0.はじめに

(1)子どものリコーダー演奏の実態
 みなさんが小学校の時、よく演奏をした楽器といえば、リコーダー(ソプラノ・リコーダー)ではないでしょうか? みなさんは、どの程度演奏できましたか?
 実は、このリコーダー、手軽に演奏できるのはいいのですが、それゆえに、きちんと練習した子とそうではない子の間には、すごい格差があるようです。
 私は、高学年担任が多いのですが、5年生にあがってきた子どもで以下のような例を見たことがあります。
重症
右手と左手が逆になっている。
右手がリコーダーの下の方(足部管)を持つ癖がついている。
音階と運指が一致していない。
軽症
右手の運指が、指穴にしっくりこない。
低い音が出せない。
高い音が出せない。
タンギングの演奏しかできない。
タンギングの演奏ができない。
 他にも、いろいろな症状がありますが、よくまあここまで修正されずに、上の学年にあがってきたものだと、ため息をつくことがしばしばです。
 それでは、なぜこのようなことになってしまったのでしょうか? その理由について考えてみましょう。

(2)リコーダー指導の実態
 リコーダーは、3年生から習い始める学校が多いと思われますが、その3年生1年間の指導で、演奏技術の基礎がほぼすべて決まってしまう、と私は思っています。つまり、その最初の指導が、後々までずっと響いていくわけです。

 では、どのような指導がなされているか、およその例をあげてみたいと思います。
リコーダーの正しい持ち方の前に、「シ・ラ・ソ」を吹いている。
 リコーダーで、最初に音を出すのは「シ」、次に「ラ」、そして「ソ」と進んでいくことが多いのですが、その時に、右手はリコーダーのどこを持つのか、なおざりにされているのです。
 もちろん最初に、右手と左手の持ち方の指導はあると思うのですが、左手の運指にばかり気をとられて、右手まで気が回らないことが多いようです。また、ある本には『左手だけで音を出す最初の頃(「シ・ラ・ソ」)は、右手は足部管を持たせてもよい。後で、左手の運指が必要になった時に修正すればよい。』というようなことが書いてあったと記憶しています。ところが、そのような修正は、後では到底無理なんですよね。その理由は・・・。
一斉指導が、リコーダーを吹く際の、悪い癖をそのままにする元凶になっている。
 一斉指導は、全体を効率よく進めるには、とてもよい指導法だと思います。しかしながら、リコーダーの指導に関しては、この一斉指導がほとんどよくない、と私は確信(!)しています。
 一斉指導をすると何がよくないのか?
『正しい運指』『正しい持ち方』『正しい姿勢』
『口の形』『息の吹き込み方』『タンギング』
 こういったものが、ほとんど見えないまま、あるいは一人一人に指導されないまま進んでいくことになります。その結果、どういうことになるかと言うと・・・。
1年間に吹く曲が少なすぎる。
 子どもたちが、1年間にどれくらいの曲を吹いている(練習している)のでしょうか。多分、3〜6曲の間だろうと思われます。つまり、学期に1〜2曲という程度です。これでは、上手くなろうにも「シのフラットはどうするんだったっけ?」という状態になってしまいます。もちろん、『音楽の時間を使って一斉指導』という前提にならば、それくらいの数になってしまうと思います。ですから、その『音楽の時間を使って一斉指導』という前提条件さえ打ち破ってしまえば、ほとんどクリアできることになります。
リコーダーが吹けない子は、音感も良くない。
 これは、実際に指導していて思うのですが、『リコーダーがうまく吹けない子は、音感が今ひとつ。』ということがほとんどです。私から言わせてもらえば、それは当たり前のことです。
 では、リコーダーで1曲吹けるように練習してみるとします。どうやって曲のメロディーを覚えていきますか? ピアノを習っている子ならいざ知らず、楽譜からメロディーが分かるというような子は、ほとんどいないはずです。(私も、楽譜からは判断できません。)そうなるとどうやって覚えるのか? そうです、曲を『耳』で覚えて、そして楽譜で確認しながら演奏をするということがほとんどのはずです。まさに、ここがポイントなのです。
 つまり、リコーダーの練習を通して『耳』が鍛えられていくのです。これは、とても大きいことです。合唱の練習をするにしても、この『耳』が鍛えられている子とそうでない子は、大きな差になって表れてきます。リコーダーを練習する時に、きちんと『耳』が鍛えられていれば、カラオケを歌うときにも、とても役立つと思うのですが・・・。
指導者が、リコーダーのメソッドをよく知らない。
 最後に、私自身の反省も含めて書くのですが、指導者が『リコーダー演奏の基本』をよく知らないということがあります。
 子どもに、この曲はこのように演奏するというのを、「指導者が実際に吹いてみせている。」という光景は、あまり見たことがありません。多分、ほとんどは指導者が吹けないからではないでしょうか? つまり、吹けないということは、リコーダー演奏の基本を自分で確かめていないということになります。
 ある本に、こんなことが書いてありました。 「タンギングがうまくできない子には、チャルメラを吹かせて自信を持たせればよい。」私は、これを見て笑ってしまいました。なぜなら、チャルメラの吹き方(レガート)で吹ける曲が、果たしてあるのかどうかということです。その子は、ずっとチャルメラだけで終わってしまうのでしょうか?
 これを読んで笑っているあなた。あなたも似たことはしていませんか? 実は同じことをやっている方が多いのです。では、どういうことか? リコーダーの演奏の仕方で、最初にタンギングを教えますが、その「タンギングの吹き方」で、他の曲がその曲らしく演奏できますか?
 「ちょうちょう」や「ぶん ぶん ぶん」ならいざ知らず、「きよしこの夜」や「エーデルワイス」をタンギングで演奏しますか?  ここでようやく気づかれたかと思いますが、演奏の仕方、正しくは、舌使いを1つしか教えていないのに、「きよしこの夜」や「エーデルワイス」などの演奏で、どうもその曲らしくないと言っている方が実に多いわけです。
 実は、管楽器の吹き方は、大きく4つあります。『レガート』『ノンレガート』『スタッカート(タンギング)』『マルカート』(詳細は、後述)の4つで、これを曲によって吹き分けなければならないわけです。
 私も、ブラスバンドの指導をするようになって気づいたのですが、こういった吹き分け方の基本は、リコーダーでも必要なわけです。

 以上、リコーダー指導の実態ということで述べてきましたが、では、実際どのような指導をすればよいのかについて、これから述べていきたいと思います。

1.指導法

※これから述べる指導法は、
「現代リコーダー教本」(発行:日本ショット 編者:ワルター・ファン・ハウヴェ)
「NHK 新訂−ふえはうたう[指導書]」(音楽之友社 編者:吉沢 実)
を参考にし、それに私の経験を加味して述べていきます。
みなさんが、よく知っておられることは省略・割愛させていただきます。

(1)『持ち方』
 みなさんが、一番最初に子どもにリコーダーを持たせるとき、どちらの手に持たせられますか? ほとんどの方が「シ・ラ・ソ」の運指も兼ねさせる意味合いで、左手からではないでしょうか?
 それが、そもそもの間違いの始まりになります。よく考えて下さい。演奏をする時、リコーダーを支えているのは、どの部分ですか? そうです。唇(下唇)と右手の親指の2点です。まず、ここを理解しておかなければなりません。
 つまり、右手の親指が、リコーダーの中部管のどこにあるかがポイントなのです。そのためには、まず、リコーダーを右手だけで持たせて、その親指のベストポイントを教えてあげる必要があります。

 では、その確認の仕方を述べます。
○リコーダーを4と7の指(右手の人差し指と小指)と右手親指で持ちます。もちろん4と7の指は、リコーダーの指穴の部分に合わせてです。なお、このとき、5と6の指(右手の中指と薬指)は使わせないようにして下さい。
○リコーダーを自分の前に持ってきて、前後に45度くらいの角度でゆっくり動かしてみて下さい。ちゃんとバランスがとれるように動かして下さい。
○この時、右手の親指は、ほぼ5の指穴の裏側にきているはずです。そう、この位置が右手親指のベストポイントになります。
 子どもたちは、すぐに忘れて別の場所に親指をおこうとすることが多いので、小さい丸いシールなどを貼っておと、常に確認することができるでしょう。

 右手親指の場所が確認できたら、4567の指を指穴に合わせてリコーダーを持ちます。これに、左手の0123の指をその指穴に合わせれば、一応リコーダーの正しい持ち方の出来上がりです。
 一応と書いたのは、この時両脇を締めて持っている子がいる可能性があるからです。その子たちは、両手の親指の方向を見ればすぐに分かります。両脇を締めてリコーダーを持っている子は、両手親指の方向がリコーダーと平行の向きになっています。
 正しい持ち方をしている子は、両手親指がリコーダーとほぼ直角(70°〜80°)になっているはずです。

 ところが、まだ安心してはいけません。01234567の指全部は、指穴を閉じたままです。ここで、右手の4567の指を、リコーダーの指穴から約指1本分離したところで止めます。この空中のポジションが、指のあるべき場所なのです。他の指も指穴から上げる時、それ以上の高さに上げないように、くれぐれも念押しをしておきます。
 なぜ、ここまで言うかなんですが、指を大きく上げる癖がついている子は、ここでの指導が抜けているのです。そんな癖がついている子は、曲中の速いパッセージ部分ではどうしても遅れてしまいます。
 ですから、いったん01234567の指で指穴全部閉じて、234567の指(134567の指)を、指穴から離したり閉めたりという練習をしておく必要があると思います。

 これでようやく正しい持ち方が終わりました。
(2)『口の形』
 口の形というよりは、リコーダーの吹き口(マウスピース)を唇でどのようにくわえているかということです。
 この部分も案外見過ごされがちなのですが、実はこのことが『舌づかい(タンギング)』に影響してきます。私には、一発で分かるのですが、マウスピースを深くくわえている子は、ほとんどタンギングを使って演奏していません。実際に深くくわえてみて下さい。舌先よりも奥にマウスピースが来てますから・・・。
 ところで、ブラスバンドの木管楽器(リードを持っている楽器)は、この口の形のことを<アンブシュア>というのですが、これで音の良し悪しが決まってしまうので、かなりシビアに練習します。私自身もクラリネットを吹きますので、このことは痛感します。
 一方、リコーダーの場合には、リードがありませんので、そこまでシビアにやる必要はありませんが、タンギングができるようなマウスピースのくわえ方になっておかなければなりません。

 では、くわえ方のやり方を述べます。
○自分の下唇の先端と下の歯までの間が、だいたい下唇の厚さです。この時、その中間のポイントを確認しておきます。
その中間のポイントに、マウスピースの先端をもってきて、下唇の上にマウスピースをおいて下さい。そして、上唇をかぶせて下さい。それが、正しいマウスピースのくわえ方です。
○それが分かったら、リコーダーを右手と左手で正しく持って、先ほどのくわえ方をして下さい。これが、正しい持ち方と正しい口の形になります。
(3)『姿勢』
 この姿勢については、いろいろな本で絵や図入りで紹介してありますので、ここでは述べません。
 ただ問題なのは、その姿勢で継続して練習できていないというところに問題があるのです。
 子どもたちが練習している風景はというと、椅子に座って、机の上に置いてある楽譜をのぞき込みながら、リコーダーを吹いている・・・。これが、ほとんどではないでしょうか? これでは、姿勢が悪くなるばかりです。
 そもそも楽器を演奏する場合には、ほとんどの場合、立って演奏をした方が楽なのです。理由は、腹式呼吸をするのが楽だからです。ところが、リコーダーを立って練習している風景は、なかなかお目にかかれません。
 では、どうやって立って練習させるのか? 答えは、簡単。練習の時に、常に譜面台を使わせるのです。多分、音楽室の引き出しなどに、譜面台がたくさん眠っているはずです。眠っているくらいなら、クラスに持ってきて、常時使ってあげた方がいいですね。
 それから、椅子に座って練習する場合ですが、次のポイントを守って下さい。
 まず、椅子には浅く座らせて、背もたれを絶対に使わせないことです。次に、両足のかかとをしっかり床につけさせることです。最後に、楽譜は平らに置くのではなくて、何かの上に置いて手前側に傾斜させ、のぞき込まないでいいようにしておくことです。この3つのポイントで、座ってもきちんとした姿勢で演奏できるはずです。
(4)『息づかい』
 この息づかいについても、いろいろな本で紹介されていますので、ここでは詳しく述べません。
 ただ、次のポイントだけは押さえておいて欲しいと思います。
 まず、リコーダーの管の先まで息を通すというイメージで、いつも吹くということです。これが、簡単なようで難しいんですよね。特に、低い「ド・レ・ミ」を吹く時は、どのように言ってますか? つい「弱く吹きなさい」とか言ってませんか? それでは、管の先まで息が通らないんですよね。
 おおまかですが、高い音の時は息を吹き込むスピードを速く、低い音の時は息を吹き込むスピードを遅く、というのが鉄則です。これを、子どもたちに言ってもなかなかイメージしてくれませんが、次の例で言うとほとんど分かってくれます。
 熱い物を食べる時には、やけどしないように「フーフー」いいながら、物を食べますね。その時の息の出し方が、スピードが速いという意味です。逆に、寒い時には、冷たい手を温めるために「ハー」といって、息を手にゆっくり吹きかけますね。その時の息の出し方が、スピードが遅いという意味です。
 低い音を出すのが苦手という子には、このやり方でやってみて下さい。
(5)『舌づかい(タンギング)』
 舌づかい(タンギング)も、図や絵で紹介してありますので、ここでは、その説明は割愛させていただきます。
 ただ問題なのは、いつも同じタンギングのやり方では、曲の演奏ができないということです。前述しましたが、「きよしこの夜」を強いタンギングのスタッカート気味の演奏では、まずいということです。
 右に図で分かりやすいように、管楽器の吹き方を示していますが、大きく『レガート』『ノンレガート』『スタッカート(タンギング)』『マルカート』という4つの吹き方に分かれます。このうち、子どもたちが最初に練習するのが、タンギングつまりスタッカートの奏法です。ところが、奏法でふける曲は結構少ないのです。また、全然タンギングができない子が演奏するのが、レガートの奏法です。これで吹ける一番有名な曲が「チャルメラ」ですね。しかし、この奏法で吹く曲は、ほとんどなくて、曲中に部分的に出てくるくらいです。
 では、どの奏法による曲が一番多いのかというと、ノンレガートなのです。「きよしこの夜」も「エーデルワイス」もこの奏法で吹けないと曲になりません。私の経験上、だいたい、練習曲の6割から7割がこの奏法での吹き方になります。
 ですから、スタッカート気味のタンギングができたから終わりなのではなくて、時間的にもっと短い間隔のタンギング、つまり、ノンレガートによる奏法での吹き方ができないとダメだということになります。そのためには、1にも2にも練習です。
 さて、残っているマルカートですが、この奏法は曲が決まっています。この奏法は、マーチつまり行進曲の時です。逆にいうと、マーチの時は、マルカートで演奏しないと締まった演奏にならないということです。
 以上、タンギングについて述べましたが、曲によって舌づかいが変わるということを理解されて下さい。
(6)『バロック式』
 ソプラノ・リコーダーには、バロック式とジャーマン式の2種類があることを、みなさんはよく知っておられることと思います。
 ところで、子どもたちは、どちらのリコーダーを使っていますか? 多分、ジャーマン式が多いのではないでしょうか。確かに、ジャーマン式はバロック式に比べて指使いが簡略であることが非常に魅力的なのですが、ここに大きな問題点が生まれてきます。
 その問題点とは、アルト・リコーダーには(テノール・リコーダーやソブラニーノ・リコーダーにも)、バロック式しかないことなのです。つまり、ジャーマン式のソプラノ・リコーダーを使用していると、中学校でバロック式の指使いに変更しなければならなくなるのです。これは、子どもを大いに悩ませます。私も、その一人だったわけですが、アルト・リコーダーはあまり吹きたくありませんでした。
 小学校だけのことを考えれば、ジャーマン式でも差し支えないのですが、中学校以降のことを考えれば、絶対にバロック式のソプラノ・リコーダーを使用すべきです。バロック式の指使いでは、「ファ」の音の指使いが難しくなりますが、これに慣れさせておくべきです。
 また、ソプラノ・リコーダーとアルト・リコーダーでアンサンブルをする時に、どうもジャーマン式のソプラノ・リコーダーでは、音がしっくりまとまりません。
 このことから、新年度に、初めてリコーダーを取り組ませる学年では、バロック式のソプラノ・リコーダーにして、学校全体でバロック式に変更していくことをおすすめします。
(7)『練習環境』
 今までは、リコーダーに関する技術的な面を述べてきましたが、最終的には、それをどのように練習するかにかかってきます。
 ポイントは「音楽の時間を使って一斉指導」「練習する曲が少なすぎる」をどうやって崩していくかです。
 一斉指導の弊害については、すでに述べましたが、それを取り除くためには、個人指導しかありません。ところが、1曲を個人指導していると、早く吹けてしまう子もいれば、相当時間がかかってしまう子もいます。
 そこで、私が考え出したのが『寺子屋式合格制度』です。
 まず、子どもたちに、練習曲の楽譜を配っておきます。楽譜は1曲分ではなく、難易度が順次上がっていくように配列されている37曲分の楽譜(曲については後述)をすべて配っておきます。B5用紙で20枚もありますので、B5用紙を差し込むことができるファイルをあらかじめ購入しておいて、配布された楽譜をすべて差し込ませておきます。これで、曲の準備は終了です。
 次に、子どもたちは、順番が決まっている曲を1曲ずつ練習し、吹けるようになったら私の所に来て吹いてみます。曲がきちんと吹けるかどうかが大事なのですが、それと同時に『持ち方』『口の形』『姿勢』『息づかい』『舌づかい(タンギング)』もチェックしていきます。曲を正しく吹けたとしても、もし『持ち方』がおかしい場合にはダメです。このようにして、へんな癖がついているところは徹底的に直していきます。そして、すべてがクリアできれば、楽譜に「合格」のハンコを押してあげます。で、次の曲にチャレンジです。
 寺子屋では、寺子が自分のレベルにあった学習内容を練習して、それを師匠のところに持っていき、師匠がそれを確かめるといった、その子にあった学習スピードでの学習が行われていたようです。それを、このリコーダーの学習に生かしているわけです。
 ところが、このような学習方法で進めていると、曲をクリアするのがはやい子どもとそうでない子どもの差が開き、さらに、私に聞いてもらおうと子どもたちが行列を作って並んでいる状態では、先に進んでいる子どもたちに、曲のメロディーラインを教えられないような状況になってきます。
 この状況を打破してくれるのが、「パソコン」です。
 あらかじめ37曲分の曲データを制作しておき、そのデータを再生専用のソフトでCD感覚で鳴らせば、簡単にメロディーラインが確かめられますし、それに合わせて練習もできます。パソコンが曲のメロディーラインを教えてくれる先生になるわけです。
 そうなると、練習する時間は必ずしも音楽の時間とは限らなくなってきます。休み時間でも、放課後でも、パソコンでメロディーラインを確かめられますので、自分の好きな時に練習できるようになります。これで、最後まで残っていた音楽の時間を使っての練習ということもなくなってしまいます。
 それからダメ押しですが、子どもたちが家でも曲のメロディーが分かって練習できるように、カセットテープに録音して配布しました。ほとんどの子は、早く上達したいからでしょう、楽譜を見ただけで分からないときは、テープを聞いていたようです。ただ、もう何年後かには、曲のMIDIデータを渡すことになるでしょうね。
 ここまで来るといいことずくめのようですが、1つだけ課題が残ります。
 それは、子どもたちが、だんだん吹けるようになってくると、必ず、休み時間に吹きに来るようになるからです。こちらも、休み時間はゆっくりしたいわけですが、子どもはお構いなし。「合格」できると、次の曲にチャレンジできて、自分の演奏技術も上がっていくわけですから、絶対「合格」するぞ、といった形相でやってきます。
 一応、3ヶ月〜6ヶ月は、こちらが我慢の状態になります。まあ、仕方ありません。それから、音楽の時間にリコーダーの練習をやる時には、リコーダーのみの練習で2時間続きにした方がいいようです。1時間のみの練習では、クリアしていくのが遅い子にとってはつらいようです。

 以上のようなやり方で、個人の演奏技術を徹底的に高めていきます。もし、37曲分全部終われば、もうほとんどのソプラノ・リコーダーの独奏曲は、ちょっと練習すればすぐに吹けるようなレベルになっています。この後は、ソプラノ・リコーダーの二重奏曲・三重奏曲に取り組み、「合わせる」ことの練習をし、それも終わってしまえば、アルト・リコーダーを持たせてしまいます。

2.指導曲

○ソプラノ・リコーダー

(1)独奏曲<リコーダーを初めて演奏する学年用>

指導曲順−練習をしていく順番
「音」や『曲』−練習する「音」や『曲』
 ※『曲』の楽譜−「NHK 新訂−ふえはうたう」(音楽之友社 編者:吉沢 実)
 ※「NHK 新訂−ふえはうたう」(音楽之友社 編者:吉沢 実)CDあり
指導のポイント−その音や曲を「合格」できるための留意点

指導曲順 「音」   や   『曲』 指  導  の  ポ  イ  ン  ト
「シー」(4拍+ロングトーン) ○「持ち方」「口の形」「姿勢」はいつも確認
○4拍(4分音符×4)の時は、タンギングが
  きちんとできているかを確認
○ロングトーンの時は、音が真っ直ぐに出る
  ように息が吹き込まれているかを確認
「ラー」(4拍+ロングトーン)
「ソー」(4拍+ロングトーン)
「シーラー」 ○「持ち方」「口の形」「姿勢」はいつも確認
○タンギングがきちんとできているか確認
○レガートになっている場合は原因を究明
「シーソー」
「シーラーソー」
『ソラシのワルツ』 ○タンギングで演奏できているか確認
○ブレスがきちんとできているか確認
「(高い)ドー」(4拍+ロングトーン) ○指導123と同じ
「(高い)ドーシーラーソー」 ○指導456と同じ
10 『すみれ』 ○タンギングで切る間隔を短くして、
  ノンレガート奏法に近づける。
11 「(高い)レー」(4拍+ロングトーン) ○指導123と同じ
※タンギングではなくノンレガートで吹かせる。
12 『さようなら』 ○完全にノンレガート奏法に切り替える。
13 「ファー」(4拍+ロングトーン) ○指導123と同じ
※タンギングではなくノンレガートで吹かせる。
14 『月の光』 ○ファの運指の確認
○ノンレガート奏法の徹底
15 「ミー」(4拍+ロングトーン) ○指導123と同じ
※タンギングではなくノンレガートで吹かせる。
16 「(低い)レー」(4拍+ロングトーン)
17 「(低い)ドー」(4拍+ロングトーン)
18 「ファーミーレードー(低い)」 ○指導456と同じ
※タンギングではなくノンレガートで吹かせる。
19 『ふくろう』 ○ミスの少ない演奏を心がけさせる。
○ブレスをする際に、ブレスをする箇所で
  きちんとできているか。鼻で、きちんと
  息をすっているか。
20 『うさぎのしっぽ』
21 『汽車がきたら』
22 『エーデルワイス』
23 『ララバイ』 ○(低い)ドレミファの運指と音の確認。
○ブレスの確認。
24 『ソナタ』
25 『たかになれたら』 ○ド〜(高い)ドまでの音階で、今までの
  <運指、ブレス、ノンレガート奏法>総復習
26 「(高い)ミー」(4拍+ロングトーン) ○指導123と同じ(+ノンレガート奏法)
○サミングのやり方の確認
27 『つりがね草』 ○ド〜(高い)ミまでの音階で、今までの
  <運指、ブレス、ノンレガート奏法>総復習
28 『夕やけこやけ』 ○レガート・ノンレガート・スタッカート奏法の
  吹き分け

(2)独奏曲<「(1)独奏曲」を終えた後・リコーダーをすでに学んだ学年>

指導曲順−練習をしていく順番(必ずしも、難易度順にはなっていない)
楽譜−練習曲の楽譜
 ○1−「たて笛独奏名曲集」(音楽之友社 編者:本山 定男)
 ○2−「リコーダー練習曲集 Tソプラノ編」(全音楽譜出版社 編者:鯉沼 廣行)
 ○3−「ふえはともだち ソプラノ・リコーダー教室」(音楽之友社 編者:柳生 力)
難易度−難易度を1〜10の10段階(易:1〜10:難)にした場合の練習曲の難易度
指導のポイント−その曲を「合格」できるための留意点

指導曲順 曲     名  (作 曲 者) 楽譜 難易度 指  導  の  ポ  イ  ン  ト
きよしこの夜(グルーバー) ○ノンレガート奏法
○低いファ・高いファの運指
喜びの歌(ベートーベン) ○スタッカート奏法
○タイの音符についての演奏
ロング ロング アゴー(ベイリー) ○「8分音符+8分音符」と
  「付点8分音符+16分音符」の区別
ふるさと(文部省唱歌) ○ノンレガート奏法
○低い♯ファの運指
出船(杉山長谷夫) ○何度も出てくる
 「付点4分音符+8分音符」を正しく演奏
浜辺の歌(成田為三) ○低いドレミの音
○♯ソと♭シの運指
クラリネットこわしちゃった(フランス童謡) ○テンポの速い曲に対する運指
○何度も出てくる♭シの運指
グリーン・スリーブズ(イギリス民謡) ○♯ソと♯ファと高い♯ファの運指
○ブレスをする箇所
牧人の歌(ベートーベン) ○8分の6拍子対するリズム
○タイの音符についての演奏
10 モルダウの流れ(スメタナ) ○長い曲に対する演奏力
○高いミファソの音
11 家路(ドボルザーク) ○テンポが遅い曲の演奏
○高いラの音
12 円舞曲(ブラームス) ○「♭シド♭シラソファ」という
  速いパッセージの演奏
13 赤とんぼ(山田耕筰) ○ノーミスでの演奏
○リタルダンドに対する演奏
14 花(滝廉太郎) ○「8分音符+16分休符+16分音符」の
  正しい演奏
15 皇帝賛歌(ハイドン) ○「ラシラソラシソレ」の速いパッセージ
○♯ドの運指、初めての装飾音符の登場
16 ます(シューベルト) ○「シドシラシド♯ファソ」の装飾音符
○ノンレガート奏法でのスタッカート音符
17 ドナウ川のさざ波(イバノビッチ) ○高い♯ファと♯レの運指
○ノンレガート奏法でのスタッカート音符
18 星かげさやかに(フランス民謡) ○ノーミスでの演奏
19 ほたるの光(スコットランド民謡) ○「付点4分音符+8分音符」と
  「4分音符+4分音符」の区別
20 サンタルチア(ナポリ民謡) ○♯ファとファの続けての演奏
○フェルマータに対する演奏
21 王の行進(フランス民謡) ○マルカート奏法
○16分休符の箇所の演奏
22 アロハ オエ(ハワイ民謡) ○メロディーを正しく演奏
○リタルダンドに対する演奏
23 アンニーローリー(スコット) ○低いドから高いドへの演奏
○リタルダンドしながら装飾音符の演奏
24 なつかしのケンタッキーホーム(フォスター) ○メロディーを正しく演奏
○フェルマータ・リタルダンドの演奏
25 ぼだい樹(シューベルト) ○三連符の演奏
26 夢路より(フォスター) ○腹式呼吸をきちんと使っての演奏
27 シューベルトの子守歌(シューベルト) ○子守歌らしい(?!)吹き方
28 メヌエット(バッハ) ○レガートとスタッカートの吹き分け
29 ブラームスの子守歌(ブラームス) ○子守歌らしい(?!)吹き方
30 メヌエット(ベートーベン) ○「8分音符」が連続する演奏のマスター
31 楽しい農夫(シューマン) ○ノンレガート奏法の中でのスタッカート
32 トロイメライ(シューマン) ○高い♭シの運指
33 ユーモレスク(ドボルザーク) ○「ユーモレスク」独特のメロディー
 ラインのマスター+装飾音符
34 別れの曲(ショパン) ○タイの音符についての演奏
○テンポの揺らし
35 セレナード(ハイドン) ○高いシドの運指
○装飾音符のオンパレード+トリル演奏
36 メヌエット(ビゼー) 10 ○後半部分の速いパッセージ演奏
37 ロンド(H.パーセル) ○2箇所のトリル演奏

(3)二重奏曲・三重奏曲・四重奏曲

演奏形態−二重奏曲(S1+S2)・三重奏曲(S1+S2+S3)・四重奏曲(S1+S2+A+T)
楽譜−練習曲の楽譜
 ○1−「RECORDER DUET FANTASIC」(東京音楽書院 編者:磯崎 敦博)
 ○2−「RECORDER QUARTET CLASSIC2」(東京音楽書院 編者:磯崎 敦博)
 ○3−「音楽 5年生の教科書」(1996〜1999年版)から
 ○4−「音楽 5年生の教科書」(2000〜2003年版)から
難易度−難易度を1〜5の5段階(易:1〜5:難)にした場合の練習曲の難易度

演奏形態 曲     名  (作 曲 者) 楽譜 難易度
二重奏曲 野ばら(ウェルナー)
二重奏 ハトと少年(久石譲)
二重奏 海の見える街(久石譲)
二重奏 もののけ姫(久石譲)
三重奏 となりのトトロ(久石譲)
三重奏 風の谷のナウシカ(細野晴臣)
三重奏 君をのせて(久石譲)
四重奏 メヌエット(ボッケリーニ)
四重奏 ハンガリー舞曲第6番(ブラームス)

○アルト・リコーダー

◇独奏曲・二重奏曲・三重奏曲

演奏形態−独奏曲(A)・二重奏曲(A1+A2)・三重奏曲(A1+A2+A3)
楽譜−練習曲の楽譜
 ○1−「楽しい二重奏による アルトリコーダーエチュード 第1巻」(全音楽譜出版社 編者:吉沢 実)
 ○2−「系統的に学べるたて笛(リコーダー)のメトード−アルト」(全音楽譜出版社 編者:上杉 紅童)
 ○3−「楽しい二重奏曲集 新版アルトリコーダーテキスト(上)」全音楽譜出版社 編者:田中 吉徳)
 ○4−「楽しい二重奏曲集 新版アルトリコーダーテキスト(下)」全音楽譜出版社 編者:田中 吉徳)
 ○5−「中学生のリコーダー・アンサンブル」音楽之友社
難易度−難易度を1〜5の5段階(易:1〜5:難)にした場合の練習曲の難易度

演奏形態 曲     名  (作 曲 者) 楽譜 難易度
二重奏曲 聖者が街にやってくる(アメリカ民謡)
二重奏 のばら(ウェルナー)
二重奏 さくら さくら(日本古謡)
二重奏 荒城の月(滝廉太郎)
二重奏 子守歌(ブラームス)
二重奏 聖夜(グルーバー)
二重奏 皇帝(ハイドン)
独奏 白鳥(サン・サーンス)
独奏 トロイ・メライ(シューマン)
二重奏 ロンドンデリーの歌(イギリス民謡)
二重奏 私が鷹であったなら(レヒャルト)
二重奏 わかれ(ドイツ民謡)
二重奏 シシリアーナ(シシリー民謡)
二重奏 故郷の人々(フォスター)
二重奏 ピアノソナタイ長調のテーマ(モーツァルト)
二重奏 メヌエット(クリーガー)