(111)水星…未知のままの惑星

 水星は良く知られているようで、実は最遠の惑星である冥王星に次いで未知のままの惑星である。公転軌道が太陽に一番近いところにあるので、地上から見ると太陽から角度にして27度以上離れることはない。したがって日中は強烈な太陽光のために見えにくく、また日没後や日の出前は光が大気中を昼間の10倍の距離を通過して来るために、裸眼はもちろん望遠鏡で見ても解像度が悪い。加えて水星は内惑星なので月のように満ち欠けする。その結果太陽と地球の間に入って大きく見える時でも、地上からでは主に水星の暗い面しか見えないのだ。それでは宇宙空間にあるハッブル宇宙望遠鏡を直接水星に向ければ良いかというとそうではない。わずかでも太陽の強い光がこの検出器にあたると、敏感な観測機器が破壊されてしまう危険性があるからだ。

 それでも詳しく観測したければ、探査機を直接送り込んで調べるという方法が残されている。しかし過去に水星に接近した探査機はわずかに1機だけだ。この唯一の探査機マリナー10号は、1974年から1975年にかけて3回水星に接近した。それが送信した2000枚ほどの画像から、水星表面の45%だけが地図にされているが、現在でもそれ以外の部分は全くの未知に近い。実は探査機を水星に送るのは容易なことではないのだ。太陽の巨大な重力による加速を相殺するためには、多量の燃料を必要とする。そこで金星に寄り道をして減速するという案が出てくる。しかしそれでは飛行期間が長期になり、放射線を浴びる時間が長すぎて電子機器が劣化してしまうのである。そのようなわけで高いコストとリスクのために、水星の探査計画は長い間現実化のめどが立たないままだった
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 また水星に接近したマリナー10号の軌道分析から、水星の最も奇妙な特性である異様なまでの高密度が発見された。現在では地球型惑星としてはサイズの割に最大の金属中心核を持つと考えられている。最近の理論モデルでは鉄と硫黄の液からなる薄い球殻に覆われた、温度1300Kの固体鉄が中心核であると言われている。しかしこれすらも推測の域を出ていない。この水星の日中の温度は鉛をも溶かしてしまう700K(427℃)に達するが、夜間はクリプトンも凍らせてしまう90K(−163℃)にまで冷え込んでしまう。この温度差もまた太陽系で最も極端である。またマリナー10号の観測外の水星の北極地域には、レーダー観測によって高いレーダー反射率と偏光特性を示す地域が発見されている。これは太陽光の当たらない60K以下のクレーター内部に存在する氷はではないかと考えられている。水星にも水が存在する高い可能性があるのだ。水星は未だに未知の惑星なのである。

)現在水星を観測対称とする探査計画は、マーキュリー・ポーラー・フライバイ(MPF)
  とエルメス(Hermes:水星周回軌道観測船)という2つのミッションが提案されている。


水星と地球の比較

項目 水星 地球 水星/地球
 質量(1024kg) 0.3302  5.9736  0.0553
 体積(1010km3 6.085  108.321  0.0562
 赤道半径(km) 2440  6378  0.383
 極半径(km) 2440  6356  0.384
 平均半径(km) 2440  6371  0.383
 偏平率 0.0000  0.0034  0.000
 平均密度(kg/m3 5427  5520  0.983
 重力加速度(m/s2 3.70  9.78  0.378
 重力脱出速度(km/s) 4.3  11.2  0.384
 アルベドー 0.056  0.385  0.145
 太陽輝度(w/m2 3566  1380  2.584
 平均軌道長半径(km) 58344000  149600000  0.387
 対恒星自転周期 87.969  365.256  0.241
 対太陽自転周期 87.968  365.242  0.241
 近日点(106km) 46.0  147.1  0.313
 遠日点(106km) 69.8  152.1  0.459
 平均軌道速度(km/s) 47.89  29.79  1.608
 対恒星自転周期(時間) 1407.6  23.9345  58.785
 軌道傾斜角 7.0052  0.00 
 赤道傾斜角 0.0  23.44 
       
KIN005:赤い倍音の蛇