仕上げ研磨

蜻蛉玉は曇りの中に真実を見出し、
限られた小さな空間に侘び寂びを象嵌する

トンボ玉における艶出しとは
硝子が溶融後、除冷されて手に取ってみると硝子の表面は艶やかになっている事がわかります。
蜻蛉玉の仕上げは、この光ったままの状態では、完成といえません砥石の粉、金剛砂などを使い表面のテカリを消し、まるで漆のような漆黒艶だし研磨を行います。

なぜ磨くのか?


なぜ傷一つない硝子の表面に傷をつけるような磨きをかけるのでしょうか?それには理由があります

蜻蛉玉がもてはやされた時代の日本人は、あでやかな着物やぬれた黒髪に合う装飾を好みました。
着物や黒髪の前に冷ましたばかりのトンボ玉を持って行って見ればわかりますが、光が反射してしまい蜻蛉玉の色模様が見えないばかりか、着物や帯の色との調和も取れなくなってしまいます。

蜻蛉玉は身につける事が多く玉と玉が擦れあい穴口あたりは玉ずれが起こります、物と擦れば傷がつきます、表面が光っているままの玉を知っている人は”傷物になってしまつた”と思ってしまうでしょう。

備長炭などの燃料を使う小型作業炉では、ガラスを溶かしながら加工したりする、作業温度を維持できる時間が非常に短かく、温度も完全融解させるような温度に上がらないために、十分な溶融ができず、蜻蛉玉の表面がテカリのあるような、ざらついた感じに仕上がります。(これは当方だけかもしれない?)
それを磨き上げてきれいにしていくと、何とも言えない玉に仕上がります。

たとえばコバルトによる青色の発色にはガラスの重量に対して0.01%以下の添加においても青色と認識できるだけの発色はしますが、不透明な色ガラスで構成される当方の蜻蛉玉は艶だし磨きを考慮した上で、0.5%以上の添加をするため(あまり多いと発泡してしまう)、質感がガラスというよりか、金属?のようなものになることが多い。(溶岩の一歩手前?)

熱的に酸化や還元によって表面のみ色が変わっているものを落としハッキリとした模様を出すため。
ガラス生地を溶融するときに着色剤を添加したときよりも、出来上がった透明ガラスに色を練りこんでいく方法だと若干光沢が落ちるため。

日本の硝子

日本は土と紙の文化を築いてきました。土の手作りの器が微妙に曲がっていたり歪んでいても、味があると許されるものの、硝子には一点の曇りも歪みも許されません。
陶器も硝子も同じ火の中から生まれてきたものです、炎のあたり方が強ければ陶器も硝子も曇りも歪みも生じます。
蜻蛉玉は曇りの中に真実を見出し、限られた小さな空間に侘び寂びを象嵌する硝子でありながら陶磁器の心に通じる日本人に認められた硝子

最近、弗化水素酸や硫酸の混合液に蜻蛉玉を浸し、表面の艶を消す技法(エッチング)の玉が多く見られますが、この方法では、艶を消し去るだけで、艶を出す磨きとは似て比なるものです

磨きは、地味で大変忍耐力と根気の要る仕事です。

時間はかかりますが、一つ一つ磨き上げた玉に勝るものはありません。


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