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(小松崎):というワケで新春第1弾企画ということで、対談です。今回は60年代の英国ロック映画を賑わした女優さんたちをテーマにしてみました。まぁ、音楽の趣味は加藤さんと僕は大体一緒なんですが、当然のことながらこと女性の趣味となるとやや違う、と(笑)。
(加藤):そうなんだよねぇ〜(笑)。そういえば、今からもう6年近く前になるのかな、2人でスタジオ・ボイス誌の「ヒア・カム・ザ・ガールズ」特集に書かせてもらったことあったよね?

(小):そうそう、スタジオ・ボイスの225号(94年9月発行、絶版)。あれ、あっという間に売り切れちゃったんですよね。
(加):あの特集の中でも、結構好みのアクトレスについて1人1人力説したんだけど、本当に60年代の英国女優ってロックを感じさせるというか、もうとことんボクの肌にフィットするんだよね。
(小):そもそも加藤さんが、いわゆるロック映画に目覚めたキッカケって何だったんですか?僕の場合はテレビの深夜映画だったんですが。
(加):深夜映画の力もそりゃ大きかったねぇ。ちょうど深夜のテレビ番組で60年代の映画を放送するようになったのって、75、6年くらいからじゃない?あの頃ってもう60年代のたたき売り状態だったよね。
(小):権利も安かったんでしょう。今じゃカルトとされるような映画が、12チャンネルあたりで垂れ流しされてましたもんね。
(加):ホント、あの頃に家庭用のビデオ・デッキがあったらなあって思うよ。最高のラインナップだったよ。もう、ロック、映画、ファッションと、自分のアンテナに合うものがひとつで結ばれたというのを実感させてくれたワケだしね。
(小):しかもキーワードが1960年代だったワケでしょ?
(加):そうだね。ただボクの場合は、深夜映画以前に10才くらいの頃に、地元の熊谷の「文映」っていう映画館で見た2本立て『小さな恋のメロディー』と『フレンズ:ポールとミッシェル』が最初の扉を開けてくれた、原体験みたいなものだったね。『恋メロ』は、主人公2人がママゴト結婚式を挙げてトロッコに乗ってくところで終わるじゃない?
(小):それに対して『フレンズ』は、10代の少年少女が出会って妊娠までしちゃいますからねぇ。
(加):そうそう、だからスゲエ2本立てでしょ。もう4時間の上映時間の間に、子供からオトナへ、少年から青年へ、理想から現実へ、と見せ付けてくれたワケなのよ。まだ10才の加藤少年に(笑)。
(小):でもって、映画の中ではビー・ジーズやらエルトン・ジョンやらがテンコ盛りでしたからね。
(加):当時はまだビートルズに目覚める前だったけれども、もうそれ以前にロックを肌で知ったんだよね、あの当時にさ。これはデカかったなぁ。だから今に至るまで、こういった映像がロックの力を借りてバイブレイトされてる映画は大好きだな。
(小):『恋メロ』といえば、やっぱトレイシー・ハイドでしょ。あの映画が日本でだけヒットしたおかげで、その後大した役にも恵まれずに引退してOLになってからも、日本の映画雑誌じゃ70年代を通して人気投票でトップを走ってましたからね。僕の周りにも、下敷きに写真入れたりノートに貼ったりといった、トレイシスト(笑)は大勢いましたよ。
(加):でも、今見てみると大して可愛くないんだよね(笑)。これは時代の宿命なんだけどさ。
(小):ホントホント、80年代の日本のアイドルなんかでも”なんで、こいつがアイドルだったんだ?”みたいなのいますもんね。聖子チャン・カットなんて今やってたら笑いもんですよ(笑)。まあそれはそうと、当時は僕もトレイシー・ハイドにホの字でしたよ、白状しますが。
(加):ボクは断然、『フレンズ』に出てたアニセー・アルビナだったな。トレイシーはマジメで清楚すぎるんだよ。それに対してアニセーには裏で何やってるか判らないワルなイメージがあって、そこに子供心ながらもノクアウトさせられちゃったのよ(笑)。『さらば青春の光』のステフ役だったレスリー・アッシュだってかなり悪そうじゃない?まあ、このあたりにボクら2人の理想の女性像の決定的な違いがあるんだよね(笑)。
(小):僕は60年代のイギリスの女優っていうと、一番好きなのが『ふたりだけの窓』や『トゥイステッド・ナーヴ』に出たヘイリー・ミルスなんですよ。まあ、今の音楽ファンにはクーラ・シェイカーのお母さんといったほうが判りやすいかな。でもなかなか、加藤さんの賛同は得られない(笑)。
(加):ヘイリーってさ、イギリスを代表する俳優サー・ジョン・ミルスの娘じゃない?そのあたり育ちが良すぎるっていうか、なんかこう優雅な芸能一家みたいなイメージがあってボクにはダメなんだよね。
(小):松たか子みたいなもんでしょうか(笑)。
(加):まさにそう(笑)。なんたって”サー”の娘だもん。
(小):でも加藤さんがイチ押しするマリアンヌ・フェイスフルだってドイツの男爵家の血筋ですよ。
(加):確かに貴族の出だよ。でもマリアンヌの場合もアニセー・アルビナ同様に、”裏じゃ何やってるか分からない系”(笑)なんだよ。小悪魔的でいながらもなにかこう不幸を背負った感じがあるじゃない?そこで行くと、ヘイリー・ミルスはトレイシー・ハイドに近いよね。健康的すぎるというか。
(小):なるほど。キネマ旬報から出てるマリアンヌの伝記本なんか読むと、ホントに不幸を背負ってますよね。でも、彼女の場合日本だと、ミック・ジャガーに棄てられたオンナってイメージが強いんですが、この本を読むと彼女の方が棄てたようですね。まあ、78年のカムバック後は、その不幸なイメージを彼女のほうがむしろ逆手にとってるような感じもありますけどね。最近じゃクルト・ワイルやったりしてますけど、聴かれたりします?
(加):いや、ボクの場合、マリアンヌが好きといっても、あくまでも60年代に限ってだからね。映画女優としても歌手としてもその時代に限定されるよ。
(小):アラン・ドロンとの映画『あの胸にもういちど』のラストはショッキングでしたよね。『失楽園』なんて、アレに比べたら子供騙しですよ。
(加):あの映画での人妻レベッカ役がオレのマリアンヌ像を象徴してるんだ。普段は貞淑な人妻、しかしその裏では?、だもんね。
(小):そういえばホリーズの「キャリー・アン」って曲はマリアンヌのことを歌ったそうですよ。
(加):そうなんだぁ、今度、歌詞をジックリ読んでみるよ。
(小):ビートルズ絡みの映画女優はどうでしょう。僕はリンゴが出演した映画『キャンディ』のエヴァ・オーリンとかイイと思いますよ。アレ一本で消えちゃいましたが。ちょっとバカっぽいルックスとか(笑)、オトコ心をそそりますなぁ。
(加)エヴァも北欧系だし、ルックスもイイ線行ってるんだけども、でも、女優としての華がないんだよなぁ。ボクの場合はね、断然、ジェーン・アッシャー。ポールのフィアンセで『きんぽうげ』とかにも出演したんだ。ジョンのシンシアにヨーコ、ポールのジェーンにリンダ、ジョージのパティにオリビア、リンゴのモーリンにバーバラ・バックといったビートル・ワイフたちの中でもイチバン好きだね。
(小):ジェーン・アッシャーはどうしても兄貴のピーター・アッシャーの顔が浮かんじゃって僕はダメですね(笑)。僕なら断然、パティですよ。「サムシング」の頃のケバイルックスにはクラプトンならずとも、”ガッチュ・オン・マイ・ニーズ”させたくなっちゃいますよ、オトコとしては(笑)。
(加):ヘイリー路線のコマッチャンにしては珍しい発言だねぇ(笑)。
(小):ジョージでいくと、彼がサントラを手掛けた映画『ワンダーウォール(不思議の壁)』で主演を張ったジェーン・バーキンは如何ですか?
(加):これがダメなんだよねぇ。『ナック』や『欲望』に出てた頃もダメだったし、セルジュ・ゲンズブールの飼い猫になってからもダメ。60年代の英国女優は大体オーケーなんだけど、バーキンとヴァネッサ・レッドグレイヴだけはどうしてもダメなの(笑)。まあ、ジェーン・アッシャーの話に戻ると、ポールと婚約解消する時のコメントがイカしてるんだよ。だって”ポールはワガママな人よ”で婚約破棄だもん。ねっ、マリアンヌやアニセー・セルビナ、レスリー・アッシュと繋がるでしょ(笑)。
(1999.11.25、フジパシフィック音楽出版にて)
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