TOKYO FILMeX 2002 (Dec.1 - 8,2002 ) Vol.2
もちろん退屈な映画ばかりじゃなかった。そしてそれはやっぱり韓国映画だった。まず「チング」のクアク・キョンテク監督とユ・オソンが再びコンビを組んだ『チャンピオン』。「チング」程の完成度は無い。それでもこの監督は韓国人の「痛み」を実に感動的に描くのだ。実在のボクサー、キム・ドゥックがラスベガスで行われたWBAライト級世界タイトルマッチで、打ちのめされ半死状態で担架に乗せられてゆく。その様子をテレビで実際に見た17歳のクアク・キョンテク自身が感じた、悲しみ、やりきれなさ。それがこの映画の中から確かに伝わってくる。それは痛みであり、行き場のない怒りであったに違いない。貧しく、理不尽だった過去−それは、どうしても語る必要があった。その必然性がこの映画にはある。感傷的すぎるかもしれない。それでも私は、俳優ユ・オソンによって体現された言いようのない悲しみに深く共感を覚える。「チング」も「チャンピオン」も、ユ・オソンの存在抜きには決して語れないだろう。素晴らしい役者である。 TOKYO FILMeX 2002 (Dec.1 - 8,2002 ) Vol.1
オープニングの『エルミタージュ幻想』 Russian Ark(ロシアの方舟)は、NHKのハイヴィジョンで放送されたものがそのまま流されたのが興ざめではあるが、このソクーロフの最新作はとっても素敵だった。90分間ワンカットで撮影された映像は、広間や廊下や階段をどこまでも奥へ奥へと進んで行き目眩を誘う。ブツブツと陰気なソクーロフのナレーションも、案内役の山羊のような男の奇怪さも、薄気味悪い音楽も、それとは反対に豪奢な舞台も、すべてが好ましい。エルミタージュの絵画の中をさまよう幻想の歴史絵巻に、ヨーロッパ文化の奥深さを感じる。 「自然」の快楽 − エリック・ロメール 晴れ渡った11月最後の週末は、久しぶりに空が高い。散歩がてらに外堀通りをぶらぶらと、東京日仏学院まで歩く。今日はエスパス・イマージュでエリック・ロメールのドキュメンタリー映画の上映。もうすぐ新作『グレースと公爵』が公開されるので(12月21日より日比谷シャンテにて)、テレビでも旧作の特集をやっているし、ロメールを愛する人には嬉しい日々。
現代の映画シリーズ エリック・ロメール、確かな証拠 (1994年/120分/ヴィデオ/カラー)
ロメールの、実に愉快なじいさんぶりに思わず吹き出しそうになる。手紙や写真やビデオやつかいこんだノートや、ポートフォリオ、いろんな器材、アマチュア風な小道具や最先端機器−隠し持ったさまざまな小道具が次々とさりげなく披露され、ロメール映画が実にロメール自身であることが感じられて楽しい。そして、溢れ出すようにしゃべるしゃべる−音楽のこと、会話、そして色、絵画、自然。ロメールの映画で一番好きなのは、その「音」の扱い方なのだが、まず「会話ははっきりと明確に聞き取れなくてはならない、そして会話は会話だけで楽しむべき、しかも同録を行っていると自然のいろんな美しい音が入って来て、そこにBGMを入れる余地がない。」とロメールは語る。自然こそが一番美しい。風の音、雨の音、街のざわめき、石畳を歩く足音、ページをめくる音...私たちを取り囲むありとあらゆる繊細で美しい音たちが、音楽のないロメール映画を実に音楽的に彩る。時には、夜明け前の完全な静寂の一瞬(「レネットとミラベル、四つの冒険」)さえ、息を呑むほど音楽的であること。そこにフランス語の豊かな会話の響きが加われば、さらに「音楽」を付け加える必要はなくなるだろう。また、ロメール映画では主人公たちの衣装に注目しなくてはならない。彼らが身に付ける色がアクセントになって、画面が実に絵画的で美しい色彩バランスを保つ。そして続ける、「すべては偶然に支配される。」と。人々は偶然に出会い、偶然の物語を紡ぎ出す。自然はめちゃくちゃだけど、その些細な偶然が悦ばしい。日々は新たな発見の連続だ。だからこそ人生は美しく、そして味わい深い。(11/30) 7th PUSAN International Film Festival (Nov.14-23,2002)
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| The Coast Guard | 「海岸線」 | 監督:Kim Ki-duk | 2002年 | 韓国 |
| The Rite ... A Passion | 監督:K.N.T.Sastry | 2001年 | インド | |
| My Beautiful Girl, Mari | 「マリ物語」 | 監督:Lee Sung-gang | 2002年 | 韓国 |
| No Blood No Tears | 「血も涙もなく」 | 監督:Ryu Seung-wan | 2002年 | 韓国 |
| Three | 「スリー」 | 監督:Peter Chan他 | 2002年 | 香港、韓国、タイ |
| Kunpan,Legend of the Warlord | 監督:Thanit Jitnakul | 2002年 | タイ | |
| Pushing Hands | 「推手」 | 監督:Ang Lee | 1991年 | 台湾 |
東京国際映画祭2002年 (Oct.26 - Nov.4,2002) Vol.3
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東京国際映画祭2002年 (Oct.26 - Nov.4,2002) Vol.2
アジア映画賞を受賞したスリランカ映画『この翼で飛べたら』は異色作だ。印象的だけど、単純に楽しめるような類の映画ではない。女でありながら男として生きる主人公は、妻もいて自動車工場で働いている。この男になりすました女に欲情する中年の医者や、男だと思い込んで近寄ってくる同僚の男など、この映画では性別がもつれあいこんがらがっている。しかし、この主人公は決して「性同一性障害」などでなく、社会的「性」(ジェンダー)としての女を自ら放棄しただけのこと。しかし、その無表情な顔はなぜかとても悲しげである。ラストの全裸シーンの「剥き出しの」光景には驚かされたが、この主人公を演じたのは監督アソカ・ハンダカマの夫人であると知り、さらに驚く。 東京国際映画祭2002年 (Oct.26 - Nov.4,2002) Vol.1
「アジアの風」部門を除いて、なんとも寂しい内容の今年の東京国際。ラインナップに明確なポリシーが感じられないのが残念。この調子だと来年はどうなるのだろう。 |
| 『荒野の絆』 Skins | コンペティション | 監督:クリス・エア | 2001年 | アメリカ |
| 『恋人』 | コンペティション | 監督:ジャン・チンミン | 2002年 | 中国 |
| 『この翼で飛べたら』 | アジアの風 | 監督:アソカ・ハンダガマ | 2002年 | スリランカ |
| 『僕、バカじゃない』 | アジアの風 | 監督:ジャック・ネオ | 2001年 | シンガポール |
| 『結婚は狂気の沙汰』 | アジアの風 | 監督:ユ・ハ | 2002年 | 韓国 |
| 『時に喜び、時に悲しみ』 | アジアの風 | 監督:カラン・ジョハール | 2001年 | インド |
| 『大酔侠』 | アジアの風 | 監督:キン・フー | 1966年 | 香港 |
| 『君が好きだから』 | アジアの風 | 監督:テイラー・ウォン | 1984年 | 香港 |
| 『達磨よ、遊ぼう』 | コリアンシネマウィーク | 監督:パク・チョルグァン | 2001年 | 韓国 |
| 『海賊、ディスコ王になる』 | コリアンシネマウィーク | 監督:キム・ドンウォン | 2002年 | 韓国 |