銀釜さん


子供の頃、私のいなかでは銀釜(ぎんがま)さんという遊びがあった。
夏の晴れた日、畑やあぜ道のわきなどにごくまれに直径50cmくらいの銀色の
円盤状のものが落ちていることがあった。
私達はそれを銀釜さんと呼んでいた。

銀釜さんを見つけると十文字に縄でしばり、一方の縄は長くしておき、木の幹な
どに縛り付けておく。
銀釜さんが暴れると危ないので、はなれて遠くからしばらく見ていると、銀釜さ
んはふわりと浮かび上がり、宙でもがくように暴れまわり、そのうちたいがいは
縄がほどけてしまい空に飛んでいってしまうのである。

縄を幾重に巻いて簡単は逃げられないようにしたこともあったが、やはり逃げら
れてしまった。
あとで縄をみると焼け焦げたようなあとがあり縄が切れていた。

ときどき力の弱い銀釜さんもいて、そういう銀釜さんは逃げずに宙に浮いている
だけなので、縄の片側を持ってちょうど風船のように銀釜さんをつれて歩くこと
ができた。

鈴木のやっちゃんは「ぎんがまんさん」と呼んでいたので、もしかすると正しく
は「銀河マンさん」なのかもしれない。

銀釜さんは大人には見つけられないようである。また、銀釜さんと遊んでいる時
は、なぜか周りには大人はいない。銀釜さんは大人がきらいなようである。

ある日、力の弱い銀釜さんをつれて歩いていた時、銀釜さんも暑いだろうと思い
縄に大きな石を縛り付け川に沈めたことがあった。
すると銀釜さんから数センチの真っ白い虫のようなものがいっぱいでてきて水面
で激しくもがいていた。
その時はさすがに気味が悪く、家に走って帰ると真夏だというのに蒲団をかぶっ
て歯をガチガチ鳴らした。

今思うと銀釜さんはUFOで、あの真っ白い虫のような生き物は宇宙人なのであ
ろう。
銀釜さん遊びを思い出すたび、あの宇宙人が復讐のため地球を襲ってくるのでは
ないかという恐怖に襲われ、背筋が寒くなる。
しかし、あの銀釜さんは私のいなかだけに現れたのであろうか。
ほかの地方にも比較的まれに現れていたのではないだろうか。
もし、銀釜さんを知っている人がいるとしても、私同様恐ろしくて他人には話し
をしないのではないだろうか。
あるいは、大人になったため忘れてしまったのだろうか。



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