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![]() 映画を観るってどういうこと? ( 19971122 ) 対話(1)
この対話のなかでBさんは「映画観て来たよ」と言っているが、厳密に言えば、Bさんが観たのは映画ではなく、レオナルド・ディカプリオという俳優である。レオナルド・ディカプリオさえ見られれば、それが映画である必要もなかったし、『ロミオとジュリエット』という映画である必要もなかった。 対話(2)
この対話のなかでBさんは「映画観て来たよ」と言っているが、厳密に言えば、Bさんが観たのは映画ではなく、『ロミオとジュリエット』というストーリーである。『ロミオとジュリエット』というストーリーに感動するのなら、映画である必要はなかった。TVドラマでもよかったし、翻案小説でも、原典でもよかっただろう。 対話(3)
僕はまだレオナルド・ディカプリオの出ている『ロミオとジュリエット』は観たことがないが、たぶんフランコ・ゼフレッティのほうがよかった、と言ってしまうだろう。あのオリビア・ハッセーに勝るジュリエットが存在するだろうか...と、僕も映画を観ない可能性がある。 映画を観るとはこれほどまでにデリケートなことなのだ。うっかりすると僕らは映画を観ずに、俳優を観たり、ストーリーを観たりしてしまう。たくさん俳優を知っている人は、映画ファンではなく、俳優ファンなのであり、たくさんの映画のストーリーを記憶している人は、映画ファンではなく、単なるお話好きなのだ。 このエッセーを読んでいるあなたも、自分のことを今の今まで「映画ファン」だと誤解していたのではないだろうか?あなたは映画を見たあと、映画のストーリーや俳優の演技についてしゃべって、いっぱしの「映画ファン」になったつもりになっていなかったか? もしそうだとしたら、あなたは「映画ファン」ではなく、「お話好き」か「俳優ファン」にすぎなかった。映画をほんとうに愛するということは、実はひじょうに難しいことなのだ。 じゃあ、どうしたら本当の意味で「映画ファン」になれるのか? 巨額の資金を投じたハリウッド映画を観て「映画ファン」になることは難しい。なぜなら、金のかかったハリウッド映画は、わざと観客の目を映画そのものからそらすように作られているからだ。それはSFXだったり、美形の俳優だったり、よくできたストーリーだったり、とにかく映画以外のものに観客の目をそらせようと必死になっている。 だから、ハリウッド映画しか観ない人は、まず間違いなくニセ「映画ファン」だ。じっさいには、彼らは単なる「ストーリー好き」だったり、「俳優ファン」だったり、「SFXマニア」だったりする。 本当の意味で「映画ファン」になるいちばんかんたんな方法は、本当の意味で映画を愛している人が作った映画を観ることだ。つまり、儲けることしか頭にない人間たちが作った映画を観るのではなく、映画そのものを愛している人間の作った映画を観るべきだ。 なかでもいちばんいいのが、ゴダールの映画を観ることだ。おそらく世界中にゴダールほど映画を愛している人はいない。彼の映画に対する(ちょっとストーカー的とも言える)愛は、彼の映画から痛いほど伝わってくる。 なぜゴダールの映画が本当の意味で「映画ファン」になるためのいちばんの近道なのか?それは、ゴダールの映画には、映画以外のものがないからである。ゴダールの映画は、純粋な映画であり、映画以外の一切の不純物が混じっていない。100%映画でできた映画なのだ。 その証拠に、ゴダールの作った映画は、すべて映画についての映画である。上に例としてあげた『ロミオとジュリエット』は、悲劇的な恋愛についての映画だったり、レオナルド・ディカプリオについての映画だったりするが、ここにあげたゴダールの『映画史』や『カルメンという名の女』をはじめ、『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』『中国女』『軽蔑』『勝手に逃げろ・人生』『右側に気を付けろ』『ゴダールの決別』『パッション』『女と男のいる舗道』『ワン・プラス・ワン』(すべて僕が観たゴダール作品だが)も、みんな映画についての映画だ。 映画についての映画というのは、別に映画を撮影している現場をドキュメンタリー風に撮った映画(トリュフォーの『アメリカの夜』のように?)ということではないし、監督自身の映画についての考え方をインタビュー形式で撮った映画ということでもない。 たとえば、ここにあげたゴダールの『映画史』は、ふつうの人ならゴダール監督が映画の歴史を年代順にまとめた映画を想像するだろう。しかし、それでは「映画の歴史」についての映画になってしまう。ゴダールの『映画史』は、あくまで映画についての映画である。 そろそろこの文章を読む人もイライラしてきたのではないだろうか?さっきから「映画についての映画」だの、「純粋な映画」だのいってるけど、じゃあ一体、お前の言う「映画」っていったい何なんだぁ!そう聞きたくなった人がきっといるだろう。 それに対して、僕は次のように答えるしかない。映画が何か?ということが分かっていたら、どうして映画を観る必要があるのか。映画って一体なんなのか、分からないから映画を観て、映画とは何かと考えつづけるんだ、と。 えー、映画ってそんなに難しいもんだったなんて知らなかったぁ。とつぶやいたあなたは、今まで映画を観ていなかっただけのことだ。俳優やストーリーを観ていただけであって、あなたはまったく映画を観ていなかったのだ。 今、あなたは2つの分かれ道に立たされている。 「映画ファン」を自称することをやめて、自分が単なる「ストーリー好き」「俳優ファン」であることを認めるか、それとも、ゴダールの映画を観ながら映画とは何かを考えることで、本当の意味で「映画ファン」になるか、どちらかだ。 それによって、あなたの映画に対する愛の深さが、はっきりと分かってしまう。 (以上、通俗的すぎるゴダール入門でした) 無断転載禁止
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