Power Macintoshの歴史
1994年3月31日のアップルコンピュータ株式会社の発表より
【PowerPC/RISCプロセッサとは】
PowerPCプロセッサファミリは、1991年に発表されたアップル、IBM、Motorolaの3社の提携が産み出したRISCプロセッサです。RISCプロセッサは、プロセッサが内蔵する演算のインストラクションを頻繁に使われるもののみに限定することにより、全体の処理性能を向上させたマイクロプロセッサです(RISCに対し、従来のマイクロプロセッサはCISC (複雑命令セットコンピュータ) と呼ばれています)。RISCプロセッサの利点は処理速度のみではありません。チップ自体のサイズ、発熱量、消費電力のどれをとってもCISCに比べ、格段に小さくなっていますし、製造コストも安価に押さえることができます。
PowerPCアーキテクチャは、IBMの提唱していたRISCプロセッサのアーキテクチャ“POWER”をベースに開発されたもので、今回採用されたPowerPC 601に続き、より低い発熱量と低消費電力で同等の性能を実現するPowerPC 603、さらに高性能のPowerPC 604、完全な64ビットアーキテクチャを採用したハイエンドのPowerPC 620の開発が発表されています。
注)1995年、PowerPC 620の開発は中止されました。
【Power Macintoshの歴史】
- ●1989年
- コードネーム“Jaguar”と名付けられた開発チームが、RISCベースのパーソナルコンピュータの開発を開始。Jaguarの目標は、MacintoshにこだわることなくRISCベースのコンピュータを作り出すこと、そしてパーソナルコンピューティング環境をより向上させるべくインタフェース、入出力、発話、通信といった新たなテクノロジーと機能性を導入すること、の2点であった。
- ●1990年 3月
- Macintosh IIfxデザインチームのメンバーが、同製品の発表を祝ってレイクタホにスキー旅行をした際、Macintoshをさらに進歩させるRISCベースMacintoshプロジェクトについて語り合う。彼等は“Cognac”と自称した。
- ●1991年 3月
- CognacがLC筐体にRISCチップ“Motorola 88000”を搭載したプロトタイプのデモを行い、Macintoshへのエミュレーションが可能であることを示した。JaguarとCognacは合流し、RISCベースのMacintosh開発を続けることとなる。
- ● 7月
- アップルとIBMが、IBMのPOWERアーキテクチャに基づくRISCマイクロプロセッサの開発をはじめとする、1990年代に向けたテクノロジーのアウトラインを提出する。このRISCマイクロプロセッサファミリである“PowerPC”は両社のコンピュータに採用されることとなる。また、MotorolaもPowerPCチップを製造する。
- ● 10月
- アップルとIBMが、Motorolaを含む3社でのPowerPCマイクロプロセッサ共同開発プランを含む、歴史的な提携を締結する。アップルとIBMは、さらに新世代のコンピューティングに向けてオブジェクト指向のOS開発を行う合弁会社「Taligent」の設立を発表するとともに、IBMのAIXをベースとし、Macintosh System 7のアプリケーションが動作するUNIXベースのOS“PowerOpen”確立のために協力することを発表。
また、Macintosh System 7のプログラムマネジャーであったSheila BradyがPowerPCマイクロプロセッサ搭載Macintosh (Macintosh with PowerPC) の開発に参加、ハードウェアとソフトウェアの統合性を確立するチームのリーダーとなる。プロジェクト全体は“Rock-and-Roll”のコードネームで呼ばれる。
- ●1992年 5月
- IBM、Motorola、アップルの3社はテキサス州オースティンのSomersetデザイン研究所に、PowerPCファミリのデザインおよび開発における焦点としての参画を依頼。
- ● 10月
- IBMとMotorolaが業界水準に比べ非常に短い開発開始後12か月で最初のPowerPC 601のシリコンを完成させたと発表。アップルは内々にMacintoshのOSがPowerPC 601のプロトタイプ上で動作することをデモ。
- ●1993年 5月
- アップルはWorldwide Developer Conferenceにおいて80 MHzのPowerPCマイクロプロセッサ搭載Macintoshの技術的デモを行う。600社のデベロッパが予告なしにそれぞれのアプリケーションがPowerPCマイクロプロセッサ搭載Macintoshのエミュレーションで動作するかテストすることとなる。95%以上のアプリケーションが何らの改変を加えることなく動作した。Aldus、Adobe、Claris、Microsoft、Quark、WordPerfectをはじめとする11社の主要デベロッパがPowerPCマイクロプロセッサ搭載Macintoshに最適化されたアプリケーションの開発表明。アップルは現行Macintoshユーザにアップグレードを提供することを表明。PowerPC 601チップはCOM DEXならびにByte Magazineから、最も意義のあるテクノロジー(Most Significant Technology)として“Best of COMDEX/Spring”賞を受け最高の栄誉を浴びる。
- ● 8月
- 開発ツールメーカーの大手9社がPowerPCマイクロプロセッサ搭載Macintoshへの参与を表明。
- ● 10月
- アップルは、PowerPC 601チップの性能は提携時に発表した目標値よりもはるかに高く、80 MHzなどさらにクロック速度の速い製品を開発すると発表。PowerPCファミリの次の製品、PowerPC 603誕生。新たに7社のソフトウェアデベロッパがPowerPCチップに最適化されたアプリケーションの開発を表明。
- ● 11月
- Comdex/Fallにおいてアップル社CEOのマイケル・スピンドラーが60 MHzのPowerPCマイクロプロセッサ搭載Macintoshのデモを行い、現在入手可能な最高性能のPentium搭載機に性能において勝ることを示す。Macintoshシステムソフトウェアがβ版に。新たに6社のソフトウェアデベロッパが最適化されたアプリケーションの開発を表明し、合計24社に。DayStarがPowerPCアップグレードカードを提供するライセンス供与で合意したと発表。
- ●1994年 1月
- PowerPC 601へのアップグレードの仕様と価格帯を発表。Macntosh Quadra、Centrisシリーズおよびその他の機種に対するロジックボードならびにプロセッサアップグレードを発表。60社以上のソフトウェアデベロッパがPowerPCプラットフォームへのコミットメントを公表し、各社がアプリケーション開発に取りかかっている。アップルはPowerPCマイクロプロセッサ搭載Macintosh向け開発ツールである“RISC Software Developers Kit”“Macintosh with PowerPC Starter Kit”“Programmers Introduction to RISC”を発表。
- ● 2月
- PowerPCマイクロプロセッサ搭載Macintosh用System 7がゴールデンマスター版に。またMacintosh自体も、アイルランド・コーク、シンガポール、コロラド州ファウンテン、カリフォルニア州サクラメントの各拠点で製造開始される。エントリーレベルのMacintosh(Quadra 605およびLC、Performaのいくつかのモデル)にPowerPCテクノロジーへのアップグレードの提供を発表。現行デスクトップMacintoshモデルの大部分がPowerPCテクノロジーにアップグレードできることとなる。
- ● 3月
- Power MacintoshがニューヨークのLincoln Centerでデビュー。世界各地でアップルならびにサードパーティによる300以上のイベントが開催される。150社のデベロッパがPower Macintosh向けのアプリケーションを発表。
