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![]() 遠い銀河からの呼び声 ( 20050718 ) このWebサイトを『水のテマティック』という名前で9年ほど前に開設しようと思い立ったきっかけの一つが『新世紀エヴァンゲリオン』だったわけだが、二十代もなかばを過ぎたいい大人が、内向的な十五歳の少年の物語にひどく感情移入した原因が、今日ようやくわかった気がする。 正確にいえば、僕は『新世紀エヴァンゲリオン』の登場人物に感情移入していたわけではなかったのだ。何気ない学校生活の日常に、不意に割り込んでくる宇宙規模の抗争。身近な知り合いの美しい女性が、実は宇宙的な重要性をもつ使命を帯びた特殊な存在であったこと。単に特殊な存在というだけでなく、人間ではない、何か他の生命体であったということ。 そしてその美しい女性をかたわらで生活する少年もやはり、重要な使命を帯びているということ。その宇宙規模の抗争や使命といったものが、千年単位に一度しか起こらない事件であること。そして主人公たちが偶然、その千年単位に一度しか起こらない事件に立ち会うこと。 その事件のために地球上の人類がほとんど死滅してしまうこと。その大事件を逃れるために、主人公たちが東京の地下に人知れず建設された、巨大なシェルターである都市に非難すること。そのシェルターが地球規模の軍隊にとっての司令塔になっていること。そして宇宙規模の抗争が、主人公たちにとっては地球を守るための戦いであること。 主人公たちとともに地球のためにたたかうその美しい女性は、純粋に地球を擁護できない複雑な立場におかれていること。つまりは、自分の出自が、実は今まさに地球を破滅させようとしている生命体であること。そして彼女が身近な人間に裏切られたことが、地球を擁護しようと決心するきっかけになっていること。そして最後にその美しい女性は、身を挺して地球を守ろうとすること。 こういった『新世紀エヴァンゲリオン』の物語がもっているさまざまな神話的構造が、松本零士『1000年女王』(1982年)と共通しているのだ。まわりくどい導入になったが、今日、23年ぶりに『1000年女王』を観た。TSUTAYAで借りたVHSテープは、最初の部分がバリバリと映像も乱れるノイズ混じりだったが、12歳のとき劇場で観たラストシーンは、意外なほど正確に記憶に残っていた。 成人した美女と美しいとは言えない少年の母性複合的な組み合わせは、『銀河鉄道999』では謎の美女メーテルと星野鉄郎、『1000年女王』では雪野弥生と雨森始という変奏で懲りずに反復されている。 担任の女教師が実は有史以来の使命を帯びた「1000年女王」だった、という物語に、12歳の僕は、雪野弥生と同じ切れ長の瞳をした、となりのクラスの若い女の先生を勝手に重ねて感動していたこともあるだろう。サンドイッチをつくる家庭科の調理実習で、班ごとに好きなお客さんを招いてもいいということになったとき、僕は迷わず彼女を招待した。ところが彼女の分のティーカップに、ティーバッグを入れっぱなしにしていたことに気づき、僕は真っ青になってもう一度いれなおしますとあやまった。彼女はいいよ、いいよと言いながら、濃厚な紅茶をそのままでサンドイッチを食べてくれた。 いまこの年齢になって『1000年女王』のご都合主義的な展開を観ると、さまざまな不満は出てくる。雪野弥生が目覚めてから「筑波山天文台」に出勤するまでの長いシーケンスのかわりに、じっさいに教壇に立っている彼女と雨森始の当たり前の学校生活を描写した方が、後半の現実離れした劇的な展開がより際立つのではないか。 あるいは、彼女がじつは1000年女王であることがわかるきっかけとなる小道具、雨森始の手づくりによるブレスレットが画面上に現れてから、彼女が1000年女王とわかるまでの時間があまりに短く、あっさりしすぎている。むしろブレスレットは学校の工作の時間に作ったことにして、雨森始が彼女への子供らしい秘かな恋心を託していたことにすればよかったのではないか。 歴代1000年女王たちの母艦の正面に、女王たちの顔が描かれているのは興ざめではないか、などなど、この素朴な物語に文句をつけ始めるときりがない。にもかかわらず10年以上の時を経て、この物語の構造は僕が『新世紀エヴァンゲリオン』に異常なまでに感情移入する、その根深い原因となっていたのだ。そして20年以上ぶりに観なおしても、僕を何ともいえない憂鬱な感動に染めてしまう力を持ちつづけているのである。 今回『1000年女王』を観なおしたのは、たまたま気まぐれでdaft punkの『INTERSTELLA 5555』という松本零士のアニメーションによるビデオクリップを借りて観たからなのだが、ついでに『銀河鉄道999 エターナルファンタジー』(1998年)も借りてきて観ることになってしまった。驚くべきことに『銀河鉄道999』はまだ完結していなかったようだ。しかもメーテルの生い立ちについての外伝まで存在する。 遠く星空から聞こえる呼び声は、いつまでも僕をとらえて離さないようなのだ。 無断転載禁止
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