ハイゼット/アトレー
基本輸出名:ハイゼット

日本のキャブオーバー軽自動車としてメジャーな存在であるハイゼット/アトレーは、輸出よりはむしろ現地生産される比率の高い車です。アジア地域はもちろん、ヨーロッパでも現地生産されており、いずれも高い人気を誇っています。また、国情にあわせた仕様変更が多いのも特徴で、ロングボディ車や6人乗り仕様など、軽自動車の規格にとらわれない多くのバリエーションが存在します。また、ハイゼットシリーズは北米を除く全世界で販売されており、地味な存在ですがワールドカーといえるかもしれません。そういう意味では、ダイハツ輸出仕様の中では一番奥の深い車といえるのではないでしょうか。
主な海外例外ネーム
PORTER(ヨーロッパ)
EXTOL(ヨーロッパ)
華利(中国)
LZW6370A(中国)
TOWNER(韓国・南米・アラブ・アフリカ)
RUSA(マレーシア)
ZEBRA ESPASS(インドネシア)
HIJRT ZEBRA(インドネシア)
JUMBO(ベトナム)
ヨーロッパ仕様(ハイゼット/ポーター)
ハイゼットのヨーロッパ向けはS65系が1980年代から輸出をしていました。しかし、1985年の円高を機に採算が採りづらくなったことに危機感を覚えたダイハツは、ヨーロッパの現地生産を模索した結果、べスパスクーターで有名なピアジオ社と提携し、イタリアで現地生産する契約を結びました。生産開始は1992年からで、ダイハツがハイゼット、ピアジオがポーターとして、それぞれのブランドで販売する姉妹車となっています。機構的な差異はなく、完全なバッジエンジニアリングの産物です。生産モデルは6代目のS80系です。
ボディバリエーションはワゴン系が6人乗りのワゴン(フルゴン)、4人乗りのバン(コンビナート)、2人乗りのブラインドバン(ブラインドコンビナート)の3種、トラック系は標準デッキ(ピックアップ)、ロングデッキ(ピックアップビッグデッキ)、ダンプ(ピックアップティッパー)が設定されています(カッコ内はポーターのイタリア仕様)。ボディ自体は660ccをベースにしていますが、前後バンパーの延長によりワゴン系では3,370mmと、若干延びています。また、トラックのロングデッキは3,745mmとさらに長くされています。
エンジンはダイハツの1300cc16バルブとピアジオ内製の1400ccディーゼルの2種が搭載されています。ディーゼルが設定されるのはこのヨーロッパ仕様だけで、14.7km/lという高い経済性が評価されています。
内外装は前後デザインにとどまらず、インパネも独自デザインとされており、シートもヘッドレスト部分が3分割シースルータイプになるなどの変更を受けています。また、前期型までのハイゼットとポーターの違いはフロントマスクで、ハイゼットがグリル付、ポーターはグリルレスとなっていましたが、現在生産しているモデルに関してはポーターもグリル付となっています。Specifications:ポーターフルゴン1300(カッコ内1400ディーゼル)
全長×全幅×全高:3,370×1,395×1,870mm ホイールベース:1,810mm トレッド前/後:1,210/1,220mm 車両重量:975kg エンジン形式:HC-E型直列4気筒OHC(直列4気筒OHC) 排気量:1,269cc(1,371cc) ボア×ストローク:76.0×71.4mm(75.0×77.6mm) 最高出力:48.0kW/4,800rpm(28.0kW/4,300rpm) 最大トルク:98.0N-m/2800rpm(76.0N-m/2,600rpm) 燃料供給装置:EFI(機械式燃料噴射装置) トランスミッション:5速MT サスペンション前/後:ストラット/リーフリジッド ブレーキ前/後:ディスク/ドラム タイヤ:155/R12-8PR 最高速度:130km/h(110km/h)
ヨーロッパ仕様(エクストール)
ハイゼット系のもうひとつのバージョン、エクストールはアトレー7の輸出仕様で、2000年よりヨーロッパ市場に投入されました。ヨーロッパ仕様ハイゼットよりも動力性能や安全性にゆとりがあり、室内も広くなっているのが特徴。ベースモデルはCLで、エンジンは日本仕様と同じくK3-VEを搭載、スペック的な違いはさほどありません。ただ、駆動方式はFRのみで、シフトも4ATはフロアシフトに変更されています。
モデルラインナップは3列シートのワゴンを中心に輸出仕様のみの設定となる2列シートのワゴン、2シーターのブラインドバンの3種を用意、商用モデルが用意されているのが最大の違いといえるでしょう。なお、3列シート仕様の定員は6人となっており、大柄なヨーロッパ人の体型に合わせた内容となっています。また、フロアシフトを採用したことに伴い、AT車のフロントシートはセパレートタイプとなっています。
装備類も日本仕様CLに準じていますが、フロントドアのマルチホルダーがカードポケットに変更され、オーディオ・エアコンレスとなっています。Specifications:エクストールワゴン6人乗り(カッコ内4AT)
全長×全幅×全高:3,765×1,515×1,895mm ホイールベース:2,430mm トレッド前/後:1,300/1,310mm 車両重量:1,037kg(1,040kg) エンジン形式:K3-VE型直列4気筒DOHC 排気量:1,298cc ボア×ストローク:72.0×79.7mm 最高出力:63.0kW/6,000rpm 最大トルク:120.0N-m/4,400rpm 燃料供給装置:EFI トランスミッション:5速MT(4速AT) サスペンション前/後:ストラット/トレーリングリンク ブレーキ前/後:ディスク/ドラム タイヤ:175/65R14
中国仕様(華利)
中国の自動車国産化政策によりダイハツが技術供与しているハイゼットは2種類存在し、そのうちの一つが天津汽車で生産されているS65系ハイゼットです。生産開始は1984年からで、ベースモデルの発売が開始されてから20年経ちますが、中国側による独自改良によって時代の変化に対応しています。ライトバンの設定はなく、ワゴンは全車6人乗りとなっています。“華利”というブランドネームが付いているものの、一般的にはワゴンがTJ6300シリーズ、トラックはTJ1010シリーズと呼ばれています。
エンジンは生産コストを抑える目的から、シャレードに搭載されたCB型をベースとしており、標準ボディとトラックにはCB型をボアダウンしたTN370Q型850ccを、ワゴンロングボディにはCB型を中国向けにアレンジしたTN376Q型1000ccを搭載しています。駆動方式はFRのみの設定です。
ボディバリエーションは非常に豊富で、ワゴンでは標準ボディ・標準ルーフのTJ6320を基本に、標準ボディ・ミドルルーフのTJ6320G1、標準ボディ・ハイルーフのTJ6320G2/TJ6330G、ロングボディ・ミドルルーフのTJ6350A、ロングボディ・ハイルーフのTJ6350Bを用意。トラック系では標準デッキのTJ1010とダブルキャブのTJ1010SL1の2種が用意されています。この中で注目の存在がダブルキャブ仕様のTJ1010SL1で、日本仕様での同様のモデルであるデッキバンがワゴンベースなのに対し、中国仕様はTJ6350のシャーシーを用いたトラックベース、しかも高床3方開となっており、ダブルキャブトラックとしてはかなり本格的な内容となっています。ワゴンでは中国で独自デザインのフロント周りを与えられたTJ6330Gというモデルも存在します。右の写真にある緑色のワゴンがそれで、華利の最高級グレードで、フロントマスクを変更することによって都会的なイメージを与えることに成功しています。また、ロングボディのTJ6350はゆとりある居住性が売りです。
モデルの性格からか都市部よりも地方での人気が高く、ワゴンは地方都市でのタクシーキャブのベースモデルにもなっています。Specifications:華利TJ6330G(カッコ内TJ1010SL1)
全長×全幅×全高:3,320×1,395×1,990mm(3,495×1,395×1,785mm) ホイールベース:2,120mm トレッド前/後:1,215/1,190mm 車両重量:780kg(790kg) エンジン形式:TN370Q型直列3気筒OHC 排気量:847cc ボア×ストローク:70.0×73.0mm 最高出力:30.1kW/5,500rpm(29.0kW/5,500rpm) 最大トルク:61.7N-m/3,200rpm(59.0N-m/3,200rpm) 燃料供給装置:キャブレター トランスミッション:4速MT サスペンション前/後:ストラット/リーフリジッド ブレーキ前/後:ドラム/ドラム タイヤ:5.00-12-8PR 最大積載量:90kg(420kg) 最高速度:100km/h
中国仕様(LZW6370A)
中国で生産されているもう一つのハイゼットが、柳州五菱汽車のLZW6370Aです。ベースモデルはインドネシアのゼブラエスパスで、これを中国向けにアレンジして生産しています。
搭載エンジンはシャレード1300用のHC-C型をベースにした476Q型を搭載していますが、これは天津汽車のシャレード用エンジンをそのまま流用したもの。なお、柳州五菱汽車では三菱のミニキャブも生産していますが、こちらのエンジンも天津汽車製のTN376Q型(日本ではCB型)を搭載しています。
ボディサイズがTJ6300シリーズよりも一回り大きく、ラウンディッシュなフォルムのため、都会的なイメージで販売されています。
ミニキャブをもともと生産していながら、ダイハツ車も生産することになった経緯についてはよくわかりませんが、とても興味深いものがあります。車自体については内外装パーツを東南アジアからのCKDとし、エンジンを天津汽車から調達するという手法によって生産されています。Specifications:LZW6370A
全長×全幅×全高:3,875×1,560×1,860mm ホイールベース:2,080mm トレッド前/後:1,345/1,330mm 車両重量:1,055kg エンジン形式:476Q(HC-C)型直列4気筒OHC 排気量:1296cc ボア×ストローク:76.0×71.4mm 最高出力:54.0kW/6,000rpm 最大トルク:101.0N-m/3,200rpm 燃料供給装置:キャブレター トランスミッション:5速MT サスペンション前/後:ストラット/リーフリジッド ブレーキ前/後:ディスク/ドラム タイヤ:5.50-13-8PR 最高速度:125km/h
韓国・南米・アラブ仕様(タウナー)
現在は現代自動車傘下となった起亜自動車で生産されるハイゼットです。当初は起亜自動車の商用・大型車部門だった亜細亜自動車で生産・販売、車名も亜細亜タウナーでしたが、起亜自動車への吸収合併に伴い、現在は起亜タウナーとしてデリバリーされています。ベースモデルはS80系で、生産開始は1990年です。
エンジンは韓国の軽自動車規格に収めるためにED-10を800ccにサイズダウンしたCD800型を搭載、電子制御キャブレターのほかにハイパワーのインジェクション仕様も用意されています。また、LPG仕様が中心機種に据えられ、ライン生産されるのもタウナーの特徴で、経済性を武器に韓国では高い人気を誇っています。
ボディバリエーションは7人と5人乗りのコーチ、5人乗りと2人乗りのバン、そして標準デッキとロングデッキのトラックが用意されていますが、トラックには冷凍車やタンクローリーなどの特装車が数多くラインナップされています。グレードはコーチにスーパーデラックス、デラックスが、トラックとバンにデラックスとスタンダードがあります。なお、ガソリン車はスーパーデラックスのみの設定となっていますが、スーパーデラックスにもLPG仕様が用意されています。
ベースモデルは660cc仕様で、コーチとの比較では全長が60mm延長されています。これは前後バンパーの拡大によるもので、この点は他の海外仕様と同様の処理といえるでしょう。インテリアは日本仕様と基本的に共通ですが、独自デザインのステアリングを採用、パワーウインドースイッチがインパネに取り付けられるなどの差異があります。前期型はグリルレスでしたが、現行型はグリル付に改めています。
日本車ベースでありながら輸出もするという韓国車メーカーらしく、タウナーはハイゼットの輸出・生産をしていない南米やアラブ、アフリカに輸出しています。メカ的にはLPGが用意されないこと、コーチの定員が6人乗りに変更されていること以外は韓国仕様と共通です。南米の一部では亜細亜ブランドで販売されています。Specifications:タウナーコーチスーパーデラックス(カッコ内LPG仕様)
全長×全幅×全高:3,360×1,400×1,870mm ホイールベース:1,810mm トレッド前/後:1,220/1,220mm 車両重量:840kg エンジン形式:CD800M型直列3気筒OHC(CD800型直列3気筒OHC) 排気量:796cc 最高出力:43PS/5,400rpm(38PS/5,200rpm) 最大トルク:6.5kg-m/3,200rpm(5.8kg-m/4,400rpm) 燃料供給装置:EFI(電子制御キャブレター) トランスミッション:5速MT サスペンション前/後:ストラット/リーフリジッド ブレーキ前/後:ディスク/ドラム タイヤ:155R-12LT(165R-12LT) 最高速度:119km/h
マレーシア仕様(ハイゼット)/インドネシア仕様(ハイゼットゼブラ)
東南アジア諸国の自動車国産化政策にのっとり、ダイハツが技術供与という形で生産しているハイゼットです。当初はCKD生産からスタートしましたが、すでに国産化を完了、現在ではオリジナルモデルを開発するに至っています。現在生産しているハイゼットはS80系をベースにワイドボディ化したモデルで、インドネシアではハイゼットゼブラ、マレーシアではハイゼット1300と呼ばれています。ここで興味深いのがマレーシア仕様で、1990年よりインドネシア仕様のCKD生産を開始、現地生産されています。なお、この事業はダイハツでは初めての3国間CKD生産の事例となりました。
ドアパネルを日本仕様と共用し、ハイゼットを名乗ってはいますが、ボディは長く、ワイド化されているため、まったく別の車に見えます。ボディサイズ的にもトヨタライトエースやマツダボンゴに近い車といえるでしょう。デザインも先代ボンゴトラックに似たものとなっています。また、屋根がミドルルーフ化されているのも特徴です。エンジンはシャレード用のHC-C型を搭載し、後輪を駆動しています。
ワゴンボディが別にあるため、ハイゼットを名乗るモデルはトラックのみとなりますが、ボディバリエーションは豊富で、スチールデッキのほかにウッドデッキやダンプトラックなどが用意されています。また、フロントにグリルガードが装着されているのも特徴で、この点は東南アジア仕様デルタにも共通しています。Specifications:ハイゼット1300
全長×全幅×全高:3,900×1,626×1,875mm ホイールベース:2,120mm トレッド前/後:1,325/1,310mm 車両重量:935kg エンジン形式:HC-C型直列4気筒OHC ボア×ストローク:76.0×71.4mm 排気量:1295cc 最高出力:75PS/6,000rpm 最大トルク:10.3kg-m/3,200rpm 燃料供給装置:キャブレター トランスミッション:5速MT サスペンション前/後:ストラット/リーフリジッド ブレーキ前/後:ドラム/ドラム タイヤ:5.50-13-8PR 最大積載量:805kg
マレーシア仕様(ルサ)/インドネシア仕様(ゼブラエスパス)
ハイゼットをベースにした1ボックスカーで、東南アジアで販売されるハイゼットトラックや中国で生産されるLZW6370Aの母体となっています。また、この車はアジアカーとしてインドネシアで設計・デザインされました。開発コンセプトは“先進の1BOXセダン”で、有機的なエクステリアやラウンディッシュなインテリアなど、情感に訴えるデザインを採用。スタイリッシュで人気の高い車です。
エンジンはハイゼット1300と共通のHC-C型のほかに、アプローズやパイザーなどにも搭載されたHD-C型1600を上級グレードに搭載。1600はこの手の車にありがちなアンダーパワー感を抑えるとともに、より1クラス上のイメージを作り出しています。シフトは5MTのみ。1600にはパワーステアリングが標準装備されています。
一応ハイゼット系列の車ではありますが、ハイゼットベースとは思えない貫禄を持った車で、実際、ボディ外寸はもとよりホイールベースも延長されています。
インドネシア製は国際商品として他のアジア各国へ完成車輸出されるとともに、マレーシアや中国向けにはCKD部品としても輸出されています。Specifications:ルサEX13e(カッコ内GX16)
全長×全幅×全高:3,880×1,560×1,845mm ホイールベース:2,080mm トレッド前/後:1,340/1,330mm 車両重量:1,040kg エンジン形式:HC-C型直列4気筒OHC(HD-C型直列4気筒OHC) ボア×ストローク:76.0×71.4mm(76.0×87.6mm) 排気量:1295cc(1590cc) 最高出力:73PS/6,000rpm(82PS/5,600rpm) 最大トルク:92.0N-m/3,200rpm(115N-m/3,200rpm) 燃料供給装置:キャブレター トランスミッション:5速MT サスペンション前/後:ストラット/リーフリジッド ブレーキ前/後:ディスク/ドラム タイヤ:175/70R13