映画館 (埼玉県・Aさん)
僕は映画が好きで、よく映画館に行きます。
混むのが嫌いなのと、職場の休日の関係で、平日に行く事が多いのです。
田舎なので、話題の薄い映画だと、平日の昼間は館内はガラガラで、下手をすると僕一人の貸しきり状態になる事も良くあります。
その日、見に行った映画は、北欧を舞台にした恋愛映画で、案の定ガラガラに空いていました。
僕はゆったりと映画館の真中にある一番良い席に座り、スクリーンに映し出される雄大な北欧の自然を楽しんでいました。
しばらくして、ふと妙な居心地の悪さを感じ、僕は館内を見回しました。
空いている映画館では普通、前の方の席に座る人があまりいないのですが、その日は一人だけ、スクリーンに近い席に座っているお客さんがいました。
見ているとその人は、頭をフラフラと左右に振り出しました。
どうやら髪の長い女の人のようでした。
何をしているんだろう、と良く見てみると、スクリーンの照り返しで、その人はこちらを見ているのが解りました。
頭を左右に振っているのは、どうやら僕の後ろを見ようとしているからのようでした。
なぜなら、その人は突然立ち上がって、僕の後ろを指差したのです。
耳元で
「赤巻紙」
と囁く声がしました。
慌てて振り向くと、僕の後ろには誰もいません。
前を見ると女の人も、いなくなっていました。
あれはなんだったのでしょうか。
「赤巻紙」の意味もいまだに解らないままです。