ダイハツムーヴエアロダウンカスタムXX-M4

 僕のムーヴを車検に出していたときの代車です。車検終了まで3日かかるということで、車検に出すときに工場長に「代車はどうしますか?」と聞かれ、「MTで面白い車」とリクエストしたところ、当初は「ミラがありますので、こちらをお貸しします」といっていたにもかかわらず、実際来た車がこのムーヴだったというわけです。代車がカスタムだったので、間違ってATでも用意したのかな、と思ったのですが、実際ドアを開けるとセパレートシートにフロアシフト。紛れもなくMT車です。そう、このムーヴは積雪地域でしか売れないカスタム4WDのMT専用車、エアロダウンカスタムXX-M4だったのです。ムーヴカスタムといえば、まず思い浮かぶのがベンチシート・コラムATで、このM4仕様は本当にマイナーです。第一、雪の多いこの北海道でさえ、走っているカスタムはコラムATであり、M4はカタログでは見たことがあるものの、実物を見たのは今回が初めてでした。こんなマイナーなムーヴを、今回は3日間使うということで、休日を使ってドライブをしました。市街地・峠道・高速道路・そして砂利道と、考えられる条件下で走らせることができました。

 初年度登録が2000年3月で、走行距離はたったの1,600km。代車というよりも試乗車そのものといっていいほどの程度で、タバコを吸う習慣のある僕は思わず工場長に「この車、煙草は吸ってもいいんですよねぇ」と聞いてしまうほどでした。ただ、完全フルノーマルだけあって、オーディオはなし。木目調インパネやパワーウインドー、エアコンなどの軟弱な装備がけっこう多く装着されているにもかかわらず、MT・DOHCターボエンジン・オーディオレスというだけで「男の仕事場」的イメージになってしまうから不思議です。普段、オーディオを大音量で聴く習慣のある僕としては、エンジン音だけの世界というのが逆に新鮮でした。

 僕にとっては、実はこのムーヴが初めて本格的に運転するターボ車でした。加給器だけという見方をすれば、親父のカペラカーゴディーゼルのスーパーチャージャーがありますが、ターボとスーパーチャージャーとでは比べる次元が違います。特に、軽自動車でのターボは低速域と高速域の差が激しいというのが定説になっていました。しかし、昨今のターボ車らしく、加給し始めたときの立ち上がりはかなりマイルドです。かすかに「ヒューン」というタービンの音が聞こえますが、ターボラグもそんなに感じることはありませんでした。感心したのは静粛性がかなり高いこと。意外と遮音性がよく、3桁のスピードを維持しても助手席の人間との会話が楽しめるのには驚きました。これは、ターボでパワーアップした分だけファイナルギヤ比を高めにセッティングしているからで、事実、5速60km/h走行時で2,500rpmはちょっとした小型車並みの回転数です。僕のムーヴの場合、ノンターボの非力さをファイナルギヤのローギヤード化で補っているため、同じギヤ選択・速度で3,000rpmとなっています。この比較だけでも新規格ムーヴターボの静粛性の高さがわかるかと思います。

 運転席に座ってまず感じたのが、着座位置。明らかに初代よりもシート高が高くなっているため、見下ろす感覚が強調されています。その分ヘッドクリアランスは減ってしまいました。つまり、初代特有の妙な開放感がなくなってしまったわけです。クラッチは重め。というよりも、僕のムーヴが軽すぎるのかもしれませんが、そんなに気になるほどのものではありません。むしろ、3日間ムーヴターボに慣れてしまったために、帰ってきた自分の車にとても違和感を感じたものです。代車を引き取ったのが雨の日だったのですが、ドアに装着されるカップホルダーを使用するとリヤワイパーの操作ができなくなるのは問題です。ホンダ車のようにワイパーレバーにスイッチをつけて集中コントロール方式にするか、せめてフォグランプかリモコンミラーの位置にスイッチをつけて欲しかったです。一応、後席にも座ってみました。こちらは前席よりもさらに着座位置が高くなっているため、前方がよく見えます。ただ、ヘッドクリアランスは前席以上に少なくなっているため、快適ではありません。しかし、それ以上に気になったのがリヤシートリクライニング。初代は無駄といえるほどの19段リクライニングを採用してほぼ水平にまでシートバックを寝かせることができましたが、2代目は14段リクライニングにもかかわらず20°程度の傾斜がつくため、オールフラットとは言えない状態になってしまいました。リヤシートが水平に倒れることを目的として初代を購入したオーナーは、慌てて2代目を買う必要はないでしょう。リヤシートの全自動格納も、あれば便利、という程度で、このシステムを採用した意図がよくわかりません。確かに初代は後席折りたたみが面倒ですが、だからといって居住空間を犠牲にしてまで全自動折りたたみにこだわったのには理解に苦しみます。

 ドライブでまず走らせたのが市街地。最初に気になったのが乗り心地の硬さです。マンホールや路面の継ぎ目を見事に拾ってくれ、とても誉められたものではありません。はっきり言って悪いです。細かいことですが、ハンドルの切れ角が増したので、小回り性能が向上していました。サイズアップがされているにもかかわらず、取りまわしはかなり楽です。普段のノンターボ車のようにフル加速すると簡単にターボが効いてしまう(約3,000rpm)ため、それ以前にシフトアップさせてやるのがエコランへの近道なんですが、2,000rpmを下回るとまったく前に進みません(笑)。したがって、発進時はターボが効いてしまいます。

 峠道はさすがにローダウンサスだけあって、ロールがあまりありません。安心してカーブに突っ込むことができます。この辺は「エアロダウンカスタム」の面目躍如で、ミニバンスタイルながら走りにこだわったことがよくわかります。ステアリングは非常にクイックで、ちょっとハンドルを動かしただけでも車体が方向をすぐに変えてくれます。つまり、遊びがほとんどありません。初代ムーヴのステアリングもシャープさで定評がありましたが、この2代目ターボに比べるとかなりダルなものだということがわかりました。おかげで両腕がパンパンになってしまいました。代車のムーヴにはオプションのABS(機械式ブレーキアシスト付)が装着されていたんですが、ヒール&トゥを行うとブレーキアシストが作動してしまい、急減速されてしまいます。スピードを殺さずにヒール&トゥを行うのはそうとうの慣れが必要です。MTのABS装着車を購入しようと思っている方は、この辺に気をつけたほうがいいでしょう。

 高速道路では、生まれて初めてリミッターを作動させてしまいました(笑)。リミッターを解除すれば160km/hは堅いでしょう。それほど速いです。アクセルもハーフスロットルで済み、ターボパワーが高速走行でのゆとりに貢献しています。ちなみに、僕のムーヴではりミッター速度域に達したことが1度もありません。

 砂利道での走行もしました。普段通勤で使っている道路には砂利道があるのですが、好き好んで砂利道を走らせる車ではありません。突き上げが非常に大きく、まるで4輪リーフサスのトラックに乗っているかのようです。この辺はノーマルサスに軍配が上がります。

 最後に、気になる燃費ですが、12.1km/lと出ました。MT車とはいえ、フルタイム4WDで全開高速走行や峠走行が多かったわりにはかなり優秀な数値だと思います。僕のムーヴだと、悲しいかな10km/lは確実に下回ってしまいます。新規格軽自動車の登場当初は車重増による燃費の悪化が心配されていましたが、ムーヴターボに関していえばこの不安を見事に払拭してくれるだけの性能は持っています。ただ、自分でこの車を買うかといわれると、ちょっとためらってしまいます。やはり乗り心地の悪さが気になってしまうんですね。現時点では地味ですがカジュアルシリーズのCRターボをベストとしたいですね。


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