昔の彼女


ある夏の日、私は仕事で懐かしい町にやって来た。
20年近く前に付き合っていた彼女が住んでいた町だ。あの頃彼女を家まで送る
ため何度も来た。
ふたりとも若かったが、お互い愛し合っていた。なぜ別れてしまったのかどうし
ても思い出せない。

その懐かしい町で夕方仕事を終え、駅への道を歩いている時、あの姿を見かけた

彼女だ! あの頃のまま!...?どう見ても20歳前後だ。
彼女のはずは無い。あれから20年近く経っているのだ。
彼女の娘さんであろうか。自分と別れすぐ結婚したのならこのくらいの年の娘さ
んがいてもおかしくは無い。
それにしてもよく似ている。あの頃彼女がよく着ていたお菓子屋さんのキャラク
ターがはいったクリーム色のTシャツにピンクの短めのスカート。母親からのお
さがりなのだろうか?
などと考えているうちに姿を見失った。

それから何度か仕事の都合で私はあの町に行った。
帰りが夕方になると、たいがい彼女の姿を見かけた。
別れた彼女本人ではないだろうがそれにしてもそっくりである。
声をかけようとも思ったが、どう話しかけたらいういのかわからずそれもできな
かった。
そのうち、その町のお客様の仕事は一段落し、そこに行くことは無くなった。

年末になり、その年お世話になったお客様へのあいさつ回りであの町に半年振り
にやって来た。
挨拶を終え、夕方になり駅への道を歩く頃にはすでに日が暮れていた。
彼女だ! あの頃のまま!
おかしい。すっかり寒くなっているのにあのクリーム色のTシャツにピンクの短
めのスカート着ている。
さらにおかしいのは、どうやらまわりの通行人には彼女の姿が見えていないよう
だ。
この季節に夏の服装で歩けば、誰もが彼女を見るはずだ。
時計を見ると5時36分。

不思議に思った私は次の日の夕方にまたあの町にやって来た。
時計を見ながら、時を待つ。5時34分。
いつもの姿で彼女がやって来た。今日こそは見失わず真相を聞き出そうとあとを
追う。
彼女は誰かをみつけそちらに笑顔で歩いていった。待ち合わせでもしていたのだ
ろう。彼女の向かう先には、驚いたことに20年近く前の私の姿があった。
その時、私はすべてを思い出した。

あの日、私は彼女から突然別れ話を持ちかけられた。
それまで愛し合っていることにまったく疑うことが無かった私にはあまりにも突
然のことに、逆上し彼女の首に手をかけたのだった。そして...



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