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![]() ゆれるこころ ( 19990704 ) 個人的に身辺がごたごたしているので物事を深く考えているヒマがない。というわけで今回は最近ものすごく気になって夜も眠れなかった謎を解明すべく、主婦と生活社『歌BON』1999年8月号を買った。 今まで「バラード屋さん」だと思われていたKiroroが、夏らしいさわやかなポップチューンを発売したと話題の『最後のKiss』。CMでかかるサビの部分だけでなく、この曲のフルコーラスを初めて聴いた人は誰しも「はぁ?」と思うに違いない。 今までのKiroro、正確には玉城千春との違いは、単にバラードとポップという曲調の違いだけではないのだ。彼女の作曲はとっても素直で王道を行くコード進行だったのに、この『最後のKiss』は一度聴いただけで「はぁ?」と思わせるほど凝りに凝ったコード進行になっていて、どのような事態が進行しているのかにわかには理解できない。 そこで『歌BON』に採譜されたコード進行を見てみる。ちなみに同じような楽譜掲載の歌本は他に2冊出版されているけれども、本によって採譜が微妙に違う場合があるので、これが正解とは言えない。ただ僕自身は曲から独力で採譜する能力はないので『歌BON』を参考資料に使わせてもらう。 まずこの曲はサビのメロディーから始まる。ホ長調で最初の「砂に書いた」はAM7で始まる。ポップスがIで始まらないのは今や当たり前になっているので、このIVM7は驚くに足りない。サビの部分のコード進行は今までの玉城千春と同じく、きわめて素直だ。
IIIm7はIの、IIm7はIVの代替コードなので、メジャーセブンスを単なるメジャーコードに書き換えると次のようになる。
IVで始まっていることをのぞけばごくごくフツーのコード進行である。続く間奏の前半部分もまったく同じ進行になっているが、後半から異変が起こる。
『歌BON』の採譜ではこの部分がEメジャーのままということになっているが、G→A7の展開はこの8小節小説の後に続くDメジャーへの転調の前触れとして、すでにDメジャーのIV→V7になってしまっている。ここはすでにDメジャーに転調していると見なして、Bのコードはそこへ割り込んできたVIと見るのがよさそうだ。 ところが続く4小節の最初の2小節はサビの最初の2つのコードにもどってEメジャーを印象づけ、つづく2小節がはまたDメジャーのIIm7(IVの代替)→V7となってDメジャーの展開になる。
こうしてよくよく分析してみると、この8小節は言ってみればD#(またはG#)とD(またはG)が2小節ずつせめぎ合っている。ひょっとしたらこの部分の歌詞に出てくる「ドキドキするような」気持ちがこの半音階の上下に現れているのかもしれない。 この後、「まさかふりむいてくれるって〜」で始まる8小節は、『歌BON』の採譜ではここで初めてDメジャーへ転調することになっているが、ふたたび素直なコード進行に逆戻りしている。
この次、「まぶしすぎて〜」からサビまでの8小節はまたまた不思議な進行になる。「(一瞬)きらきら〜」の「ら〜」の部分から。
Dm7→G7→Em7はCメジャーっぽい進行になっている。(IVの代替→V7→Iの代替)この後Am7が来れば完全にCメジャーだが、ASUS7でDの音が鳴るので、やっぱろDメジャーかと納得する。 ところが再びDm7が登場してからE7なので、今度はAmでそのままAマイナーへ流れていくのかと思わせて(CメジャーとAマイナーは同じ音から構成される長調と短調)、実はA→Bm7で、この3小節だけ見るとAメジャーになっている。 この直後にサビが来て再びEメジャーに戻るのだが、EメジャーのV7のつもりならこの最後の小節はB7になっているべきだからだ。Bm7ならDメジャーとしてもIの代替コードだし、AメジャーとしてもIIm7になってIVの代替コードになる。しかしEメジャーへの導入としては「おやっ?」という感じに聞こえる。D#の音が鳴らずに、Dが鳴り続けるからだ。ここにもD#とDのせめぎ合いがある。 この曲全体のコード進行が、D#なのかDなのかを決めあぐねて揺れ動いているように思える。サビのリフレインはこのように続く。「本当に大好き/もう離れない/そう決めたのに/嫌いになったわけじゃない」なるほど。早すぎる夏の終わりの予感に、心は揺れ動いているのだ。 IIは5度の変調の導入としてII7が使われることがあるので分からなくもないが、 II#7となると何が起こっているのかさっぱり分からなくなる。で、こんなヘンな展開だからてっきり転調でもするのかと思うと、Eメジャーのまま「口笛ふいて〜」と続く。
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