彼はポケツトから、有朋堂文庫の『醒睡笑』を取り出した……彼はいつも探偵に必要なのは機智と諧謔とであると考へ、この書をポケツトからはなしたことがないのである(「通夜の人々」)
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親愛なるA君! 君の一代の盛典を祝するために、僕は今、僕の心からなる記念品として、「恋愛曲線」なるものを送らうとして居る……(「恋愛曲線」)
……きつと蟹が居るんだよ、蟹が万年青の芽をつまむにちがひない……(「いたづら蟹」)
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……いくら固く口を噤んでゐる犯罪者でも、その犯罪者の、本当の急所を抉るやうな言葉を最も適当な時機にたつた一言いへば、きつと自白するものだよ(「呪はれの家」)
……例の葡萄酒を出して貰はう……(「謎の咬傷」)
どうです、……今晩は、人間の共食ひを話題としようではありませんか(「手術」)
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……絶対に処罰されない殺人の最も理想的な方法は何でせうか? ……それは殺さうと思ふ人間に自殺させることだと思ひます……(「痴人の復讐」)
……女にしろ、男にしろ、一しよに寝たものが、目がさめた時、異形の化物に代つて居たら、果してどんな気持がするだらうか……(「暴風雨の夜」)
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五本の指、掌、前膊、上膊、肩胛骨、その肩胛骨から発した肉腫が頭となつて、全体が恰も一種の生物の死体でゝもあるかのやうに、血に塗れて横たはつて居た……(「肉腫」)
……一口にいへば、私が法医学を選んだのは、私のサヂズム的な心を満足せしめる為だつたのです……(「三つの痣」)
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内科の教室に居ました時分から、私は沢山の患者の臨終に出逢つて、安死術といふものをしみじみ考へたのであります……(「安死術」)
……偶然といふものは、実は原因を見つけることの出来ぬ程複雑な「必然」と見做すのが至当であつて、怪談や因果噺の中にあらはれる偶然を、私はむしろ、この「複雑雜な必然」として解釈したいと思ふのである……(「血の盃」)
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恋が時として一種の遊戯であることは、新石器時代でも現代でも、又、ペルーでも日本でも変りません(「桐の花」)
私はこれで一度死んだ人間になつたことがありますよ……(「手紙の詭計」)
……若し犯人が文字通りの殺人芸術家であつて、故意に無頓着な殺人を行つたとしたならば、それこそ難中の至難事件となるのです……(「外務大臣の死」)
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……この藍色の鬼の絵を壁にかけて朝夕ながめて居たならば、きつと生れる子は、鬼のやうな怖しい顔をして居るか、
或は少くとも、藍色の皮膚をした子が生れるだらうと思ふので御座います……(「印象」)
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……どんな子が生れたら、血液の型を検べないで満足なさるの?……俺のやうに片眼の子でも生れたら……(「赦罪」)
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書斎にて(大正十四年四月)(『小酒井不木全集 第一巻』) |
私に若しポオの文才があつたならば、これから述べる話も、彼の「黒猫」の十分の一ぐらゐの興味を読者に与へることが出来るかもしれない……(「犬神」)
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よしそれが冗談であるにしても若い女の身体へ絵をかくことは、決してなさるものではありませんよ……(「メヂユーサの首」)
↓ 『化粧之友』昭和2年11月号掲載:「小酒井不木先生の家庭」
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……人工心臓こそは病気に対する恐怖心を完全に除くものだ! 人工心臓こそは人をして楽園に遊ばしめるものだ! 何といふ平安な世界であらう!……(「人工心臓」)
……ねえ、わたしが死んだら、すぐ人工心臓を取りつけて頂戴、わたしはきつと甦ります……(「人工心臓」)
博士は切り捨られた腕を拾ひ上げて言つた。「君この、腕を虹にしてやるが、それで我慢出来ぬか」……(「二重人格者」)
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……私はあなたの若さに恋して居るのではありません。あなたといふ人に恋して居ります……(「長生薬由来」)
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……いゝところへ御いでになりましたよ。実は今、奇怪な犯罪事件が起つて、御承知の、甲賀、牧、横溝、高田、岡田の諸君がそれに関係して居るのです……(「吉祥天女の像」)
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短篇小説テーマ帳のある頁/「疑問の黒枠」の草稿の一部 (『小酒井不木全集 第四巻』) |
「そりや旦那、眼をつぶすに限りますよ」(「按摩」)
殺人=犯人の心−被害者の心(「疑問の黒枠」)
……悪人なんてこの世の中にはめつたにあるものではないよ。たゞ書物の中に沢山あるだけだ……(「疑問の黒枠」)
『闘病問答』口絵写真 昭和2年4月撮影
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……ね、早く、これで一思ひに私を突刺して下さい。紅蜘蛛の眼のところをずぶりと刺して下さい……(「紅蜘蛛の怪異」)
闇が二人を包んだ。それから……接吻の音(「死の接吻」)
……あなたは人を殺したいと思つたことはありませんか。例へばあなたの最も愛する恋人とか、または母親を……(「懐疑狂時代」)
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君は何ですか?……一口にいへば、指紋の研究家とでも申しませうか……(「指紋研究家」)
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……あの、したまがりの花の毒々しい色を思はせるやうな人肉の焼けるにほひは、とても、ほかのにほひでは真似が出来ぬ……(「死体蝋燭」)
……幸ひに君は真の詩人の一人であり、僕は真の科学者の一人なのだ……(「二人の思想家」)
……さきに狩尾博士を失ひ、今また毛利先生の訃にあふといふのは、何たる日本の不幸事であらう……(「闘争」)
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……鶴吉は狂気のやうに鐘をついた。けれども、鐘は鳴らなかつた。どこに創があるでもないのに、鐘は響きを拒んだ……(「遂に鐘は鳴つた」)
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いふまでもなく、僕の自殺の動機は失恋だ……(「ある自殺者の手記」)
……もしやこの眠り薬が恐ろしい毒薬でありはしないか……(「眠り薬」)
| 『タナトプシス』口絵写真 撮影年月不明 ![]() |
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展望塔の上……毒薬をのみ、ベンチに腰かけて、美しい風景をながめながら、永久の眠りにつく……なんと詩的な死に方ではありませんか(「展望塔の死美人」)
| 『スペードのキング 四枚のクラブ一』口絵写真 撮影年月不明 ![]() |
……犯罪の魅力は生命の魅力にまさる……(「鼻に基く殺人」)
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……僕は、僕は人を殺しやしません。僕の魂が人を殺したのです……(「分身の秘法」)
……君、君はなぜ、のまぬのだ。やつぱり君の話は嘘だつたのか……(「卑怯な毒殺」)
著者終焉直後の死顔スケツチ(『小酒井不木全集 第二巻』) |
……猫の眼のやうに光るのは、まがひもなく彼女の右の眼でした……(「猫と村正」)
……私は宝暦×年の今月今日に生れましたから、今日で丁度、満百五十歳になるので御座います……(「血友病」)
……婦人科医黒瀬小太郎が、叔父を殺さうと決心してから、もう半年あまりも過ぎた……(「姙術魔」)
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| 小酒井不木展 パンフレット (1995年11月24日〜12月24日 於、愛知県図書館) ![]() |
本ページ中のテキストは全て『小酒井不木全集』(改造社)より製作者が抜粋・引用しました。