アフリカ体験(ケニア編4) - 6

          -- 青年海外協力隊 --


■秘境ツルカナ湖

 分かれ道からしばらくは荒涼とした景色が続いた。乾いた土と所々から剥き出しとなった岩は、どこか見たことがある風景を思わせた。それはまるでキリマンジャロで4千メートルを越えたところで見た景色のようだ。おそらく過酷な自然という共通点が、作り出した偶然なのであろう。

 距離的には大したことはないと思われるが、不安の中で走るとなると時間が長く 感じられる。分かれ道からは、名ばかりの案内兼用心棒のポリスは後ろの席へ移し て、私が助手席に座っていた。車の後ろには土煙が延々と続く。私はツルカナ湖が 見えるであろう茶色の岩石だらけの丘の方に目をこらし続けた。

 その時、丘の斜面が一瞬きらりと光った。その光は始めは点であったが、徐々に その姿は大きくなった。私は「見えた」と叫び、車を止めてもらった。確かに湖である。まだ距離があるもののそれは確かに湖だ。

 そこから10分も走ると道はいよいよひどくなってきた。車が丘の後ろに回りこむにつれて湖は姿を消した。道には数十センチから数メートルの岩がごろごろしており、車は岩石の上を歩くようなスピードで進む。私達は、何とか自分の体勢を維持しようと車にしがみつく。その時、岩石のだらけの視界が開け、目の前に巨大な ツルカナ湖が一気に姿を表した。

 そこは湖のへりの部分で水面までは数十メートルはありそうだ。その景色は私の度肝を抜くに十分すぎるものであった。ツルカナ湖は、すこし濁った淡い青色の水を満面と貯えているのだが、不思議なことに回りには木はもちろん、植物らしいものがほとんど見られないのである。まわりは茶色の岩、岩、岩である。まるで砂漠の中で蜃気楼を見ているようだ。風を遮る木々がないからであろう、ほとんど音のない静寂の世界だ。私にはこの瞬間に湖が消えたとしてもそれはなんの不思議もないように思えた。

 私達一行は、やっとのことで湖のほとりまで進んだ。車を降りて湖畔に向かう。 湖面からの風がここちよく私の体を包みこむ。私はぐらぐらと動く石の上をよろめきながら進むと、その存在を確かめるように水に手を入れた。この生暖かい水が私の第二の故郷とも言えるエチオピア、そしてスーダンにまで続いているのだと思うと感慨深いものがある。ついに来たのだという満足感が私をつつんだ。

 しばらくして気付いたのだが、何という事であろう、こんな所にも人は住んでいるのである。回りを良く見ると他の景色と同じ様な色なのでよくわからなかったのだが、岩の間に皮のようなものや枯れ枝で作った家らしきものがあり、そこにはツルカナ族が住んでいるのだ。「なぜこんなところに」「どうやって生きることがで きるのだろう」と言う疑問が頭をよぎる。ナイロビのミラーグラスの高層ビルもケ ニアならば、ここの家もまたケニアなのである。

 しばらくここにいたいとは思うのだが、ここに泊まるだけの装備はない。私達は湖のほとりで、昼食を取ると一気にナチョラ目指して引き返すのであった。  


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