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 ジンバブエ通信 2003年6月


苦肉の週末企画からの脱出

 昨年10月からのガソリン危機のため、私達は7ヶ月以上もの間、車でほんの15分のリゾート地、ブンバ(左の写真)にさえもなかなか行けない生活が続いています。私達にとって、唯一の息抜きであった近郊へのドライブさえもできないことは、今のジンバブエのように物不足を始め暗い話題が多く、娯楽が少ない所では辛いものがあります。

 こんな情況でもハラレに住む日本人(多くは政府関連)の方々は、休暇も取れてガソリンも手に入るらしく、地元に住む私達ですらなかなか行けないブンバにも、ゴルフやリゾートにと入れ替わり来てはエンジョイされています。

 そのような話を聞くたびに、妻やっち−の欲求不満は増すばかりで、「他の日本人が羨ましい! ここにはあなたの都合で来てあげたのだから、私の欲求不満を解消する義務がある!!」と私を鬼のように攻め続けるのです。確かに私達はこちらに来て1年以上にもなるのに、ジンバブエに来たなら誰でも行く世界三大瀑布の一つ、世界遺産のビクトリアフォールズにも、そしてこれまた世界遺産であるグレート・ジンバブエ遺跡にも行ったことがないのです。

 妻の友達には、2年ちょっとでビクトリアフォールズだけでも7回なんていう人までいるからたまりません。「ガソリンが手に入ったらすぐに行こう‥」「休暇が取れたら行こう‥」という私の言葉は、ジンバブエ人の約束のようにとっくに効力を無くしています。私達は週末の度に、「楽しいケーキ作りの集い」やら「近所のゲームパークへおやつ付きの散歩」やらの苦肉の企画を考え出し、なんとか欲求不満の解消を図るのでした。

 そんな中、5月にアフリカデイを含む3連休がありました。私はガソリンがないのだからと早々にギブアップし、今回は「裏庭で白菜、大根の種まき会」でも企画しようと、のん気に考えていました。ところが、欲求不満の権化と化しているやっち−に、そんないつもの週末企画が通用するはずはありませんでした。

 やっちーは既に、写真集を見ていつかは行ってみたいと話していたゴナレゾウ国立公園のロッジをパンフレットで研究しまくっています。私の方もさすがにその鬼気せまる気迫に根負けし、なんとか郊外に脱出する決心をせざるをえないのでした。

 さて、郊外に行く方法ですが、ガソリンがなければローカルバスで行くしかありません。けれども、一列5人がけ、エアコンもカーテンもない超満員バスで、亜熱帯地方に行くのは考えただけで気が滅入ります。息抜きの連休が、これでは間違いなく戦いの日々に‥。それに最大の問題は、燃料不足からバスでは連休中に帰って来れる保障が全くないのです。

 いまさら企画を元に戻すことはできそうもなく、いつも助けてもらっている知合いにガソリンの入手を頼み込みました。けれども、八方手を尽くしてもガソリンはブラックマーケットですら無いとの事でした。万策尽き最後の望みをかけて、今まで温存しておいたコネまでも使いまくり、出発前日の夜ぎりぎりになって、怪しげなモザンピーク産だとういうガソリンを複数のルートから掻き集めることに成功したのでした。


憧れの地、ゴナレゾウ国立公園

 ゴナレゾウ国立公園は、ムタレの南300キロの所にあるジンバブエ第二の広さを誇る国立公園です。モザンピークと国境を接し、モザンピーク側の公園から南アフリカのクルーガー国立公園へと続きます。ゴナレゾウのゾウはショナ語でも象と言う意味で、「象のいる所」と言う意味だとのこと。密漁などのため動物は少なくなっていて、ジンバブエではマイナーな国立公園ですが、それだけに手つかずの自然を味わえる所となっています。

 連休の当日、私達は一路ゴナレゾウ国立公園を目指して南下しました。ガソリン不足のため走っている車はほとんどないので、驚くほど快調に飛ばせます。やがて2時間半ほどで、目指すチロ・ロッジへの43キロのラフロードへ入りました。

 車で行く時に不安だったのが、このラフロード。なんと言っても私達の車は、多くの白人や日本人が乗っている4WDではなく、予算の都合で日本でとっくに廃車済みの十数年前の年代物の車。はたしてこの車が、往復約90キロのアフリカのラフロードに耐えられるかが非常に気になっていたのです。もしこんな所で故障したら‥、考えただけでもゾッとします。ところが、以外なことに未舗装にしてはわだちも少なく、これならムタレの穴だらけの舗装道路よりマシなくらいで一安心となりました。


○大満足のチロ・ロッジ(Chilo Gorge Safari Lodge)
 やっちーが2週間の研究の末厳選したチロ・ロッジは、Save川の峡谷の上にある高級サファリロッジです。ロッジは、レストランなどがあるメインの建物と14の宿泊客用のロッジからなります。ロッジから川を見下ろす眺めは、緑と川がなんとも言えず調和し心を落ちつかせる、ムタレ周辺ではけっして見ることのできない景色です。
 
 感動したのは、各部屋のテラスからも同じ景色を見ることができること。部屋からもカバのカップルが泳ぐ姿やワニの昼寝、そしてサルの毛づくろいなどを見ることができ、部屋にいながらにしてサファリ気分が味わえてしまうのです。

 この高級ロッジの宿泊料は、1泊三食付き、かつ2つのサファリなどのアクテビティがついて、ジンバブエに住んでいる人なら、なんと一人約3000円という信じられない安さなのです。外国人だとUS140ドルですが、これでも十分満足できる値段ではないでしょうか。

 夕食は、テラスで降り注ぐような満天の星空の元、川から吹き上げる心地よい風を感じながら、ロッジのマネージャー家族やガイドたち、そして他の泊り客と一緒のテーブルで歓談しながらとります。これがまたホテルと違ってなんとも言えずいい感じです。

 メインは毎日2つのメニューから選べるようになっており、特においしかったのは、野生の動物のものとは思えないような上品な味のインパラのシチューでした。さらに夕食にはワインまでついて、これはうれしいことに飲み放題なのでした。

 普段ジンバブエに住んでいると、困ることや辛いこと、腹の立つことが多いのですが、こういう時だけはジンバブエ住民で本当によかったと心の底から思えてしまうのでした。


○サンセットサファリで気分はアフリカ!

 ロッジからの素晴らしい眺めを堪能すると、一日目のアクティビティはサンセットサファリを選びました。

 チロ・ロッジから5キロほど下流の川を手漕ぎ(手押し?)の小さなボートで渡り、サファリ用のランドローバーで公園内を走ります。さっそく、インパラやクドゥなどの動物をあちらこちらで見ることができました。

 この日のメインイベントは湿原でのサンセットです。目の前にはカバがのんびりと泳ぎ、湿原の遠く反対側にはかすかに象の群れが見えます。その中をオレンジ色の太陽が、湿原にもう一つの太陽を写しながらゆっくりと沈んで行きます。冷えたビールを飲みながら見惚れていると、思わず「アフリカ、最高だぜ!!」と心の中で叫ばずにはいられない私なのでした。


○巨大な赤い壁、チロジョ・クリフ(Chilojo cliff)

 翌日は早朝5時にガイドに起こされて、ランドローバーでチロジョ・クリフへ向かいました。このランドローバー、サファリ用なので囲いというものがなく、日が昇るまでは、亜熱帯のゴナレゾウなのに、風は凍死するのではないかと思うくらい寒く、しばらくは口もきけないほどでした。

 チロジョ・クリフに近づくと、昨日は遠くにしか見えなかった巨大な象も真近くで見ることができ、アフリカ・サファリ初体験のやっちーもこの日は昨日よりも大満足のようです。

 ゴナレゾウで動物より有名なのが、お札のデザインにも使われているチロジョ・クリフ(絶壁)です。写真集で見る度に、「これがジンバブエか!」と思い、いつかは行ってみたいと思い続けていた所です。

 約3時間、幾つかの川底を車が転がりそうになりながら横切り、お尻が座席から50センチも飛び出るような道を延々走ると、目指すチロジョ・クリフが近づいてきました。その想像した以上の大きく、そして威厳さえ漂わせる絶壁は、それまでの道中もすっかり忘れさせてしまう程のものでした。 乾期の後半、8月末頃には、目の前の川を渡ってクリフの上にも行くことができるそうで、「次回こそは、ぜひあの上を歩くぞ!」と誓わずにはいられませんでした。


○やぶ蚊との戦い、ウォーキングサファリ

 翌日は国立公園内の早朝のウォーキングサファリです。朝靄の川を手漕ぎボートで渡ると、そこは息を飲むような幻想的な世界が広がりました。その幻想的な世界に色を添えるように、あちらこちらから鳥とそして得たいのしれない動物の鳴き声が聞こえます。これがまたなんとも言えずアフリカンなのです!

 ウォーキングの方は、バオバオの木の生える朝露に濡れるブッシュを、文字通り掻き分けて歩きました。この日は動物はインパラなどしか見えなかったのですが、それよりも強烈だったのは、やぶ蚊の大群で、これでもかというくらいに全身に群がり、マラリアの恐怖と共に、正直なところとても動物観察どころではなかったのが残念でした。



 こうして、ゴナレゾウ国立公園とチロ・ロッジのおかげで、私達は地方都市ムタレに住むよさを再認識した次第です。そうなんです、ガソリンさえあれば‥‥。


2003年6月1日(日) 10時 明日はMass action 快晴の自宅にて
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