スーパーロボット大戦
Generation α
今日はたぶん、これまでの短い人生で二番目の激厄日だ。
NMの手記より、大事な家族Yの本日の一言を抜粋
第五話「G」
―All enemies were GUNDAM.―
“一難去ってまた一難”とはよく言ったものだ。
不条理、理不尽。
この世界に生を受けて十七年、世の中そんなものだとわかりきっていたことだったが、頭でわかっていても納得できるかというとそういうものでもない。
前にはビームライフルを構えたガンダム“デュエル”。
後ろには二丁ライフルのガンダム“バスター”。
双方が互いの射線に入らぬようにしながら、祐一達の乗るカノンを追いつめようとしていた。
殺る気満々な気概が、装甲越しにビリビリと伝わってくる
「問答無用って……そりゃないぞ! おい、撃つなっ! 戦う気は無い!」
祐一の必死の叫びも、今のところコクピットの狭い空間に虚しく響くだけだった。
聞こえているのか、いないのか。
いや、返答がないことから聞こえていないのだろうが、そもそも設定中の通常周波数からいって違う可能性もあるので、まさに馬の耳に念仏状態である。
「祐一ダメだよ、全然聞こえてないみたい。ひょっとしたら作戦中とかで、無線封鎖が徹底されてるのかも……」
「そんな馬鹿な話があるかっ! ただ殺されるなんて御免だぞ!」
至極当然な事項を示唆する名雪の言葉は、ままならない現状を再認識するのに十分なものであった。
MSに乗っているのは言葉を話す人間。
だが意思が伝わらないのであれば、人語を解さない猛獣を前にしているのも同じだろう。
ビームを回避するにも限界がある。
このままでは嬲り殺しだ。
「撃つなって言ってるだろうがっ!! 本当に聞こえないのか!? こっちは戦いたくないんだ!!」
根気よく呼びかけを続けるが、その反面、祐一の胸の内からは沸々と怒りが沸き上がってきていた。
鋼鉄の装甲を一瞬で溶かす粒子エネルギーの奔流が、カノンの至近距離を次々に掠め虚空へと消えていく。
自分達に、何の弁解も許さずただ一方的に攻撃を加え続ける二機のガンダム。
敵と認識したにしても、相手が無抵抗な様を少しも変に思わないのか?
それとも“死なばもろとも”か――。
その時、唐突に状況が動いた。
バスターの放った何発目かのビームを避けた瞬間、間隙を突いてサーベルを引き抜いたデュエルが左側方から突進してきたのだ。
今までのビーム攻撃やバスターの援護射撃は伏線。
これが本命の攻撃なのだと理解するも、祐一は内心で失笑を禁じ得なかった。
一方が敵を追い込み、本命が近接戦でトドメを刺す……戦闘教本にも載っていそうな、セオリー通りの連携。
だが、本命を隠すための伏線となる射撃がまるで足りず、更に付け加えるならば、本命の接近時の軌道も素直で読みやすい。
これで自分達をオトそうなどと、考えが甘すぎる。
それ以前に、くらえば死に繋がる攻撃をみすみす受けてやる義理など無かった。
振り上げられるビームサーベルの光刃。
動かなければ斬撃をまともに受ける位置から、自ら相手の間合いに飛び込み、サーベルを振り下ろしたデュエルの側面を横切るように通過する。
「いい加減にしろよ……戦わないっつってるのがわからないのかっ!?」
ズガァッ……!!!!!
ぎりぎりまで引き寄せての回避の後、祐一はフットペダルを勢い良く踏み込み、そのままの勢いでカノンの脚部下に通り過ぎたガンダムの肩口へ、強烈な蹴りを見舞う。
「ナチュラルごときが、俺を足蹴にしたぁっ!?」
無抵抗な敵からの突然の反撃にイザークが驚愕の声を上げたが、ダメージは無いに等しかったようで、デュエルはすぐに体勢を立て直した。
スラスターによる加重もあり衝撃はかなりのものだったはずだが、即座に乱れた軌道を定位置へ戻したところをみると、伊達に赤を着ているというわけではないらしい。
もっとも、そんなことなど今の祐一にはまったく関係なかったが。
彼は、憤慨していた。
自分達の街を守るために正体不明の金属体と戦闘し、気が付けばそこは宇宙空間。
そして、心細くなりかけたところにやってきたMSは救いの神などではなく、新たな災厄……救助されるかもしれないという淡い期待は当惑に変わり、いつしか怒りへと昇華した。
カノンに乗っていたのが祐一だけならば、彼の怒りはこれほどまで大きいものにならなかったかもしれない。
怒りの要因は搭乗者にあった。
後部席に座るいとこの少女、水瀬名雪。
同居人である前に、祐一にとって彼女は大切な“家族”なのだ。
不在がちな叔母の秋子に娘を任されている、という事は数ある守るべき理由の一つでしかない。
“友人”そして“家族”。
これを本当の意味で貶めることは、今や彼にとっての最大の禁忌。
これをタブーと位置づけているのは、過去に喪失を知ることによって惰弱化した心を守るための本能。
対峙するガンダム達は、ただ一方的に祐一から奪おうとしているのだ。
彼の、そして名雪の命を。
当然、そんなことなどやらせはしない。
今使える最大限の力で敵対者達を退けてやる、祐一はそう決意した。
「人が下手に出てりゃ、つけ上がりやがって! そっちがその気ならやってやる! 名雪、サポート頼むぞ!」
「了承、だよ! 今度は任せて……!」
祐一の声に頷き、名雪がデータリンク・バイザーを頭に着けサポート体勢を取る。
同時に、祐一もまた武装選択をフォトンライフルに決定し、カノンを戦闘態勢へと移行させた。
OSの管理は名雪に任せて、祐一自身は戦闘だけに集中する……設定機体こそ違ったが、彼らにとってはシミュレーターで何度も経験してきたシチュエーションである。
違和感は無かった。
初動は迅速、かつ正確に行なわなければならない。
僅かでも相手に油断があるならそれにつけ込む。
ただでさえ、複数を相手にするのだ。
利用できるものは全て利用しなければ、生き残れない。
幸いなことに、カノンの機動力は今なお攻撃を続ける二機のガンダムよりも高いようだ。
利点を存分に利用しつつ、実戦とシミュレーターでの感覚の格差を埋めていように、宙域を舞い飛ぶ白いヒュッケバイン。
敵はバスターとデュエルだけと言わず、いつ襲ってくるかわからない正体不明のMAにも食指を動かし、離脱しようとさえ見えるMAと灰色のMSへ機体を向かわせ、容赦なくフォトンライフルの光弾を背後から浴びせかける。
無論、これに黙っているようなアスランではない。
回避行動を的確に行なうため、イージスはやむなくストライクを手放した。
「キラっ!? ……ええいっ!!」
先程の祐一達と同じような心境で、いきなり攻撃を加えてきた白いヒュッケバインに舌打ちする。
とりあえず、墜とせるものから墜とすという目論見が見え見えの、無差別攻撃。
ストライクは既に全てのエネルギーを失っており、更にイージスの鉤爪から逃れようと暴れた影響で推進剤までも底をついたらしく、完全に無抵抗な状態だ。
今、自暴自棄になったこのPTがストライクを敵として狙ったらどうなるか、想像に難くない。
アスランは、MA形態を解き通常戦闘態勢をとるため、MSへと形状変更を行なった。
キラを守るために。
「可変型MS? こいつもガンダムなのか!?」
MAだと思っていたものがいきなりMSへと変形したことに、祐一は気が重くなった。
デュエルよりも大経口のビームライフルを持つ、見るからにヤバ気な紅の機体“イージス”。
攻撃に参加していない敵から討つなどと、都合が良すぎたかもしれない。
完全に藪蛇だったが、後の祭りだ。
(というか、ガンダムが四機……この状況、鬼だな)
カーキーに、青白に、紅に、灰色。
多勢に無勢もさることながら、全てがガンダムタイプである。
ガンダムだからといって必ず高性能だというわけではないだろうが、少なくともザフトの量産型MSジンよりは高い性能だろう。
イージスが加わり、カノンへの攻撃は一層激しくなりつつあった。
そんな中、祐一は先程から攻撃に一切参加しない機体があることに気づき、眉を潜める。
(? なんだ……あの機体、戦う気が無いのか)
灰色の機体、ストライク。
祐一は当然、そのMSが他の三機より自分寄りの立場にあり、エネルギーを使い果たしたディアクテブモード下にあるという事を知らない。
深く考えず、自分の都合良くラッキーだと受け取り、おかしな動きがあったら対応するということで、とりあえずは放置する方向で決定する。
動かないというのがブラフである可能性は無視。
敵対行動をとったら、その時に考えればいい……実に場当たり的な考えで、ひたすら防御に徹する。
虚空を焦がすビームの雨は、端から見ると完全にイジメだ。
三機から狙われているので、何らかのきっかけを見出すまで気をやる対象は少ない方がいい。
防御に徹すると言っても、祐一にとってこの行動は勝機を見つけるために必要不可欠なものである。
その一環として、まずは敵を知ることに重点を置く。
回避に手一杯なのは確かだったが、彼にはまだ相手を観察する余裕があった。
三機の動き、攻撃モーションに特性。
落ち着いて見てみると、色々なことが見えてくる。
デュエルが遠方からビーム発射に紛れてグレネードランチャーを発射した時、感じていたことが思わず口から零れ出る。
「こっちと同じで連中、機体に慣れていないのか?」
レイカーを動かし、余裕をもって直撃弾をかわす祐一。
グレネード弾は直撃すればタメージは大きいが、射速が遅いため見切りやすい。
障害物を利用したり、中距離から近距離に移るあたりで他の武器と織り交ぜれば効果を挙げられるだろうが、祐一にしてみれば今のは 特性を生かした攻撃を行なっているとは思えない、無謀な攻撃に映った。
当たるわけがない、ハッキリ言って弾の無駄。
大体、どちらかと言えばデュエルは射撃戦よりも、軽量を生かした近距離でのサーベルの斬り合いの方が得意なように見える。
それはあくまで祐一の個人的な視点での考えだったが、デュエルのパイロットが機体の特性を生かし切れていないように映った。
祐一自身、自分達の乗る機体を十分に把握していないので、相手も同じなのかと思ったのだ。
「もしくは、OSの調整が不十分なのか。理由はともかく、これなら付け入る隙は十分あると思うよ」
祐一の言葉に補足を加えるかのように、名雪が違う可能性を示唆した。
二人の推察はある意味、的を射ていたといえる。
戦闘を行なっているガンダムタイプは、どれもが今日強奪したばかりの機体であり、全員が乗機に慣れているとは到底言えるものではなかった(それでも、ほとんどそんなことを感じさせずに戦闘行動を行えるのは、アスラン達クルーゼ隊の実力が高いということだろう)。
また、同じ理由からOSも戦闘に支障がない程度の調整しかできていないのが現状だった。
祐一のシミュレーターでの戦闘経験は、水瀬家に移ってから現在までの間で優に千回を越える。
シミュレーターといっても、アミューズメントパーク等にある娯楽筐体などとは訳が違う完全軍用のそれは、環境に付随するものの柔なナチュラルが普通に使用しようものなら、大怪我をしてもおかしくはない本格的なものである。
幸い、幼い頃から母親に「護身用の訓練」だの「男は体力が資本」と言われ鬼のシゴキを受けてきたのだが、そのかいもあり彼はノーマルスーツ無しでシミュレーターをこなせる基礎体力ができていた。
実戦経験は確かに今日が初めて。
しかし、シミュレーターは下手なパイロット候補生等より確実に下積みが上である。
回避行動は無駄ではない、空間戦闘を肌で感じ取るための重要なプロセス。
祐一が持つ特性の一つ“高い適応能力”によって、シミュレーション戦闘と実戦の差違はゆっくりと埋まりつつある。
楽観視する名雪の目算ほどではないが、技量や機体性能に決定的な差が無い限り、複数の敵を相手取っても戦闘を五分以上にやれる自信があった。
そして、祐一の自信を更に揺るぎないものにするのが名雪のOSサポートだ。
「シミュレーター及び現状況下を対比、軌道慣性モニュメント仮適合値再設定、運動ルーチン接続、姿勢制御バーニア5〜9出力再最適化完了、伝達関数、射撃用サーチレーザーXプラス14、Yマイナス4修正、照準誤差パイロット許容範囲内と推定、ロックオン時のライフル命中率46.45から54.76へ上昇――」
少女の口から、まるで寝言のようにぶつぶつと漏れる呟き。
バイザーとコンソール、サブモニター上のカノン及びパートナーである祐一の操縦、周囲空間の一次情報を瞬時に知覚しながら、必要な推察と計算を済ませつつ、キー操作と網膜選択を駆使し次々にプログラムを書き換えていく。
既にOSの最適化は終えているものの、名雪の組んだそれはあくまで水瀬家のシミュレーターで作り上げたデータを参考にされているため、やはり現実との差は少なからず存在する。
彼女もまた祐一同様に、シミュレーションと現実の差を埋めるための努力を惜しまない。
より確実な行動、より正確な照準、より精度の高い制御を。
二人の苦心が実を結び、最初はどことなくぎこちなかったカノンの動きが目に見えて滑らかに、確実なものとなっていった。
「そろそろ、いくか」
攻撃を加えてもまったく何の反応も示さない敵に業を煮やしたのか、デュエルがビームサーベルを引き抜き何度目かの突進を仕掛けてきたのを見計らい、フォトンライフルを一発放つ。
見え見えの攻撃を難なくかわし、防御側となる左方向から距離を詰めてくるデュエル。
二機の距離が近づいたため、バスターとイージスからの援護が途切れた。
祐一の狙い通りに。
PTの接近戦用攻撃端末は通常右マニピュレーター側に備わっているため、カウンターを警戒する目的で左から攻撃を加えるのは理に適っている。
攻撃端末の展開もなく、フォトンライフルの二射目も間合いから外していた。
「もらったあぁぁっ!!!!!」
呆然と、動かない敵を前にイザークは勝利を確信していた。
だが次の瞬間、デュエルの放った必殺の横薙ぎは見事に空振り、虚しく宙を焦がしただけに終わる。
「なにぃ!!?」
いない。
今、一瞬前まで確かに存在したはずの白いPTが忽然とその姿を消していた……少なくともイザークはそう認識した。
実際に彼がカノンを見失ったのは、ほんの一瞬。
一秒にも満たない僅かな間だった。
が、祐一にとってみれば時間はそれだけあれば十分。
的確なバーニアコントロールでデュエルの下方へ滑り込むように斬撃を回避し、背後に回ったところでカノンを反転させる。
イザークがデュエルの近距離センサーを目視していたならば、二機のラインがギリギリのところでクロスするところを見ることができたかもしれなかったが、彼がセンサーを見たのは敵の攻撃に対する警戒アラームがなった直後。
危険を察知した彼は背後に廻った敵に対応するため、慌ててデュエルを旋回させた。
そんなイザークの目に映ったのは逆さ向きの白いPTと、近距離から自分へ向けられるフォトンライフルの銃口だった。
今までのカノンの回避行動は、バーニア出力の後半三割を意図的に封印してのもの。
思い込みは危険だが、百戦錬磨の古参兵ならまだしも大抵の場合、得ていた情報の変化に対応するのは難しい。
最後の瞬間の回避運動は全開モード。
情報の変化に対応しきれず、並のパイロットではまず反応できない。
普通に回避するならば、ここまで引き付ける必要などない。
全てはこの一瞬のため。
他の二機と違い、積極的に攻撃を仕掛けてくるデュエルを確実に仕留めるための伏線であった。
近接攻撃は敵からの反撃のリスクが大きいため、敢えてライフルを使用する。
この距離ならば、九割九分外さない。
「迂闊なヤツ。いただきだ――そこっ!」
祐一がトリガーを絞ると、フォトンライフルの銃口から圧縮光子の塊が飛び出す。
ビームより遅く実弾より速い光の弾が、デュエルの右胸部近くをモロに直撃し――。
バシィッ……!!!!!!
着弾の衝撃で大きく仰け反るガンダム。
だが、それだけだった。
「? …………ちょっとまて、今当たったはずだぞっ!?」
敵機の爆散する様を想像していた祐一は、百八十度異なる展開に驚きを隠せなかった。
MSやPTは頑強なスーパーロボットと違い、特殊な防御機構でも持たない限り、ビームや実弾を受ければ大なり小なりダメージを受ける。
直撃となれば、行動不能に陥ってもおかしくはないはずなのだが、光弾を本体に受けたはずのデュエルには、中破どころか傷一つ無い。
手を抜かず、続けざまにライフルを連射し更に数発直撃させるも、結果は同じだった。
心当たりがあったのか、デュエルをモニターで分析していた名雪がおずおずと口を開いた。
「アナライザーに相転移の兆候が出てる。……ひょっとしたら、PS装甲が使われてるのかも」
「フェイズシフト?」
「うん。一定のエネルギーと引き換えに面へ掛かる物理的な力に対して、金属面に絶大な応力を持たせる技術だよ。EFAでも研究されてたから、わたしも知ってるんだけどね。実用化されてるなんて驚きだけど、本当にPS装甲だとしたら並の物理衝撃は一切受け付けないと思う……」
聞き慣れない言葉の意味をスラスラと述べる名雪に、普段のボケボケした様子は見受けられない。
言っている意味は祐一にもわかるのだが、一つ腑に落ちない点があった。
「物理って、フォトンライフルは光学兵器じゃないのか!?」
「破壊へのアプローチの違い、かな。普通のフォトンライフルは確かにそうだけど、この子のは熱エネルギータイプの光弾じゃなくて、圧縮光子が壊れる時に発生する衝撃エネルギーでダメージを与えるフォトン・インパクトタイプみたいだから、熱エネルギーとしての干渉がほとんど無くて、装甲金属面に展開してる位相面に干渉できないみたい」
ネコミミメイド少女は回答に際し「普通のと違ってエネルギーコストは半分なんだよ〜」などと付け加えてくれたが、フォローになっていない事にはたして気づいたのかどうか。
とりあえず、“敵MSに対してフォトンライフルが通じない”という由々しき事実が浮上したのは確かだ。
「……なんか、今日はそんなのばっかりだぞ」
初の実戦となった謎の金属体ゼラバイアとの戦闘では、妙なフィールドによってほとんどの武装を封じられた。
そしてまた、敵の頑強な装甲で武器が制限される事態である。
「お互い、厄日だよね」
力無く笑う名雪に祐一もまた心底同感だった。
もっとも、めげるわけにはいかない。
諦めたらそこで全てが終わる。
「厄日も厄日。今日はたぶん、これまでの短い人生で二番目の激厄日だ……!!」
やりきれなさを掻き消すように、大声を張り上げレイカーを握りしめる祐一。
勝機は一気に遠のいたが退路がない以上、彼らには戦い続けるしか道はないのだ。
(この俺が何度も直撃を……!!)
いいように攻撃を受け、イザークの高い自尊心は一瞬にしてズタズタにされた。
フォトンライフルの光弾を、デュエルは既に四発も食らっている。
どれもが本体への直撃、ビームならば致命傷は免れない。
光学兵器かと思ったそれは運の良いことに物理的な衝撃として機体に作用してきたため、PS装甲を有するデュエルには通じなかった。
強奪したXナンバーであるGの特性、PS装甲が無ければ間違いなく彼はこの世にいなかっただろう。
それは、たまたま運が良かっただけだ。
仮に搭乗機がジンやシグーであったとしたら、イザークはこの戦闘で四回死んでいる。
納得できなかった。
三機で掛かっているにも関わらず、一向に仕留められない敵。
従来のIMPCを用いたシステムは『小悪魔の囁き』によって、現在使用できない状態にある。
その替わりとして二足歩行兵器に新たに取り入れられたOSは新基軸の複雑なものであり、操縦にはマニュアル操作を素で行なえるだけの……早い話がコーディネイター並の操作能力が要求されるのだ。
強奪した四機のOSから判断するに、ナチュラル用として組まれたOSは未だ発展途上にあるお粗末な代物だった。
だが、彼らが目の前にしている白いヒュッケバインの動きはそんなOSによって統御されているとは到底思えない繊細なもの。
例え、EFAがナチュラル用のOSの開発に成功していたとしても、ここまで正確無比な戦闘行動がとれるとは思えない。
「こいつ、動きがいいぞ! 本当にナチュラルか!?」
「EFAには同胞もいるからな。……まさかとは思うけど」
イザークの呟きに、ディアッカが反応した。
ヒュッケバインはEFAの兵器、そしてEFAにはナチュラルだけではなくコーディネイターもいる。
それは状況から推測された当然の帰結だったが、イザークにとってはまったく考えもしないことであった。
「なっ……!? お前、コーディネイターだと言いたいのか!」
プラントの、コーディネイターの敵である地球軍。
その地球軍にコーディネイターがいるという現実が、確かにあるのだとディアッカは言っているのだ。
「その可能性だってあるだろ? どっちにしてもただ者じゃない。コイツ、嘗めてかかるとマジやばいぜ……!!」
二人のやりとりは、隊の共有回線でイージスのコクピットにも届いていた。
アスランにとっては、コーディネイターが敵にいるという現実は驚きに値しない。
現に、大西洋連邦のMSストライクのパイロットは無二の親友なのだから。
それに比べれば、元々同胞が存在するというEFAのPTにコーディネイターが乗っていたところで、なんの不思議もない。
手強い対象のため、墜とすのがやっかいというだけだ。
三機で掛かっても、なかなか掴まえられない敵。
迂闊に突っ込めば手痛いしっぺ返しをくらうのは、先程のイザークが受けた反撃によって明確である。
そろそろ、やり方を変えなければならないだろう。
「イザーク、少し下がれ! 前に出すぎだぞっ!」
「この俺に指図する気かっ!? アスラン!」
プライドを深く傷つけられたイザークが黙っていられないのはわかるが、力押しでは何も変わらない。
「状況を考えろっ! ここは、ニコルに任せるんだ!」
「ニコルだと……!?」
予想し得ない者の名に虚を突かれたのか、イザークの勢いが揺らいだのを通信モニターで見、アスランはゆっくりとカメラに向かって頷いた。
祐一の手助けをするためにOSをひたすら書き換えていた名雪だったが、既にOSは現時点で考えられる最高水準の最適化を終え、もはや書き換え自体はやり尽くした状態にあった。
だからといって、手を休めるわけにもいかない。
いとこの少年が彼女のことを信頼して、サポートの全てを任せてくれているのだから。
そんな名雪が挑んだのは、OS内の機体データベースだった。
前に挑んだ時は、何故か途中で意識を失った。
彼女はその前後の事を覚えていなかったが、何か重要なものを見た気がする。
次の段階として自分達の乗っている機体の特性を少しでも掴むため、以前為しえなかったデータベース内のブラックボックスを探り情報収集を行なっていた矢先、名雪はデータの奥に見慣れないアナライズプログラムを見つけた。
対峙する機体とデータベース内の情報を照らし合わせるアナライザーはOSと密接にリンクしており、PT、MSに関わらず大抵の機体にはデフォルトで備わっているはずなのだが、これはそれとはまた別物のようだ。
何故、メインのシステムと切り離されているのだろうか。
名雪の頭には?マークが浮かんだが、試しに検索を掛けてみると宙域に展開する四機全てがデータベース内にヒットした。
(あ、え? これ……なんでデータがあるんだろう?)
どうみても新型のガンダムタイプの情報が自分達の機体に入っている事を訝しむも、祐一の助けになると思い直し、名雪はデータをメイン・コンソールへと送りつつ、見つけたアナライズプログラムをOSに再設定した。
「祐一、この子のデータベースから敵機のデータ引き出せたよ。よかったら使ってみて!」
「サンキュー、助かるっ!!」
名雪と異なり祐一は細かいことなどまったく気にせず、喉から手が出るほど欲しかった敵機のデータに目を走らせる。
DATA
識別番号:GAT―X102
識別名称:デュエル ガンダム
武装 :ビームサーベル バルカン グレネードランチャー付ビームライフル 対ビームシールド
特記 :中近距離戦用MS PS装甲
DATA
識別番号:GAT―X103
識別名称:バスター ガンダム
武装 :ガンランチャー ビームライフル 6連装ミサイルポッド
特記 :重装砲撃戦用MS PS装甲 兵装連結方式採用“対装甲散弾砲”“超高インパルス狙撃ライフル”に派生
DATA
識別番号:GAT―X303
識別名称:イージス ガンダム
武装 :ビームサーベル バルカン ビームライフル 対ビームシールド 複列位相エネルギー砲
特記 :高速強襲用可変型MS PS装甲 MA時“複列位相エネルギー砲“要注意
DATA
識別番号:GAT―X105
識別名称:エール ストライク ガンダム
武装 :ビームサーベル バルカン ビームライフル 対ビームシールド アーマーシュナイダー
特記 :万能型汎用MS バックパック換装 PS装甲 現在ディアクティブモードのため戦闘能力極低
「!?」
ゾクッ……
攻撃を避け続けながら後部席より送られた情報を読みとっていた時、祐一の背筋に悪寒が走った。
それとほぼ同時に、今まで断続的に続けられていた三機からのビーム攻撃が唐突に止んだ。
追撃を諦めたのか……などという希望的観測が頭を過ぎったが、即座に打ち消す。
嫌な予感というやつの後に攻撃が止まったことを偶然と片付けることは簡単だが、今までの経験からこういった予感めいたものを無視するとろくな事がない。
そう考え、周囲を見渡した祐一の目にそれが映ったのは、ある意味必然だったのか。
全天周モニター越しに背部を見ると、何も無い空間にいきなりビームサーベルのような光の刃が生じた。
ヴゥンッ!!
フットペダルを踏み込んで機体を前進させ、間一髪のところで刃を避けながらも攻撃に対応するため、カノンを旋回させる。
仕留め損ねた獲物に対し、空間に生えたビームの束が更なる追撃を仕掛けてきたが、これは飛びずさるように後退しやり過ごす。
それは実に不気味な光景だった。
漆黒の闇から生えた攻撃端末が、ひとりでに襲い掛かってくるのだ。
どういう仕掛けかは不明だが、攻撃されている以上、そこに敵がいると考えるのが妥当だった。
本能に任せて右マニピュレーターにフォトンライフルを構えつつ、サークルザンバーを展開させる。
引っ込んだサーベルの代わりに闇の中から発射された三本のランサーダードを回避、そのうち避け損ねた一本をザンバーで叩き落とし、反撃とばかりに目の前の空間へ向けて手当たり次第フォトンライフルを撃ちまくった。
すると、まるで炙り出されるかのように、黒いMSが何もない空間から出現した。
アークエンジェルへの攻撃にまわっていたブリッツだ。
「かわされたっ!? あれを全て避けるなんて……そんな馬鹿な!」
クルーゼ隊のパイロット中最年少のニコルは、ブリッツのコクピットで言葉を失っていた。
ミラージュコロイドと呼ばれる微粒子ガスを持つブリッツは、これを展開することによりステルス性を発揮し、肉眼やレーダーから完全に隠れることができる。
展開中はPS装甲が無効となるため過信は禁物だが、この装備のことが知識に無ければ防ぎようがないはず。
だが、彼の必殺の策はいとも簡単に崩された。
わけもわからない、白いPTのパイロットによって。
「ニコルっ!!」
策の失敗を察知した三機が再び援護射撃を開始したため、祐一はブリッツを仕留める事無く回避に専念するしかない。
「今の攻撃、全然わからなかったよ。祐一、すごい……」
「閃きに任せただけだ。同じ手をやられたら、避けられる自信なんか無い!」
名雪の声に答える祐一の言葉は謙遜ではない。
勘が働かなければ、今ので完全にやられていた。
それほどまでに、ブリッツのとった奇襲攻撃は完璧だった。
DATA
識別番号:GAT―X207
識別名称:ブリッツ ガンダム
武装 :攻盾システム(三連装ランサーダード、ビームライフル、ビームサーベルを内蔵) ピアサーロック
特記 :電撃侵攻用MS PS装甲 ミラージュコロイド装備
(ブリッツ? ミラージュ、コロイド? なんなんだ、これもガンダムなのか!? 次から次へと、いい加減にしてくれっ!)
名雪に余計な心配をさせないため、叫びたい言葉を強引に飲み込む。
アナライザーが作動し新たな敵の情報が表示されたが、ここまでくると状況が更に悪くなった事を理解するための材料でしかない。
ガンダムが五機。
うち一機はミソッカスと断定しているので四機……実に重い現実である。
回避に専念して隙を伺うのは、もう限界だった。
一機の差は限りなく大きい。
ちょっとしたことで集中力が切れれば、たちまち蜂巣になるのが目に見えている。
(覚悟を、決めるしかないか……!)
今まで得た敵機と周辺宙域の情報を照らし合わせ、祐一は最後の賭けに出る事にした。
突然、白いヒュッケバインが身を翻して遠ざかり始めた事に、アスランは面食らった。
今まで逃げる素振りなど一切見せず、徹底抗戦の構えを見せていただけに、いきなりすぎるこの行動に対して反応が遅れたのだ。
「こいつ、逃げる気かっ!?」
「はっ! 逃がすものかよっ!」
まず反応したのは完全に火の入った二人だった。
出遅れたイージスとは対照的に、バスターとデュエルが間髪入れず追撃を掛け、逃げるカノンへ向けてビームの砲火を浴びせかける。
だが、その攻撃は今までの例に漏れず尽く回避されるだけ……改めてみると、まるで後ろに目でもあるかのような動きだ。
自分達を嘲笑うようなそれに応じるように、アスランもまたイージスをMA形態へと変形させ、追撃を開始した。
追撃にイージスとブリッツも加わるとほどなくして、火線が集中し逃げ場を失ったヒュッケバインが、宙域を漂っていた大きめの隕石の裏に隠れる。
一時しのぎとしては最適な天然の防壁。
デュエルとバスターの放ったビームが命中し、岩を削ったがそれを破壊するには至らない。
隕石を盾にして、反撃のチャンスを伺うつもりなのだろうか。
白いヒュッケバインが隕石の裏で動きを止めているのを、センサーで確認する。
これまでの攻撃を全てやり過ごした強かなパイロットにしては浅はかな考えだと、アスランは感じた。
敵の攻撃が通らないと、そんな甘い考えなのかと。
「岩の裏に隠れたところでっ!!」
MA形態のイージス、尖端のかぎ爪が大きく広がる。
開かれた爪の中心に存在するのは、戦艦の主砲クラスの出力を持つビーム砲“スキュラ”。
まるでイージスを一つの大砲に見立てたようなそれは、複列位相エネルギー砲と呼ばれる強力なビーム兵器であり、直撃させれば戦艦をも一撃で沈めることができるものだ。
火力だけで言えば、バスターの持つ超高インパルス長射程狙撃ライフルを凌ぐこの武器ならば、盾に使っている岩塊ごとヒュッケバインを撃破することが可能なはずだった。
ゴゥゥゥンッ!!!!!!!!
砲口から凄まじいエネルギーの波が発せられ、放たれた大出力ビームの奔流が隕石を一撃の下に粉砕する。
遮蔽物が粉々に砕けたのをモニターに捉えたアスランは、ヒュッケバインの撃破を疑わなかった。
しかし、そんな彼の考えは頭に浮かんだある種の疑問によって打ち消されることになった。
「? ……爆発が、無い?」
確かに隕石は破壊したが、機動兵器を撃破した際に起こる肝心な兆候が見られない。
直撃できなかったのか……いや、今の攻撃ならば例え命中しなくとも岩壁破壊の衝撃だけで十分破壊に至るはずだ。
拡大モニターで粉砕された隕石周辺をサーチし、奇妙に揺らぐ白銀の輝きを確認する。
「散開しろっ!!!!」
次の瞬間、無意識のうちにアスランは声を張り上げていた。
彼の内の何かが、迫る正体不明の危険を察知したのである。
祐一がカノンを隕石の影に隠れさせたのは、完全に賭だった。
逃げ回る際に見つけておいたちょうど良い大きさの弾避けを使い、反撃に移る……実に単純明快だったが、敵が数に任せて包囲攻撃を仕掛けてきたので、誘いに乗ってくれると踏んだのだ。
デュエルが隕石をノコノコと迂回してきたならば、一対一で相手をすればいい。
四機のデータを参照し計算してくれた名雪のおかげで、盾に使った隕石を破壊することができる兵器が敵機の有する武装の中に一つしかないことはわかっている。
複列位相エネルギー砲スキュラ。
何よりも祐一が一番望んでいたものが、敵がこの兵装を使用し“隕石ごとカノンを葬り去る”という手段をとってくることであり、幸運な事にそれは現実となった。
スキュラによって粉砕され飛び散る岩塊と、エネルギーの余波は確かにカノンを襲った。
MA形態のイージスにスキュラ発射の兆候が見られた瞬間、祐一はサークルザンバーの出力を最大にし、集中展開した光破でこれをやり過ごしたのである。
強力なエネルギー兵器といっても遮蔽物を一次対象としている以上、ビームにある程度の減衰は起こる。
スキュラをまともに受けるのは危険だったが、データから減衰していれば防げるだろうと判断した。
そして今、祐一は賭けに勝った。
無論、これで終わりではない。
反撃の狼煙ではなく、うるさい敵を一気に一掃するための反撃の業火を見舞う。
カノンには、それを可能にする兵装が備わっているのだ。
武装選択は既に終わっている。
機体背部に縦にマウントされた砲身は、キャノンというよりもむしろランチャーに近い形状をしていた。
白銀の砲を掴み構え、本体からの動力供給ノズルを直結させる。
白いヒュッケバインの周囲に、不思議な力場の流れが湧き起こっていた。
重力場だ。
空間を陰らせるだけのそれが、やがて機体を挟むようにカノンの正面と背部へ収束していく。
KANON:重力領域収束完了 GEXキャノン、ブラストモードへ移行します
自分達を追ってきた四機のGが雁首揃えて照準レティクルに捉えられている様子に、ニヤリと笑みを浮かべる祐一。
コンソールメインモニターに表示されたKANONの完了報告を受け、発射トリガーを引いた。
「兵器ってやつの本当の怖さは、向けられた奴にしかわからない……なんてなっ!!」
グヴゥァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!!!!
圧倒的な力が発射された瞬間、カノンの機体を予想だにしない衝撃が突き抜ける。
(くっ……なん、だ!!?)
重力波発射時のフィードバック・インパクト。
シミュレーターでのGインパクトキャノンよりも、遥かに強烈だ。
カノンの後方に展開しているグラヴィティ・テリトリーは攻撃に使用されるものではなく、強烈な発射衝撃に際し機体を支えるためのアブソーバー的役割を担うものであり、これによって衝撃がカノンに被害をもたらす事は無い。
だが、名雪が構築した兵装使用に用いるサポートプログラムは、シミュレーターのGインパクトキャノンを参考にしている。
このGEXキャノンを補うには足りないのだと気づいたのは、発射してからの事。
どうにもならない、などとは言っていられない。
結局、祐一は逸れる射線を自力で補うしかなかった。
先程イージスが砕いた岩石も、浮遊するデブリも。
白銀の砲身から発射された超重力の嵐は、カノンと四機の間にあったありとあらゆるものをたぐり寄せるように消滅させていった。
アスランの一声に加え、サポートプログラムの不具合によってこの砲撃が四機のGに直撃することは無かったが、クルーゼ隊の面々はすぐ近くを突き抜ける闇色の火線に背筋を凍り付かせた。
「馬鹿な、重力兵器だとぉっ!!? あの機体、オリジナルなのかっ!?」
「この火力……冗談だろ!? いくらバスターでも、あんなのと撃ち合って勝てるのかよっ!?」
あまりの出来事に、イザークもディアッカも平静を保てない。
いや、それはアスランにもニコルにも言えることだった。
機動兵器単体が有する兵装で重力兵器に分類されるものがあることは彼らも知識で知っていたが、全てが伝聞であり実際に経験した者は一人もいない。
それ以前に、重力兵器の一般情報として挙げられるものは、旧αナンバーズのヒュッケバインRが持つGインパクトキャノンだけなのだ。
Rにはオリジナルのロストテクノロジーが使われている。
旧時代に失われた技術のため、現在の技術で再現することは不可能なはずの兵器を使用している事実……EFAが新たなオリジナルPTを発掘したのか、それに準じたものを新型PTに採用したのだと考えるのが妥当だろう。
その時、ヴェサリウスとガモフの方向で同時に複数の信号弾が発射された。
撤退の合図だ。
おそらく、今の状況をモニターしていたのだろう。
「! 撤退信号……? 退けということかっ!?」
「イザーク、頃合いですよ。僕らのエネルギーも残り少ない。これ以上の戦闘は危険です……!」
諫めるニコルが告げたのは事実だった。
これまでの戦闘で、既にバッテリーのエネルギーはどの機体も限界に差し掛かっているのだ。
武装が制限されてしまうこともあったが、エネルギーが底を尽きPS装甲が無効となればヒュッケバインのフォトンライフルで墜とされる危険もある。
「くそっ! ここまで追いつめておいて!!」
悔しそうに唇を歪め、コンソールを叩くディアッカ。
アスランも同じ気持ちだった。
ストライクを戦闘不能に陥れることに成功し、後は機動兵器を失ったアークエンジェルを沈めるだけだったのだ。
全て、たった一機のPTのおかげで水泡に帰してしまった。
「命令だ。この場は退こう」
だが、敵を倒せなかった悔しさの反面、アスランは自分の中に何処かほっとした気持ちがあることに気づいた。
(キラ……)
大事な親友の乗るストライクを手に掛けずに済んだ事への安心感。
仲間達の目が無抵抗なストライクから完全に白いヒュッケバインへいっていたため、キラは撃破されることなく未だ宙域を漂っていた。
できるならば、ストライクを回収していきたかったが、それにはヒュッケバインと交戦を続ける愚行を冒す必要がある。
イージスをMAに可変し反転させると、アスランは追走するブリッツと共にヴェサリウスへの帰還を開始した……。
「ふ〜……どうにか、凌げたみたいだな」
敵MSがセンサーから消え、少しして宙域を静寂が支配したところで、ようやく祐一は一息ついた。
ゼラバイアとの戦いもそうだったが、初の対MS戦闘は違う意味でかなりキツい綱渡り的な戦いだった。
GEXキャノンを外した時、正直「終わった……」と思い内心、かなり焦ったのものだ(当然のように名雪に気取らせないため、平静を装ったが)。
敵が砲撃を威嚇と判断してくれたのか、正体不明の兵装に恐怖心を感じてくれたのかはわからなかったが、とりあえず自分達が無事なので結果オーライだろう。
「祐一、これからどうするの?」
「そうだな、とりあえず……」
不安そうな名雪への答えは、行動で示すことにした。
センサー広域に広げて見つけた目標へと、カノンを移動させる。
微量だが、動力反応を発する灰色のガンダムがユラユラと漂っていた。
どうやら推進剤もエネルギーも使い果たしているらしい。
最初は敵かと思っていたが、他の四機があれだけ動き回っていたことを考えると、一機だけここまでの状態になっているのは不自然だった。
(おまえは敵か、それとも味方か……? ま、なるようになれだ)
近づき、エスコートするかのようにストライクの腕を掴むカノン。
そんな時、静寂の海を裂いて二機の後ろからゆっくりと接近してくる巨大な艦影をカノンのセンサーが捉えた。
祐一と名雪は無言のまま、その艦との遭遇の時が訪れるのを待つことにした――。
続く
第五話「G」
終了後のイベント達成及びデータ登録確認
第四、五話の主な戦闘の流れ
<戦闘開始>
デュエル、バスター、イージス、ブリッツ、ガモフ、ヴェサリウス出現
エールストライク、メビウスゼロ、アークエンジェル参戦
ブリッツ、アークエンジェルに対し“ビームライフル”で攻撃
バスター、アークエンジェルに対し“超高インパルス長射程狙撃ライフル”で攻撃
アークエンジェル、ブリッツに対し“イーゲルンシュテルン”で攻撃
アークエンジェル、バスターに対し“ヘルダート”で攻撃
エールストライク、イージスと戦闘会話×2
メビウスゼロ、ヴェサリウス接近に際し、シグー参戦
シグー、メビウスゼロに対し“重突撃機銃”でカウンター攻撃
HP10%未満→メビウスゼロ撤退イベント発生
シグー撤退
デュエル、エールストライクに対し“ビームサーベル”で攻撃
エールストライク、デュエルに対し“ビームサーベル”で攻撃
バスター、エールストライクに対し“ガンランチャー”で攻撃
デュエル、エールストライクに対し“ビームサーベル”で攻撃
バスター、エールストライクに対し“ビームライフル”で援護攻撃
アスラン・ザラ “てかげん”イベント発動
イージス、エールストライクに対し“かぎ爪”で攻撃
エールストライク、戦闘不能イベント発生
ヒュッケバイン・カノン参戦
デュエル、ヒュッケバイン・カノンに対し“ビームライフル”で攻撃
バスター、ヒュッケバイン・カノンに対し“ビームライフル”で攻撃
デュエル、ヒュッケバイン・カノンに対し“ビームサーベル”で攻撃
デュエル、ヒュッケバイン・カノンに対し“グレネードランチャー”で攻撃
ヒュッケバイン・カノン、イージスに対し“フォトンライフル”で攻撃
イージス、ヒュッケバイン・カノンに対し“ビームライフル”で攻撃
ヒュッケバイン・カノン、デュエルに対し“フォトンライフル”で攻撃
ブリッツ、ヒュッケバイン・カノンに対し“ビームサーベル”で攻撃
イージス、ヒュッケバイン・カノンに対し“スキュラ”で攻撃
ヒュッケバイン・カノン、四機のGに対し“GEXキャノン・ブラストモード”で攻撃
全敵機撤退
<戦闘終了>
キラ&アスラン ○ − − − :第一フラグ成立
Gα用語図鑑に
ミラージュコロイド
を追加予定。