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ジンバブエ通信 2003年11月
■家は任せた! 我が愛しの番犬達
ジンバブエでは経済が悪化するにつれて、家を狙った泥棒が増えています。私の家もその例に漏れず、昨年の12月にしっかりその洗礼を受けてしまいました。
近所では、家の中からはもちろん、「車からタイヤを全部盗られた」とか、「フロントガラスを盗まれた」とか、驚いたことに「エンジンを盗まれた」という話まで聞きます。
こんな時、一番頼りになるのはガードマン(人間)ではなく、泥棒が怖がる番犬というわけなのです。なにしろガードマンや使用人が手引きした泥棒の話は珍しくなく(新聞によると年間千件!)、一番怪しいのがガードマンと豪語する人がいるほど。
そこで、私の家でも昨年から犬を飼い始め、もっと安全に、もっと安全にと犬を増やしていくうちに、今では3頭にもなってしまいました。
今回は、日本では全く動物というものを飼ったことのなかった私達が、悪戦苦闘しながら飼っている犬達を紹介します。
○メジャーデビューの役立たず犬、クロ(Kuro)
昨年の10月から最初に飼い始めたラブラドールリトリーバーの血を引く雑種のメス犬。元野良犬でSPCAという動物保護団体に保護されていたのを、生後4ヶ月の時に譲ってもらいました。
見た目がかわいらしく、愛想がいいので、やっちーも私もすっかり気に入りました。ところがこの犬、この性格が災いし、人間は誰でも大好きなので、すぐに番犬には全く不向きな事が判明しました。
さらにこの犬、最初の頃はめったなことでは吼えなかったので、近所の人からは「口のきけない」犬だと思われたほど。クロがいるのに泥棒に入られたので、私達からは「役立たず犬」のレッテルを早々に張られてしまいました。きっと泥棒にもしっぽを振って、愛想を振り撒いていたに違いありません。
またこの犬は、庭にあるあらゆる物を噛むという癖があり、私のシャツやズボン、やっちーの下着、とあらゆるものを引き裂かれ、ついにはベランダに置いてある、お気に入りの木の椅子のセットもボロボロに。
この犬、やっちーの日記を読んだ「動物のお医者さん」でおなじみ、佐々木倫子さんのマンガ「Heaven!」に登場し、日本で「おバカな犬」としてメジャーデビューを果たしてしまったのです!(第42話 ふたつの太陽)
さてこのクロの近況ですが、この犬は運動能力が抜群で、家の敷地から金網を攀じ登ったりして脱走する特技?もあるのです。
ところが6月のある日、ついに通勤する私を追って敷地から脱走し、車に跳ねられて重傷に。後ろ足の股関節が完全に壊れての脱臼で、獣医がいろいろ試みましたが元に戻すことが出来きず、藁をも掴む思いで3時間もの大手術を決行しました。
ジンバブエ、それも獣医が一人しかいないムタレなので、私達はもう歩くこともできないかもと観念していました。しかし驚異的な回復力で歩けるようになり、今は以前のように鉄砲玉のように走り回るほどになりました。
ちなみにクロの手術費用は、うちのガーデンボーイ(庭師)の給料の10ヶ月分もかかり、我が家の家計を一気に圧迫。楽しみにしていた結婚記念日の旅行、その他もあえなく中止となってしまったのでした‥‥。
○血統書付きの甘えん坊、ラッキー(Lucky)
クロは番犬として無能な事がわかった私達は、ジンバブエで生活するために、なんとか役立つ番犬を探そうと必死でした。とは言ってもムタレに犬を売っている所なんかあるはずもなく、SPCAはもう懲り懲りで八方塞がり。良い番犬を持っている家は、いろんなコネで手に入れているようなのです。
そんな時、なにかとお世話になっていた韓国人のキムさんが私達を大変気の毒がり、自分の所には犬が二頭いるからと今年の3月に一頭を譲ってくれることになったのです。それが、6代前からのバリバリの血統書付きの2歳のオス犬、我が家のホープ、シェパードのラッキーです。
初めて見た時から大柄で、般若のような顔で眼光するどく吼えるので、「これこそ番犬!」と理想の犬に思えました。私の家に来てからも、近所でも「この犬はすごい!!」と大評判、近所の人もゲートからおそるおそる覗いて行くほど。
ところがこの犬、実は近所の人には『絶対』に秘密なのですが、外見とは全く正反対の性格で、実に臆病、超がつくほどの甘えん坊君なのです。
体格はクロの倍もあり、顎は牛の骨をポッキーのように砕いておいしそうに食べるほど強いのですが、気がやさしいのでケンカもクロより弱いのです。
この犬は、外見だけで勝負と言えるかもしれません。外見と性格のギャップがおかしく、可愛さから言えばこの犬が一番とも言えるほどです。
ちなみにうちのガーデンボーイには、近所にこの秘密の性格がばれないように、「この犬は警察犬の血を引く獰猛な犬で、人を用捨なく襲う」と噂を広めるようにさせているのでした。
○さすらいのレンガ・コレクター、ビジ(Biji)
ラッキーを譲ってくれたキムさんが、突然韓国に帰国することになり、ムタレを離れる当日、今年の6月に譲ってもらったのがオスで8歳のビジ。キムさん宅で泥棒が進入した時に吼えまくり、追い返したという輝かしい経歴を持ちます。(写真は、台所でくつろぐラッキーとビジ)
色がベージュで毛がふさふさしているので、てっきりゴールデンリトリーバーだと思っていたら、この犬もシェパード。まるまると肥えていて、後ろから歩く姿は、ドテドテしていてお相撲さんを思わせます。
この犬の特徴は、とにかくドスの効いた低音の声で吼えまくることです。怪しい人にだけ吼えてくれると非常にありがたいのですが、お腹が空いても興奮して吼えまくるのが頭が痛い所。
一見、よく吼えるので非常に怖そうで、気性が荒いのかと言えばそうでもなく、本当は温和な性格、満腹の時のつぶらなちょっと潤んだ瞳は、3頭の中で一番お茶目。
ところでこの犬は変な癖があります。興奮すると片手で持ち上げるのも辛いような重いレンガを探し出し、口にくわえて振り回し、庭を延々と行ったり来たりするのです。この犬にかかると、まるでレンガがおしゃぶり状態!
そなんわけで、ビジは朝晩の食事の前には必ずお腹が減って興奮するので、餌を与える台所の前にはビジが運んできたレンガが毎日2、3個ずつ増えてくるということになっているのです。
ちなみに犬達の食事はドックフードなのですが、これがジンバブエ人が食べる主食のミルミル(トウモロコシの粉)の値段の2倍から3倍もするのです。つまり犬を飼うための費用は、使用人の給料よりずっとかかり、ジンバブエは日本で言う江戸時代の「お犬様」と言えるかもしれません。
私は日本では犬が怖くて3メートル以内に近づけなかったのですが、すっかり犬好きになってしまいました。
やっちーの方はもっと犬に入れ込み、犬との生活を楽しんでいるようです。私の食事は「今日は疲れているから‥」などと作るのをサボるのですが、犬の餌だけは用意するのをサボりません。(写真は、近くの自然保護区、後ろにいるのはサイ)
おそらく日本に住んでいたら、私達は一生犬を飼わなかった(飼えなかった?)と思います。ましてや、シェパードのような大きな犬は、日本の家では狭くて飼えなかったに違いありません。
このような経験もジンバブエに住む貴重な経験の一つかなとも思っています。いろいろ頭の痛い事が多い今のジンバブエですが、犬達は番犬としてだけでなく、癒しの効果もかなり高く、生活するには必須のものと言えそうです。
2003年11月9日(日) 9時 曇り空 自宅にて
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