2001年9月22日(土)ごきげんいかが?テディベア(毎日放送開局50周年記念ドラマスペシャル)

2001年度 文化庁芸術祭テレビ部門 優秀賞受賞作品

山田花子初主演ドラマ。大杉漣・仁科貴・手塚理美・未知やすえ・村田雄浩ほか

「臓器移植」をテーマに、臓器提供者の遺族の心情を描くドラマ。

亡き母の肝臓を持つ女性と文通をはじめ、その女性に会うため、大阪へとひとり旅立つ心模様を描く。

山田花子演じる、淡路島に住む高校生の橋本京子は、人と会って話したり、人ごみが苦手なタイプの女の子。高校には、人形浄瑠璃のクラブ活動が面白くなってきて、やっと通えるようになっていた。農業を営む家庭の、陽気な母・和子(未知やすえ)とも、すごく仲よく暮らしていた。ところが、和子は、農作業中にくも膜下出血で倒れ、脳死状態になり、かえらぬ人となる。過去、身内に病で苦しむ人がいたため、和子は、臓器提供カードに父・大助(大杉漣)とともに署名をしあっていた。「最期の意志や」と臓器提供に承諾する父。突然の出来事に、京子は「お母さん、ほんまに死んだんか?」と悲しみを癒す事の出来ないまま、高校もやめ、父と話す事もできなくなり、自分の部屋に引きこもってしまう。

和子の死から一年後、ジャーナリストからインタビューを受ける大助。その人が席を外した間に、和子から臓器提供を受けた人の名前や住所などの情報を目にした大助は、片っ端からメモをして持ち帰ってしまった。大助は、そのことを言わずに、ジャーナリストに「移植を受けた人と会ってもいいかどうか」を問い合わせるが、コーディネーターにも相談したかどうか聞かれ、「取り巻く事情を考えるとNO」という答えが返ってきた。

父の留守中、そのメモを目にした京子は、母からの臓器提供を受けたすべての人に「同じ病室にいた、テディベアを抱いていた女の子です。覚えていますか?お体の具合どうですか?私はすっかり元気になりました。お返事下さい。」と偽りの手紙を出す。

ある日その中の一人から、手紙が届いた。矢野静香という人からで「すっかり元気になって、今、仙台に来ている」という絵葉書だった。そして、京子が返事を出すと、長崎からの絵葉書が来て・・・「京子ちゃんと一緒に旅行している気分になる」とか、「チョコを一口食べると、なんかしあわせの味がする」母も大好きだったチョコレート。母が言っていたのと同じ事を、静香も書いていたりして、文通は続いていった。

「あなたに会いたい」と静香に、母への思いを募らせる京子だったが・・・ついに本当の事、母の肝臓が静香さんの体にあることを手紙に告白した。

外出する事の出来ない京子は、何も話すことなく、父親に携帯電話を買ってほしいとメモを部屋の外に置いていた。今までにない京子の注文に迷う父だが、誰かと話す気になった事を考えて、携帯を買う事に・・・。実は、携帯は京子が伝言ダイヤルのアルバイトをするために必要な物だった。四苦八苦しながら、収入を得た京子は、淡路島から大阪まで一人で旅に出る。静香の好きなチョコレートを買い、道を尋ねながら、ハガキにあった住所の静香の家に辿り着いたが、引っ越してしまっていた。近所の人から、夫・矢野亮一(村田雄浩)はゼネコンに勤めているという事がわかった。あきらめきれない京子は、淀屋橋でも聞き込みを続ける。手がかりを探そうと、必死になっていた。そんな時「伝言ダイヤルで知り合った人とは会ってはいけない」と言われていたにもかかわらず、大阪で男(仁科貴)と会う。優香ちゃん似と嘘をついていた京子だったが、男は、静香を捜すために協力してくれた。そして、大林組に勤めていることがわかり、亮一に会う。

「ごきげんいかが?テディベア」京子の元に届いた手紙・・・それは、夫の亮一が、静香になりすましてしたためていたものだった。亮一も、京子と同様、かけがえのない人を亡くしていた。静香は、退院する事はできず、移植手術をして1年ほどたってから亡くなっていた・・・。亮一は、仕事がら出張が多く「あの景色を見せてあげたいとか、京子に手紙を書いているとだんだん楽しくなり、退院したら、あそこに行きたいと話していた静香と一緒に旅行しているみたいな気分になって・・・かえって傷をつけてしまったかもしれない・・・」と京子に言った。

亮一は「あの時は異常でした。ニュースで自動車事故とか殺人があるたび、無意識に人の不幸をどこかで待っているようで、今考えると、ほんとに異常な思いが当たり前になっていた・・・人の命を体をもらうということは、実際にはそういう事なんです。でも、そんな思いをしてでも、大切な人には生きていてほしい・・・そう思うものなんです」と別れ際に京子に告げた。誰にも言ったことのない、亮一の思いだった。

父・大助は京子の事を住職に相談し、お釈迦様の白いけしの実を聞いた。京子の白いけしの実、捜しているものは・・・今の京子を立ち直らせるきっかけになればと、コーディネーターにも相談した結果は、どちらとも言えないというものだったが、あえて和子からの移植を受けた女性に会わせることにした。

レストランで、京子とまきこ(手塚理美)夫婦は会った。母・和子からの心臓の提供を受けたまきこは、京子に駆け寄り抱きしめた。まきこの夫に「どんなお母さんだったの?」と聞かれ、「すごい、おしゃべりなんです」と京子。「うちも一緒だよ」と笑う、まきこの夫。まきこは子供を産めない体だった。「私ね、はじめて京子ちゃん見た時、ほんとに、はじめて心臓がドキドキした。今まではここに違う人がいるような気がしていたんだけど・・・今もドキドキしている。和子さんありがとう」と泣いているまきこ。

「最近いろんな所に行って、いろんな人に会った。私のために一生懸命頑張ってくれた人。私と同じように大切な人をうしなってしまった人・・・。お母さんの心臓をもらった人にも会い、その人の胸の中で心臓がドキドキする音を聞いた時、やっと気づいた事があります。それまでずっとお母さんの心臓だと思っていたけれど、違うんだ。これは、もうお母さんから、その人のものになっている。現実とはそういうものだ。私が会ったいろんな人は、現実の中で頑張っていました」と京子は、胸中をふり返り、前向きに生きていこうとしている。

〜ドラマの中で取り上げられていた人形浄瑠璃「傾城阿波鳴門」(けいせいあわのなると)〜

母・おゆみと、一人娘・お鶴の物語。事情があって、小さいお鶴をおいて家を出ていったおゆみ。残されたお鶴は巡礼になって母を捜す旅に出る。偶然に旅先で出会った母と娘だったが、おゆみは都会で泥棒となってしまった自分の身を明かせず、泣く泣く追い返してしまうという悲しい物語。

私は、前から臓器提供カードを持っていたのですが、そのまま置いていました。最近、署名したのですが、家族からは署名してもらえませんでした。人の命がかかっている難しい問題ですが、「最期の意志」として考えてみるきっかけになったドラマです。

 

HOME