僕にとって外国語の勉強に欠かせないのが、その外国語で歌える歌を覚えること。中国語ならフェイ・ウォンによるテレサ・テン『夜のフェリーボート』のカバー曲、フランス語ならエディット・ピアフ『愛の賛歌』や『枯葉』、英語は無数にあるのでいちいち例示できない。ではドイツ語なら何だろうかと考えたとき、中学時代に覚えたマレーネ・ディートリッヒの『リリー・マルレーン』くらいしかないだろうかとあきらめかけていたところに、重要な一曲を思い出した。ネーナの『ロックバルーンは99』である。
英語のタイトルは『99 Red Balloons』、日本語タイトルは『ロックバルーンは99』だが原題は『99 Luftballons』。ただの風船(Luftballon)が赤い風船(red balloon)になったり「ロックバルーン」になったりしているところには、音節の数をなんとか原題に合わせようという工夫がみられるが、「99」だけはそうもいかないようで、英語では3音節だが、ドイツ語では4音節(neun・und・neun・zig)。英語で「99」と歌うと1拍どうしても間延びしてしまうのは仕方ないようだ。
ではこの曲の歌詞でも翻訳してみようかと思い立ったが、ポップスやロックの歌詞の多くが意味不明であるように、この歌詞のドイツ語も意味がとれない部分が多すぎるので訳出はあきらめた。その代わり歌詞が掲載されているドイツ語のWebサイト http://www.nena.de/ から今さらながらネーナについてのいくつかの情報を抜粋してみたい。
ネーナは1960/03/24にハーゲンで産まれている。フルネームはガブリエレ・ズザンネ・ケルナー。身長168cm。1966年から1977年までハーゲンの基礎学校(4年制小学校)とギムナジウムに通い、1977年から1979年まで金細工師の職業教育を受けている。1979年バンド「The Stripes」とともにCBSと最初の契約、しかし翌1980年には解散。1981年にネーナをボーカル(Sängerin)、ドラムスにロルフ・ブレンデル、ギターにカルロ・カルゲス、キーボードにファーレンクローク・ピーターセン、ベースにユルゲン・デーメルというメンバーでベルリンで「ネーナ」を結成した。
「Musikladen」というテレビ番組への出演の後『夢を見ただけ』という曲がヒット、最初のアルバム『ネーナ』から『ロックバルーンは99』と『灯台』がヒット。全世界のヒットチャートで1位を獲得。1984年に2枚目のアルバム『?』(疑問符)、1985年に3枚目のアルバム『火と炎』を発表。1986年に4枚目にしてネーナバンドとの最後のアルバム『砕氷船』を発表。
1988年、第一子クリストファーをもうける。1989年に自身で作曲した曲による最初のソロアルバム『奇跡』を発表。1990年にはザキアスとラリッサの双子を産み、最初の童謡アルバム『おいでマイちゃん』(Komm, liber Mai)をリリース。1992年に2枚目のソロアルバム『ボンゴ・ガール』、1994年に3枚目のソロアルバム『すべては回る』を発表。
1995年には息子のサムエルが誕生、2枚目の童謡アルバム『わたしたちのリンゴの家』をリリース。1997年、ネーナの最新ポップアルバム『ヤーマ・ニッヒ』(Jamma nich)を1枚目のシングル『Ganz gelassen...』とともにリリース。1997年に息子ジメオンが誕生。
1997年以降のディスコグラフィについては上述のWebサイトの最新情報のページで確認して欲しい。ちなみに最新アルバムは2002/04/22にBMGから発売されている童謡アルバム『ネーナの1000のお星さま』のようだ。4人の子供の母親として子供向けのアルバム製作にも力を入れているらしい。
同Webサイトに掲示されているニュース(Ticker 2002)からも最新情報をいくつか紹介してみる。
まず音楽賞受賞の話題。ドイツにはディーター・トーマス・ヘックという人物が創設した「金の音叉」という音楽賞があって、今年はすでに22回目になるらしい。今年はネーナがその受賞者の一人になっているようだ。授賞式は2002/09/21に行われ、ドイツ第二テレビ放送(ZDF)が2002/10/03の20:15からルートヴィヒスハーフェンにあるフライトリッヒ・エバート・ホールからの中継録画が放映されるとのこと。
また2002/09/01に開催されるドイツ交響楽団の子供と大人のためのコンサートでは、ゲルト・アルブレヒトの指揮でスメタナの『モルダウ』などが上演されるが、これを資金面で講演しているのがネーナだという。ネーナは子供向けのアルバムの中でクラシックの童謡や子守歌も歌っているようで、ロックに限定されない音楽活動の幅広さがうかがえる。このあたりにもドイツ人的な生真面目さが出ているのかもしれない。
ネーナファンにとって最近もっとも大きな話題の一つは、どうやら彼女のデビュー20周年記念ということらしい。2002/08/09の書き込みによれば彼女がデビュー20周年を記念するCDを発売する予定で、これまでの代表作を概観できる内容になっているという。そしてなんと『ロックバルーンは99』の新バージョンが収録されるとのこと。2002/10/14にはその新バージョンがシングルカットされる。CDの発売日は未定のようだ。気になる人は独Amazon.deをチェックしておこう。
またネーナはデビュー20周年記念コンサートを行うと話していたらしく、そのコンサートがいよいよ2002/10/11フランクフルトのヤールフンデルトホールで開催されることに決まったらしい。コンサートは数台のカメラでライブ録画されるとのこと。
では彼女は子供向けアルバムの他は懐古的な活動しかしていないのかというと、決してそうではなく、2002/08/07の掲示によればドイツのMTVサイトではネーナがWestbamというアーティストとリリースしたエレクトロポップ曲のビデオクリップが3分20秒全編ram形式で閲覧できる。
この曲『Oldschool,baby』のDVDについて独Amazon.deは解説の中で次のように書いている。「ドイツの音楽シーン(Musikszene)の完璧なスター2人がここに出会った!ネーナは1982年『ロックバルーンは99』でドイツ最大の世界的なヒットを飛ばし、一度聴けば彼女のものとわかる声を持っている(über+4格 verfugen=〜を意のままにできるものとして持っている)。DJでもあり、プロデューサーでもあるWestBamは1983年以来DJとして世界各地をまわり、様々なヒット曲(『Sonic Empire』『New World Order』『Beatbok Rocker』など)でメディア・コントロール・チャートで人気を集めた」。
こんな風につらつらとドイツ語を読みながら独Amazon.deでネーナ作品のページをうろついていると『ロックバルーンは99』しか聴いたことがないと思っていたところが、『Feuer und Flamme』や『?(Fragezeichen)』も耳に覚えがあることに気づいた。しばらく無意味に1980年代POPSの郷愁にひたってしまう時間を過ごしたことは言うまでもない。