私ごとながら筆者がアコーディオンに興味を持ち始めたのは、
ライ・クーダーのテックス・メックスででした。1975年に発表されたチキン・スキン・ミュージックというアルバムでライはロックのリスナーにテックスメックスの巨匠フラコ・ヒメネスを紹介し鮮烈な印象を与えました。
テックスメックスという音楽はその名の通りテキサスに住むメキシコ系の人の(勿論昔テキサスはメキシコだった)音楽で、メキシコでは「北の音楽」を表すMusica Nortena(nの上には~が付きます)ムシカ・ノルテニャとも言われます。その音楽にアコーディオンがもたらされたのはケイジャン同様に前世紀の終わりごろドイツ系の人によってでした。ですからメキシコ系の音楽であるにも関わらずドイツ系のポルカを思わせる所もあります。
演奏されるリズムはヨーロッパのダンスビートであるポルカ、ワルツ、ショーティッシュなどに加え歌入りのランチェラ、クンビア、ボレロ、ワパンゴ(3拍子系)等ラテン系のものもあり実に多彩です。
メロディは和音で演奏されることが多く、歌ものとの兼合いで分散和音も多様されます。ボタン・アコーディオンは2ローか3ローのものが使用されます。現在多くのプレイヤーがホーナー社のコロナIIを使用していますが、最近はコロナIIのベースを抜いたポップなルックスの「ロッカディオン」やGABBANELLI社のカプラーのついたものなども多く使用されているようです。ピアノアコの奏者もいます。
演奏されるバンドのスタイルは小編成(アコーディオン、バホセストorギター、ベース、ドラム等)の「コンフント・スタイル」とその編成にホーンセクション等を加えた「オルケスタ・スタイル」に大別されますが、蛇腹ファン、蛇腹プレイヤーにとってより具体的な参考になるのはコンフント・スタイルの方かもしれません。
オムニバス
""CONJUNTO! TEXAS-MEXICAN BORDER MUSIC 1〜4
(ROUNDER CD 6023,6024,6030,6034)""
入門に手頃。とりあえずNo,4まで挙げたがまだ続々と続きはでています。
コンフントからオルケスタスタイルまで様々なバンド、アーティストを収録。
フラコ・ヒメネス Flaco Jimenez
""フラコ・ヒメネス/サンアントニオをあとにして (PCD-2512)Pヴァイン""
彼に会ったとき、彼の人生はアコーディオンを弾いているか、酒を飲んでいるか、このどちらかに費やされているんじゃないかと思えた。オフの時間でもアコーディオンを手放さないが決して芸術家肌ではなく、人のいい気配りのおじさんだ。アコーディオンは人柄をしめす様に暖かくスィートでかつノリがいい。フラコのアコーディオンは世界中どこを探してもないような音を出す。
また、このアコーディオンにはチカーノの極甘ボーカル(フレディ・フェンダー!)もよく似合う。フラコとフレディ・フェンダー、今は亡きダグ・サーム、オーギー・メイヤーズという超大物の四天王バンド、テキサス・トルネードスも最高。
スティーブ・ジョーダン Steve Jordan (Esteban Jordan)
""スティーブ・ジョーダン/ラス・コロネラス (PCD-2520)Pヴァイン""
眼帯のアコーディオン弾きとして、容姿から強烈なインパクトを与える人だが、ライブを見た印象ではラテン系にしては繊細そうな人に思えた。スタイルは非常に独特で、一部では変態アコーディオンなどとも言われている位。アコーディオンは特注チューニングでいろいろエフェクトを使っているとの事。(電気の事は詳しくないもんで)なんとステージではティンバレスも叩けばジョージ・ベンソン風のギターも弾く。
ロス・ロボス Los Lobos
""Los Lobos with Lalo Guerrero/Papa's Dream
(Music for Little People 9 42562-2)*DAVID HIDALGO""
「ラ・バンバ」というメジャーヒットを飛ばしたバンドだが、ルーツを忘れない姿勢は素晴らしい。限りない底力を感じるバンドの中のバンド。
一時期のアルバムには必ずテックスメックスのアコーディオンの曲が入っていたが、最近のものでは子供向けに作られた上記の作品がよいかも。
(
ロス・ロボスのホームページはこちら)
バレリオ・ロンゴリア Valerio Longoria
""Valerio Longoria/Caballo Viejo (Arhoolie CD 336)
初めてテックスメックスのバンドにドラムを入れた人として有名。若い頃は綿の畑で働きながらアルバイトでパーティで演奏していたという。スティーヴ・ジョーダンが彼の演奏を元に自分のスタイルを打ち立てたとも言われる。
●クラシカル
ナルシソ・マルティネス Narciso Martinez
""Narciso Martinez/Father of the Texas-Mexican Conjunto
(Arhoolie CD 361)
アルバム名の通りテックスメックスの父。TEJANO ROOTSと題したこのCDシリーズはどれもよいものばかりだ。このCDにまとめられた彼の演奏はどこか優雅で品を感じさせる。(ジャケットの写真は今でいうホーナーのポーカーワークだ)
1911年生まれ
トニー・デ・ラ・ロサ Tony De La Rosa
""Tony De La Rosa/Atotonilco 24 Original Hits(Arhoolie CD 362)""
1931年生まれ
ドン・サンチャゴ・ヒメネス Don Santiago Jimenez
""Don Santiago Jimenez/His First and Last Recordings(Arhoolie CD 414)""
フラコ・ヒメネスのお父さん。1913年生まれ。彼は自ら「私は3列のアコーディオンが弾けるけど敢えて2ローを弾く。なぜかって、それは気持ちがいいからだよ」といっている。これは3列のアコーディオンがよりモダンなスタイルを取れるのに対し、2ローのアコーディオンは独特の蛇腹さばきにより伝統的な力強さやのりを表現できることを言っているのだろう。蛇腹弾きにとっては非常に深い言葉。ちなみに3列のモダンなスタイルは息子のフラコが切り開き、フラコの弟のサンチャゴ・ジュニアが父の2列のスタイルを継承した。
参考資料
ミュージック・マガジン 1996年2月号
「スプリングスティーンが目指したアメリカの中のメキシコ・テックスメックス音楽の歴史と今(平野実)」
ミュージック・マガジン 1992年4月号
「特集・再発見! 世界を巡るアコーディオンの魅力」
ミュージック・マガジン 1988年8月号
「ライ・クーダー&フラコ・ヒメネス・インタビュー」
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