スーパーロボット大戦

Generation α

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キラには理解できなかった。

 何故、こんなことになっているのか。

 どうして、こんな状況に置かれているのか。

 いや、自分が置かれている状況の理由付けなど些細なことだ。

 戦闘において重要なのは過去ではなく未来の結果、平たく言えば生き残ることである。

 それは、ここ数日の間に降り掛かった出来事で身に染みてわかっている。

 問題なのは、その重要な生き残る事が至極難しいかもしれないことにあった。

 

「!」

 

 続けざまに襲ってきたビームを回避、機体を掠めて虚空へと消える二本の光条に冷や汗をかく間もなく、次々に襲い掛かる悪魔の光。

 緩急をつけて放たれるそれは、まるで釣瓶打ちだ。

 物理攻撃に対し非常に強い防御能力を持つPS装甲も、ビームには役に立たない。

 一発でも本体に直撃を食らえば、ストライクといえどもただではすまないだろう。

 キラが相手にしているのは、ザフトのMSではなかった。

 いや、つい少し前までは恐ろしい数のザフトMSと戦っていた気がする。

 だが、気がついた時にはあれだけ展開していたザフト軍のMSが戦闘宙域に一機も存在していないという不可思議な状況に……キラ達にとっては退っ引きならない状況に、事態は移ろっていたのである。

 

「ゆ……さ――!」

 

 最悪の事態を想像し思わずキラの口から漏れた祐一の名は、口内がカラカラに乾いていたため、意味の通らない音として発せられた。

 もう一度、呼びかけようとするも言葉を飲み込む。

 頼りになるはずの祐一は、近い宙域で他のMSと戦っていてまったく援護に来られないのだ。

 センサーにあるカノンの反応からまだ無事だと確認できるが、状況は予断を許さない。

 二人が相対している敵MSの性能とパイロットの技量は、明らかに常軌を逸していた。

 問答無用で攻撃を仕掛けてきたEFAのガンダム部隊。

 無線封鎖を強いているのかこちらの言い分はまったく通らず、キラと祐一はこの新たな敵を前に戦うことを余儀なくされた。

 祐一が、相手にしている紅いガンダムを倒してくれば援護にまわってくれるかもしれないが、正直望みは薄そうだ。

 キラが目の前にしている黒と白のガンダムと同じような技量のパイロットが相手だったとしたら、祐一といえども苦戦は必至だろう(キラ観)。

 ならば、戦いの前に叱咤してくれた祐一の言葉に従って、前向きにやる以外にない。 

 

「くそっ、同じガンダムなのにっ!!」

 

 新型のはずのストライクが圧倒されている信じられない現実に、キラは叫ばずにはいられなかった。

 高機動ユニットのエールストライカーを装備しているにも関わらず、適正な間合いまで黒いガンダムを振り切れない。

 更に背部と腰部、手にした大型のビームライフルから湯水のようにビームを撃ちまくる圧倒的な火力は、本当にMSかと疑いたくなるレベルだ。

 ここまでの戦闘で得た情報から分析した結果、機体性能はほぼ全てにおいて劣っていた。

 ではパイロットはというと、残念なことに敵はパイロットまでも一流のようだ。

 ファーストコンタクトで接近戦を仕掛けられた時に竜巻のような斬撃が襲ってきたことから、下手な腕ではないのは確かである。

 接近したら殺される。

 ならば遠距離からの射撃戦としたいところだが火力も違いすぎるわけで、結局は中距離を保って攻撃を避け続け隙を伺うという結論に達したのである。

 

 

 DATA

 型式番号MSA―0011SR

 識別名称Ex―S ガンダム

 特記  :高汎用準サイコミュ搭載機。ケースS.O.R.A.の場合、要データ収集。

 

 

 コンソール上に表示されたデータにもならないデータを見直すが、状況を改善させる策は思い浮かばない。

 大体にして、一番重要なはずの特記事項が意味不明なのだからどうにもならなかった。

 専門用語など、正式な軍属ではないキラにわかるわけがないのだ。

 

「!」

 

 背部ビームキャノンからの射撃の後に、妙な間隔が空いた……そう感じた瞬間、黒いガンダムのビームライフルから連続してビームが発射された。

 先程までの釣瓶打ちとは異なる間隔での三連射。

 一射目、二射目を小刻みな回避行動を行ない避け、おそらく本命であろう三射目を左方向への回避でやり過ごす。

 だが、次の瞬間。

 

 

 

 ズドオォッ……!!!

 

 

 

「なっ!!?」

 

 何かがストライクの右側方に直撃、爆発した。

 PS装甲のおかげでダメージは無かったが、右方から襲ってきたその衝撃で機体が回避方向へ大きめに振れる。

 そこへ、間髪入れずに高出力のビームが襲い掛かった。

 反射的に逆制動を掛けたのと黒いガンダムのビームライフル発射は同時。

 本来なら、ビームに貫かれることなく寸前でストライクは留まれるはずだった。

 

「……!!!!!!!」

 

 確かにビームがストライクを貫く事はなかったが、先程までのビームよりもその射線……最大出力ビームスマートガンの照射持続時間は長かった。

 ビームは消えることなく、回避方向に置かれた光条(・・・・・・・・・・・)へストライクがもろに突っ込む。

 

 その瞬間、キラは聞こえるはずのない宇宙空間に、翼のはためきを聞いたような気がした――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第七話「アルテミス崩壊」

Collapse of Artemis.―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水瀬名雪は、よく眠る娘である。

 共に住むイトコの少年が事あるごとに彼女の寝真似をして少女をからかっているのも、普段からその寝姿を見知っているからであり、特に他意は無い。

 クラスメート達も「水瀬名雪のことを何かあげてみろ」と言われた場合、半分は母親譲りなその類い希なる容姿をあげ、もう半分は趣味?たる安眠好きな様をあげるだろう。

 家族だけではなく、もはやハイスクールにまで周知な名雪の安眠好きは、まさに『眠り姫』の片鱗を伺わせるものであった。

 枕を替えたら眠れなくなる、などというデリケートな者も世の中には多いが、こと名雪に関してはまったく当て嵌まらない。

 

「く〜っ……く〜っ……うにゅう……」

 

 部屋の中、耳を澄ますと聞こえてきそうな、小さな寝息。

 寝床を自宅の自室からアークエンジェルの士官室へと移した現在も、まるで部屋の主がよろしく、名雪は安眠を貪っていた。

 実に健やかな寝顔である。

 客観的に見ると、祐一の寝真似もあながち的外れなものではないかもしれない。

 もっとも真似はあくまで真似、本物とは比べものにもならないが。

 無防備かつ、無邪気。

 無垢な少女の寝顔は、見る者にある種の感情を抱かせずにはいられない。

 しかし、幸か不幸か名雪のあられもない姿を見慣れている実質部屋の主、唯一の傍観者になるはずの少年は、何故か室内にいなかった。

 寝る前にお気に入りのカエル人形の代わりに抱き付いていたモノが、何故か枕に代わっていた……そんな違和感からか、少女が目を覚ました。

 

「うにゅ……あさ?」

 

 一日の平均睡眠時間十時間な名雪も、平均以上の過多な睡眠ですっかり満足したのだろう。

 珍しく、目覚めが良かったらしい。

 

(眠いよぅ……)

 

 寝ぼけ眼をごしごしと擦る。

 完全低血圧的症状まるわかりだ。

 そんな様子でも、普段よりはマシだった。

 通常ならば良くて半覚醒がやっと、今はハンパながらも目を醒しているのだから。

 もっとも、比較的明晰な部類に入る彼女の頭までが覚醒しているのかというと、またそれは別の話。

ん〜、といつもの調子で体を起こそうとしたその途端。

 

 

 ゴンッ!

 

 

「いっ!? っっっっ〜〜〜たぁっ……」

 

 伸び上がった拍子に、ベッド上底の天井へ思い切り頭をぶつけてしまった。

 普通の二段ベッドサイズなので、上段は限りなく低いのだ。

 涙目になるも、おかげで無事覚醒を果たし見慣れない室内を目にしたことで、名雪はようやく自分の置かれている状況を思い起こした。

 

 (やっぱり、夢じゃなかった)

 

  蛍光であろう少量の光に照らされた士官室内。

 部屋の住人と呼ぶほどの期間そこで寝起きしているわけではないのだから当然なのだが、端のデスクに名雪自身のナップザックが載っている以外は、生活感というものがほとんど感じられない。

 

 “目が覚めればいつもの自分の部屋かもしれない”

 

などという淡い期待が裏切られたことに、名雪は少しだけショックを覚えた。

 といっても、それはあくまで少しだけ。

 自分独りだったら、もっと大きな落胆を覚えただろうが、少女は独りではない。

 相沢祐一。

 イトコであり、同居人でもある少年が一緒なのだから、名雪がその心を折ることは無いのだ。

 自分を支えてくれる大事な家族。

 確かに家族なのだが、少女にとっての祐一は家族というカテゴリでは完全に括りきることのできない、特別な存在である。

 好意は当然、抱いていた。

 ただ“好き”というだけではない、それ以上の複雑なものを内包した感情ではあったが。

 二人の過去に端を発する“彼女の想い”については、いずれ機会があれば語られることもあるだろう。

 

「……祐一?」

 

 頭をさすりながら部屋を見回し、名雪は少年の姿を探した。

 トイレ・シャワー室のある洗面所の方に彼の気配が無いところをみると、どうやら部屋の中にはいないらしい。

 

「あれ?」

 

 その最中、名雪はベッド脇手摺の目に付きやすい位置に何やら大きめの紙が貼り付けてあることに気づいた。

 紙の書き殴るような文字は、見間違いようもない祐一のものだ。

 

「これ、どういう意味?」

 

 簡潔に、実にわかりやすく書かれている文。

 だが、その真意を図ることは、祐一と付き合いの長い名雪にもわからなかった。

 いずれにしても、イトコの少年が大事な場面で間違った選択をすることは余り無いので、とりあえず紙に書かれた指示に従うことに決める。

 その紙には、こう書かれていた。

 

 

 

 

 これを読んだら、すぐに着替えて艦長達と一緒にいろ

 

 これから一騒動ありそうだぞ

 

 おれはヒュッケを動けるようにしておく 

 

 

 byどこかの誰かを起こし損ねて半泣きな真面目少年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍事要塞アルテミス。

 月の女神の名を頂くこの基地は、ラグランジュ3第5宙域に位置するユーラシア連邦宇宙拠点の一つである。

 要塞といってもこの宙域は辺境に位置する上、軍備・設備共に小規模のため軍事拠点としての戦略的価値は低い。

 そのせいもあり、ザフト軍は開戦からこれまでの期間、この辺境要塞の存在を放置し続けていた。

 大して重要でもない拠点などを陥としたところで何の意味もない、兵力の無駄だろう……プラントの一市民ならそんな理由付けで要塞の黙認を納得するかもしれない。

 もちろん、戦略面で重要ではないということもあったが、『宇宙は我々の領土である』と宣ってやまないザフト軍が、みすみす地球側の軍事基地を野放しにする理由は、それだけではなかった。

アルテミス全体を覆ことのできる強力な光波防御帯。

通称“アルテミスの傘”と呼ばれるこの防御機構によって、アルテミスはビームや実弾を受付けない鉄壁の守りを誇り、難攻不落と称されているのである。 

 

 

 

 祐一の指示通りに名雪は着替を終え、マリューら士官達と合流した。

そしてすぐ彼らと共に、突入してきた兵士達に連れられる形でアルテミス内部へと通されることになった。

 武装した兵士達に囲まれての移動は通されるというよりもむしろ、連行されると言った方がよいだろうか。 

 

「ようこそ、アルテミスへ」

 

 司令管制室近くの応接室らしい部屋へ通された彼らを迎えたのは、ガッチリとした体格をした、見るからに不貞不貞しさ爆発な禿頭の将官だった。

 ジェラード・ガルシアと名乗ったその男は、アルテミスの司令官だという。

 マリューとムウ、二人を名乗らせた後、全員が席に着いたところでガルシアは手元の端末を見ながら口を開いた。

 

「……なるほど、君らのIDは確かに大西洋連邦のものだな」

 

 地球軍の姓名検索で、士官二人の身元を確認したらしい。

 階級が上とはいえ、アルテミス司令官の慇懃無礼な態度に、ムウが大げさに返礼した。

 

「お手間を取らせて申し訳ありませんね」 

 

「いやなに、君の輝かしい名は私も耳にしているよ、“エンデュミオンの鷹”どの。しかし、そんな君があんな艦と共にここへ現れるとはな。その腕の怪我は、名誉の負傷かね?」

 

 もっとも、この程度の反撃など気にするまでもないようで、ガルシアは笑みすら浮かべて大西洋連邦の若きエースへ受け返した。

 同じ地球軍といっても、所属する国からして異なる者同士というのだからこの関係は微妙だ。

階級どうこう以前の問題だろう。

所謂古狸という人種がいるとしたら、こういう者をいうのだろうななどと内心思いながらも、ムウはそんな空気を感じ取りながら、言葉を選ぶ。

 

「ま、そんなところです……っと、お気を悪くしないで下さい。我々の行動は特務でありますので、閣下といえども残念ながら仔細を申し上げることはできないんですよ」 

 

「ふん、秘密というモノはどこからか漏れる。無論『どこから』というより『何が』の方がより価値の高い情報だと思うのだがね?」

 

「……なるほど」

 

 互いに牽制による牽制の連発、まさに上辺だけのやりとりである。

 

「……」

 

 相手の狙いがその僅かなやりとりで理解できたのか、ムウの隣で聞いていたマリューも探るような視線をガルシアへ向ける。

上の階級といえどもあくまで相手は同盟国士官、頭ごなしに命令というわけにもいかないらしい。

そうかといって、貴重な情報源をそのままにしておくわけにもいかない……その結果が現在の状況というわけだ。

 応接室を銘打ったここは、体の良い軟禁場といったところか。 

そんなやりとりに奇妙な空気を感じながらも、ナタルは『同盟軍=仲間』という建前をそのままに、二人の会話が切れたのを見計らって自分達の主張を切り出した。

 

「できるかぎり早く補給をお願いしたいのです。我々は一刻も早く、月の本部に向かわねばなりません。また、ザフトにもいまだ追跡されていると思われ――」

 

「ザフト? ……これかね?」

 

 ナタルの言葉を遮りつつガルシアがコントローラーを操作すると、壁のモニターにアルテミス外部の映像が映し出された。

 

「ローラシア級! それに、ナスカ級も……!」

 

 一隻だけではない無数のザフト艦が、アルテミスに近い宙域に停泊している事実に、マリューが絶句する。

 地球進路へデコイを放ち一日の間を置いてアルテミスへと入港したのは、退路を断たれるというこの状況を危惧してのことだったのだ。

 顔面蒼白の艦長を横目に、ムウもまた改めて敵艦隊の戦力を見やる。 

 

「クルーゼの部隊か? ……いや、それだけじゃないな。一体、何部隊いるんだ?」

 

 クルーゼ隊のナスカ級とローラシア級、それ以外にも少なくとも二つの艦がこの場から確認できた。

 アルテミスに逃げ込んだ獲物を確実に仕留めるために、増援を呼んだといったところか。

 時間差での入港が看破されたことや複数の部隊を呼び寄せた事実……それは、敵がアークエンジェルに対し高い執着を持っている事に他ならない。

 

「見ての通り、奴らは傘の外をうろついておるよ。先刻からずっとな。これでは補給を受けても出られまい」

 

 何が楽しいのか、ニヤリと嫌らしげな笑みを浮かべ、したり顔を見せるガルシア。

 敵に囲まれているというのに、まったく緊張感すら見せない司令官に業を煮やし、ムウはザフト艦をネタにどうにか食い下がろうとした。

 

「奴らが追っているのは我々です。このまま留まり、アルテミスにまで被害を及ぼしては……」

 

 これもまた建前だったが、事態は間違いなく悪い方向へ進んでいるのは確かである。

 ムウの言葉には、友軍への気配りも若干含まれていた。

 しかし、ガルシアは下卑た笑いのままムウの進言を事も無げに一蹴し、

 

「被害だと? このアルテミスが? 馬鹿馬鹿しいっ! 奴らとてこの衛星の恐ろしさをよく知っている。やがてあの連中も去るさ。いつも通り、何も出来ずにな。……ところで」

 

唖然とした一同の左端に座っていた名雪に目を留め、不意に言った。

 

「まさかこんなところで貴女にお目に掛かる事になるとは。他の者の目は誤魔化せても私は誤魔化せませんぞ?」

 

「え?」

 

「な……!?」

 

 まるで、隠されたものを看破したかのような物言い。

 何処か媚びるような色の混じったその一声に、マリューとナタルが驚きの声を上げ、思わず同行者の少女を見つめる。

 

「……」

 

 当の名雪は、顔色一つ変えないまま平然と複数の視線を受け止めながら、ガルシアを見返した。

 そんな名雪の態度に気分を害したふうもなく、禿頭の基地司令は言い募った。

 

「第三回地球連合大会議後のパーティーで一度ご挨拶をさせていただいているのですが、このガルシアをお忘れですかな? いや、しかし私服姿でのお忍び……しかも大西洋連邦の者達と行動を共にしているとは、ただの任務ではありますまい? あのヒュッケバインとも関係がおありかな?」

 

 明らかに名雪本人を知っているかのような言い方だ。

 イマイチ、名雪と祐一の素性に釈然としないものを持っていたマリュー達は、この突然の展開に呆気にとられていた。

 将官に知り合いがいるほど、この少女は顔が広いのだろうか。

 いずれにしても、他国とはいえ友軍の将官が名雪の事を知っているのならば、身元としてこれほど確かなものはないだろう。

 しかし、ガルシアの指摘は当の名雪によって否定される事となった。

 

「閣下とは初対面のはずです。どなたかとお間違いでは? わたしは一介の技術者にすぎませんが」

 

 祐一との掛け合いでの朗らかさなど欠片も見せない、表面上はほとんど感情の起伏を感じさせない凛とした回答。

 上の者に対する礼節も最低限弁えている。

 素知らぬ態度だと決めつけ、ガルシアが鼻で笑う。

 

「ご冗談を。貴女ほど目立つ方を見間違えることなどありえませんよ。一介の技術者が何故、艦長揮下の士官達と行動を共にしておられるのです? お茶を濁そうとするとは、よほどの特務とみえる。そうでしょう、水瀬中将殿?」

 

「「えぇ……!!!???」」

 

 そして飛び出した予想し得ない名に二人の女士官の目が、信じられないものを見るようなそれへと転じる。

 一方ムウはというと、話の流れに感じるものがあったのか、

 

「あー、なるほど……そーゆーわけね」

 

 などと、一人納得していた。

 名雪にとって、このようなことなど実は珍しくない。

 彼女はガルシアのことなど知らなかったし、連合大会議に参加したこともなかった。

 かといって、基地司令の言っている事が全部虚実なのかというと、そういうわけでもなかったりする。

 結論は、最初に名雪が言った通り『ガルシアが誰かと名雪を間違えている』というのが正解。

 「ふぅ」と一息つくと、名雪は事態を収拾するべく口を開いた。 

 

「残念ながら、わたしは士官といってもあくまでKURATA研のスタッフ、准尉待遇にすぎません。おそらく閣下はわたしの母、秋子とお間違えなのでしょう。母はEFAの中将ですから。わたしは、娘の名雪です」

 

 簡単な話だった。

 単にガルシアは、名雪と彼女の母親である秋子を取り違えていたのである。

 実際、水瀬の母子は驚くほど似ている。

 並べば姉妹かと聞かれることなどザラであり、度が過ぎると互いを他人が取り違えるほどに似ているのだ。

 更に今名雪は、無重力を加味してストレートの髪を三つ編みにまとめている。

 そしてそれは、母である秋子のトレードマークでもあった。

 

「な、む、娘!? ……ば、馬鹿な!!!!??」

 

 面白いように表情が百八十度変化するガルシア。

彼が言葉を失うのも無理はない。

 秋子本人を知る者が初めて名雪を目にした時は、結構な数が同じような反応をみせるのだ。 

 

「わたしが艦長達と行動を共にしている理由は、フラガ大尉同様、御察しの通り特務ということでお話しできません」

 

「そういうことです」

 

 崩れた司令官が立ち直るより先に、畳みかけるように釘を刺す名雪。

 少女の目配せに対応し、お返しとばかりにムウがシタリ顔を見せる。

 

「ぬぅ……しかし、良く似ている。まさかあの方にご令嬢がいるとは」

 

「……」

 

 二人の言葉が耳に届いたのかいないのかブツブツと呟くガルシアは、ジト目を向けてくる士官組の面々に慌てて捲し立てた。

 

「とっ、とにかく! 奴らが去りさえすれば、月本部と連絡の取りようもある! それまでゆっくり休みたまえ。見たところ、だいぶお疲れのようだしな。……部屋を用意させよう」

 

 ガルシアが大仰に手をかざすと、控えていた基地の兵士達がマリュー達を取り囲む。

 どうやら、選択の余地は無いようだ。

 

「光波の傘……アルテミスの守りは、そんなに安全でしょうか?」

 

 兵士達に連れられて部屋を出る直前に、名雪はガルシアに呟くように聞いた。

 それは、技術者として光波防御帯のことを知っている彼女の、ある種の疑念からくるものだったのかもしれない。

 名雪らに背を向け、モニターの外の様子を伺っていたガルシアはそんな彼女の問いに自信に満ちた声で答えた。

 

「フッ、安全だよ。母の腕の中のようにな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェル食堂。

 そこには、避難民も含めて士官以外のクルー達がほぼ全員、ユーラシアの兵達によって集められていた。

 まるで、公共施設を占領し人質を取って立てこもったテロリストの如きやり口は、同盟国の者に対する対応としては明らかにおかしい。

 軟禁……いや、これではまるで監禁だった。

 

「なに? どうなってんだよ」

 

「どうして何の説明もないんだ?」

 

 説明もないままの突然の仕打ちに、ヘリオポリスの避難民達は戸惑いを隠せない。

 もっとも、わけがわからないのは大西洋連邦の者達も同様である。

 髭無精のマードックや操舵手のノイマン伍長らに混じって、キラ達も不安げな顔で銃を持ったユーラシア兵達を見ながら静かに言葉を交わしていた。

 

「ユーラシアって味方のはずでしょう? 大西洋連邦とは仲悪いんですか?」

 

 出て当然の質問をするサイにCIC管制官を務めるトノムラが、

 

「そういう問題じゃねえよ!」

 

 そう苛立たしげに返した。

 入港してすぐにエアロックを破られ、雪崩れ込んできたユーラシアの兵士達によって、艦長のマリューを含むアークエンジェルの士官達が連行されていった。

 それに続き、艦のコントロール及び火器管制も封鎖され、挙げ句の監禁。

それについての説明もない。

 苛つくなという方が無理な相談だろう。

 

「識別コードが無いしなぁ」 

 

「本当の問題は、どうやら別のところにありそうだがな……」

 

「……確かに」

 

 同僚の言葉にそう返したマードックに同感とばかりに、『建前』とはまったく別の理由を連想していたノイマンが頷いた。

 地連合球軍といっても、見方を変えればそこは国家の寄せ集めにすぎない。

対プラントという共通の目的をもって結束しているものの、互いの利権や思惑などもあり、到底一枚板と呼べるものではなかった。

 ユーラシアとしても、降って湧いた新造艦と新型機動兵器を前に無関心ではいられないだろう。

 そんな時だった。

数人の兵士を引き連れガルシアが食堂へと入ってきたのは。

将官の登場にただならないものを感じたのか、階級章を目にしたマードック達が一旦口を噤む。

 基地司令は静まった室内を見回し、横柄に言った。 

 

「私は当衛星基地司令ジェラード・ガルシアだ。この艦に積んであるMSとPTのパイロットは何処かね?」

 

「え、あ――」

 

 ぼくが、とすぐに自分のことだと名乗り出ようとしたキラだったが、横にいたマードックに腕を引かれ押し止められたため、出かかった言葉を思わず飲み込む。 

 

「何故、我々に聞くんです? 艦長達が言わなかったからですか?」

 

 代わりにそう聞き返したノイマンの声によって、キラは朧気ながら不穏な場の空気の意味を何となく感じ取ることができた。

 ストライクのOSは入港の際、ムウの指示を受けたキラ自身の手によって、厳重にロックされている。

 設定された幾重ものブロックをパスしなければ破れない、強固なロック。

 例え専門の技術者であっても、おいそれと解ける代物ではない。

 マリュー達は、ストライクのことを最重要機密だと言っていた。

 小悪魔の囁きやNジャマーの影響で、地球軍の機動兵器は戦争前に比べ、使用が制限されてしまっている。

 そんな状況下で稼働するMS……それも、普通のナチュラルが使えるOSを積んだものというならば、その重要性は日を見るより明らかだった。

 現時点の公式の場において、ユーラシア連邦はMSの再使用に成功していない。

 自分達が持たない使用可能なMSが懐に飛び込んできた時、彼らがどんな行動にでるのか……容易に想像ができるだろう。

 

「あの二機を、どうしようっていうんです?」

 

「別にどうしもしやしないさ。ただ、せっかく公式発表より先に見せていただく機会に恵まれたんだ。色々と聞きたくてね。……パイロットは?」 

 

 不遜な態度のガルシアだったが、相手はまがりなりにも地球軍の将官である。

アークエンジェルのクルー達にできるのは、苦し紛れに回答を先延ばしにすることだけだった。

 

「ヒュッケバインのパイロットは合流したばかりでよく知りませんが、ガンダムはフラガ大尉ですよ。お聞きになりたい事があるなら大尉にどうぞ」

 

 物怖じせず、しれっと言ってのけるマードック。

 ガルシアはそんなメカニックの態度を鼻で笑い、

 

「フン、中破したゼロのパイロットはあの男だろう? 腕を怪我しているようだが、先の戦闘で不覚をとったらしいな?」

 

 まるで鬼の首をとったかのように睨め付ける。

 もっとも、アークエンジェルのメカニック長?はそんなことで懲りるような男ではなかったようで、ガルシアの視線など気にせず惚けたように目を逸らした。 

 

「……」

 

 協力的ではない態度で臨むクルー達を前では話が進まないと踏んだのか、ガルシアは彼らから標的を別の人間へと変えた。

 視線を巡らし、固唾を飲んでやりとりを見守っていたミリアリアへ近づき、おもむろに少女の腕を掴み上げる。

 

「きゃっ……!?」

 

「まさか女性がパイロットとも思えんが、この艦は艦長も女性ということだしな!」

 

 自分の痛みには耐えられても、他人の、仲間の痛みに耐えることは多くの場合、難しい。

外堀から埋めていく、脅しの常套手段……しかも、階級という権力の傘を纏ってのものだ。

 ガルシアは本気でミリアリアを害するというわけではないだろう。

 少なくとも、今は。

 正規クルー達はそう思った。

 キラも同様の事を感じていた。

 しかし、頭ではそうだとわかっていても、今まさに友人へ手が上げられている……その光景を目の当たりにして自分を抑える事ができるほど大人ではなかった。

 大人の力で掴み上げられ、ミリアリアの顔には苦痛が浮かんでいる。

 持ち前の正義感が、キラの後押しをした。

 

「やめてくださいっ! ガンダムのパイロットはぼくですよ!」

 

 強引に二人の間へ割って入り、少女を掴んでいた腕を振り解く。

そして、ミリアリアを庇いながら頭二つ分ほど高い巨漢を睨んだ。

 

「坊主、彼女を庇い立てしようとする心意気は買うがな。あれは君のようなヒヨッコが扱えるようなモノじゃないだろう? ……ふざけた事をするな!!」

 

 出てきたのが細めの少年ということもあり、ガルシアは完全にキラを侮っていた。

 女の子の前で良い格好をしたいというだけの、ただの無鉄砲なガキだと。

 そんな思い違いをしていた。

 そう、キラは無鉄砲ではあったが“ただの”ガキなのではないのだ。

 蛮行を邪魔された事に腹を立てたのか、ガルシアがいきなりキラに向かって拳を向ける。

 だが、生粋のコーディネイターであるキラにとっては、デスクワークばかりで錆び付いた司令文官殿の拳など児戯に等しいものであった。

 パンチが顔面にヒットする直前であっさりとその腕を掴むと、体格差をものともせずにねじり上げ、バランスを崩したところで巨体を床へ引き倒した。

 

「ぼくは、あなたに殴られる筋合いはないですよ!!」

 

 床に転がり、無様な様を晒す基地司令にキラは冷めぬ怒りの視線を注ぐ。

 

「なんだと!?」

 

 アークエンジェルのクルーのみならず、部下の兵士達にまで醜態を見せてしまったガルシアの顔が、屈辱と怒りによって真っ赤に染まった。

 まさに一触即発。

 しかし、その空気は次の瞬間、消し飛ぶ事になる。

 

キラっ!!

 

 声と共に突如、剣呑な雰囲気の壁を破って一人の少女が食堂へと飛び込んできた。

 ミリアリアが着ているものと同様の地球軍女性服を身に着けた、目の覚めるような美少女だ。

 背丈はキラよりも少し高い。

 女性にとっての長身に入るか、入らないかといったところだろう。

肩口の少し下で切りそろえられたセミロングの髪が、彼女の突進速度によって空を裂く。

 止まっていればたおやかなイメージを受けそうだが、電光のようなスピードで突進する姿は女豹のそれか。

 一瞬だった。

 周りなど目に入らないと言わんばかりに、その少女はキラをガルシアの前から引っ攫うと、少年もろとも突き進み、壁際でようやく止まった。

 

「な、なっ!?!?」

 

 ガルシアのパンチを子供扱いしたキラが、少女の突然の突撃に対し何の反応もできない。

 何が起こったのかわからず、目を白黒させて言葉にならない声を発するキラ。

 ガッチリと少女の両手によって拘束されているため、されるがままだ。

 事態は、キラの意思など関係なく進展していく。

 

「ふかふか、ふかふか〜♪」

 

 いきなり意味不明なことを宣いながら、美少女は容赦なくキラへ抱擁を開始した。

 

「!?????!?!??」

 

 一体何をしているのか……目の前で繰り広げられる摩訶不思議な光景に、場の誰もが固まっていた。

 呆気にとられていたといっていいだろう。

 キラの耳元に少女が唇を寄せると、少年の体はビクンと跳ねるような揺れ方をしたりするのだが、完全密着した二人が何をしているのかはまったくの謎である。

 たっぷりニ十秒ほど密着状態にあった二人だったが、ようやく気が済んだのか、少女はキラを自分の胸の中から解放した。

 

「や〜っと見つけた♪ なかなか見つからなくて心配したよ〜!」

 

「ゆ、ユウさん……なんでここに?」 

 

「もう、今更何言ってるのかな。なゆなゆと一緒に昨日合流したでしょ? そんなことよりも、喧嘩はダメ。ラブ&ピースだよ、キラ♪」

 

 完全に周りを置いてきぼりにして、少女とキラは二人だけの世界を形成している。

 緊張した雰囲気から一点、まったく正反対の空気に様変わりした食堂内。

 主導権を持つ側としての威厳を取り戻すため、ガルシアが謎の美少女に向かった。

 

「……あー、失礼だが君は?」

 

 どう扱って良いのかわからないため、基地司令の口から出たのは当たり障りのないものだったが、少女はキラを抱きしめていた腕を放し、直前までとはうって変わっての真剣な態度でこれに応じる。

 

「申し訳ありません、少将閣下。ヒュッケバイン・カノンのテストパイロットをしております、ユウと申します。彼――キラとはイトコ同士なもので……あまりにもこの子が可愛かったものですから、ついつい暴走してしまいました♪」

 

 もっとも、自前のペースを崩さないのは大物なのか、馬鹿なのかは謎である。

 引きつる顔で、ガルシアは相手のペースに乗せられまいと、話を本題へと持ち込んだ。

 

「そ、それはともかくとして、まさか君があのPTのテストパイロットだと?」

 

 質問に、ユウと名乗った少女は事も無げに言った。

 

「嘘ではありませんよ? それに人型機動兵器の操作なんて簡単です。私とキラは、コーディネイターですから」

 

「な!?」

 

「コーディネイターだって!?」

 

 ユーラシア兵はそれぞれがコーディネイターであるという言葉を聞き、アークエンジェルにおいてナタルが祐一達に示したものと同じような反応を見せたが、腐っても司令官というところか、ガルシアの反応は比較的落ち着いたものだった。

 

「ふっ、なるほど。君らがコーディネイターなら、MSやPTのパイロットだというのも頷ける話だ。東方やオーブではコーディネイターなど珍しくないようだからな」

 

 中年将官の不躾な視線が、少女を舐めるように値踏みする。

 コーディネイターといっても所詮は可愛らしい少女、部下も大勢いるので別に恐れる必要など無い。

 友軍の兵士なのだからなおさらだ、などといった希望的観測でももったのだろう。 

 

「そういうことなら、さっそく君達に協力してもらうことにするが、よろしいかな?」

 

 気をとりなおし、有無を言わせない態度でそう押し切り、ガルシアはキラとユウを連れて食堂を退室していった。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 嵐が去った後の食堂には、嫌な感じではないものの、先程の奇妙な空気が尾を引いているのか、おかしな沈黙が続いていた。

 あまりに急展開すぎて、状況に頭がついていかないとでもいおうか。

 そんな中、食堂の入口に視線を送っていたメンバー達の中で最初に声を発したのはカズイだった。

 

「とりあえず、キラが無事でよかったかなー……なんて、ハハ」

 

「って、違うでしょっ! ちょっと誰なのよ、さっきの女!?」

 

 カズイの見当違いな発言に、何故か敵愾心剥き出しなフレイがツッコミを入れる。

 フレイもまた己の容姿に自信を持つだけに、色々と複雑なようだ。 

 複雑といえば、トールとミリアリアもまた然り。

 

「イトコとか言ってたけど、キラにあんな親戚がいたなんて聞いてないぞ……ていうか、それ以前にあんな人、艦内に居たか? あれだけ可愛けりゃ、忘れるわけないんだけどなァ?」

 

「もう、トールったら鼻の下伸びすぎっ!」

 

「って、絡まれた当事者なのにおまえホント、タフなのな……」 

 

 デレデレする恋人の頬を抓る少女のそれはいつも通りのやりとりなのだが、さっきまで暴力を受けそうになっていた当事者とは思えない切り替えの早さはミリアリアの地か。

 それぞれが三者三様の反応を示す中、サイが思っていた疑問を口にする。

 

「あのヒト、ヒュッケバインのパイロットとか言ってたけど……あのPTのパイロットって、相沢さんじゃなかったっけ?」

 

 その言葉に、一同がハッとなった。

 皆があのユウという少女の言動と容姿にとらわれていたため目が向かなかったが、考えてみれば少女の言っていた事は全てが不自然である。

 キラのこと、ヒュッケバインのこと……本人が連行されてしまったので、確認はできない。

 一体、あの少女は何者なのか?

 本当にキラのイトコなのか、それとも――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「OSのロックは外しました。待機モードへ移行させておきますね」

 

 ヒュッケバイン・カノンのコクピット内にて。

 テキパキと慣れた手つきでコンソールを走る少女の掌を後部シートから覗き込みながら、ガルシアは感嘆のため息をつく。

 

「見事な手際だな。さすが、コーディネイターといったところか」

 

 ユーラシアのエンジニア達が束になっても解除できなかったOSのロックを、事も無げに解いたユウ。

 パイロットなのだから当たり前かもしれないが、もともとPTの機密保持機能は他の兵器に比べ極めて高く、運用可能な小隊員のパーソナルデータ登録が無ければまず起動する事が出来ない。

 それが試作機ともなれば、秘匿性は更に高いものとなる。

 例え起動手順を知っているとはいえ、普通のパイロットでは解説書が必要になるだけの作業量のはず。

 ナチュラルのガルシアにしてみれば、コーディネイターの能力を改めて思い知る出来事だった。

 もっともコーディネイターといっても従順な友軍の、しかも性格こそ個性的だが、見た目は清楚な美少女である。

 恐れはまったくといっていいほど無かった。

 作業を眺めつつ、あわよくば後ろから胸元でも覗いてやろうというセクハラめいた思考のもと、顔を緩ませていたガルシアの耳に、不意にユウの声が飛び込んできた。

 

「……名雪は」

 

「?」

 

「水瀬名雪は、このことを知っているのですか? システム関連の事項を弄るには、彼女の許可がいるんですが……」

 

 困ったような少女の問いをガルシアは鼻で笑った。

 あまりにも、今更な質問だったためだ。

 

「フフ、心配する必要は無い。名雪君は全部快く承諾してくれたよ。同じ地球軍の仲間への技術協力は惜しまないとね。君らが住む東方と違って我々の国に付いているコーディネイターは少ないからな、この来訪は我が軍にとって情報を得る最高の機会さ」

 

 返した答えはただの建前。

 PTのシステム担当者と思しき名雪の協力をとりつけることができなかったから、テストパイロットを必要としたのである。

 そんなことは、質問した当人も余程の馬鹿でなければわかっているはず。

 それでも地球軍の軍人である以上、友軍将官たる自分への直接的な反抗は無い。

少女にできるのはせいぜい遠回しに不満を口にするぐらいの抵抗だろうと、ガルシアはたかを括っていた。

 

「技術協力……では、閣下は名雪がこれを容認したとおっしゃるわけですね?」

 

「そうだ。君は、細かいことを気にせず我々の言うことを聞いてくれればいい」

 

「……」

 

「それに、名雪君はあの水瀬中将の娘という話ではないか。ま、それを抜きにしても君らは貴重な存在だ。……なに、悪いようにはせんよ」

 

 PTを動かせる地球軍のコーディネイター・ユウ。

そして、技術者としての技能を持ちEFA戦術の鍵司令官『水瀬秋子』の娘でもある水瀬名雪の価値は、少女ユウよりも更に高い。

 更に大西洋連邦の新型ガンダムまで、コーディネイターのパイロット付で手に入れた。

 間違いなくお手柄、ホクホクである。

 EFAや大西洋連邦に対し遅れているユーラシアの技術力も、この一件で劇的に向上するに違いない……そんなガルシアの皮算用は、次のユウの台詞で一瞬にして凍り付いた。

 

アイツがそんな許可出すかよ、この嘘つき野郎

 

 

 

 

 

 Kanon:全通常システム正常に稼働中……。

 

 

 OSが正常に起動したことを受け全天周モニターが彩り、コンソールサブモニター上にKanonの文字が躍る。

 白目を剥いて悶絶したガルシアの巨体を担いだ体勢で、ユウは男の土手っ腹に深々と突き刺さった拳を下ろした。

 名雪の事であまりにもフザケた態度を見せたため、ついつい手が出てしまったらしい。

 もう少し時期を見計らって行動を起こすつもりだったが、もはや後の祭りだ。

 とりあえず、頭を切り換えてこれからどうするかと思案しようとしたその時、地響きのような鈍い揺れが機体を襲った。

 

「この振動――まさか?」

 

 カノンが、というよりもアークエンジェルが……いや、アークエンジェルを内包したアルテミス全体が揺れているような感じだ。

 予感めいたものを感じユウが通常周波帯設定のスピーカーをオンにすると、錯綜する基地内の通信が飛び込んできた。

 

『管制室、この振動はなんだっ!?』

 

『不明です! 周辺に敵影無し――いや……ぼ、防御エリア内にMS!!?』

 

『なんだと、ザフトの攻撃かっ!? では、これは爆発の振動……!?』

 

『傘が破られた? そんな馬鹿な!!』

 

 次々に入ってくる驚愕の声。

 そうしている間にも、激しい振動が断続的に続いている。

 

(敵の攻撃かよ。タイミングがいいのか悪いのか)

 

 ザフトから攻撃を受けているという事態は極めて悪いが、柵を脱する上ではまたとない良い機会だった。

 ユウは気絶したガルシアをコクピット外へ放り出し、即座にハッチを閉めた。

 

「が、ガルシア閣下?! キミぃ! 一体どういうつもりだっ!?」

 

 自分達の上官が無碍に抛られた事にユーラシア兵が色めき立つが、コクピットハッチは閉じられユウ自身安全圏にいるので、彼らが外からいくら凄んだところで怖くもなんともない。

 

「触っちゃ駄目って言ったのに、閣下が勝手に計器に触れて、勝手に感電したんです! そんなことよりこの基地、ザフトの攻撃を受けているんでしょう!? こんなことしている場合なんですかっ!!」

 

 スピーカーを通じて外へ伝えられる少女の声が、適当な理由をつけて強引に話を終結させる。

 確保したはずの機体に乗り込まれてしまったことより、基地を攻撃されているという現状を優先と判断したのか、それとも他の要因からか、ユーラシアの兵士達はガルシアの巨体を担ぎデッキを離れアルテミス基地内へと消えていった。

 

(キラは?)

 

 隣に目をやると、ストライクのセンサーアイに光が灯った。

 キラもユウ同様、ストライクのOSを解除するべく連れてこられていたのだが、ガンダムが起動したところをみると、この機に乗じてコントロールを取り戻したようだ。

 それを見届けると、少女は徐ろに軍服を脱ぎ始めた。

 誰も見ていないコクピット内だから、唐突に開放的な気分になったのかというわけではない。

 ストリップを初めてすぐ服の下から露呈したのは女とは思えない、鍛えられた肉体。

 露出部分の少ない服と精巧な胸の張り型に加え、巧妙にコーディネイトされたメークで作り上げられた少女ユウは、かのEFA士官アレックスが目にしたならナンパせずにはいられないほどの美少女だった。

 その正体は一人の少年。

 ユウ……もとい、身体の装飾を全て取り払い、本来の黒いボディスーツ姿に立ち戻った相沢祐一は、改めて全ての計器に目を走らせる。

 エネルギーゲージは最大、機体状態は万全だ。

 吉報が続いた。

 

『こちらアークエンジェル! ヒュッケバインコクピット、聞こえますか?』

 

 スピーカーから飛び込んできたのは、ミリアリアの声だった。

 祐一達と同じように、この機会を利用してブリッジを取り戻したのだろう。 

 元々、アークエンジェル内にいたユーラシア側の人間はそれほど多くはない。

 クルー達が先頭に立って不意をつけば、状況打開は十分に可能だ。

 

「おう! 聞こえるぞ、ハウ」

 

『ええっ!? さっきのヒトの声……でも、あれぇ?』

 

『? 相沢くん、その声……?』

 

 スピーカーの肉声とモニター上の祐一の姿にギャップを感じ、戸惑いをみせるミリアリアとマリュー。

 そこで祐一は自分が少女ユウの声のままで喋っていることに気づいた。

 何処ぞの大泥棒のような七色の声帯とはいかないが、祐一は叔母から貰った高性能変声機を使って普段の声とはまったく違う少女の声を発することができるのだ。

 ただのボイスチェンジャーにしてはやたらと高性能なので軍用か旧時代の品なのだろうが、深く考えたことはないので出所を秋子に尋ねたことはない。

 変声機能をオフにし、返答ついでに気になっていた名雪の行方を尋ねる。 

 

「あー“本日は晴天なり”と――細かいことはNG。青少年の嗜みってことで。名雪のヤツは?」

 

『ここにいるよ。祐一、置いてくなんて酷い。心配したんだよ?』 

 

 マリューがブリッジに戻っていた事からそこにいるだろうとは思っていた祐一だが、すぐにちょっと怒ったような名雪のいつも通りのポヤポヤした顔がモニターに映ったことで心底安心したことは尾首にも出さず、ため息を付ながら言った。

 

「……ま、こっちは心配なんかしちゃいないけどな。キラ、そっちはどうだ?」

 

「今、バックパックの装着が終わりました。いつでもいけます……!」

 

 ガントリークレーンが下がり、キラの言葉通りストライクがバックパックユニットを装着し終える。

 キラが選んだのは“エールストライカー”。

 背面に備わった四基のバーニアスラスターによって空間内の高い機動性を可能とする、ストライクガンダムの高機動仕様だ。

 ストライクには巨大な対艦刀を備えた“ソードストライカー”、強力なビーム砲を備えた“ランチャーストライカー”と換装可能なユニットが他に二つ存在するのだが、これまでの戦闘で全てを使用してみた結果、キラはエールストライカーが一番バランスの取れた仕様と判断し今回これを選択したのである。

 

「聞いての通り、おれとキラはいつでも行けるぞ?」

 

 祐一達の声を受け、ブリッジもまた動き出した。

 

『基地を揺るがす振動は恐らくザフトの攻撃でしょう。なら、この機に乗じ脱出するのが現状において最善の策と思われます』

 

『同感だな。火事場に居座ると馬鹿をみるぜ』

 

 状況分析を行なうナタルといつもの調子のムウに、艦長としてマリューが決定を下す。

 

『――脱出の際、ザフト側からの攻撃が予想されるわ。初動で振り切れればそれにこしたことはないけれど、そう上手くいくとも思えない』

 

 言われるまでもなくキラも祐一も、状況は察している。

 アークエンジェルにまでアルテミスの振動が響いてきているのだ。

 敵の攻撃に基地がどの程度耐えられるのかは予測できない。

 アークエンジェルのとるべき行動はこの場所からの離脱。

そして祐一達のとるべき行動は脱出の後、攻撃を加えてくる敵を倒し艦を守ること以外に無い。

 

「了解、外はおれ達に任せてくれ。……ぐずぐずしていると、逃げ遅れそうだからな」

 

『二人ともよろしくね。あなた達が頼りよ!』

 

 一旦言葉を切り、続けて発せられたマリューの声がブリッジに響く。

 

アークエンジェル、発進します!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザフトの攻撃によって崩壊しつつあったアルテミスを、辛くも脱出したアークエンジェル。

 だが、退路に網を張っていた捕食者達が惨劇に乗じての離脱者の存在を見逃すことはなかった。

 アークエンジェルの広域センサーが接近する複数の艦影を捉えた直後、祐一とキラはそれぞれの機体を駆り宇宙空間へと躍り出たのだが――。

 三機や四機ではない。

 二十を優に超えるMSが、二機を完全に包囲していた。

 

「……こりゃ、凄い」

 

 ここ数日、様々な災難に見舞われて感覚がマヒしたかと思っていた祐一だったが、それすら上回る酷い現実に驚きを通り越して呆れてしまった。

 戦闘地帯に迷い込んだ境遇を半ば受け入れていたので、実戦に見舞われるのもしょうがないと諦めていたが、いくらんでもこれはないだろう。

 

「この数……何機いるんだ?」

 

 キラが弱々しく呻くのも無理はない。

 レーダー上には、ジンにシグーといったザフトMSの存在を示す夥しい数の光点が映っている。

 あまりの数に戸惑い数を数えるのも忘れているのかもしれないな、などと思いつつ慌てても仕方がないので祐一はキッパリと僚友の疑問に答えた。

 

「ざっと三十強、約一個大隊分ってところか。かなりの数だな」

 

「そ、そんなに? こんなの、どうにもできませんよ!!」

 

 キラのそれは真っ当な反応だ。

 一般人であろうが、軍人だろうがたった二機で約四十もの敵を前に驚くなというのが無理な話である。

 ましてやキラはつい数日前に初めてMSを動かしたばかりのルーキー、いやそれ以前に民間人なのだから、実戦こそ無いもののリアルなシミュレーター訓練を繰り返し行なっていた祐一よりも、この現状は酷だろう。

 だが、だからといって悲観にくれればどうにかなるほど目の前の現実は甘くない。

 

「どうにもできない、か。おまえ、できないなら何もしないで死ぬのを待つのか?」

 

「それは……」

 

「言い方が悪くてごめんな。けど、現実的に見ておれ達がやらなけりゃ、そこで終いだろ?」

 

「……」

 

「アークエンジェルだって沈む。名雪も、アーガイル達も全員終わりだ。違うか?」

 

「……違いません」 

 

「難しく考えるなよ。ようは、おれ達が奴らを全部おとせばいいだけなんだ」 

 

「そんな簡単に――」

 

 相棒が飄々と言ってのけた事に色めき立つキラだが、その言葉を遮り祐一は不思議そうな声を被せた。

 

「簡単なことを、簡単て言ったら悪いのか?」

 

「え?」

 

 驚くキラへ畳みかけるように平然と続ける祐一。

 

「シグーとジンの混成部隊・撃墜レコード四十六機。シチュエーションは通常空間戦闘、量産型ゲシュペンスト搭乗」

 

「……? なんです、それ?」

 

「大多数の敵を相手どる難易度3Aランクのミッション。おれの持っている記録だ」

 

「!?」

 

「所詮、シミュレーターと言われればそれまでだけどな。今乗っている機体はゲシュより高性能なヒュッケだから、一人でもあの数をやるのは不可能じゃないとおれは自負してる。そこでキラ、お前の協力があればただの『やれる』に『確実に』が加わると思うんだが」

 

 いかにも嘘のような内容だったが堂々としている分、事の真偽はキラにはわからない。

 実際はかなりの誇張を含んだ内容である。

 似たようなシチュエーションでシミュレーター訓練を行なったことはあるが、その時のレコードは十七機。

 約四十機を相手取る状況など冗談ではない、本来なら勝つのはまず無理だ。

 だが、それでも祐一まで悲観していては話はそこで終わり。

 戦闘を行なう前に祐一がしなければならないのは、状況を悲観するキラにやる気を出させることなのだ。 

 

「……」

 

 まだ戸惑いをみせるキラにやれやれと肩を竦めながら、もったえつけるように祐一は言った。

 

「それでも不安なら、とっておきの秘策を教えてやろうか?」

 

「とっておきの、秘策?」

 

「秘策――そう、それはイマジネーションの応用編、発想の……逆転だ」

 

 出し惜しみするような内容ではない、あまりにもアレな内容に思わす絶句するキラ。 

 

「は、発想の……逆転? 応用編ということはまさか、基礎編が!?」

 

 色々とその意味を考えながら言葉を絞り出すところは優等生……いや、見当違いな部分を指摘してくれるところは、単に素直な少年といったところか。

 

「逆境でも、発想を逆転させれば気分的に楽になる可能性もあるってことさ。親の受け売りだけどな」

 

 逆境においての考え方というものを、祐一は母に訓練を通じて叩き込まれてきた。

 “できない”と思っていたら“できるものもできない”、まずは“できる”と考えろ、それでもできないと思う時こそ“発想を逆転させろ”と。

 だが――。

 

(滑稽だよな、おれは)

 

 己ができないことを押しつけようとしている現実に、苦笑が浮かぶ。

 母からの受け売りをキラに言い聞かせながらも、その考え方をできない自分。

昨年、この考え方を根本的に変えるような出来事があってから、何処か実力を全部発揮できないでいることに苛立ちを感じずにはいられない。

そんな祐一の内面とは裏腹に、キラはまるで自分に言い聞かせるように答えた。

 

「……軍人じゃないぼくには、ユウさんみたいな自信は無いですよ。けど……やらなきゃ、みんなが危ないのはわかっています」

 

「難しく考えるな。おれが突っ込んで連中を引きつける的になるから、その時に裏から援護してくれればいい。お互い、組むのは初めてなんだ。巧くやろうと思うことも無い。無理なんかするな、死んだらつまらないからな」 

 

「わかりました。それと……ありがとうございます」

 

「? おかしな奴だな。どうせなら、礼は助かってからにしてくれ」

 

 自然と苦笑する祐一。

 礼を言われる理由に心当たりは無いが、キラがやる気になってくれたので結果オーライといったところだろう。

 和んだ雰囲気はそこまでだった。

 恐ろしい数の敵の第一波を、間もなくカノンとストライクの射程内に捉えるからだ。 

 

「そろそろ来るな。後ろは任せるぞ、キラ!」 

 

「はい! よろしくお願いします、ユウさん!」

 

 祐一の気概に対し、キラもまた己の気概を乗せ力強く答えた。

 迫る戦いの刻に、自然とレイカーを握る手に力が入る。 

 包囲殲滅陣形をとって接近する敵MS相手に応えられるものは、ライフルの銃口のみ。

 祐一達が生き残るには、向かってくる敵を全て倒す以外に無いのだ。

 

 

  戦闘開始(フェイズ・スタート)――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルテミスは陥落した。

 攻撃射程外に離脱したザフト部隊にもう安全だと基地側が光波防御帯を消したところを見計らって、ミラージュコロイドによる隠密性を最大限に利用したニコルのブリッツが接近、まず光波シールド発生装置を根刮ぎ破壊した。

 続いて、クルーゼ隊の二艦(ガモフ、ヴェサリウス)を含むザフト軍三部隊が無力化した要塞へと波状攻撃を開始。

 光波防御帯を過信しすぎたのか基地自体の対空防御機能はほぼ皆無、出撃してきたメビウスはMSの敵ではなく瞬く間に全滅、攻撃開始から半刻あまりの間で鉄壁を誇ったアルテミスは大輪の華を咲かせ宇宙に散ったのである。

 軍事要塞の攻略戦にしてはあまりに呆気ない幕切れだった。

 もっとも、ザフト側にしてみればアルテミス攻略自体はオマケだ。

 本命は、まんまとこの総攻撃に乗じて基地を脱出した新造艦“足つき”。

 それも、予測脱出径路上に予め待機していた味方部隊が網を張っており、アルテミス攻略をそこそこに追撃戦へと移ったクルーゼ隊も加わって目標補足は時間の問題といえるだろう。 

 

「傘の中に逃げ込まれた時はどうなることかと思いましたが、これで足つきも袋のネズミですな」

 

 ヴェサリウスのブリッジにて。

作戦が順調に進んでいることへの安心感から、アデスの口からそんな言葉が漏れた。

 足つき攻撃には既に四部隊があたっており、追撃をしているクルーゼ隊を加えるとMS保有数は四十を上回る。

 そこには当然のようにヘリオポリスで奪取したXナンバーの四機も含まれている。

 敵が新造艦で強力な機動兵器を二機保有していようと、この圧倒的な数を前には無力となる以外に無いはず。

 だが、艦長のそんな気分に関係なく、ラウはまるで何かに反応したように顔を上げ呟いた。

 

「……どうやら厄介な魚が一匹、紛れ込んでいるようだぞ」

 

「は……?」

 

「アデス、アスラン達を呼び戻せ。ガモフにも撤退準備を急がせろ。今すぐにだ」

 

 それは撤退命令に他ならない。

 目標を前に撤退しろなどと言い出した部隊長に、アデスは戸惑いを隠せなかった。

 意味がわからない。

 この圧倒的有利な状況下で、一体何の憂いがあるというのか。

 

「隊長、おっしゃる意味がよくわかりませんが……一体、何故――」 

 

「? 変だな……」

 

 言葉の真意を尋ねようとアデスが口を開いたその時、情報処理を担当していたクルーの一人が訝しげな声を発した。

 

「どうした?」

 

「いえ……強い電波障害が出ていて、他の艦と連絡がとれないんです。Nジャマーを使用している船は無いはずなんですが」

 

 Nジャマーは核分裂や融合反応を阻害するだけではなく、レーダーやセンサーなど精密機器の電波伝達機能をも阻害するECM効果も備わっている。

 ザフト艦にはNジャマーが搭載されており、これを使用して作戦を執り行うこともあるのだが、今回の作戦に限ってはNジャマーを使用するという話は無いはずだった。

 

「要塞崩壊の影響からくるものじゃないのか?」

 

「磁場の影響範囲からは外れていますし、そんなことはありえませんよ。……!?」

 

 電波障害の原因を究明するためデータを漁っていたクルーの目が、コンソール上のある数値のところで止まる。

 そして、その数値の意味に辿り着いたとき、彼は叫ぶように報告した。

 

「この反応、ミノフスキー粒子!? アデス艦長! この宙域一帯に、ミノフスキー粒子が散布されています!!」

 

「なんだと!?」

 

 ミノフスキー粒子とは、静止質量がほぼゼロで正か負かの電荷を持つ粒子で、この粒子は目に見えないフィールドを形成するが、フィールド内を伝播しようとする電磁波のうち、マイクロ波から超長波動にかけての波長域は減退が著しくなる一方で集積回路に誤作動、機能障害を生じさせる性質がある。

 NジャマーのECM効果と同様の効果を発揮する粒子だが、宇宙環境への配慮としてザフトではNジャマーが主となっており、メガ粒子ビームの収束に使用されているのみで、現在ミノフスキー粒子を戦術散布可能な艦艇は存在しない。 

 

「すでに戦闘濃度のところをみると広域散布完了済か。網を張られたのか、それとも――いずれにしろ、遅かったようだ」

 

 何かを確信し言葉を紡ぐラウは、すぐさま指示を飛ばした。

 

「信号弾の使用は要らぬ混乱を招くな。仕方がない、私が行って連れ戻してくるとしよう。アデス、ここは任せるぞ」

 

 自己完結しブリッジを後にするラウの背を見送り、アデスはまるで狐に摘まれたような気分に陥っていた。

 

「一体、何が起こっている?」

 

 そう呟いた時だった。

レーダー履歴に何気なく見た彼の目に、思わぬものが飛び込んできたのは。

 レーダー不全状態で偶発的にキャッチされた、見慣れない反応。

 味方艦のものでも、足つきのものでもないそれの意味に突き当たり、言葉を失う。

 

「これはアイリッシュ級? ま、まさかマーメイド隊……!!?」

 

 旧時代の技術を使い建造されたアイリッシュ級宇宙巡洋艦で現存するのは、ただ一隻のみ。

 絞り出し、アデスの口から漏れたのは地球連合軍EFA“戦術の鍵”の部隊名。

 人魚の名を持つ悪名高いその部隊を、ブリッジにいる誰もが知っていた。

 

 軍属の者で、αナンバーズに参加したアイリッシュ級……不沈艦“マーメイド”の名を知らない者などいないのだ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第七話「アルテミス崩壊」

終了後のイベント達成及びデータ登録確認

 

 

 

 

 

 

 

 第七話の主な戦闘の流れ

 

 

 <戦闘開始>

 

 

 デュエル、バスター、イージス、ブリッツ、ガモフ、ヴェサリウス

 シグーDA、シグー×12、ジンHM×4、ジン×24、ローラシア級×5出現

 

 メビウス(リニアガン)×30参戦

 

 交戦開始イベント、アルテミス崩壊イベント

 

 ジン×2撃破 

 

メビウス隊全滅

 

エールストライク、ヒュッケバイン・カノン、アークエンジェル参戦

 

ヒュッケバイン・カノン、ジンに対し“フォトンライフル”で攻撃

 

エールストライク、ジンに対し“ビームライフル”で援護攻撃

 

 ヒュッケバイン・カノン、ジンに対し“SFシューター”で攻撃

 

 エールストライク、シグーに対し“ビームライフル連射”で攻撃

 

 ジン×2、シグー撃破

 

ミノフスキー粒子広域散布イベント

 

マーメイド、Mk―X、Ex―S・SORA、ZプラスC1出現

 

ザフト軍、優先攻撃目標をマーメイド、Mk―X、Ex―S・SORA、ZプラスC1カスタムへ変更

 

シグー(クルーゼ)参戦 

 

 

<戦闘を中断>

 

 

 

 祐一&キラ 1+1=2:現在フラグ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Gαスーパーロボット大図鑑に

 

 シグー・ディープアームズ ジン・ハイマニューバー メビウス

 Ex―SガンダムSORA ガンダムMk―X(カスタム) ZプラスC1(カスタム)

 

 を追加予定。

 

 

 Gα登場人物図鑑に

 

 ジェラード・ガルシア アデス ジャッキー・トノムラ コジロー・マードック アーノルド・ノイマン

 ダリダ・ローラ・チャンドラ2世  ロメロ・パル サイ・アーガイル  フレイ・アルスター

 トール・ケーニヒ  カズイ・バスカーク  ユウ

 

 を追加予定。

 

 

 Gα用語図鑑に

 

 ユウ  水瀬中将  ミノフスキー粒子  マーメイド隊 

 

 を追加予定。