回り続けるペダル


これは本当の話です。
木下の仕事の得意先の近くに、いつもペダルが回っている自転車が置いてあった

誰もいないのに、ペダルが進む回転とは逆向きに一定スピードで常に回転してい
て気味が悪い。
近づいてみると、回り続ける理由がわかって一応はほっとする。

回り続ける理由は、次の通りだ。
自転車は、おそらく捨てられたものでチェーンは外れている。
自転車が置いてある前輪側に、タテヨコ1m、高さ1.2mくらいの地下鉄の送風
用の犬小屋のようなものが建っている。地下鉄の送風用の小さな建物に前輪を向
け自転車が置いてあると言った方が正しいかもしれない。
小さな建物の自転車側の側面から排気が出ている。スリットが設けられていて、
排気が下方向に流れるようになっている。この排気がうまい具合にペダルが下に
いった時にだけ風があたるようになっていてペダルが回転するのだ。

しかし、誰がこんなことを考え、チェーンが外れた自転車をここに置いたのだろ
うか。
理由がわかっていてもペダルが回り続けるこの自転車をみるとなんとなく気味が
悪い。
このペダルはずっと回りつづけているのだろうか。
地下鉄の終電後は、送風も止まりペダルの回転も止まるのだろうか。
確かめたことは無いのでわからない。

回り続けるペダルを見ているとこのペダルを無理に止めてはいけないように思え
てくる。
このペダルを無理に止めると、地球の自転も止まってしまう。
そんなことは無いだろうなと思いながら、ペダルを止めようと足を伸ばしててみ
るがどうしてもできない。

その自転車も半年くらい前に無くなった。おそらく区が放置自転車として撤去し
たのだろう。
しかし、地球の自転は止まっていない。



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