「ナニカ」って?

子どもを産んだその日から・・・いや、身ごもったその日から、
誰もが「ママ」になってしまいます。
そして、「母親は子どもを無条件に愛するもの」だという
母性本能神話に、取り囲まれます。
ときには。
ときには、それがナイフのように突きつけられます。

こんな歌を創っているんだから、さぞかしあなたは「良い母親」なのでしょう?
そう訊かれたら、わたしは、思い切り首を横に振ります。
とんでもない!

ときどき、わたしには「母性本能」が備わってないんだ。
と、思ったりします。
なんで、こんなに自分勝手なんだろう?
なんで、子どもを一番に考えられないんだろう?
わたしって、どこか欠けてる?

長いこと、そう思いながら過ごしてきました。

そんなわたしも、「ママ」です。
誰が何と言おうと、「母親」なんです。

去年、父を亡くしました。
晩年の父とは、いろいろあって、殆ど話もしないまま、
最後のコトバがなんだったかすら思い出せないまま、父は逝きました。
それでも、わたしには、たったヒトリの父でした。

「お父さん」と、声に出してみる。
そうすると、その響きは、ちゃんとわたしの胸にある。
わたしの中の「記憶」と響き合う。
それでいい。
わたしも、たった1つの「お母さん」という響きになればいい。

誰の真似もしなくていい。
「わたし」は「わたし」のままでいい。

帰りたい場所は、ありますか?
夕暮れの帰り道、確かに家路をたどりながら、
心が迷子になったような気持ちになったことは、ないですか。

忘れないでいたいんです。
そういう場所があるからこそ、いまの自分がある。
大事にしていいんだよ。
「ママ」じゃなかった頃の自分も。
そう思いながら・・・・歌ってるんです。

ARAKAWA
(2002.9.3)