「解剖しようよ4」

 次の日の朝、教室の前の方で、女の子たちが何か騒いでいます。

 何かひそひそと話していると、急に黄色い歓声があがりました。みんなも興味をもったみたいで、中野君が亜紀ちゃんに話しかけています。僕もさりげなく前にいってみると、亜紀ちゃんがもったいぶったように、

 「罰ゲーム!」

 と言っています。中野君がわけがわからないので、

 「なんなんだよ、それ?」

 と聞くと、女の子たちは、

 「女の子だけの、ひ・み・つー!」

 といって、黄色い笑い声をあげました。中野君は好奇心丸出しで、

 「じゃあ、ヒント。ヒントくれよ」

 「水泳にちょっと関係あり」

 すると、後ろにいたなっちゃんが困ったように

 「駄目、駄目。言っちゃ駄目なの」

 と止めにかかりました。

 何がなんだかよくわかりませんでした。そこで1時間目の休み時間、小村君に聞きました。

 「朝、女子が言ってたの、なんなの?」

 「バカ! 小さな声でしゃべれよ」

 「うん」

 「あれは、奈津子だぜ」

 「なっちゃんが?」

 「そうに決まってるじゃん」

 「一体、何をするつもりなんだろ?」

 「なんか、罰ゲームみたいだろ。きっと奈津子に罰ゲームするんだよ」

 「どういうやつ?」

 「しらねー」

 「教えてよ」

 「だから、俺も知らないって。もし、どうしても知りたいなら、放課後に何かやるとか言ってたから、水泳部の部室に行ったら?」

 水泳部の部室は、うちのクラスの女子が放課後に時々遊んでいる場所です。

 「しかし、本当になにがあるんだろうね?」

 そう僕が聞くと、

 「裸で水泳!」

 と、小村君がとんでもない事を言いました。

 「えー! は、裸で!?」

 水泳部では、夏休みに男子や女子を全裸で水泳させたって噂がありました。でも今は秋で水泳をするには寒すぎるし、それに夏休みじゃないので生徒がときどきプールの前を通りがかります。

 「ほんとに、そんな事するのかな」

 「馬鹿だな。いくらなんでもそんな事、するわけないじゃん」

 そう言って、小村君は行ってしまいました。僕をからかっていただけみたいです。

 放課後、僕は細井君を誘いました。

 「一緒に見に行かない?」

 「どうやって?」

 「外から音とか聞いて、何やってるか調べるんだ」

 女子水泳部の部室は、部室といっても、水泳の授業のときは女子更衣室なのです。だから、部室といっても、僕たちには入れないんです。

 「でも、まずくない?」

 「それは、そうだけど」

 お互い、見つかったときの事を考えてしまいます。それに細井君は、あまり乗り気じゃないみたいです。

 すると河田君たちが、駆け足で教室を出ていきました。

 「高崎君、みんな見に行くんじゃない?」

 「よし、いこうよ」

 みんなも行くなら心配ありません。

 部室の裏手には、8人くらい集まっていて、しめったコンクリートの壁に耳をつけていました。上には換気扇と半開きの窓がありますが、とても届きません。僕も耳をつけましたが、何かぼそぼそという声がきこえたり、ときどき大きな笑い声が聞こえたりしていました。それなら普通なのですが、時々、応援のようなかけ声まで聞こえてきます。何を言ってるのか、何をしているのか、さっぱりわかりません。

 すると、小村君が高所平均台を持ってきました。一番高くすれば、かなりの高さになります。ここに乗れば、上の換気扇からのぞけるはずです。

 「ナイス、小村!」

 女子に聞こえないように小さな声で河田君は言うと、一番良い場所に乗りました。その隣に中野君が乗ります。高橋君が、その次に良い場所に乗ろうとすると、

 「俺がもってきたんじゃん」

 といって、小村君が3番目に良い場所に乗りました。その次に良い場所に、野球部の市川君が乗ったので、僕もすかさず台に乗りました。ほとんど全員が乗ったので、台がギシギシいっています。

 換気扇のところから、中をのぞきました。水の匂いと、女の子特有の匂いがむっと鼻につきます。中は電球が一つしかないので、薄暗くなっていました。着替えのときに、恥ずかしくないようにわざと暗くしているそうですが、外からみると、ちょっと不思議な雰囲気があります。

 「体操着! 体操着!」

 10人くらいのクラスの女の子がみんなで声をあげていました。そして女の子の前に一人の女の子が立っていました。背中を向けていますが、髪型と、ときどき顔を動かすときに見える横顔で、なっちゃんだとわかりました。

 なっちゃんは、セーラー服の上を脱いでいました。セーラー服の下には体操着をきているので、体操着にセーラー服のスカートになっています。

 何をやってるのか、さっぱりわからないけど、みんな明るい顔をしていて、楽しそうな雰囲気です。

 「いくよーーー」

 そう言ってなっちゃんは、体操着を脱ぎ始めました。ちょっとだぼっとした体操着を脱ぐと、下は青いブラジャーだけでした。こちらからは良く見えないけど、なっちゃんの胸はかなり大きいんです。

 女の子が一斉にさわぎだします。

 「だっちゅーの、やって」

 と素子ちゃんが言うと、なっちゃんは、

 「だっちゅーの」

 と前屈みになりました。

 前屈みになったため、僕たちからは、おしりのでっぱりが良く見えるんです。正面をむいているから胸は見えないけど、とてもHな感じなのです。

 「むぎゅ、やって」

 別の子がいうと、なっちゃんは、同じように前屈みになります。そして腕で胸を圧迫しました。僕たちからは見えないけど、きっとブラジャーからは胸がだいぶはみだしているはずです。

 そのうち、女の子がかけ声をあげはじめました。

 「ブーラ! ブーラ! ブーラ!」

 ブーラが何のことがわかりませんでしたが、やがてなっちゃんが照れながらブラジャーを脱いで、ようやくわかりました。ブラジャーを言っているのです。

 なっちゃんがブラジャーを脱ぐと、女の子たちは目を大きくあけて、とても楽しそうにしています。すこし女の子は騒いでいましたが、すぐに女の子たちのかけ声が始まりました。

 「パンツ! パンツ! パンツ!」

 僕はつばを飲み込みました。なっちゃんは、あっさり下着を脱いで、スカートのポケットに下着を入れました。ちょっとしか見えなかったけど、白い下着でした。

 「スカート短くして」

 素子ちゃんが言うと、なっちゃんは

 「しょうがないなあ」

 といって、スカートの元の部分をまいていって、短くしていきました。僕たちは上から見ているのでまったく見えないけど、女の子たちからはもう少しで見えそうなくらいのはずです。

 女の子は口々に、

 「ひゅー」

 とか、

 「きゃー」

 とか、わけのわからない声をあげています。

 亜紀ちゃんがちょっとHっぽく、

 「ねぇ、ぷるぷる、ぷるぷる」

 と言いました。すると女の子たちが一斉に、

 「ぷーるぷる! ぷーるぷる!」

 と言い出しました。

 「じゃあ、ぷるぷるね」

 そういって、なっちゃんが体を左右に小刻みに数秒ほどふりました。

 「うわー」

 女の子が一斉に顔を見合わせます。

 「横向きでやって」

 素子ちゃんがそうリクエストをしました。すると、なんとなっちゃんが横を向いたのです。胸が丸見えでした。きれいな乳首をしていて、胸がはっています。大人の女性のヌード写真を見たけど、あれほどはっていませんでした。

 なっちゃんが、

 「横向きぷるぷる」

 と言って、体を前後に揺らしました。すごい光景でした。胸がこきざみにふくらんだり、へっこんだりするのです。しかも横からみているので、すごく良くわかるのです。

 「チアリーダー、チアリーダー」

 女の子がかけ声をあげました。

 すると、っちゃんは、リクエストに応えて、チアリーダーのまねをしたり、一回だけ足をふりあげたりしています。足を振り上げたとき、お尻がちらりと見えました。薄暗い中に、ゆでたまごのように白いお尻が、ものすごく色っぽかったのです。

 そしてなっちゃんがリクエストに応えて、チアリーダーのようなダンスを踊りながら、みんなの周りをぐるぐると回りました。

 ところが今までなら誰からでも、なっちゃんが見えていたので、視線がなっちゃんに集中していたのですが、なっちゃんがみんなの周りをぐるぐる回ると、見えない人が見える場所を求めて移動したりするのです。すると、僕たちが目に入ったようなのです。

 「ちかーん!」

 そう誰かが叫びました。すごい金切り声でした。同じクラスなので声はわかるはずなのに、全然わからないくらい、いつもの声とは違います。

 あわてて、何人かの女の子はなっちゃんの周りに集まってなっちゃんが見えないようにガードします。そして素子ちゃんなどが、掃除道具などを投げたのです。僕たちはあわてて、そこから逃げ出しました。

 次の日の次の日に小村君に聞くと、小村君は、

 「罰ゲームでやらされたんだよ」

 と教えてくれました。

 「どんな罰ゲームなの?」

 「ストリップ」

 僕はようやくわかりました。あれはストリップだったのです。

 「でも、なんでやらされたの? なっちゃんって嫌われてるの?」

 「早く終わった日があったじゃん。その日の放課後に素子ちゃんのあそこをさわったからだよ。別に嫌われてはいないんじゃん。つーか、女子で一番嫌われてるのって孝子でしょ?」

 孝子ちゃんはクラスで何かをするときに、あまり何もせず後ろにいたりするので、嫌われてるそうなのです。

 (解剖しようよ4  おしまい)