「女子大寮に掟ができるまで2」

人物紹介

・ダミアン 事件のリーダー4年生

・リーン  被害者、銃で両腕をうたれる。

・ソフィア 掃除用のロッカーにファミーとともに逃げ込む。

・ファミー ソフィアとともに逃げた子。

 

 寮は地獄絵図とかしていた。2階の窓から大声で叫び、助けを呼ぶものもいたが、寮の敷地が広く、外部に聞こえることはなかった。

 8人の男たちは、ゆっくりと二階へとあがっていった。次々と部屋をのぞいていが、女子学生の姿が見えない。一番奥の208号室までいく。

 「ここにいるはずだ」

 リーダーのダミアンが言った。ダミアンが部屋をあける。突然、一人の女子学生が、椅子をもって殴りかかってきた。

 「軍属あがりをなめるな!」

 そう怒鳴りながらダミアンは半歩前進し、片手で椅子を押さえる。右足がすっと動く。そのまま強烈なハイキックをくらわせる。彼女のあごの骨が折れた。

 部屋には、20名あまりの女子学生が隠れていた。彼らは、彼女らをベッドの下などから引きづり出し、次々とレイプしていく。

 やがて射精しなくなると、単に性器を出し入れするだけになった。勃起した男性器を挿入し、数回のピストンを運動をすると、次の女性に移っていった。女子学生の精神を陵辱する事が目的のレイプだった。

 「次は一階だ」

 一階に行き、食堂に隠れている女子学生をレイプしていく。

 彼女らが助かったのは、彼らが侵入してから3時間後だった。恐怖のあまり、半狂乱となって寮を窓から出てしまった女子学生を威嚇するため銃を使ったのを、付近の住民が聞き、警察に通報したのだ。

 寮生50名のうち、ほぼ全員がレイプの被害をうけ、隠れているなどして助かったソフィアやファミーたち4名だけだった。彼女らも恐怖のあまり、ぶるぶる震えていた。

 一方、男子学生であるが、逮捕され連行される時でさえ、女子寮に向かって中指をたてるなど、挑発的な行動を繰り返した。男子寮からその様子をみている学生たちが、一斉に彼らに向かって拍手し、歓喜の声をあげた。一方、女子学生は、病院に行くために警察に付き添われながら寮から出てくると、激しい罵声を浴びせられた。

 英雄となった12名を、残った学生たちは賞賛し、敬い、崇拝した。

 

 悪夢から半年が過ぎ、大学に新入生を迎える時期がやってきた。

 新入生は、男女あわせて180名。いずれも、優秀で、将来国のリーダーになれる素質を持つ有望な学生ばかりである。

 はじめに男子学生たちの入学式が行われた。

 参列者の中には、文部大臣、国務大臣、国防大臣、国軍総括本部長、参謀本部長、上級大将、上院議長、国家再生委員会議長など、そうそうたるメンバーが顔をそろえた。

 男子学生の入学式がおわると、入れ替えに女子学生の入学式がはじまる。参列者は、数が少なくなり、文部大臣と、上院議長くらいになる。

 新入生は、美しいものが多かった。この国では骨格のせいか、美しい人が多い。大学生ともなれば、その美しさから、欧米の人間から引っ張りだこになる。

 その中でもアルテミスの美しさは際だっていた。背はやや高く、長い金色の髪は腰まで届き、その美しさは神のたて琴をおもわせた。腰はくびれ、強く抱きしめれば折れてしまいそうだった。胸は普通くらいだが、そのやわらかさ、肌のきめの細かさは高級絹のようだった。もっとも、それにふれたものは、アルテミス本人以外いないのであるが。

 その隣にいるのは、フィロソマ。アルテミスとは対称的に、髪は短くかりあげており、こちらはかなりの長身で、一見すると男子学生のようにも見える。

 生徒指導の男性教官は、フィロソマのその姿をみると、彼女の名前のところに丸印をつけた。

 「特別指導生がまた一人」

 特別指導生とは、もっとも重点をおいて、指導する生徒であり、寮が主体となって、徹底した指導を行っていく。

 ただ彼女は一つ、勘違いをしていた。彼女が丸をつけたのは、彼女が選んだフィロソマではなく、その隣のアルテミスだったのだ。

 もっとも、60をすぎ、老眼が進みつつある彼に、その失敗をせめるのは酷というものだろう。この国では、教官とはいえ、眼鏡のような高価なものを買うのは一苦労なのだ。

 

 アルテミスが入ったのは第3学生寮だった。半年前に事件がおきたあの寮である。

 寮監は55歳の女性教官である。背はすらりと高い。肉は少なく、手の骨がところどころ浮き出てみえ、薄いブラウンの髪にはわずかに白いものがまじっていた。

 寮監は入寮生12名を食堂に集めた。食堂の後ろには、寮の先輩たち、38名がずらりと並ぶ。

 寮監は、入寮の心得を話した。

 「この大学では寮に入り、心身ともに、国の中枢を担うにふさわしい人間にならなければなりません。大学は、学問の場ととらわれがちですが、優れた能力は、優れた精神があってはじめて生かされるのです」

 この国では、昨年、大学がまた2つ、名前を変えた。こうしないと、海外や卒業生から、大学生が狙われるからだ。狙われた学生は、やがて将来への夢をもち、国を捨て、海外に出ていく。

 そのため彼女の言う優れた精神というのは、愛国心を含んでいるのだろう。

 「すぐれた精神は、寮によって担われる。これが大学の考えです。あなたがたも、よく先輩の言うことには従うように」

 30秒ほど、寮監は黙った。食堂が重い沈黙につつまれる。

 沈黙をやぶったのは、上級生の方から放たれた野太い声であった。

 「返事しないか!」

 声の主は、3年生のゲオルガトスだった。鬼のような顔で後ろから新入生をにらんでいる。やや太っているが、武道で鍛えたため、脂肪がついた感じはしない。

 新入生は、びっくりして声がでない。

 3年生のエアリセスがたちあがった。手には細い鞭をもっている。彼女はゆっくりと部屋を一周しながら言った。

 「寮監先生には、きちんと返事をするように」

 ようやく新入生が返事をした。

 「はい!」

 上級生は、すべて下級生を指導する役目をおっている。今年から部屋はすべて2人部屋になったが、同室には必ず上級生と下級生でくまされる。その上級生が一番直接的な指導をおこなっている。二人部屋になったのは、半年前の事件により、夜、うなされるものが多くいたため、同室のものが眠れなくなるため、やむなく壁を増設したためだ。

 おかげで指導は徹底され、日常の細かいところまで行き届くようになり、それが良い方へと作用していた。

 そういった生活指導の責任者が、生活指導委員と、寮長、副寮長の3人である。エアリセスは、生活指導委員となっている。そのため、さきほどのような場面では出ていかなければならないのだ。

 ゲオルガトスは、そういった役には選ばれていないが、筋肉質の体格のため、前面に出て指導する事が多くなっている。

 寮監は、最後にこう締めくくった。

 「寮では、上級生に従うのは当然のことです。それはほかの2年生、3年生の方も同じです。わかりましたね」

 すると、50名全員が一斉に返事をした。

 「はい」

 

 続いて生活指導委員のエアリセスが生活についての注意を1時間30分にあまり述べた。それから何人か、先輩たちが話をしたりして、続いて寮生の自己紹介になる。

 最初は、新入生の一人が立った。

 突然、指名された生徒は、何度かつかえながらも、出身地、家族構成、高校名、家系、親族一同の職業などを話した。

 続いて、上級生が自己紹介をした。同じ内容だが、話はよどみなく、スムーズで、まとまっていた。

 「あとに発表したかたが、良い自己紹介だったと思う人は手をあげなさい」

 寮監が言うと、一斉に上級生全員が手をあげた。

 新入生も、少しずつ手を挙げる。

 こうして交互に発表するたびに、どちらのが優れているか聞いた。みな上級生に手を挙げたが、アルテミスが発表したときだけは、何人かの生徒が彼女に票を入れた。アルテミスは、頭がよく聡明だったためだ。

 集会がおわったあと、アルテミスは隣に座った新入生に言った。

 「なんだか、怖いわ」

 すると、隣の子は、怖い顔をして言った。

 「世の中には、もっと怖いことがあるのよ」

 隣の子は、ずいぶんやつれた感じがする子だった。

 「わたし、アルテミス。よろしくね」

 自己紹介はおわったが、念のため自己紹介した。彼女はだまっていた。

 「お互い、もう一度、自己紹介しましょうよ」

 アルテミスが言うと、彼女は言った。

 「わたしはソフィア」

 

 集会のあと、寮監は寮長、副寮長、生活指導委員の3人をよんで言った。

 「アルテミスを、きちんと指導するように」

 そのあと寮監は、紅茶を入れた。紅茶を入れる時間が長くなったため、いつもより、ほんのすこし濃くなっている。大変な仕事をしたあとには、濃い紅茶を飲むのが彼女のくせだった。長い間、海外で寮を任されてきた彼女は、その経験から最初が肝心だという事をよく知っていた。

 彼女は半年前の事件が起きたときは、寮の運営能力をみがくため海外で仕事をしていた。事件は、国にいる妹より知らされた。妹が、わざわざ空港までいき、そこから妹にとっては、結構な金を使い、電話をかけてきたのだ。

 半年後、国に戻り、事件のあった寮の寮長となった。

 

 アルテミスの部屋は233号室。部屋が増えたため、ここが一番奥の部屋になっている。

 ドアをあけ、部屋に入った。

 「失礼します」

 中にいたのは、ゲオルガトスだった。

 ゲオルガトスは、上半身裸になると、丸椅子の上にどんと座ると言った。

 「アルテミスだったね。今日は武道の稽古で疲れてんだ。マッサージしな」

 (女子大寮に掟ができるまで2  おしまい)