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<真の漢(おとこ)みつけたり> その名も、“ザ・グレート・カブキ”
昨今では、ぬいぐるみ帽を被って人を刺したとか、遊ぶ金欲しさに人を刺したとか、危ない話が横行しております。 世は弱肉強食の時代、力の強い者が力の弱い者から奪う。自分の欲しい物は他人を殺してでも奪う。そんな世の中です。 まだまだ“北斗の拳”のような、誰もが相手を殺さなければ何も手に入らず飢えるだけ、といった末期的症状ではないにしろ、その世界へ向けて着々と進行しているようで、恐ろしい世の中になったものです。
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西暦200X年―――
関東地方
「ぐぅっっっ!!」
彼は苦しんでいた。
皆が見つめるその中心で、彼は唯うずくまるしかなかった。
唯どうしようもなく苦しかったのだ。
幾度となく込上げてくる魔を、彼は抑えることができなかった。
魔を抑える術を知らぬわけではない。
これまでも、このようなものは何度も経験してきた。
そして自分ひとりの力で、全て抑えてこれた。
しかし、今回は相手が悪すぎた。
自分のもっとも苦手とする分野の相手だった。
しかも、今日はいつにもまして月の輝きが強い。
月には、魔の力を強める働きがある。その輝きが
強ければ強いほど、魔の力は高まり、荒ぶる。
運の悪いことに、今は月の干渉が激しい周期でもある。
そして、今日は特に輝きが強い。ここ何年か、
これほど強い輝きを放つ月を見たことがなかった。
魔を取り込んで生かすのではなく、魔を抑えることによって
共存してきた我々にとって、このような日は絶対に避けなければ
ならない日だった。
「ごああぁぁぁっっっ!!」
だが、我等は今日という日に挑み、そして、彼は苦しんでいた。
そこは小さな飲み屋の脇だった。
閉店後の飲み屋の脇。
時間も時間だ、周りには人通りなどない。
彼は酔っていた。そして吐いていた。飲みすぎていたのだ。
普段の彼は酒に強く、酔ってつぶれたところなど見たことがない。
今日もそのはずだった。しかし、彼は焼酎はダメだったらしい。
いつもは、ウィスキーやバーボンなど、強い酒を好む彼だったが、
ブルジョワ出身には、どうも焼酎はあわないらしい。
だと言うのに、なぜか変なテンションで、しかもハイペースで
苦手とする焼酎を飲みつづけた結果がこれだった。
ところで、ここまで読んできて、この後、彼がどのように英雄ぶりを
発揮するのか、と期待してしまった方には非常に申し訳ないが、実は、
彼、彼は今回の英雄ではない。
今回、彼は、英雄を呼び覚ます為の鍵に過ぎなかった。
彼(鍵)の英雄談は別にあるのだが、
その話は別の機会に譲り、今は、呼び覚まされた英雄の話を続けよう。

その日、私たちは、久々に飲み会を開いていた。
場所は東京、JR飯田橋駅から歩いてすぐの、“かぶき”という店だ。
この、こじんまりとした店こそ、“東洋の神秘”と恐れられ、
全米で絶大な人気を誇った、あの有名なプロレスラー、
“ザ・グレート・カブキ”の店なのだ!
“ザ・グレート・カブキ”の名を知らずとも、“毒霧”ぐらいは
聞いたことがあろう。本当の得意技は“トラースキック”だが、
その見た目のインパクトと必殺性で毒霧の方が知名度は上であろう。
不幸にも毒霧を知らない人に説明すると、プロレスの試合中、
それまでは明らかに空(から)だったはずの口に、どこからともなく
湧き出した毒(赤や緑の液体)を、相手の顔面めがけて吹き付ける、
という技で、突然毒霧を喰らった相手選手は、目に入った霧により
視界を奪われ、なす術もなく、カブキに料理されてしまうのだ。
また、一説には、赤の毒液には“唐辛子”、緑の毒液には“わさび”が
入っており、喰らった選手が顔面を赤、もしくは緑に染めながら、
ばたぐるうのはその為だともいう。この変は、かの有名な香港アクション
スター、“ジャッキー・チェン”が、“プロジェクトA2”のクライマックスバトル
シーンで唐辛子を使ってやっているので、そちらで確認してもらうと良い
かもしれない。何故、本物で確認しないかというと、なんせ、カブキの
主戦場は海外だったので、日本でカブキの試合ばかり集めたビデオを
発見するのは一苦労であるからだ。あることにはあるが、普通のビデオ屋
ではまず見つかるまい。かなりマニアックな店に行かねば見つけることは
困難であろう。そういう理由から、お気軽に毒霧を確認したい人は
“プロジェクトA2”を見て欲しい。ただし、本物の毒霧は幻想的で本当に
美しいので、“プロジェクトA2”のドタバタ感をカブキに当てはめてはならない。
あくまで、毒霧の必殺性だけを主眼に見て欲しい。
そういうわけであるから、毒霧というものの、どんなに相手が優勢な立場
であろうとも、一瞬にして窮地に追い込むことができる、という必殺性、
そして吹き付けるときの霧の美しさは、見るものを魅了してやまないのである。
いささか説明が長引いてしまったが、その“ザ・グレート・カブキ”の店での
こと。
この店でやろうと言い出したのは、“山の男、フドウ”だった。
彼は、かなりのプロレスマニアで、この手の店を結構知っている。私も、
その存在自体は知っていたが、なんせカブキ本人がやっているわけだから、
失礼なことはできないし、その客層もかなりのマニアが予想されるだけに、
私程度の知識では店に入った瞬間、「お帰りください」と言われかねない。
そんなこんなで、1人で行くことが非常にためらわれた店だったが、今日は
フドウがいる。これで少々の知識ならば負けはすまい、と気を大きくした
私は、前々から行ってみたかったこともあり、かなりの浮かれ気分だった。
自分でも分かるぐらいニコニコで浮き足立った私と、フドウ、そして、
それほどプロレスは詳しくないが、格闘技に精通した“サザンクロス、シン”と、
多趣味で色々な方面に深い興味を持つ“(愛ゆえに)聖帝、サウザー”の
4人で始めた飲み会に、まさか、あのような結末が待っていたとは、誰が
予想できたであろうか。
店に入り、いきなり板場にいたカブキさんを見て「おぉっっ!」と
なったのに始まり、いかにもカブキなメニューに心躍る4人。
「まずは、ちゃんこでしょう!」と、“赤い毒霧(キムチちゃんこ)”や、
“オリエンタルクロー(ちゃんこ。詳細は行ってのお楽しみ)”などを注文し、飲み物は
当然、“幻想伝説カブキスペシャル(焼酎)”を選択。
今にして思えば、店の扉をくぐったときから、東洋の神秘にかかって
いたのかもしれない。次々と出てくるカブキなメニューをたいらげ、
カブキさんの“今日のおすすめ”も頂き、握手をしてもらい、名刺をもらい、
焼酎の瓶にサインをしてもらい・・・、と、やるべきことは全てやった、
「わが生涯に一片の悔いなし!!」という状態だった。その間、約3時間。
閉店時間となり、離れがたい気持ちを抑えつつ、顔はにやけつつ、
そろそろ店を出ようとしたその時、伝説が始まっていた。ある意味。
店のトイレからシンが出てこない。この3時間、普通の人では考えられ
ないほど頻繁にトイレに行き、また、常人では想像も及ばないスピード
で帰ってきたシン。そのあまりのスピードに、他の3人は、
「ほんとにしてきたのかよ!?」
と疑いの目を向けざるをえなかった。何度となく繰り返される奇行。
だが、その度にシンは、「してるって!」と言うので、特に追求する理由も
ない私たちは、「ま、人の体だから本人にしか分からんよな」と、そのままに
してきていた。
しかし、それがまずかったのだ。その時に、気づくべきだったのだ。
ほんとは、気持ち悪くて吐きに行っていたのではなかったのか、と。
そして、やっぱり思いとどまって出てきたのではなかったのか、と。
いつもなら、飲んでいる最中にトイレに行くなど、ほとんどないシン。
それが、あの状態なのだから、何かおかしい、と気づくべきだったのだ。
だが、飲んでいる量からすればたいしたことはない。いつものシンならば、
この程度は序の口だ。しかも、わざわざ軽めに作ってやった水割りに、
自分で焼酎を足しているぐらいだったから、むしろ、飲み足りないのかと
思っていた。 あとで聞いたところによると、実は、シンは店にいた時間の
後ろ半分以上を記憶のない状態で過ごしていたらしい。そして、自分で
焼酎を足していたことも記憶にないらしい。
つまり、シンは幻想を見ていたわけだ。
ひょっとすると、トイレに行ったときも、用を足した気分になって、
それで帰ってきていたのかもしれない。
恐るべし!幻想伝説!!、
恐るべし!!カブキスペシャル!!
トイレに倒れこむシンを尻目に、さっさと会計を済ませ、帰宅する3人。
うそうそ。
トイレに倒れこむシンを抱きかかえながら、介抱する3人。その様子を
見たカブキさんにもらったという、うがい用の塩水を、そうとは知らず
飲ませてしまう私。
*カブキ一口メモ
酔って気分が悪いときは、塩水でうがいをするといいんだよ。すっきり
するからね。ただし、飲んではいけないよ、かえって気持ち悪くなる
からね!!(^^) (塩水をもらったサウザー談)
その場ではあまり吐かなかったシンであったが、カブキさんと
店の方にお礼を言いつつ店をでた直後、店先で崩れるように座り込むシン。
そして襲い来る魔。かえって気持ち悪くなる塩水 (^^; のおかげ(せい?)
で、結局、店先で戻すシン。合掌。
そうこうしているうち、後片付けが済んで出てくる店の方。心配と励まし
の言葉を頂いたが、シンの耳に届くことはなかった。
シンに、もう一度口をゆすがせようと、塩水をもらいに、まだ店に
残っているカブキさんのもとへ行くサウザー。今度はしっかり注意される
私。
*カブキ一口メモ(繰り返し)
酔って気分が悪いときは、塩水でうがいをするといいんだよ。すっきり
するからね。ただし、飲んではいけないよ、かえって気持ち悪くなる
からね!!(^^) (サウザー談)
シンが動けないまま、更に時が経ち、カブキさんもお帰りのご様子となった。
店の明かりを消し、入口の扉に鍵をかけようと外に出てくるカブキさん。
その目に映ったのは、さっき自分の店で死にそうで、しかも今は死んでいる
奴を抱えた集団。「おいおい、まだいるよ、勘弁してくれ〜」と思ったか
どうかは分からないが(というか、そんなこと思っていない気がする。
カブキさんは、本当にシンのことを心配していたはずだ。少なくとも、私には
そう見えた。)、「大丈夫かい?」と、声をかけてきた。続けて、「そこは風が
来て寒いから、ここに来なさい。」と、店の入口のすぐ前を指差す。
入口の扉は、少し奥まったところにあり、扉の脇から出ている壁が、ちょうど
風除けになりそうな感じだった。「ありがとうございます。でも、お店の入口を
汚すわけにはいかないので・・・。」と恐縮する私たちに、
「いいから、こっちに来なさい。ほんとは、店の中に寝かせてあげたいけど、
何かあったら困るから・・・。」と答えるカブキさん。
暦の上では既に春なのだが、時間とともに冷え込みがきつくなってきている
現実に、少しの風除けだけでも相当ありがたく感じた。
特に、シンは魂を別世界に持ち去られようとしているので、少しでも肉体の
負担を軽くできるというのは、願ってもないことであった。そんな状態であった
から、1度は断ったものの、再度の申し出を断る理由はなく、私たちはすぐに
場所を移すことにした。そこにはもちろん、「店の中に泊めてくれればいいのに」
などと、カブキさんを否定する者は誰もいなかった。
“何かあったら困るから”。当たり前である。見ず知らずの、たった1回来ただけ
の客に、どうして自分の店を明け渡せようか。
カブキさん、正解。
「じゃあ、僕は帰るから。気をつけてね。風邪ひかないように。」そう言うと、
カブキさんは、店の横の駐車場にとめてある自分の車に乗って帰っていった。
時計はとうに0時をまわっており、車が消えていった方向には、来るはずもない
客を待つタクシーの列が、ぼんやりと光を放っていた。
さて、シンはどうなったか。カブキさんを見送り、シンの元に戻ってみると、
彼は震えていた。いかに風を避けたとしても、やはり外気そのものがしんしんと
身にしみる。「さて、どうするか。新聞紙でもかけておくか?」幸い、近くにコンビニ
があったので、そこで新聞は調達できるだろう。新聞紙というのは、実は結構暖かい。
あるのとないのとでは段違いだ。本当はコンビニでシンを預かってくれれば一番良い
のだが、そのようなサービスは提供されていない。
他に何が必要か考えていると、脇の駐車場に1台の車が入ってきた。
「あれ、ここって他の人も止めにくるんだ。まぁ、2台分ぐらいあるし、当然かもね。」
そう受け流し、コンビニへ向け、歩き出そうとしたそのとき、聞いたことのある声がした。
「この車の後ろで寝かせなさい。」
「え?」私たちが振り向くと、そこにはカブキさんが立っていた。
「あれっ!?帰ったんじゃなかったの?」
なんと、カブキさんが戻ってきていた。駐車場に止めに来たのは別の人ではなく、
カブキさん、本人だった。
「早く車に寝かせなさい」
「なにぃ〜〜〜っっっ!!!わざわざ戻ってきてくれたの? 自分の車に寝かせる為に?
1回帰ったのに?」次々と湧き出る驚きと疑問。だが瞬時に、いくらなんでもそこまでは
迷惑をかけられない、という思いに頭が切り替わった。車で寝かせてもらえば、
確かにシンは楽になれるだろう。しかし、いつ戻す(吐く)とも分からない状態で、
人の車に乗せるわけにはいかなかった。人を乗せるのが商売のタクシーだって、
泥酔者は乗せない。それは、結果が目に見えているからだ。
すぐさま、「そこまでご迷惑をかけるわけにはいきません!」と断った。
が、カブキさんは「いいから早く後ろに寝かせなさい」と、連呼してくる。
「早く乗せなさい」「いいえ、そこまでは」というやり取りを3、4回繰り返したあと、
「この人は本気だ」と悟った私は、これ以上の無駄なやり取りはやめ、そのご厚意に
甘えることにした。とりあえず、シンだけは甘えてもよいか、と思った。先のことは考えなかった。
サウザーとともにシンを車の後ろに乗せながらも、「すいません。ありがとうございます。
1人だけお世話になります。」と心の中で何度も思った。
そして、それ以上に、「決して戻してくれるな」とシンに対して思った。
だが、一番思いを巡らせた項目は、自分の口座残高だった。
シンの積み込みを終え、とりあえずカブキさんにお礼を言う私たち。
すると、カブキさんは、こんなことまで言い出した。「寒いから、みんな入って。しばらく
休んでいきなさい。この車を置いていくから。」
「えーーーーーっっっ!!! なに言ってるの、この人ーーーっっっ!!!」衝撃が瞬間的に
頭を駆け巡った。信じられない発言をする人だ。確かに、シンを車に乗せることに同意した時、
後のことは考えていなかった。唯、シンだけお世話になろうと思っていた。他の者は当然外で
待つつもりでいた。シンをどれぐらい車の中で休ませるつもりなのか。少し休ませて落ち着く
までなのか、あるいは、どこか休むことのできる場所に連れていってくれるつもりなのか。
考えはしたが、あの場ではとりあえずカブキさんの言うとうりにするのが最善だと思った。
信じるしかない、と。とりあえずシンを暖かいところに移すのが先決だと、そう思ったので、
それ以上考えるのはやめたのだが、まさかこんなことを言うとは思わなかった。
カブキさんの言うとうり、何も考えずにシンを車に乗せ、実は乗せた瞬間毒霧噴射!とか、
あわてて外に飛び出したところにトラースキック! とかあってもおかしくないのに(一般には、
おかしいです)、自分の車を明け渡すっていうの? 見ず知らずの人間に? 車って、
自分の家みたいなもので、神聖な場所、自分だけの空間、って感じの所じゃないの?
それを明け渡すっていうの? 盗むかもしんないよ? 爆弾しかけるかもしんないよ?
それなのに、カブキさんは、「朝になったら勝手に帰っちゃっていいから」とか言う始末。
カブキさん、不正解。
更に、カブキさんは車がないのに家まで帰るそうなので、「ご自宅って近いんですか?」と
聞くと、「タクシーで帰るから大丈夫。」なんて言っちゃうし。なんだと〜〜〜〜〜っっっ!!!
数々の迷惑をかけ続ける私たち。だが、全てがつながっている為、今更ひとつだけ遠慮、
などと言うことはできないので、全てカブキさんの言うとうりにするしかなかった。
「朝、仕入れの後で車取りに来るから、それより早かったら、勝手に帰っちゃっていいからね。」
と言うカブキさんに、最後の砦として、「いえ、カブキさんが戻られるまで、絶対に待ってます
んで!」と人間であることを死守しようとする私たち。仕入れから戻ってくる時間を聞いた後でも、
「ほんとに帰っていいからね。」「いえ、絶対待ってます!」というやり取りを何度か繰り返し、
そして、カブキさんは遠くにぼんやりと見えるタクシーの明かりへと、去っていったのだった。
残された私たちは、カブキさんの姿が見えなくなっても、なお、ただただ、深々と頭を下げ続ける
しかなかった。そして、3人の目には、統一された思いとともに、光る物があった。
車の中のシンでさえ、無意識か、光る物を口にたたえていた。(うそです!車の中には吐いてないっす!!)
翌朝、「おはよう」の声とともに車の扉が開いた。そこに立っていたのは、もちろん、カブキさんだ。
時間は8時半。予定通りだ。本当ならば、起きて待っていなければならないはずだが、
シンの具合がいつ悪くなるとも分からぬ状態で易々と寝るわけにはいかなかった。
おまけに、何故か“北斗”対“南斗”の決戦が始まってしまったので、寝れなかったのだ。
北斗対南斗の決戦は、まずフドウに死兆星が落ちた。フドウは心が優し過ぎるので、
シンのことを思うあまり、心労がたたったのだろう。残った私とサウザーは、フドウ陥落から
更に3時間以上戦い続けた。勝負は凄絶を極めたが、決着はつかなかった。
北斗と南斗の 威信をかけた闘いに、二人は退くわけにはいかなかったのだ。
二人に残されたのは、お互いが冠する星のプライドのみ。精神が肉体を凌駕していた。
そして6時半、ふらふらとよろめきながら、二人はお互い次が最後の一撃だと確信していた。
「南斗虎破龍!!」
「北斗龍撃虎!!」
相討ちだった。
お互いの秘孔を突き合い、二人は仮死状態となった。
お互いの技は、お互いの秘孔を突き合い、もういいかげん寝よう、という合図だったのだ。
こうして、北斗対南斗の“しりとり決戦”の幕は閉じたのであった。
眠りについてからまだ2時間しか経っていないので、起きれないのも無理はない。
だが、それはそれ。また、ひとつカブキさんに失礼なことをしてしまった。仕入れも当然タクシー
だっただろうに、とんでもないことだ。
とりあえず、昨日のお礼と謝罪をした私たちに、カブキさんが一言。「お腹すかない?」
それぞれが力を尽くした為、私たちは当然空腹だった。「そうですね。」と答えた私たちは、
カブキさんの店の筋向いあたり、どうやら行きつけらしい喫茶店へと案内されていった。
そこで、トーストとゆで卵、そしてコーヒーという、モーニングセット(と言う名前だったかどうかは
忘れました。)を頼み、カブキさんと微妙な談笑をしながら、朝食を頂いた。
何故、微妙なのかと言えば、4人とも昨日のことが頭にあったからだ、と思う。
少なくとも、私にはそれがあったし、また、体に染み付いた体育会の作法も後押しして、
明らかに縮こまっていた。相手が相手なので、失礼なことは言えないし、プロレスの話題
にしても、本職と外野の関係なので、明らかに知らぬことが多い素人は、下手なことは言えない。
そんなこんなで共通の話題探しに困っていたのだが、それでもなんとか、微妙に談笑した。
カブキさんの昔話や、今トップの人の昔話などで、「へぇ〜、そんなことがあったんですかぁ?」
と、ちょっと面白い話を聞いて嬉しかった。
もちろん、「幻想伝説、飲み易いですよね、ほんとに。だから、幻想見ちゃって。すいません(苦笑)」
などという話題もあり、シンを除く3人とカブキさんは面白かったが、シン本人は“穴があったら入りたい”
状態だった。現に、カブキさんが帰った後、朝カブキさんが来るまで待つのは当然、という話を
再びしていたとき、何とか復活したシンは「合わせる顔がないから消えたい」などと言っていたぐらいだ。
そうこうするうち、皆の皿も空になってきていた。そして、カップの中のコーヒーがほとんどないことに
気づいたカブキさんが、「もう1杯飲むかい?」と聞いてきた。私は、カブキさんももう一杯飲みそうな
感じだったし、私も飲みたかったし、どうせ自分で払うつもりでいたから、その誘いに応じた。
他の3人は気が引けているのか、「もう、いいっす」などと言っていたが、シンのみ、気分がさっぱり
するように、と追加でフレッシュジュースを注文した。
食事も終わり、さぁ、そろそろ行こうか、ということになり、勘定を払おうとしたら、あろうことか、
「いいよ、僕が出すから。」とカブキさんが言うではないか!
「さすがにそれは・・・」と1度は言ったが、「いいよ、いいよ」とカブキさんが言うので、
「ここまでいろいろして頂いて、今更ここだけ断っても意味がないな、カブキさんの面子も
あるだろうし。」と思った私は、素直にご馳走になることにした。
そんなこんなで、再び何度もお礼と謝罪を繰り返し、そして、カブキさんは自宅へ帰っていった。
カブキさんを見送った私たち4人(3人)は、「いや〜、シンのおかげで、普通考えられないような
体験ができたよ。」「ほんと、ほんと。」「でも、ほんと、絶対、来月菓子折り持って来るかんね!」
「毎月行かなきゃだめだろ!」「でも、ほんと、すごいよな。あれが真の漢だよ」、という話ばかり
繰り返しながら、それぞれの帰途へとついた。
日頃浴びることのない土曜の朝日が、手に下げた焼酎の瓶に反射している。
えもいわれぬ輝きを見せるそれは、まさに、幻想的だった。
そして、光の奥、英雄自らに刻まれた文字が、再び私たちの口にその名をのぼらせる。
“ザ・グレート・カブキ”と。
Staring
フドウ
シン
サウザー
新世紀覇王
店員さんK (川田似)
店員さんJ (女性)
ザ・グレート・カブキ (情出演)
Copyright (c) 2001 丞相
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終劇
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