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Why did you go ? Why did you go alone, Leslie ?


2003年4月1日。こんなに明るい春の日に、あなたは行ってしまった。誰にもその理由を告げずに黙って行ってしまった。
レスリーのステージを見ていて、多くの人の熱狂的な愛を一人占めする彼の姿に、「こんなに多くの人に愛される代わりに彼が失うものは何なんだろう。」という不吉な思いがふとよぎったことがあった。愛に殺されたレスリー?
''Who killed Cock Robin?
I, said the Sparrow,
With my bow and arrow,
I killed Cock Robin.''
歌手としての活動に終止符をうち、あの時からまるで終わりの準備をしていたかのよう。自らの絶頂期が過ぎて行くのを、誰よりもよく知っていたのはレスリー自身だったのだろうか。誰もが諦念をもって受け入れざるをえないこの「生」、でもそれは彼にとってたやすい事ではなかった。表向きの強気な姿が、実は弱さや繊細さの裏返しだったことに今改めて気づかされ、彼の味わった苦悩が生々しく私たちを襲う。生きるというのは、繊細さを失ってゆく過程だから。
悲しい葬儀だった。白い花に飾られた小さな車に乗せられ、ただの「写真」になって、レスリーは行ってしまった。おりしも街を襲う伝染病を怖れてマスクをした人々が手をふる姿は、何か現実離れした不思議な光景で、これがほんとうに起こってしまった出来事なのだと、にわかには信じることができない。
遠い明星でありながら、全ての人にとって「私のレスリー」だった。香港で見かけたあの明るく無邪気な笑顔と、苦悩する姿が、どうしても結びつかない。現実の彼に不幸の影は感じられなかった。
でも..。卓越した俳優であったことは、レスリーの存在をより苦しいものにしたのだろうか。「覇王別姫」や「阿飛正傳」、「ブエノスアイレス」の痛々しく、息苦しいほどに魅力的な人物は、生身のレスリーを侵食して、彼の存在自体をより困難なものにしたのかもしれない。もちろん、本当のレスリーが何を感じていたのか、今ではもう知るよしもないのだけれど。年齢も性別も定かでない曖昧な存在は、仮面を被ったまま黙って舞台から消えてしまった。
あの天使のように美しかったレスリーは、もうどこにもいない。その体は無残にも地面に打ちつけられて、粉々に砕け散った。 ホテルの前には無数の花が捧げられて、そこはまるでお花畑のようだった。声にならない悲鳴が聞こえてくるようで、そっと耳に手を当てる。
全てをやり尽くした後の虚脱感。確かにレスリーはその魅力の全てを私達に見せてくれた。その後、方向感を見失ってしまったとしても、どうして彼を責められよう。「何も悪いことはしなかったのに、どうしてこうなったのかな」という彼らしい無邪気な言葉が、私達の胸につきささる。過酷な運命は、レスリー自身にとっても不可解な謎だったに違いない。
香港。レスリーの思い出だけがつまった街。あの街にもう一度行けるだろうか。かつて歩いたあの街角を、もういちど歩けるだろうか。
Apr.10,2003
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