所だけご紹介。
王様の主治医にまでなった「大長今」にちなんで、漢方薬のお店があります。店の前には病状に合わせて処方した薬材取り合わせの見本がありましたが、この通りに売ってはくれないでしょうね。一品ずつなら売ってくれるようで、五味子(オミジャ)の実や松の実は小さな袋に詰めたものが置かれていました。
こちらはカン・ドックが酒を造る所。チャングムの子供時代やカン・ドックが料理を作る場面で使われていた所です。瓶なども置いてあるのですが、建物の中にドラマの一部を流しているモニターや衣装が展示されているのがちょっと興醒め。門の横では「黒豆のマッコルリ」を売っていました。買ってみたかったのですが、30度近い気温の中、発酵を続けるマッコルリ(要冷蔵)を持ち歩くのは心配で買えませんでした。今度は冬に来なければ!?
村のセットの見学を終え、オープンセット区域の外に出て入口方向に歩いていくと、弓矢の的がありました。物語のラスト近く、チャングムを巡って王様とチョンホが火花を散らす名場面の舞台となった矢場です。弓は置いてありましたが、矢はありませんでした。テーマパークをぐるーっと回って、最後にここに来るというのは感慨深いものがありますね。正門からここまで、写真を撮りながら普通に見て回って約1時間、あちこち細かく丁寧に見物しても1時間半といった所でしょう。私もテーマパーク内にいたのは1時間15分ぐらいでしたが、もっともっと長い時間を過ごしたような気がします。セットを見ながらドラマの内容を思い出しては、頭の中で54話の大河ドラマを反復し、両親に死に別れた子供時代から数々の苦難を乗り越えて「大長今」となった一人の女性の人生を一緒に歩んだような気分になっていたのですから、当然のことかもしれません。ドラマの感動が薄れないうちにここを訪ねたのは大正解でした。
テーマパークに別れを告げ、元来た道を歩いて売店に向かいました。来る時気になっていた「韓尚宮김밥(キンパップ)」というお店です。ドラマの中でハン尚宮がキンパップを作る場面はなかったと思いますが、ハン尚宮のキンパップとなれば食べてみないわけに行きません。1本2000W。普通に美味しかったです。
ちょうど売店の隣の広場でイベントが始まったので、キンパップをほおばりながら見物。
慶尚北道の醴泉通明農謡(예천통명농요)という伝統芸能です。歌を歌いながら米作の農作業の様子を見せるもので、以前、江陵端午祭(강릉단오제)で同様の芸能を見たことがあります。その時は田植えから刈り入れ、その後の精米までを見せていましたが、こちらは刈り入れで終わり、内容的にも時間的にも短いものでした。本来このように短いものなのか、出張イベントのため短縮したショートバージョンだったのかは分かりませんけど。この広場では、毎週日曜日の午前10時30分からその時々で様々な伝統芸能公演を行っています。週によって午前11時からだったり、別に午後3時からのイベントがある日があったりと、スケジュールが流動的できちんとご紹介できないのが残念なのですが。ともあれ、大長今テーマパークを訪れる方は入口ゲートからオープンセットまで行く道の途中にある掲示板にもご注目下さい。その日のイベントの告知があります。ところで、右の写真で遠くに見えるマンション、伝統芸能とは不似合いに感じられますが、GS(旧LG)建設のXi(자이=ジャイ)というブランド名で、TVCMなどのイメージモデルにイ・ヨンエを起用して評判になった高級マンションです。ドラマのオープンセットを見ても、高級マンションを見ても、思い浮かぶのはイ・ヨンエという訳で、まさに国民的スターですね。
現地にたどり着くまではどうなることかと思いましたが、こうして振り返ってみれば楽しい一日でした。「大長今テーマパーク」、ドラマのファンならソウル滞在中の半日を割く価値のある所だと思います。ぜひ訪問してみて下さい。
<おまけ>気分はミン・ジョンホ~
私、以前こんな格好をした経験がありました。2002年11月30日「タンソ」の発表会の時の記念写真です。ミン・ジョンホみたい~~。オ・ギョモではありません、決して、断じて。テーマパーク内でも「大長今」の衣装を着てみることができる場所がありますので、興味ある方はぜひどうぞ。