ムーヴの歴史(L600系)
T型(1995.8〜1996.5)
ダイハツからムーヴが発売されたのは、1995年8月25日のことです。「森口エンジン」のCMコピーで有名になったL500系ミラをベースにしたダイハツ初の軽ミニバンで、先発のミニカトッポやワゴンRにはない数々の新機構を採用してのデビューでした。ワゴンRよりも先行して開発していたというダイハツのアナウンスがあったものの、ワゴンRを徹底研究した成果が反映されていました。それは、
・横開きバックドア付き5ドア
・ターボ車の設定
・左右独立後席スライド&リクライニングシート
・全車DOHC3&4気筒エンジン
などに象徴されます。
ムーヴSR(1995)
エクステリアのデザインコンセプトは「ビッグキャビン&ウルトラコンパクトノーズ」と呼ぶキャブフォワードタイプで、特にAピラーからフロントフェンダーを横切ってバンパーに流れるラインと、ハイマウントタイプのテールランプ、グリルレスのフロントマスクが特徴で、一目でムーヴとわかる個性を醸し出していました。また、横開き式バックドアと5ドアはワゴンRに差をつけるポイントであるととともに、実用性を重視した結果の採用でした。ただ、このデザインは個性的な分だけ好き嫌いも分かれ、販売上では最後までこのデザインに苦しめられることになります。それは、V型で保守的デザインに振ったカスタムが追加されていることからもわかります。カラーリングは、ピューロホワイト・グリーンメタリック・ブラックメタリック・シルバーメタリックといった定番色のほかに、ライト系のサックスブルーメタリック、レッドマイカメタリック、さらにグリーン/シルバーとレッドマイカ/シルバーの2種類の2トーンカラーがCL以上に設定されました。
エクステリアもさることながら、インテリアのインパクトも相当なもので、特にクラス唯一の装備である左右独立後席シートスライド(FF車・150mm、4WD車・105mm)と19段リクライニング機構は世間をアッと言わせるだけのインパクトがありました。これにより、ヘッドレストを外してのリヤシートリクライニングは文字通りのフルフラットタイプで、フロントシートとつなげればちょっとした車中泊は難無くこなすだけの内容を持っていました。このことからも、後席の居住性を重視した設計であることがわかります。ただ、シートアレンジにこだわりすぎたために、2モーション前起こし機構を利用した2名乗車時では、荷室の奥行きが足りなくなる、クッション引き起こし後の固定が面倒、といった欠点がありました。インパネ自体はミラからの流用で、専用デザインのインパネを持つワゴンRと比べても見劣りする部分がありました。また、ミラと共通部品にしたことによって、シートのヒップポイントもミラとワゴンRの中間に位置するもので、女性からは「乗り降りしやすい」という声があったものの、一般的には「背の高さのわりにヒップポイントが低く、頭上にぼっかりとムダな空間ができる」と批判的なものが多かったのです。
左右独立スライドリヤシート
エンジンは全車DOHC4バルブを採用した、JB-JL型4気筒ターボ、 EF-ZL型3気筒ノンターボEFI、EF-GL型3気筒ノンターボ電子制御キャブレターの3種が設定されました。カムシャフト駆動は全車シザーズギア使用のいわゆる「ハイメカツインカム」で、このあたりはトヨタと提携した成果が発揮されています。このうち、3気筒DOHCはムーヴのための新開発エンジンで、ハイトワゴン化による重量増に対応したものでした。特にEF-ZL型の最大トルクはクラス最大でした。また、4気筒DOHCターボはミラターボで好評のエンジンで、4気筒ならではの滑らかな回転が特徴でした。最高出力・最大トルクは、JB-JL型が自主規制いっぱいの64ps・10.2kg-m、EF-ZL型は55ps・ 6.2kg-m、EF-GL型は52ps・5.8kg-mと公表されました。それぞれがストレスなく高回転まで回りつつ、常用域のトルクを重視した設計となっていました。
JB-JL型4気筒DOHC16バルブターボエンジン
EF-ZL型DOHC12バルブエンジン
グレード展開は下からCA・CG・CS・CL・Z4・CX・SRが設定されました。CSとZ4が4WD専用、その他はFF専用のラインナップでした。搭載エンジンは、CA・CG・CLがEF-GL型、CS・Z4・CXがEF-ZL型、SRターボがJB-JL型でした。全車パワーステアリング(ノンターボ車・油圧式、ターボ車・電動式)が装備され、パワーウインド・タコメーターとムーヴの外観上の特徴であるエアロルーフレールはCL以上に、エアコンはCAを除く全車に装備されました。また、CLとCXは搭載エンジンの違いであり、内容はどちらもほぼ同じものでした。4WD専用グレードのうち、CSはCGにカセットステレオ・リヤワイパーを標準装備したモデル、RV志向のZ4はCXをベースにバックドアガーニッシュ・ガード付きハロゲンフォグランプ・フロントスキッドプレートが標準装備される代わりに、後席パワーウインドが省かれるといった内容でした。
安全性では、衝撃吸収ボディやサイドインパクトビームといった基本的なものを備えつつ、CL以上に後席ヘッドレスト、CS以上にリヤワイパー、Z4とCXに防眩ルームミラーが標準装備、CSを除くEFIエンジン車にSRSエアバッグとABSがオプション設定されました。特に、SRSエアバッグとABSが上級機種ながらオプション化されたことにより、ムーヴの安全性に対する評価は高かったのです。また、セットオプションでないという点も好評でした。
サスペンションはミラ譲りのもので、フロントはマクファーソンストラット、リヤはFF車がセミトレーリングアーム独立懸架、4WD車は5リンクリジッドが採用されました。特に、FF車の4輪独立懸架によるソフトかつ粘りのある乗り心地が好評でした。事実、走りの評価ではワゴンRよりも洗練されており、4WD車も含めてハイトワゴンにありがちな不快なロールも抑えられていました。また、ブレーキは全車フロント・ディスク、リヤ・リーディグトレーリングドラムで、前出のABSのオプション設定のほかに、2系統クロス配管やブレーキブースターを全車に標準装備していました。
駆動系もミラと共通で、マニュアル車は全車5速、オートマチックはターボ車がOD付き4速、ノンターボは3速が与えられました。注目すべきは4WDシステムで、オートマチックがビスカスカップリング式のフルタイム型なのに対し、マニュアル車は舗装路面での低燃費化とコストダウンを狙ったパートタイム式が採用されたことです。この時点ですでにパートタイム式は少数派になっており、クロカン系を除くと小型車ではADバンのディーゼル車、インプレッサリトナに設定されたくらいで、軽自動車でもダイハツとスバルに残るほどとなっていました。
冒頭の通り、ワゴンRを徹底研究しただけに、シャープなスタイリングと横開き式バックドアは特に女性に好評で、多彩なシートアレンジやターボ車の設定といった、ワゴンRにはないバリエーション展開、そして高い安全性によって、ムーヴはたちまちダイハツの主力車種となりました。同時に、ヨーロッパ向けに輸出も開始しています。なお、デビュー直後のCMキャラクターはジャズピアニストの山下洋輔、CMコピーは「ムーヴしよう」でした。
L600系T型ムーヴのギャラリー
グレード展開
CA、CG、CS、CL、Z4、CX、SRターボ
主な特徴
・サイドガーニッシュがボディカラーにかかわらず黒
・スモークガラスレス(CX、Z4)
・リヤパワーウインドーレス(CL、SR、Z4)
・リヤウインドーに"TWINCAM
12V"ステッカー貼付
わかりにくいグレードの判別方法
☆CAとCGとCS
・カラードバンパーと12インチホイールキャップが装備されていればCS
・CSは4WD専用グレード
・CAはエアコンレス
☆CLとCX
・防眩ミラーが装備されていればCX
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| CX | Z4 | |
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| Z4 | CS | |
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| CS | CS | |