ムーヴの歴史(L900系)


T型(1998.10〜1999.11)

 1998年10月に、排気量はそのままに、全長を100mm、全幅を80mm拡大し、登録車と同等の衝突安全性能を達成させるという、軽自動車の規格が改正されます。このため、軽自動車生産メーカーは旧規格モデルを一斉にフルモデルチェンジして新規格に適合させるという、前代未聞の事態となります。ダイハツも例外ではなく、10月6日にミラ、ムーヴがフルモデルチェンジ、そしてテリオスキッドが新車種として追加されました。直前にトヨタ自動車の資本増強を受け、スズキから軽No1を奪うべく、新衝突安全ボディ「TAF」や新コンセプトエンジン「TOPAZ」、さらに多くの新機構を引っさげての気合の入ったモデルチェンジを敢行しました。
ムーヴエアロダウンカスタム(1998)
 フルモデルチェンジされたムーヴは、旧規格の初代と同様、ミラをベースとしてコストダウンを図り、初代ムーヴの持つ使い勝手や機能などを継承しつつ、専用のインパネやFFターボ車の4気筒エンジンなど、その独自性を高める方向で進化しました。また、標準車とカスタムという、1ボディ2フェイスのラインナップも健在で、初代ムーヴオーナーにも配慮したラインナップでした。  
 デザイン面でのトピックは、標準車のデザインを著名なカーデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ率いる「イタル・デザイン」が担当したことでしょう。初代ムーヴのシャープな面の使い方やハイマウントテールランプ、逆三角形のフロントウインカー(初代のアクリル製フロントガーニッシュに相当)などを彼らなりにリファイン、グリルレスマスクをやめ、やわらかな曲面を多用したものに変更されました。これにより、一目で「ムーヴ」とわかりつつも、初代標準車の持つアクの強さが薄らぎ、より親しみやすいものになっています。初代ムーヴの特徴の一つでもあったエアロルーフレールは新規格になっても残されました。一方のカスタムは、標準車をベースダイハツ車内のデザイナーがモディファイするという、初代カスタムそのままのデザインコンセプトですが、丸目4灯ヘッドランプ(内側2灯はフォグランプ)やルーフレール一体型テールランプなど、差別化がいっそう促進され、よりエキサイティングなデザインになっています。
ムーヴCX(1998)
 インテリアは2代目になってやっと専用インパネが与えられました。メーターやヒーターパネルなどの主要部品はミラや先行販売されたストーリアと共通ですが、それでも、ミラと共通だった初代ムーヴのインパネと比べれば、大きな前進といえましょう。インテリアにおいても標準車とカスタムの差別化が図られ、AT車にはL200系ミラ以来久々のコラムシフトが復活し、カスタムは流行のアームレスト付きベンチシートが、標準車には前後席ウォークスルーを可能とするセパレートシートが与えられました。さらに、カスタムにはカーナビモニター対応の1DINハイマウントAVスペースが用意されました。しかし、インテリアの最大の特徴は、初代ムーヴで操作が面倒と指摘されていたリヤシートの2モーション前倒し機構が全自動化されたことでしょう。リヤシート背後のロック解除レバーを引くと、ヘッドレストを付けたまま背もたれが畳まれてクッションが跳ね上がるという画期的なもので、初代ムーヴオーナーのみならず、世間の注目を集めました。同時にクッションのスライド量がFF・4WD共通となり、4WDの荷室にあった段差が消えています。ただ、この凝った機能を優先させたあまり、後席のヒップポイントが大幅に上がり、初代ムーヴの持っていた開放的な室内空間が失われてしまったのも事実です。このことは、後席ヒップポイントに対してヘッドクリアランスが大幅に減ったこと、ドアアームレストの位置が低すぎること、後席のフロア足付性の悪さなどからわかります。また、初代ムーヴでは少ないと思われていた小物入れも充実し、後席格納時に現れるリヤシークレットボックスや、フロントコンソールボックスなどを全車標準装備としました。とくに、オーディオスペースは標準車で4DIN、カスタムに至っては5DIN分のスペースを確保しています。  
 エンジンは初代と共通のEF/JB系ですが、ほとんど新設計といえるほどの改良を加えられました。全車EFIとし、見かけのスペックよりも、実際の実用域を重視したものへと進化しました。「TOPAZ」と名づけられた新エンジンは、NAエンジンではEF-ZLをベースに新たに連続可変バルブタイミング機構DVVTを組み合わせたEF-VE(58ps・6.5kg-m)と、SOHC6バルブエンジンとして低速寄りのエンジン特性に振ったEF-SE(45ps・5.6kg-m)が、ターボエンジンはEF-RLをベースにトルクアップと最高出力/最大トルク発生回転数を400rpm下げてより扱いやすくなったEF-DET(64ps・10.9kg-m)、そしてJB-JLをベースに新たにデュアルフローターボを採用したJB-DET(64ps・10.9kg-m)の4機種が設定されました。これにより、初代ムーヴの特徴の一つであった、「全車ツインカムエンジン」がEF-SEエンジンの登場により失われました。また、EF-VEは新触媒と2-O2センサー装着により、2000年排出ガス規制適合のLEVエンジンとして指定されました。  
 グレード展開は、標準車が下からCG、CL、CX、Z4、SR-XXが、カスタム系はNAのカスタムとターボのエアロダウンカスタムが用意されました。初代のW型でカタログ落ちした4気筒エンジンのSR-XXが復活し、新たにエアロダウンカスタムに4WD車が設定されました。搭載エンジンは、CGとCLのFF車にEF-SEが、CL-4WD、CX、Z4とNAカスタムにEF-VEが、ターボのFF車にJB-DETが、ターボの4WD車にEF-DETがそれぞれ搭載されました。装備面でも標準車とカスタムで差別化が図られ、カスタムにはドーム型室内ランプ、ベンチシートが用意され、よりヤング向けにリニューアルされました。空調では、全車にスクロールエアコン(CX以上はクリーンエアフィルター付き)を装備、さらに寒冷地ユーザーに配慮してリヤヒーターダクトが全車に、待望のサンルーフがCX以上にオプション化されています。SR-XXにはMT車も含めてフロントセンターアームレストが装備されました。また、初代のV型からメーカーオプション化されて好評だった助手席回転シートがZ4にも拡大設定されました。
ムーヴSR-XX(1998)
 このモデルチェンジの最大の目的は衝突安全性の向上だったため、ダイハツはストーリアで先行発表していた「TAF」ボディを軽自動車にも採用しました。これは、ムーヴをヨーロッパに輸出する目的があることから、新国内安全基準(前面衝突、側面衝突、後面衝突)適合だけではなく、新欧州衝突安全基準(40%オフセット前面衝突、側面衝突)をもクリアする性能を持っていました。さらに全車に運転席・助手席エアバッグを標準装備、アクティブセーフティでも、ABSには新たに機械式ブレーキアシストが追加されて全車にオプション装備、さらにトラクションコントロール・横滑り制御・ABSを組み合わせたDVSをターボ車のFF・AT車にオプション装備化しました。これらによって、初代ムーヴからの伝統である高い安全性をアピールしました。
TAFボディ(透視図)
 駆動系は、リヤサスペンションがFF、4WD共に一新され、FF車がセミトレーリングアーム独立懸架からトーションビーム付きトレーリングアームリジッドに、4WD車は5リンクリジッドから3リンクリジッドに変更されました。このサスペンションは、ストーリアで先行発表されたものを採用しました。これに伴い、最小回転半径も縮小され、NA車で4.3m、ターボ車は4.5mとなり、取りまわし性が向上しました。4WD機構は初代のビスカスカップリング式フルタイムから回転差感応式カップリング4WDに変更されましたが、こちらもストーリアのメカをそのまま採用したものです。ATはEF-SEエンジン搭載車が3速、それ以外はNAの4WD車も含めて4速に進化しました。また、ATセレクターもSR-XXのみがフロアシフトとなり、コラムシフトを基本としました。ただ、CGを除く標準車にはフロアシフトATがメーカーオプションで選択できました。これに伴い、コラムシフト車はパーキングブレーキを足踏式にしています。なお、MT車もヨーロッパ輸出を意識して、シフトフィールのよいものへと設計変更しています。  
 ボディカラーは標準車・カスタム共通色としてホワイト、シルバーメタリック、ブラックメタリック、メイプルレッドマイカ、ジェードグリーンメタリック、パールホワイトTが、標準車専用塗色としてロイヤルブルーマイカ、カスタム専用塗色としてウォームシルバーマイカが、さらにZ4専用塗色としてジェードグリーン/シルバー、メイプルレッド/シルバーの2トーン2種が、それぞれ設定されました。  
 軽自動車の規格改正と同時にモデルチェンジされたムーヴは予想以上の大ヒットとなりますが、新たにスバルがプレオで軽ミニバン市場に参入、三菱もトッポBJをリリース、さらに既存のワゴンR/AZワゴン、ライフとの競争に対抗するため、発売直後からバリエーションを追加しつづけます。  
 まず、1999年2月に受注生産車CS-4WDが追加設定されました。CSは初代のU型まで設定されていたグレードの復活で、CL-4WDをベースにエアロルーフレール、後席ヘッドレスト、フルホイールキャップ、キーレスエントリーが省かれた廉価版です。のちにCS-4WDにはFF車が追加されています。続いて3月にはカスタム/エアロダウンカスタムM4が登場。カスタム/エアロダウンカスタムM4は4WDのカスタム系に5速フロアMTを組み合わせたモデルで、シートはセパレートに変更されています。さらに4月には、ムーヴ標準車にハローキティバージョンが追加されます。以前L500系ミラに設定されていた同グレードの復活で、こちらはCLをベースにハローキティグッズをいたるところにあしらったもので、専用エンブレムに始まり、シート生地、メーターパネル、果てはドアロックノブにまでキティちゃんがいるという車でした。なお、ハローキティバージョンはコラムATのみで、シートも標準車としては初のベンチタイプとなっています。同時に、ミラで先行搭載されていたecoCVTがCX、Z4にも拡大設定されました。5月には福祉車両としてスローパーとフロントシートリフトが追加されました。これは、標準車に設定されている助手席回転シート付き車をさらに一歩進めたもので、スローパーはリヤサスが下がってバックドアからの車椅子の出入りを容易にしたもの、フロントシートリフト車は助手席に電動シートリフトを装備したものです。そして6月にはCSをベースとした廉価版CLセレクションが追加されました。これはCSに後席ヘッドレストとフルホイールキャップ、キーレスエントリーを追加し、ドアサッシュブラックアウト、タコメーターを省いたモデルです。これにより、ムーヴシリーズは標準車9グレード、カスタム4グレードと膨大なバリエーションになりました。
ハローキティバージョン・インテリア
 ムーヴはこのモデルチェンジを機により多くのユーザーをひきつけ、一時はワゴンRに迫るほどの売れ行きを見せました。なお、この時期のCMは標準車とカスタムで作り分けられ、標準車が元Accessの貴水博之のボーカル曲をバックに2匹の犬を使ってリヤシートワンタッチ格納システムを告知するもの、カスタムはエキサイティングなインスト曲を使って「MOVEism」というコピーで販売しました。のちにカスタムは貴水博之をCMキャラクターにしたものに代わっています。  

L900系T型ムーヴのギャラリー

グレード展開
標準車シリーズ CG、CS、CL、ハローキティ、Z4、CX、SR-XX
カスタムシリーズ カスタム、エアロダウンカスタム

主な特徴
・CXはブラックのタルボアスフェリックミラー
・標準車はグリルのメッキモール無し
・リヤウインドーに“TAF&TOPAZ”のステッカーを貼付

わかりにくいグレードの判別方法

☆CGとCS
・ドアサッシュがブラックアウトされていればCS
・CSはパワーウインドー、タコメーター装備

☆CLとCX
・CLには4WDの設定あり。あるいはリヤデフを覗く
・CXにはecoCVTの設定あり。リヤウインドーにステッカーが貼付
・防眩ミラー、リヤスモークガラス、黒のタルボアスフェリックミラーが装備されていればCX
・CLのドアミラーはピボットタイプ。また、ディーラーオプション装着のタルボアスフェリックミラーはメッキになる

☆カスタムとエアロダウンカスタム
・エアロダウンカスタムはフロントエアスクープ、マフラーカッターを装備

CS SR-XX4WD
CL4WD CL4WD
CL4WD CL4WD
SR-XX4WD SR-XX4WD
CL CS
 
SR-XX(アーバンラピッド装着車)  CX&CL
MOVE13.JPG

Z4

Z4

SR-XX4WD

SR-XX4WD


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