スーパーロボット大戦

Generation α

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界が安穏としていても、そこに息づく者達がそうだとは限らない。

 しかし、その閉鎖空間にいる一名は少なくとも実に安穏だった。

 

「く〜っ……く〜っ……」

 

 健やかな寝息である。

 気持ちよさそうな寝顔は、その人物の上面を見て憧れる者にとっては百年の夢も醒めるようなもの……ではなく、逆に新たな魅力発見の機会になるかもしれない。

 それをすぐ側で見つめる者、これまた約一名。

 滞りなく作業を終えつつ、何とも言えない表情で見慣れた顔をマジマジと見る。

 

「う〜ん、朝までグッスリおねむだお〜 ついでに祐一ってカッコイイお〜」

 パートナーの馬鹿っぽい寝言めいた言動に、彼女(・・)は口を開いた。

 

「ね……一つ、聞いてもいいかな?」

 

「いいだお〜」

 

 おかしなオウム返しを行なう少年にジト目を向け、

 

「……それって、何のまね?」

 

 少女、名雪はコンソールに突っ伏している少年……祐一に尋ねる。

 名雪のツッコミを受け、まるで狸寝入りをしていたかのように少年はムクリと体を起こし、伸び上がって軽くストレッチ、

 

「――いや、単に寝ぼけただけだ。気にするな」

 

 しれっとそう言ってのけた。

 低血圧な同居人の少女の寝起きを大げさに真似たつもりなのだが、当の本人を前にそれを言うわけにもいかない。

 実際はもう少し控え目で、祐一の実演ほど馬鹿っぽくは無いのだが。

 

「気になるよ……」

 

 不満げないとこの様子を見なかったことにし、祐一は改めて全天周モニターを見回した。

 寝言は完全に演技だったが、寝ぼけていたのは本当の話であり、気が付いたのはほんの数分前なのだ。

 自分達の置かれている状況の確認という意味で、どうやら生きているらしいモニターを見たのだが――。

 

「ん? ずいぶん暗いな。どれくらい寝てたんだ?」

 

 周りがやけに暗い。

 というよりも四方八方、真っ暗だった。

 ゼラバイアとのバトルが早朝であったことを考えると、単純計算で半日以上は意識がなかったことになる。

 

「わたしもさっき起きたばかりだから、わからないけど……祐一、二十分は意識が無かったよ」

 

 なかなか起きないから心配したよ〜と、いつもの調子の名雪だったが、祐一にしてみれば彼女の方が心配だった。 

 

「そりゃこっちの台詞だ。おまえ、あんな状況で意識無くしてたのに、身体の方は大丈夫なのか?」

 

 今でこそ元気に見える名雪だが、戦闘開始時にいきなり意識を無くしたという前科があるのだ。

 表面的に心配など微塵も見せない憮然とした顔のまま尋ねる祐一に、名雪は笑って言った。

 

「うん、とりあえず平気。ちょっと気分が悪くなっただけだから。……心配かけてごめんね?」

 

 実に愛らしいネコミミメイド少女に強がっている様子が無いことを見とり、祐一は内心、胸を撫で下ろした。 

 

「それならいいんだけどな。まあ、女なら大体月に一度はそんな日もあるだろ」

 

 素でそんなことを言ってのけてみる。

 照れ隠しもあったが、台詞内容は最低だった。

 

「それってセクハラ……」

 

 苦笑しツッコミを入れる名雪を軽くスルーしつつ、祐一はとりあえず現状に向き直ることにした。

 

「ところで、さっきまで朝だったのに何でこんなに暗いんだ?」

 

 話を戻そう。

いくら何でも、そんなに寝てたのかと訝しんでる。

 確かに半日爆睡していたというなら説明はつく。

ある意味、自分たちは徹夜明けだった。

それならば、名雪でなくとも半日意識を失えるだろう。

単純な理由ではあったが、否定する材料も無い。

だが、頭がハッキリするにつれ、少年は何やら違和感を感じ始めてきたようだ。

 

「真っ暗で何も見えないぞ。おまけに、やけにフワフワ…………フワフワ!?

 

 フワフワ。

 その感覚を表すのに適当な擬音であり、別に幼児が綿飴を示す時に言う台詞というわけではない。

 体を捉える浮遊感。

 地上ではまず味わうことのないそれを、祐一は知っていた。

 七年前に水瀬家を離れてから昨年まで、その感覚は常に身近なものとして生活に付きまとっていたもの。

 

「こいつは……」

 

 慌てていとこの少女を見やり、祐一は彼女がいつもと違う髪型であることにようやく気づいた。

 

「名雪、その髪?」

 

 少女の右肩でフワフワと揺れるツイスト。

 普段は腰まで伸びる髪をストレートにおろしているだけなのだが、今の名雪は髪型を母親と同じ三つ編みにしていた。

 

「バラけてちょっと邪魔だったから、さっき編んだんだよ。おかあさんの髪型がずっと三つ編みな理由、ひょっとしたらこういうことかも」

 

 三つ編みのネコミミメイド姿な名雪は、彼女を見慣れている祐一の目にも新鮮に映った。 

 

「おう、プチ秋子さんと命名したい気分だぞ――っておい、もしかして外が暗いのは!?」

 

 柄にもなくいとこに少々心の動きを感じた祐一だったが、フワフワ揺れる三つ編みを振り返り、改めて現状を認識し絶句する。

 全身を捉えて放さない浮遊感に、辺り一面の暗闇。

 周りには何もない……いや、星のような輝きに混じって岩のようなものが浮かんでいるのが見える。

 嫌な予感がした。

 

「えっと、信じられないことだけど、たぶん祐一が考えてる通りだと思うよ……」

 

 申し訳なさそうにそんなことを言う名雪。

 冗談ではなさそうだ。

 というよりも、現状自体が冗談ではない。

 

「もしかしなくてもここは、宇宙(そら)!?」

 

 宇宙。

 それは限りなく広がるもの。

 地球上からは身近にあるようでいて、遠い存在……のはず。

 普段は実に勘のいい祐一だが、今回は予感が確信に変わるのにインターバルもなにもあったものではなかったらしい。

 

「うん」

 

 名雪のダメ押しで完全に我に返り、祐一の脳裏に1月25日の朝、何が起こったのかがリプレイされていく。

 

 ゼラバイアとの戦闘。

一弥の乗るPTとの邂逅。

謎の巨神の出現。

そして、大ゼラバイアとの戦闘の結末。

 

 意識を失っていたのなら、起きて真っ先に考えるべきことなのだが、現状認識が緩やかなのはどうやら名雪の専売特許というわけではないようだ。

 

「ぐあっ、マジなのか!? あの理解不能な巨大怪獣の一発で、哀れにもおれ達は夜空の星になっちまったってことかーっ!!?」

 

 そのまんま文字通りの結末だったというわけなのだが、ひとまず暴走してみる祐一。

 ふざけているような態度をとっていても、有事の際は比較的冷静な彼にしては珍しい。 

 

「巨大怪獣が何だか知らないけど、わたし達まだ生きてる……」

 

 冷めた調子でボソリと呟く名雪に、はっと我に返る。

 戦闘の結末を知らないから言える台詞だったが、言っていることはそのままの意味で祐一に伝わっていた。

 

 何故、自分たちは生きているのか?

 

 などという過程は重要ではない。

 重要なのは、

 

 自分たちが生きるためにはどうすれば良いのか?

 

 というこれからのことなのだ。

 

「……冷静なツッコミありがとう、名雪くん。ま、冗談はこれぐらいにして、とにかく真面目にどうにかしないとヤバいぞ。これは」 

 

 生きている、で終わらないところが現実の厳しいところだった。

 理由がどうであれ祐一達は今、宇宙空間にいる。

 生命維持機構が働いているので、すぐにどうこうなるわけではないだろうが、事態が予断を許さないのは間違いない。

 

「じゃあ、この子動かしてみようよ」

 

 祐一が思案に入ろうとした時、名雪が思いついたように言った。

 

「あ?」

 

「OSの調整は全部終わってるから、大気圏内でも宇宙空間でもシミュレーター通り戦えるよ〜」

 

 ネコミミメイドなだけに、作業にソツがない無い。

 恐ろしいことだったが、どうやらネコミミ少女は短時間の間に宇宙空間のみならず、想定しうる全環境に対してのOS最適化を終えたらしい。

 そのことについては非常にありがたいことだったが、「戦える」という言葉には承伏できかねるものがあった。

 

「これ以上、戦闘なんかあってたまるか。おまえは寝てたから知らないだろうけどな。あの後、えらく苦労したんだぞ」

 

 機体を動かすのがやっとのOSで綱渡りのような戦闘を行い、挙げ句の果てに死ぬ目に遭ったのだ。

 いくらOSが完璧でも、戦闘行動は勘弁して欲しいというのが本音だ。

 

「でも今こうやって生きてるし、きっと万事OKなんだと思うよ?」

 

「前向きすぎるのもどうかと思うけどな……おっ?」

 

 コンソールへ向かい確認のためにシステムを立ち上げると、センサーに複数の光点が映った。

 辺りに浮遊する隕石とは違う、熱源を持った対象だ。

 

「センサーに反応があるね。識別不能(アンノーン)て出てる。大きさからするとPTかMSだけど――わ、単機じゃない。ひい、ふう、みい、全部で三機かな? あとMAみたいな機体もあるよ」

 

 祐一の個人的見解によるとMS、PTとくれば運用しているのはまず軍隊、そして軍隊の仕事の一つには救難活動があったはず。

 現在地すら特定不能なこの状況を払拭する吉報である。

 拡大モニターでそのうちの一機を見た途端、彼は緊張で突っ張った顔を綻ばせた。

 

「へぇ……見てみろ、あの頭部ガンダムタイプだ。ついているぞ〜、これで遭難の心配は無くなったな」

 

 MSと聞いてザフトのものかと思ったのも束の間、映ったのは明らかにガンダムタイプと呼ばれる形状の頭部を持つMSだった。

 白と青、二種の色を主とするツートンカラーのガンダム。

 その腕には、グレネードランチャー付の突撃銃めいたビームライフルを持っている。

 偵察任務か何かだろうか。

 物々しいイメージだが、そもそもMS自体、兵器なのだからそんなことは当たり前だろう。

 が、助かったと喜ぶ祐一とは裏腹に、名雪は緊張した面持ちのままだった。

 

「……祐一、待って。もう少し様子を見よう? ガンダムっぽいだけど、あれって多分EFAの機体じゃないよ。わたし、全然知らないし」

 

「あのな、そんな悠長なこと言ってる場合じゃないだろ? それにおまえ、この機体の事も知らなかったじゃないか。きっと新型か何かなんだよ。それに、ガンダムは地球軍のフラグシップMSだって誰か言ってたしな。他の連合国が作っていてもおかしくないんじゃないか?」

 

 慎重ないとこの言葉に、祐一はやれやれと大げさに肩を竦めた。

 名雪の言いたいことも何となくわかるが今は緊急を要する時。

ここでモタモタして、せっかくの救助してもらえるチャンスをふいにするのは愚策だ。

 

「うん、そうだけど……」

 

 なおも納得できない名雪を諭すように、祐一は続ける。

 

「おれ達の乗るこいつはどうみてもヒュッケバイン、ヒュッケバインはEFAの機体だ。新型でも同じ地球軍同士、ぜんぜん問題ないって」

 

 ガンダムは地球軍の機体であり、ヒュッケバインもまた地球軍のものなのだ。

 相手が敵対関係にあるザフトならともかく、国は違うが、同じ同盟軍なのだからお仲間も同然。

 実に安易な考え方だが、一般人の思考回路などそんなものだろう。

 そうと決まれば、のんびりとしている時間はもったいないだけだ。

祐一がコクピット内の全機能を立ち上げてカノンに本格的に火を入れると、動力の稼動を受けセンサーアイに光が灯った。

 

「お〜〜〜い!!!!」

 

 スラスターを吹かし、ツートンカラーのガンダムがいる方向へとカノンを向かわせる。

 敵意の無いことを示すため、フォトンライフルは背部ラッチにマウントされたままの丸腰に近い状態だったが、心配していなかった。

何も持っていないことをアピールする目的で、右腕を大きく振り上げて小刻みに動かしながら接近を続ける。

ようやく接近に気づいたらしく、ガンダムがカノンの方を向いた。

幾らなんでも、いきなり攻撃してくることは無いだろう……とりあえずピンチ脱出だと、祐一は気楽なことを考えていたのだが。

 

「は……!?」

 

 一秒後。

 彼の脳天気な顔は、そのガンダムがビームライフルの銃口を躊躇いもなく自分達へと向けてきた瞬間、あっという間に凍り付いた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話「気がつくと、そこは……」

That was a battlefield even if mind was attached. ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コクピット内に響き渡る警戒アラームの音が耳を打つ。

 聞き慣れないというより、このアラーム音に晒されるのは今日が初めての経験だった。

 少年が居るのはMSという戦闘兵器のコクピット。

平和な日常とはかけ離れた場所だ。 

 コクピットの主となっている少年キラ・ヤマトは、中立国“オーブ”のコロニー『ヘリオポリス』に住む工業カレッジの学生に過ぎない。

 地球連合とザフトの戦争が激化する中、オーブはその戦闘に与せず中立を貫くことによって平穏の中にあった。

 オーブのコロニーであるヘリオポリスもまた平和だった。

十数時間ほど前、ザフトの部隊がヘリオポリスを襲撃するまでは。

コロニー内における激しい戦闘によってヘリオポリスは崩壊し、キラは成り行きから地球軍の新造艦へ乗艦することになった。

全て成り行きだ。

そして今、成り行きでMSに乗り敵を迎え撃つために出撃している。

 場違いにも程がある。

 キラ自身は中立国の一介の学生であり、当然ながら軍の特別な訓練など受けていない。

 更に付け加えるならば、IMPCを介さないOSを搭載した新MSのシステム構成は非常に複雑であり、コーディネイターならまだしも現時点においては並のナチュラルでは対応できない代物だった。

キラの乗る“ストライク”という名のガンダムは、五機の新型MS……Xナンバー“G”の一つで、ナチュラルでも操縦可能なシステム組みをしたOSを積んだ初めてのMSだったが、それでも完全なマニュアル操作をこなすための特別な訓練を受けた士官でしか対応できないようなレベルだ。

本来ならMSなどという戦闘兵器とは無縁の学生では、これを操縦しあまつさえ戦闘を行なうなど不可能だろう。

キラが友人達のようにただの工学を専攻するだけの学生であったなら、MSに乗り戦うなどという状況はなかったに違いない。

だが彼は既にストライクに乗り、初めての戦闘でザフトのMS“ジン”を撃破するという快挙を成し遂げていた。

それは工業カレッジに通う一介の少年にできる行為ではない。 

 

「!」

 

モニターのレティクルが正面から接近する機影を捉える。

深い紅のガンダム、五機の新型ガンダムで唯一、可変機構を持つX300フレームの機体“イージス”。

 ストライクを除く他の四機のGは、ヘリオポリス襲撃時にザフトの部隊によって奪取されており、イージスはそのうちの一機である。

 キラがこの機体を前にするのはこれが初めてではない。

 コロニー崩壊の際、彼は真紅のガンダムと一度相見えている。

 しかし、キラの関心は奪われたイージスという新兵器の存在ではなく、そのパイロットに向けられていた。

 

「アスラン……!!」

 

 少年の口から漏れた名は、幼年時代からの友人のものだった。

 アスラン・ザラ。

三年前、月面都市で最後に別れた無二の親友が、ザフトの兵士としてイージスに乗りキラの前に立ち塞がる。

 接近したイージスはビームライフルを構えつつも攻撃を加えることなく、高速を保ったままストライクのすぐ横を通過していく。

 敵を試す上での探り、というわけではない。

 イージスのパイロットであるアスランもまた、キラ同様この戦闘に戸惑いを見せているのだ。

 ヘリオポリスでの戦闘で固定されたチャンネルの一つを伝い、スピーカーから訴えかけるような強い声が飛び込んできた。

 

「キラ、やめろっ! 僕らは敵じゃない! そうだろう!?」

 

 その声から、当人の直向きさがビリビリと伝わってくる。

 昔と変わっていない。

 アスランに、間違いなかった。 

 唇を噛み締める。

 確かに、アスラン個人は敵ではない。

 親友がザフト兵であったところで、キラは中立国オーブの民間人である。

 ストライクは地球軍大西洋連邦のMSであり、本来ならばキラが乗って戦う方がおかしいはずだ。

 それに。

 

「同じコーディネイターのお前が、何故僕達と戦わなくちゃならないんだ!?」

 

 そう、アスランの言葉が示すとおり、キラはナチュラルではない。

 キラ・ヤマトは高い能力を秘めたコーディネイターであり、ザフトの兵士達とはいわば同胞のようなものなのだ。

 それ故に、彼は複雑なMSの操作やOSのシステム組みを行なうことができるのである。

 

「お前がなぜ地球軍にいる!? なぜナチュラルの味方をするんだ!!」

 

 アスランの言葉が胸に突き刺さり、迷いが生まれる。

 できることなら、戦いたくない。

 戦い自体についてもだが、ましてやアスランは親友なのだ。

 彼と別れてから三年が経過していたが、キラはその友情を疑ったことは一度もなかった。

 おそらく、アスランもそうに違いない。

 だが、それでも。

 幾ら理由付けしようが、彼にはストライクで戦うしか道は残されていない。

 少なくとも、今は。

 キラは胸の迷いを振り切るように叫ぶ。

 

「ぼくは地球軍じゃないっ! でも、あの艦には仲間が……友だちが乗ってるんだ!!」

 

 キラの今を支えるかけがえのない友人達。

 お調子者だが正義感の強いトール・ケーニッヒ。

 気さくで明るいムードメーカーで、トールの恋人でもあるミリアリア・ハウ。

 少し内気なところのあるカズイ・バスカーク。

 理知的で頼りがいがある仲間達のまとめ役、サイ・アーガイル。

 そして、キラが密かに憧れているカレッジのアイドル、フレイ・アルスター。 

 後方に控える母艦“アークエンジェル”には、ヘリオポリスでの日常を共に過ごしてきた友人達が乗っている。

 ザフトが新造艦であるアークエンジェルを攻撃の対象としている以上、避難民として脱出の際に搭乗を許された彼らを守るために、唯一ストライクをまともに動かせるキラは、敵対する存在と戦うしかないのだ。

 

「君こそなんでザフトになんか!! 戦争なんか嫌だって、君も言ってたじゃないかっ!!!」

 

 敵と味方にわかれて再会するなど、運命の皮肉という言葉で片づけるにはあまりにも残酷な現実。

 ストライクにライフルを構えさせるも、イージスに攻撃を仕掛けることができず、キラはスピーカーの向こうにいる親友にやりきれなさをぶつけた。

 その時、突如、ビームライフルの射線が二機の間を裂くようにストライクを襲った。

 ストライク背部の高機動パック“エール”に付属するスラスターを吹かし、咄嗟に回避行動を行なう。

キラの目に映ったのは、青と白をベースカラーに持つ一機のMSだった。 

 

「何をもたもたやっているっ!? アスランっ!!」

 

 アスランの所属するクルーゼ隊の同僚、イザーク・ジュールの駆るガンダム“デュエル”である。

 どうやら、ストライクへの明確な攻撃を行なわないイージスに業を煮やしたらしい。

 

「X102デュエル!? じゃあ、これも……!?」

 

 参照データから機体を割り出す。

 奪われたXナンバーのうちの一つで、両肩部にビームサーベルを装備し、バルカンにグレネードランチャー付ビームライフルと、旧連邦量産型MSの基本武装をほぼ世襲しているスタンダードなMSだ。

 スタンダードと言っても、性能はザフトの量産型MSジンとは比べものにならない。

 それに、パイロットはコーディネイターなのだ。

 相手は、アスランのように攻撃を躊躇うこともない。

 少しでも気を抜けば即、死に繋がるだろう。

 

「手に負えないと言うのなら俺が貰う! 下がっていろっ!!」

 

 僚機へ不敵な言葉を叩き付けるイザーク。

 

「っ!!」

 

 まともにぶつかっては危険だと、即座に離脱するストライクを追うように、ビームサーベルを引き抜いたデュエルが迫る。

 キラの短くも長い戦いは、まだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストライクが防衛戦を行なっている宙域より遥か先の闇に、灰色をした一つ目の巨人の姿が浮かび上がった。

 ザフト軍の量産型MSであるジンと似たデザインだが、胸部の形状やスラスターの追加など、細かい点でベースアップが図られているのが伺える機体だ。

 ザフトがジンに替わる量産型の主力として開発したMS“シグー”。

 まだ、量産が始まったばかりのため、現在は指揮官用として隊長機や一部のエースパイロットへと優先的に与えられている。

 

「フッ、MSを囮にしての奇襲とは小賢しい真似をしてくれる。我々は危ないところだったというわけかな?」

 

 シグーのコクピットでそう呟くのは、目元を仮面で隠した金髪の青年だ。

 青年の名はラウ・ル・クルーゼ。

 ヘリオポリスを襲撃したクルーゼ隊の指揮官である彼の目は、たった今取り逃した獲物が去った方向へ向けられていた。

 クルーゼ隊の旗艦ナスカ級高速戦闘艦“ヴェサリウス”へ、単身攻撃を行なってきたターゲット“足つき”のMAに重突撃銃で攻撃を加えたものの、飛び去った方向で爆発の気配が無いことから、どうやらトドメを刺すには至らなかったようだ。

 

『クルーゼ隊長、今のは……シグーでの出撃は、これを予測されていたからなのですか?』

 

「そう難しい顔をするな、アデス。二艦に挟まれた敵がこの窮地を脱するには、奇策しかあるまい? 今回はたまたま私の勘が当たったというだけだよ」

 

 ヴェサリウス艦橋からの副官アデスの通信に対し、ラウは苦笑し言う。  

 

『はっ、いや……見事な洞察です!』

 

 計器の情報だけで判断せず敵の奇襲を睨み、訝しむ部下の声を振り切って予めMSで出撃していた隊長が、奇襲を仕掛けてきた敵を見事撃退したのだ。

 状況の変化に唖然としていた部下の声に畏敬の念が混じるのは、当然のことだった。

 

「しかし、これで反撃の芽は完全に摘んだな。射程に入り次第、こちらも攻撃開始だ」

 

『MS隊が展開中です。主砲の発射は……』

 

 前方の宙域には味方も展開していおり、砲撃を加えれば流れ弾で味方MSの被弾もあり得る。

 アデスの言うことも正論の一つだったが、ラウは笑みを崩さず事も無げに言った。

 

「友軍の艦砲に当たるような間抜けは、我が隊にいないさ。向こうは撃ってくるぞ?」

 

 何か言いたげな副官に構わず一方的に回線を切断し、シグーをヴェサリウスへ向け着艦体勢をとる。

 部下と話しながらも、ラウの頭には先程の敵MAがチラついていた。

 

「……」

 

 MAメビウス・ゼロのパイロット、ムウ・ラ・フラガ。

 “エンデュミオンの鷹”の異名をとる大西洋連邦のエースパイロットであるムウとは、C.E.70年6月のグリマルディ戦線におけるエンデュミオンクレーター攻防戦からの因縁であり、ラウはその後も何度か戦場でこの宿敵と相見えてきた。

 その度にラウは例えようのない不思議な感覚を味わった。

 それは“ニュータイプ”同士が引き合うことによって起こる“感応”と呼ばれる現象と同様の、ニュータイプとしての超感覚だ。

 C.E.において、ニュータイプという言葉は既に精神論の一つとして明確化されている。

宇宙時代を迎えている現在、ニュータイプとして覚醒を果たした人間は少ないながらも確かに存在し、ラウはコーディネイターでありながらニュータイプの感性を持つ“デュアル”であった。

 彼がメビウス・ゼロの奇襲を察したのは、この感覚を覚えたからに他ならない。

 

「私がお前を感じるように、お前も私を感じていたのか……? 不幸な宿縁だな、ムウ・ラ・フラガ」

 

 敵であるムウ・ラ・フラガもまたニュータイプなのだろうが、今回の襲撃ではその感性がラウにとっては良い方向で働き、ムウにとっては悪い方向で働いただけのこと。

 シグーがハンガーに収まった衝撃をその身に感じながら、仮面の青年はトドメを刺し損ねた敵を思い、静かに冷笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 永久に続いていくかのような、深い闇の深淵が広がる。

 そこには生命も何もなく、ただ虚空が連なるのみ。

そんな無のキャンバスが戦闘によって様々な彩に染まり、時に宇宙は違った顔を絵描手達に見せつけてくれる。

 彩の中心にいるのは、旧時代のペガサス級強襲揚陸艦に似た印象の新造艦アークエンジェル。

その艦に、二機のMSが取り付いていた。

 変わった形状の盾とピアサーロックと呼ばれる近接戦用の飛び道具を装備した黒いガンダムに、巨大な竹竿を連想させるガンランチャーを持つベージュとカーキ色のガンダムが、代わる代わる攻撃を仕掛ける。

 ザフトに奪われたXナンバーのうちの二機、“ブリッツ”と“バスター”だ。

 二機の波状攻撃に対し、アークエンジェルは防戦一方ではあったものの、豊富な武装と回避行動で危機的状況を懸命にしのいでいた。

 

アンチビーム爆雷発射! イーゲルンシュテルン、MSを艦に近づけるな! ヘルダート、ってえぇっ!!

 

 副官の位置に就いたばかりのナタル・バジルール少尉の号に合わせ、艦の各所に備わっている兵器が次々に火を吹いた。

 アークエンジェルは激化の一途を辿る戦況を打開する手段の一つとして、大西洋連邦がオーブ私企業“モルゲンレーテ”に開発を依頼した新造宇宙艦である。

最新式の武装群はバルカン砲塔イーゲルンシュテルンから、果ては強力な陽電子砲と、対艦隊戦から対MS戦まで幅広く対応可能だ。

 既存の通常宇宙艦と差別化されているのは武装のみではなく、防御面においても同様だった。

 イーゲルンシュテルンの対空砲火と同時に発射された対ビーム爆雷が弾け、その場に散布された細粒子がビーム攪乱幕を形成する。

 バスターがビームライフルとガンランチャーを連結させ、超高インパルス長射程狙撃ライフルを発射したが、空間に広がる対ビーム粒子によって減衰されたエネルギーはアークエンジェルの純白の装甲を直撃したものの、“ラミネート装甲”を僅かに白熱化させたのみで装甲を破るには至らない。

 しかし、衝撃の全てを吸収できるわけもなく直撃によって艦が大きく揺れ、艦橋のクルーの何名かが悲鳴を上げた。

 艦橋クルーといっても、艦長であるマリュー・ラミュアスを含めアークエンジェルの乗員は実戦経験の乏しい者ばかりであり、オペレーターや砲手に至っては、ヘリオポリス避難民の中から志願した少年や少女がその役を担っているのが現在の彼らの状況だ。

 正規クルーの人員の多数がヘリオポリスにおける戦闘で失われているため、臨時の艦長となったマリューは急造メンバーと共にこの事態を乗り切るしかなかった。 

 

「みんな、耐えるのよ! きっとフラガ大尉がやってくれるわ!!」

 

 悲鳴を上げる艦橋要員達を奮い立たせようと声を張り上げる。 

 アークエンジェルの豊富な武装と防御力に助けられ、二機のガンダムを相手に善戦していたものの、このままでは確実に押し切られるだろう。

 もちろん、彼らもただ指をくわえているわけではない。

 秘策はあった。

 ストライクとアークエンジェルを隠れ蓑に、ムウの搭乗するMAメビウス・ゼロが先行し敵旗艦ヴェサリウスを討つ……戦力的に圧倒的不利な状況を打開するための作戦が現在決行中であり、彼らは自分達の命運をこの作戦に賭けていたのである。

 だが、そんなクルー達の願いは管制官を務めるトノムラの声によって次の瞬間、打ち砕かれた。

 

「なっ……!? フラガ大尉のゼロ、帰艦します! 被弾している模様ですっ!」

 

 報告と同時にスクリーンへ、被弾しボロボロにされたメビウス・ゼロの姿が映し出される。

 作戦成功の通信も、報告も、何も無い帰還。

 それが意味するのは一つだ。

 

「失敗? そんなっ!?」 

 

 Xナンバーとアークエンジェルの撃ち合いを避けるように、ゼロがカタパルトデッキへと滑り込む。

 双方が放つ雨のような弾幕に掛からなかったのは奇跡としかいいようがない、それほどまでに酷い損傷を被っている。

 着艦できたことからムウの意識はあるのだろうが、ひょっとするとダメージはコクピットに及んでいるかもしれない。

 事態は目に見えて悪化の一途を辿っていた。

 

「艦長、ストライクが!」

 

 アークエンジェルの苛烈な反撃に攻めあぐんでいたバスターが、埒があかないとストライクに狙いを定め後退する。

 頼みの綱はもはや、孤軍奮闘を続けるストライクだけ。

 しかし、パイロットのキラはコーディネイターではあったが、戦闘に関してはまだ経験もほとんど無い素人なのだ。

OSを最適化し、コントロールできるといっても慣れない機体のパワー配分はまだわからないだろう。

ストライクのエネルギー残量と推進剤は、そろそろ限界に近いはずだった。 

 

「キラ……!」

 

 イージス、デュエル、バスター。

 オペレーター役の少女ミリアリアが拡大モニターで三機のMSに囲まれたストライクを見、友人の窮地に思わず声を上げる。

 

「援護して!」

 

「この混戦では無理です!」

 

 援護しようにも、アークエンジェルの火力では近接戦を行なっているMSをピンポイントで狙い撃つなど無謀、下手をすれば支援すべきストライクを巻き込みかねない。

 ナタルの回答は正しい、そんなことはマリューにもわかっていた。

 では、どうすればよいのか……答えはでない、誰も答えない。 

マリューはただキャプテンシートを強く握りしめ、何もできない自分の無力さを痛感していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フラガ大尉が失敗!?」

 

 アークエンジェルから撃ち出された信号弾と、続けて入ってきたレーザー通信の内容に、キラは絶句した。

 奇襲作戦は失敗に終わったのだ……その事実が認識された瞬間、頭の中が真っ白になる。

 作戦自体が急造のもので、完全に出たとこ勝負だったのだ。

 失敗の後のことなど細かく考えられているわけがない。

 

(そんな、これからどうするんだ……!?)

 

 いくら自問しようが答えは一つ。

 どうするも、こうするもない。

 とりあえず撤退し、体勢を立て直す。

 自分にできることはそれしかない、間違っても「デュエルを片づけてから」などという思考は、キラには生まれなかった。

 

「帰還信号? させるかよっ!」

 

 信号弾の意味を推し量り、イザークがデュエルをストライクへと肉薄させる。

 そこにあるのは明確な殺意。

 閃光のような勢いで振り下ろされた熱刃を、アンチビームシールドで辛うじて受け流すストライク。

 技量だけではない、兵士として戦う自覚のあるイザークと、戦いに迷いのあるキラ。

 気概の差が戦闘にも表れている。

 いまやストライクはデュエルに対し、防戦一方だ。

 その時、不意にデュエルがサーベルの間合いから退いた。

 

「!?」

 

 何事かと疑問に感じたのの束の間、咄嗟に機体を右横へとスライドさせる。

 

 

 

 ゴォゥッ!!!!

 

 

 

 直後、後方から放たれたMSを呑み込むほどの巨大な火線が、ストライクが先程まであった空間を薙ぎ払った。

 超高インパルス長射程狙撃ライフルによるバスターの砲撃だ。

 

「先にこっちを頂くとするか。オイシイ獲物ってな!!」

 

 パイロット、ディアッカ・エルスマンは狙撃を回避してみせたストライクの反応を見届けると、狙撃形態から連結させていた二つの火器を両腕に装備する基本型へと武装変更を行ないつつ、バスターを戦闘に介入させるべく間合いを取り始めた。

 

「ディアッカ、右へ追い込め! そこで仕留めるっ!」

 

「りょーかいっ!!」

 

 イザークの声を快く受諾したディアッカがバスターの火器を支援目的として使用し、ストライクを着実に追いつめるための伏線を張り始める。

 デュエル一機でさえ厳しかったのに、ここにきて更にもう一機追加された……最悪に近い展開。 

 ニ対一になり、完全に劣勢へと追いつめられたキラは必死に機体を制御しながら懸命に二機の攻撃を耐えしのぐも、慣れない戦闘の緊張とプレッシャーで情報の全てを正確に読むことができず、ストライクのエネルギーが限界に差し掛かっていることに気づかなかった。

 複数の警戒アラームがゴチャゴチャになり、彼がソレに気づいたのはアラーム音が断続的なものから継続するものへと切り替わった時。

 

「パワー切れ!? しまった……!」

 

 気づいた時には遅かった。

 ストライクのトリコロール色がみるみるうちに彩を失い、くすんだ鋼色へと変化を遂げる。

 一定のエネルギーと引き換えに物理的攻撃を無効化する、フェイズシフト装甲。

 XナンバーにはPS装甲と呼ばれる特殊な技術が使用されており、五機のガンダムはこれを常時展開することで物理攻撃に対し無敵に近い防御能力を持つが、ビーム兵器やPS装甲等の基本エネルギーはほとんどが共用であり、フェイズシフトが落ちた今、ストライクの戦闘能力はほぼ失われたといっても良い。

 絶体絶命だった。 

 嬉々として友人の乗る機体をつぶしに掛かる仲間達に賛同することもできず、アスランはただ三機の戦闘を静観していた。

 しかし、ストライクのエネルギーが限界に達した時、彼はイージスをMA形態へ変形させストライクへと突進させた。

 

「キラっ……!」

 

 

 

 ガシッ……!!

 

 

 

 横からから獲物を攫うように、イージスの四本のかぎ爪めいたアームがストライクをガッチリと捕える。

 デュエルのサーベルが振り下ろされる間際の、刹那の出来事だった。

 

「何をするっ!? アスラン!」

 

「……この機体、捕獲する!」

 

「なんだと!? 命令は撃破だぞ!」

 

「捕獲できるのならば、その方がいい! 撤退する!」

 

 気色ばむイザークへ自分の意思を一方的に叩き付け、アスランはイージスをヴェサリウスとは逆の方向へと向ける。

 向かうのはクルーゼ隊のもう一つの宇宙艦、ローラシア級戦闘艦“ガモフ”だ。

 この場所からならばヴェサリウスへ向かうよりも早い。

 

「アスラン! どういうつもりだ!?」

 

 捕えたストライクからの通信に、アスランは顔を顰める。

 どういうつもり、だと?

 それを言いたいのは自分の方だというのに。

 

「……このまま、ガモフへ連行する」

 

 感情を抑え、事務的にそう返答するアスラン。

 

 

「いやだっ! ぼくはザフトの艦になんかいかないっ!」

 

「いい加減にしろっ!!」

 

 そんな彼の心中を察することなく自分の思うがままに叫んだキラを、アスランは一喝した。

 この後に及んで、何を言うのか。

 殺されないだけマシだ。

 デュエルと戦っている隙を突いてストライクを討つチャンスなど、アスランにはいくらでもあった。

 ストライクがイージスを明確に敵と認識していなかったから、キラはそんな甘い考えで命のやりとりをしていたのだ。

 それにつけ込まなかった自分も、やはり甘いと思う。

 命令はイザークの言う通り撃破であり、ストライクを捕獲するなど、確実を期さない限り愚行なのだということはわかっている。

 だが、この時のアスランにはキラを……親友を手に掛けるという選択はできなかった。

 

「来るんだ、キラ。でないと……俺は、お前を撃たなきゃならなくなるんだぞ!?」

 

「アスラン……」

 

「“血のバレンタイン”で母も死んだ。俺は…これ以上……!」

 

 苦渋を滲んだアスランの言葉の中にある偽り無い本音に、キラも親友の気持ちが自分と同じなのだということを悟っていた。

 友人を殺すことはできないと、捕獲して連行することがザフトに所属する軍人の、アスランにできる最大の善処なのだと――。

 

 

 

 

「くそぉっ、アスランの奴……勝手な真似を!」

 

 整った貌を歪ませながら、イザークはデュエルのコクピットで舌打ちした。

 ストライクを、後一歩のところまで追いつめていたのは自分だ。

 イージスが余計な横槍を入れなければ、確実に仕留めることができた。

 その大事な獲物は、今やイージスの掌の中にある。

 これほどまでに見事な横取りはそう無いだろう。

 だが、結果としてみれば悪くはない。

 撃破命令といっても、元々は全てのXナンバーを強奪する手筈だったのだ。

 アスランの言葉ではないが、捕獲できるならば確かにその方がいいかもしれない。

 そして、手柄はアスランのものになる。

 ストライクを追いつめたイザークや、ディアッカではなく。

 

「結局、またアイツのいいとこ取りか。ま、しょーがないんじゃない? それとも、イージスごとやっちゃう? 手を貸すぜ」

 

 ディアッカの皮肉めいた冗談も、今のイザークにとっては火に油を注ぐだけだ。 、

 

「くだらん! ……ん?」

 

 そんな時、友人の冗談に取り合うことなく、そう吐き捨てたイザークの目にとまるものがあった。

 索敵センサーに、自分達以外の熱源反応が映っている。

 何事かとデュエルを反応の方向へと向ける。

 

「なんだ、この反応は? さっきまで無かったぞ」

 

 ストライク相手に立ち回りを演じながらも、周囲の情報認識を怠ることはなかったはず。

 先程まで、確かに何もなかった。

 質量、大きさからすると人型機動兵器のようだが、ラウのシグーの反応でもない。

 完全な識別不能(アンノーン) 

 識別コードも何も無い、まったく未知の機体だ。

 拡大モニターでゆっくりと接近してくるそれを捉えた時、イザークは己の目を疑った。

 

「なにぃっ、ヒュッケバインタイプだと!?」

 

 それは白い、バージンスノウのような純白をベースカラーとしたPTだった。

 MSでいうところの“ガンダム”のように、一目でわかるその形状は“ヒュッケバイン”のそれ。

 量産型でもなければ、αナンバーズの“R”でもない。

 見たこともないそれが、新型か、それとも“オリジナル”なのかはわからなかった。

 突然の来訪者にアスランもまた虚を突かれ、MA形態のイージスを通常航行へと戻した。

 

「何でこんなところにヒュッケバインが? この近くにEFAの部隊がいるのか?」

 

 たった一機のわけがない。

 EFAの部隊がいると思った方がいいだろう。

 だが、戦場では全てが予定通りにいくとは限らない。

 アスランが様々な想定をシミュレートし出したそのすぐ後だった。

マニピュレーターを振り上げ、まるで掴みかかるように接近してくる白いヒュッケバインへ向けて、デュエルがいきなりビームライフルを発砲したのは。

 

「こいつ、何のつもりだっ!? 沈めぇっ!!」

 

 接近戦でも仕掛けるつもりかと、イザークはデュエルのビームライフルでPTを狙い撃つ。 

 が、いきなりな攻撃にも関わらず、ヒュッケバインは不意打ちめいた一撃を悠々と回避した。

 なかなかの反応だ。

 

「!? イザークやめろ!! まだ敵と決まったわけじゃないだろう! 攻撃は隊長の指示を仰いでから――」

 

「アスラン、お前は馬鹿か!? ヒュッケバインは地球軍、EFAの機体だろうがっ! 敵に決まっている!!」

 

 唐突に始まった射撃戦に、アスランが制止の声を上げたが、イージスによるストライク強奪で完全に火が入っていたイザークは聞く耳を持たず、デュエルを本格的な対PT戦へと移行させた。 

 

「データの無い新型とくれば、戦闘データの収集は基本だろ? それに、オトせばお手柄ってな!」 

 

 デュエルに追従するかのように、ディアッカもまた新しい玩具を見つけた子供のようにバスターを操り、白いヒュッケバインを狙う。

 アークエンジェルをターゲットとしたクルーゼ隊の挟撃戦。

 

 ストライクの捕縛で完全に終わったと思われた戦闘は、突然の闖入者を中心に第二幕へともつれ込む事になる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第四話「気がつくとそこは」

終了後のイベント達成及びデータ登録確認

 

 

 

 

 

 

 

 第四話の主な戦闘の流れ

 

 <戦闘開始>

 

   

  戦闘を一時中断します。

  後日、再開……戦闘終了時に戦闘の流れをデータ登録予定。

 

 

 

 

 

 

 登場人物図鑑に

 

キラ・ヤマト  アスラン・ザラ  ムウ・ラ・フラガ  ラウ・ル・クルーゼ  イザーク・ジュール

ディアッカ・エルスマン  マリュー・ラミュアス  ナタル・バジルール  ミリアリア・ハウ

 

 を追加予定。

 

 

 

 Gαスーパーロボット大図鑑に

 

 ストライクガンダム  メビウス・ゼロ  イージスガンダム  デュエルガンダム  バスターガンタム          ブリッツガンダム  ジン  シグー  アークエンジェル  ナスカ級  ローラシア級

 

 を追加予定。

 

 

 

 Gα用語図鑑に

 

 血のバレンタイン  PS装甲  足つき  ラミネート装甲  ザフト赤服  R  ニュータイプ  デュアル

 

 を追加予定。