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韓国映画祭2
( 19970823 )

Japanese/English

在日韓国人・朝鮮人の問題を考えながら、例年のように盆休みを利用して上京してみると、タイミングよく千石の三百人劇場で「知られざる映画大国」と題して韓国映画特集が組まれていた。

残念ながら1日しか足を運べなかったが、その日はアンソンギ(安聖基)という韓国映画界代表する俳優の特集が組まれており「神様こんにちは」「風吹く良き日」の二本立てだった。

「神様こんにちは」(1987年)は、脳性マヒのために修学旅行に行けなかった青年ピョンテが、大人になってその夢をかなえるという、リリカルな美しさのロードムービーである。この青年ピョンテをアンソンギが好演している。

脚本のチェ・イノは、監督ペ・チャンホの映画作家としての成功に大きく貢献したと言われるが、確かにこの作品でも彼の脚本は、脳性マヒの青年を主人公としながらも何ら気負いがない。

ある日の早朝、ピョンテは両親にないしょで寝室を抜け出し、貯金箱にためた小銭を握りしめて一人で慶州のせん星台に向かう。

片足が不自由な上に言語障害のあるピョンテは、バスを乗り間違え途方に暮れる。そんなときバイロンを師と仰ぐ自称詩人ミンウに出会う。意気投合した二人はTVドラマの撮影クルーにうまくまぎれこみ、慶州行きの夜行列車に乗り込む。

二人は列車で、お産のために帰省するという身重の美女チュンジャと出会う。チュンジャにゆで玉子とサイダーをごちそうになり上機嫌の二人だが、車掌が改札にやってきてあっさり無賃乗車がバレてしまう。

チュンジャの降りる駅でいっしょに降ろされ、駅員室で叱られているところへ、チュンジャが脱線事故だ!と叫びながら駆け込む。駅員が血相を変えて飛び出したすきに3人はまんまと脱走する。

チュンジャも夜が明けるまで実家に入れない。宿無しになった3人だが、町中をさまよううちにミンウが偶然リルケの詩の朗読を耳にし、その声の主である教師の厚意で小学校の校舎に泊まることになる。

ミンウは教室にあった足踏みオルガンでたわむれに歌を歌うが、教師はその曲を知っていると言う。昔、多くの小学生が犠牲になったバス転倒事故で、教師が責任を感じてそのまま失踪した。その教師が作った曲だ。

ミンウ自身はだまっているが、その教師こそミンウである(ここでミンウの弾くオルガンにあわせて、ピョンテとチュンジャが幾千本のろうそくの灯りの中ダンスをするシーンは、幻想的でひじょうに美しい)。

翌朝、朝食をともにしたピョンテとミンウは、チュンジャに別れを告げて慶州に発とうとする。しかし忘れた荷物を取りに戻った二人は、実はこの村にチュンジャの実家はなく、親戚の洋裁店をあてにして来ただけだと知る。

その洋裁店もつぶれていることが分かり、身寄りのなくなったチュンジャは、結局二人とともに慶州をめざすことになる。

食べ物もなくなった三人は、通りすがりの結婚式におしかけてごちそうにあずかる。初めての酒でへべれけになったピョンテと、ミンウ、チュンジャは、その夜野宿する。

チュンジャはたき火に当たりながら、お腹の子の父親は分からない、若さゆえの過ちだったと告白する。ミンウはただ静かにうなずくだけだ

(日本よりも貞操観念の強い韓国だから、未婚の母に対する風当たりは強い。身体障害者のピョンテ、ホームレスのミンウ、未婚の母のチュンジャの三人が旅の道連れであるという設定にはそういう意味がある。ちなみに結婚式のシーンは、記念写真のシャッターをきっかけに、セピアのスチルのみによるシーケンスでスタイリッシュ)。

ピョンテは慶州で絵を描くために外国製の絵の具を持っていたが、それも質屋に売り、三人はバスで目的地を目指す

(質屋とのかけひきの場面も凝っている。格子ごしや俯瞰のショット、トラックアップの多用で、なんでもないシーンがコミカルな緊迫感で観るものを引き込む)。

途中、バスがトイレ休憩のために停車する。ピョンテが用事をすませてくると言って降りるが、発車時間になっても帰ってこない。仕方なくバスを降りたミンウとチュンジャは、さらわれて乞食でもさせられているのではととんでもない心配をしながら、夜も更けた村を探し回る。

ようやくピョンテを見つけるが、チュンジャの所持金も底をつき、空腹にも耐え切れなくない。するとミンウが突然、ピョンテとチュンジャを豪華ホテルに連れて行く。自分の兄がそのホテルのオーナーだと言うのだ。

ミンウのおごりで満腹になった2人に、ミンウは、放浪生活をやめてここで兄の世話になる決意を告げる。兄と今後の話し合いがあるから慶州へは2人だけで行ってくれ。

ピョンテとチュンジャがホテルを去った後、ミンウは無銭飲食で逮捕される。すべてはピョンテを慶州に行かせるためのウソだったのだ。

ピョンテとチュンジャはバスで慶州を目指すが、バスの中でチュンジャが激しい陣痛に襲われる。病院もない田舎道で、しかも土砂降り。近くに人家があるというので、ピョンテは不自由な足をひきずりながら、チュンジャを必死で人家まで背負っていく。

しかしその人家にも子供たちしかいない。厩にチュンジャを寝かせる。チュンジャは、陣痛を忘れるように、ピョンテに歌をうたって欲しいという。ピョンテは子どもたちとともに励ますように汽車の歌をうたう。

朝日が静かに厩の中まで差し込むころ、元気な産声が響く。

このシーンはキリスト降誕の引用であることはいうまでもない。ちなみに韓国人の3割ほどがキリスト教徒である。

ピョンテはチュンジャの子供と3人で、ついに慶州にたどりつく。慶州は小学生の修学旅行でにぎわい、万国旗がはためいている。

不意にあのオルガンの曲が聞こえてくる。子どもたちが歌う輪の中に、オルガンで伴奏するミンウの姿がある。ミンウは立ち上がると、チュンジャに花束をわたす。

場面はいきなり夜中、ピョンテが自分の部屋に帰っていくシーンに変わる。ベッドにもどったピョンテの満足げな寝顔に、脳性マヒに苦しむ以前の小学生のピョンテが、楽しげに遠足の用意をする回想がオーバーラップになる。

すがすがしい涙を誘う佳作である(興行的には失敗だったようだが)。個人的には「少女香雪」(中国)とならぶMy Favoriteである。

専門的な解説は、こちら(アジア映画小事典・韓国映画作品ガイド)を参照していただきたい。


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