VOL.3
コラム「華麗なるロックンロール侯爵(マイケル・デ・バレス編)」(小松崎)

 先日、スウィング・キャッツなるスウィング・ロック・グループのライナーノーツ原稿を執筆していた時のことだ。資料として渡されたカセットテープに目をやると、「ゲスト:マイケル・デ・バレス」のクレジットが飛び込んできた。それを見て思わず僕は息を呑んでしまったのだ。おなつかしや、デ・バレス様。
このHPをご覧頂いている方はきっと若いロック・ファンばかりだろう。だからマイケル・デ・バレスについて説明しておこう。デ・バレスは、あのB級グラム・ロック・バンド、シルヴァーヘッドのシンガーとして極東の一島国で、73年頃にチョットした人気を誇ったオトコである。さて、シルヴァーヘッドだが、アルバムはシルヴァーヘッドとして2枚、そしてマイケル・デ・バレス&シルヴァーヘッドとして日本のみで発売されたライヴ盤を1枚、計3枚残している。レコード・デビューは英国のパープル・レコードからで、日本では東芝EMIを通じて発売された。
 今、手元にあるシルヴァーヘッドの当時のデビュー盤『恐るべきシルバーヘッド』(東芝:EOP−80775)だが、なんといってもブックレットが豪華だ。16頁で、歌詞対訳はモチロンだが、注目したいのは当時の音楽評論家、ファッション評論家、ラジオのディスクジョッキーらがこぞって彼らの音楽について論じていることだ。「男がお化粧する時ーラメ感覚の挑戦」「シルバーヘッドー無邪気な恐るべきピカレスク」「”妖し”という言葉の持つ魅惑的な響き...」「ロック・ミュージックにおけるシルバーヘッド、出生の秘密」、そういったタイトルで、あまりにも難解で今読んじゃうと赤面しちゃうような文章がこれでもか、これでもか、と綴られていくのだ。まあ、今の若い方には馴染みがないかもしれないが、当時はこういったライナーノーツが超最先端でカッコイイとされていたのだ(でもって、僕は今でもこういったライナーって結構好きです)。
 話が横道にそれちゃったが、この豪華ブックレットからして、当時の東芝がシルヴァーヘッドを「ポストT.レックス」として売り出そうとしていた、その意気込みが分かるだろう。しかし、結果は?
 まあ、日本ではそこそこ盛り上がったんだけども、肝心のイギリスではまったく売れなかったんだよね。今聴くとグラム・ロックの持つキッチュな魅力が、ちょっと希薄だったんだろう。とはいえ、彼らのケバくて妖しいハード・ロックは僕個人としては、ニューヨーク・ドールスやハノイ・ロックスよりも断然好きなのだが(「ハロー・ニューヨーク」とかの隠れた名曲もあるしね)。でも時代は彼らを受け入れなかったってことだ。かくしてシルヴァーヘッドは、カルトどころか哀れな泡沫バンドとして埋もれてしまったわけだ。

 シルヴァーヘッド解散後のデ・バレスは、ディテクティヴを経てソロ活動をするも、まったく売れずに泡沫街道をひた走る。そんなデ・バレスにスポットライトの当たる日がついに訪れたっ!と思われたのは80年代中頃。そう、あのパワー・ステーションのヴォーカリストの座を彼は遂にモノにしたのだった。とはいえ、これがまたロバート・パーマーの代役(笑)で、しかもライヴのみの限定シンガー(笑)。僕もこのニュースを知った時は、思わずデ・バレス君に同情しちゃったよ。
  そんな彼が今度はスウィング・キャッツにゲスト参加。で、彼の歌うプレスリー・カヴァーの「好きにならずにいられない」を聴いてみたんだけれども、やっぱ隠そうとしてもその泡沫っぽさは隠せませんでしたワ(笑)。やるなぁ、デ・バレス君。
  さて、そんな永遠の泡沫ロッカー、デ・バレス君だが不思議と場末っぽさは感じられないのだ。もうとことん優雅にノホホン、ノホホンとマイペースで音楽活動を続けている雰囲気がにじみ出てるんだよね。それもそのはず、なんたってデ・バレス君は正真正銘の貴族なのだ、それもフランス系貴族で侯爵ときてる。公侯伯子男だから上から2番目。だからデ・バレス君なんて呼び方は無礼そのものデ・バレス侯ですな。
  しかもデ・バレス侯が爵位を継承したのは、シルヴァーヘッドでデビューする前だったそうだ。ということは有り余る財産と名誉を持ちながら「はるぅ、にゅーよ〜っ」ってシャウトしてたってことだ。やるなぁ、デ・バレス侯!そう、ハングリー精神だけがロッカーになる為の条件にあらずなのだっ。って、その割には泡沫なんだけども(笑)。僕もデ・バレス侯みたいになりたいよ。僕をニューヨークまでリムジンと飛行機(当然ファーストクラス)で連れてっておくれ!!(笑)。

  さて、そんなデ・バレス侯だが、シルヴァーヘッド結成以前の67年には、ナント映画『いつも心に太陽を(TO SIR WITH LOVE)』に生徒役で出演もしてるのだ。シドニー・ポワチエがロンドンのダウンタウンの高校教師役で主演のこの映画には、他にも歌手のルルや『茂みの中の欲望』でのヒロイン役で知られるジュディ・ギーシン、さらにはマインドベンダーズらが出演してるが、我等が侯爵(当時は御曹司か)もまた労働者階級の生徒役で出ております。実際の立場と演じた役とのギャップが激しいよね。『いつも心に太陽を』は、いわゆる青春映画というか学園モノだが、甘酸っぱいスウィンギング・ロンドンの輝きに満ちた雰囲気が最高の作品だ。ビデオ化もされてるので、是非みなさんも見て、デ・バレス侯の演技ぶりを堪能していただきたい。そうそうこの映画といえば、主役のポワチエは55年にはアメリカ映画『暴力教室』では、不良少年のリーダー格に扮してました。それが12年後のこの作品では教師役に。なんてことも考えながら見てみると面白いかも。
  でもってシルヴァーヘッドのアルバム2枚は日本でもMSIさんからボーナストラック付きでCD化されている。「ハロー・ニューヨーク」はホントにオススメのナンバーなんで、こちらも聴いてみてね。

(2000.1.14)